2017年06月12日

チャック・ベリー チャック〜ロックンロールよ永遠に〜


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チャック・ベリー Chuck〜ロックンロールよ永遠に〜

(ユニバーサル)


ロックンローーーーーーール!!!!

あいすいません、冒頭からぶっとい字で叫んで何事かとお思いでしょうが、いやだってアナタ、コレが叫ばずにおれますか。チャック・ベリーですよ、今年(2017年)3月に90歳の大往生を遂げたロックンロール・レジェンドが、この世の全てのロック小僧に残した置き土産、何と1979年リリースの「ロック・イット」以来実に38年ぶりにレコーディングしたニューアルバムが、6月9日の”ロックの日”に発売されたっつうんだから、いやアナタ、コレが叫ばずにおられますか。

はい、ちょっと冷静になりますね。

アタシはもちろんチャック・ベリー、まだロックとか何とかよくわからんうちに、何だか周りのトッポいお兄さん達が聴いてる影響で、長い間知ったかぶりして聴いて、それからロック、ブルース、カントリー、R&Bとか、一丁前に聴いてそのカッコ良さをこれまた一丁前にわかるようになってきてからようやく

「うわぁぁああ、コノ人は本当に本当に凄い人だったんだ」

と驚愕して、ミーハーじゃなくて真剣にブルースとかその後のロックとの深いつながりを意識しながら聴いてみて、何とまぁ斬新でカッコイイことをやった人なんだと、頭悪いなりにようやくわかって以来、彼の50年代から60年代のアルバム、具体的にはファーストの「Afterschool Sessions」から6枚目の「St.Louis to Liverpoor」まではそれこそ夢中で聴きました。

えぇ、偉そうに理屈をこねておりますが、チャック・ベリー聴いてる時の気持ちは今も変わらんですね。何だかんだやっぱりミーハーな気持ちで聴いておるのかもです。だってどんだけ色んな音楽を聴いても、やたら知識ばかりが無駄に自分の中で積み重なっても、チャックの十八番ともいえるあの「ジョニー・B・グッド」とかの

チャララチャララララララララ♪

のイントロを聴けば、心の中で言葉じゃない「うわぁ!」が湧くんです。えぇ、湧くったら湧くんです。

で、自らロックンロールを1950年代におっぱじめ、以来60年近くそのロックンロールをやってきたチャック、ロックンロールからロールが取れてロックになっても、テクノロジーがどんだけ発達しても、ずーーーーっとロックンロールをやってきました。

その姿勢は頑固一徹とかそんなんじゃなくて、ブルースを核に、カントリー、ラテン、ジャンプ、ジャイヴ・・・と、アメリカのあらゆるポピュラー・ミュージックを自分のセンスと才能で全部ごちゃまぜにして”オイシイとこ”を上手い事抽出して、オレにしか作れない音楽を作ってきたんだぜ。というオリジナル・ロックンローラーとしての誇りであるとアタシ思います。

で、そんなチャック・ベリー。偉大なる大御所ミュージシャンらしくゆったり構えていたのかといえばそうではなくて、相変わらずギター1本だけ持ってあちこちでドサ回り。

バックバンドも相変わらず有名ミュージシャンは付けずに(多分)「お前らのギャラはコレでいいよな?な?」という半ば脅迫じみた提案に「いいっすよ」と言うヤツだけを雇って

「いいかお前ら、チャック・ベリー・ミュージックだ。リハーサル?セットリスト?馬鹿野郎オレが今からやるっつう曲をてめーらやればいいんだ」

と、恐らくはずっとやっていたんでしょう。

でもこれ、チャックが最初からやってたことなんで誰も気にしない。大体チャックの曲はみんなガキの頃からレコードで聴き込んでいるので気にしない。

特にアタシはYouTubeで2015年以降のチャックのライヴ映像を観るのが好きでした。

この頃から体調を崩したとかで、チャックはちゃんと歌えてないしギターもマトモに弾けてないんですよね。でもバックバンドが懸命に盛り上げて、チャックが歌えてない場所は、お客さんが大合唱でキチンと補ってる。だからライヴは全然悪くないし、むしろロックンロールとして最高にあるべきライヴの凄さがみなぎってる。

これ、衰えたチャックをフォローしてる訳じゃないんです。例え彼が弾けてなくても歌えてなくても、彼の音楽がバックバンドに火を付けてお客さんを盛り上げてる。世界中のロックファンから無条件に愛される曲を作り、それをずっと演りつづけてきたチャックだからこそ出来ることなんです。


ロックンロール







【収録曲】
1.ワンダフル・ウーマン
2.ビッグ・ボーイズ
3.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
4.3/4タイム
5.ダーリン
6.レディー・B.グッド
7.シー・スティル・ラヴズ・ユー
8.ジャマイカ・ムーン
9.ダッチマン
10.アイズ・オブ・マン


そんなチャック・ベリーのライヴの凄さにグッときて待ちに待っていたニューアルバム。

チャックは体調を崩してから「絶対にリリースしたい!」という執念で、長い製作期間をかけて作り込んできたんです。

残念ながらこの音盤がお店に並ぶのを見ることなくチャックは旅立った訳で、それに関しては色々と思うところもありますが、とにかくアタシが物心ついたて時から「新作が出る」と聞いたことのないチャック・ベリーが新作を出すんです。そして出したんです。結論からもう先に言っちゃえば、コレが最高にカッコ良かったんです。


アレンジはあれこれ余計な音を被せない、実にストレートなもので、チャックの声もギターも凄くメリハリ効いてパンチも効いてます。

曲も安定の"いつものチャック・ベリー・ミュージック"で、コチラも変に奇をてらったりしないで最初から最後まで小細工ナシで突き進んでて、何より音の質感が、今風に媚びてないのにエッジが効いて全然古くさくないし退屈しない。

まだまだ聴いたばかりなので上手く言葉が出てきませんが、これは間違いなくチャック・ベリーの集大成なアルバムです。

トム・モレロが参加していることが話題になってますが、彼のプレイは言われなきゃわからんぐらいの謙虚さで、メインで鳴り響いているノン・エフェクトのチャックのセミアコのあの音を、目一杯のリスペクトで引き立ててます。

チャックは絶対そんなことやらんだろうと思ってましたが、このアルバムはよくあるベテランのご祝儀的な、和やかで懐メロなだけのアルバムにはやはりなってません。

シンプルにギラついた、無駄がなくストレートな刺激がバンバン飛んできて、アタシらクソガキをアツくしてくれる最高のロックンロール・アルバムなのです。





ロックンロール!

チャック・ベリーよ永遠に!


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2017年06月06日

ジャニス・ジョプリン イン・コンサート

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ジャニス・ジョプリン/イン・コンサート
(ソニー・ミュージック)

ロックやブルースといった音楽が、何故魅力的なのか?もとい音楽に目覚めて、夢中になって聴きまくるようになってから、何故アタシはロックやブルースという音楽に、抗し難い魅力を感じてしまうようになったのか?

ということを、柄にもなく真剣に考えております。

まず、ロックやブルースという音楽には、独自の粗さがあります。

綺麗で整っているものとは対極にある粗さは、それは歌い手とか演奏するミュージシャン達の内側のエモーションを力強く放出し、綺麗で整っているものを聴いては味わえない、独自の味わいとか感動とか興奮とか、そういったものとイコールなのかなと思います。

アタシがそんなことを強く考えるのが、ジャニス・ジョプリンを聴いている時です。

ガラガラでザラザラのジャニスの歌声は、決して透き通った綺麗なものではありません。

でも、ジャニスの声は他のどのシンガーにもない力強さと情感の深さに裏付けられた美しさがあるとアタシは思います。

ジャニスはロック・シンガーです。

そしてブルースが大好きでした。

自分の曲を作る前から、古いブルースを"ハスキー"というには余りにも激しい声を張り上げて、唄っており、やがて"ビッグブラザー&ザ・ホールディングカンパニー"というバンドをバックに従えるようになり、ガンガンに歪んだ、ラウドなロック・サウンドに乗せて、それに負けないぐらいのエモーショナルな声を響かせ、大好きなブルースやR&Bのスピリッツが炸裂するパワフルなロックに生命を吹き込みます。

本格的なデビューからたった2年ほどで、文字通り命を壮絶に削り尽くしてあの世に旅立ったことを、後の時代のアタシ達は知っています。

彼女の残された作品にはどれも、ロックとしてのはちきれんばかりの衝動の凄まじさと、彼女自身の人生の波乱万丈のすべてが込められたそのヴォーカルに”ブルース”という言葉の意味を、理屈ではない深いところで教えてくれるような底なしの説得力が迫ってくるのです。

さて、その昔、ある日突然アタシはジャニスのとりこになりました。

高校時代に買った2枚組のアルバム「ジャニス」これが全ての始まりだったんですが、本格的に彼女の歌声にガツンとヤラレたのは20代になってからのこと。

それから熱病にうかされるように彼女のオリジナル・アルバムを買い集め、レコード2枚組の素晴らしいライヴ・アルバムに出会ったのは、ある暑い夏の日。





(Disc-1)
1.ダウン・オン・ミー
2.バイ・バイ・ベイビー
3.オール・イズ・ロンリネス
4.心のカケラ
5.通行止め
6.フラワー・イン・ザ・サン
7.サマータイム
8.エゴ・ロック

(Disc-2)
1.ハーフ・ムーン
2.コズミック・ブルース
3.ジャニスの祈り
4.トライ
5.愛は生きているうちに
6.ボールとチェーン


もちろんジャニスはどれも最高で、優劣なんかとても付けられないのですが、彼女の激しくも優しく暖かい音楽表現の核心は究極的に言えばライヴにあります。

そのヴォーカルのスタイルそのまんまに、リアルな”瞬間”に全てを炸裂させる彼女のライヴ音源に、よろしくないものなどありません。

この「イン・コンサート」は、ジャニスの突然過ぎる死の直後に出された、前半が初期のビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーをバックに付けた演奏。後半が最後のバンド、フル・ティルト・ブギー・バンドをバックに付けた演奏で、曲目を見ればお分かりのように、彼女の代表曲、有名曲ばかりをセレクトした好選曲で、とにかくジャニスを聴いたことのない人にぜひとも聴いて欲しい内容です。

演奏内容について、これはもうアタシがどれだけ言葉を尽くしても、きっと皆さんが聴いた瞬間の感動の方が何億倍も説得力があると思いますので、細かくは書きません。前半が荒削りでジャニスが活き活きと唄っていて、後半はしっかり整ったバンド・サウンドに安心して身を任せて、シャウトする時とグッと感情を抑える時のコントロールが素晴らしかったりするのですが、それは些細なこと。とにかく全曲通して最高のロックでありブルース、これだけはハッキリと断言できます。

前半の最後に「エゴ・ロック」というブルース・ナンバーが入っていて、アタシこれが大好きなんですね。何てことないスローテンポの典型的なブルースなんですが、ジャニスのドバーーー!と吐き出すような声と、優しく包容力のあるビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのギター、サム・アンドリューの声との掛け合いが本当に素晴らしいので、特にブルース好きの方はこの曲にも注目(注耳?)してくださるとアタシは嬉しい。




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2017年05月29日

ザ・オールマン・ブラザーズ・バンド

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ザ・オールマン・ブラザーズ・バンド
(CAPRICON/ユニバーサル)


我が家の家訓に「音楽聴くならブルース、ロックならサザンロック」というのがあります。

半分は冗談ですが、半分はホントです。

というのも、ギターをいじるようになった十代の頃、親父に「何を聴いたらギターが上手くなる?」と、訊いたら、親父は少しも迷わず

「それはお前、サザンロックだ。特にオールマン・ブラザーズを死ぬほど聴け」

と即答しました。

今でこそオールマンとかサザンロックとか言われたら「あぁそうか」と、ピンと来ますが、その頃といえば流行りの邦楽と、洋楽はパンクとメタルをほんの少しかじってるぐらいだったんです。

そこでまず”サザンロック”とは何ぞや?という話になってくるのですが、アメリカでロックンロールが生まれ、それが海を越えて、ブルースやR&Bなどと共にイギリスに渡って「ロック」の原型が生まれます。

60年代に、ビートルズやローリング・ストーンズ、そしてクリームらがブレイクして、そのルーツにはブルースやR&Bがあることを感じたアメリカの白人の若者達が、再び足元を見て分らの国のブラック・ミュージックの価値を再認識することから、新しい”ロック”が生まれます。

”ロック”がしっかりとその形を成したのは、主にサンフランシスコやLAといった、西海岸の都市部です。これに東海岸の大都会ニューヨークに根を張っていたビートニク(という文学運動)らが呼応して、アメリカにも一大市場としてのロック・シーンなるものが出来上がった。

えぇと、この話はかなりはしょっておりますが、細かいところをちゃんと書こうとすると大変な文字数になってオールマンのことが書けなくなっちゃいますのでこの辺で勘弁してくださいな。

で、アメリカの都市部はこの新しい音楽が堰を切ったように溢れて、で、様々な社会運動なんかと密接にリンクしながら世界中に波及していきました。

これが60年代後半から70年代のおはなし。

で、アメリカの都会のヤツらはそうやって流行を作り上げて、刺激的な音楽をどんどん発信していったけど、都会じゃない所に住んでるヤツらはどうだったんだ?何もしていなかったのか?

という話になります。当然「や、実はそうじゃないんだよ」というところで出てくるのがサザン・ロックです。

実はアメリカには、都市部よりも南部にそれぞれの人種の音楽の”根っこ”となる・・・たとえばブルース、カントリー、テックス・メックス、それと忘れてはならないニューオーリンズのR&Bなどなど独自の文化がしっかりとありまして、ジョニー・ウィンターのファーストをレビューした時にもちょこっと書きましたが、彼らは都会の流行をチラ見しながらも、自然と染み付いたブルースやカントリーのフィーリングに忠実に「おぉ、オレらァこれでいくぜぇい」と、ある意味で泥臭い音楽を、泥臭いまんまやっておった。

そして60年代は、メンフィスやアラバマに独自のソウル・ミュージックを発信するレーベルがあって、腕とフィーリングのあるミュージシャンなら、白人黒人を問わずスタジオバンドに加わることも可能な環境もあり、南部に住む若者達のブラックミュージック化は、まだまだ人種間の軋轢はあったとはいえ、かなり盛んになっておりました。

で、オールマン・ブラザーズです。

言うまでもなくオールマン・ブラザーズ・バンドは、アメリカ南部フロリダ州に住む、デュアン・オールマン(兄・ギター)とグレッグ・オールマン(弟・ヴォーカル&オルガン)の兄弟が中心になって結成されました。

実は早い段階(1963年)に才能を開花させた二人は”オールマン・ジョイス”というバンドを結成するんですが、下の写真を見て分かるように、まんまビートルズを意識した、UK風のポップなガレージバンドだったんです。

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(両サイドの右がグレッグ、左がデュアン)

残された音源を聴いても、ポップな曲の中で暴れるデュアンのギターはなかなかのやさぐれっぷりで(この頃からスライドも弾いてるんだって!)悪くないバンドだったんですが、この路線が合わないと思った二人はバンドを解散。

デュアンは田舎に帰り、グレッグは単身LAに行ってしまいますが、この間田舎であらゆるセッションに顔を出して腕を磨いていたデュアンは、アラバマのマスル・ショールズにあったソウルの牙城”フェイム・スタジオ”のセッション・ギタリストとして、同地でレコーディングするアレサ・フランクリンやウィルソン・ピケットといったソウルの大物達に、そのフィーリング豊かなギターの腕を買われております。

このウィルソン・ピケットのレコーディングの時にデュアンが

「親方、ビートルズの”ヘイ・ジュード”って曲やらんですか?いや、やりましょうよ」

と、ピケットに提案したのは有名な話。そしてその音源を聴いたエリック・クラプトンが「凄いギターだがコイツは誰だ!?」と驚愕したというのも有名な話。

そんなこんなでソウル/R&Bの世界で既に名を上げて、あちこちのスタジオやライヴハウスでセッションにセッションを重ねていたデュアンが、ディッキー・ベッツ(ギター)、ベリー・オークリー(ベース)、ジェイモー(ドラム)、ブッチ・トラックス(ドラム)というメンバー達と出会い、彼らの生み出すグルーヴとセンスの良さに惚れて「よし!バンド組むべ!!ちょっと待ってろ、弟を呼び寄せる。アイツは最高のヴォーカリストでキーボーディストなんだ」と、LAにいたグレッグを呼び寄せ、1969年「オールマン・ブラザーズ・バンド」は結成。

既にデュアンとその仲間達の名は一帯に轟いておりましたので、彼らのデビューには地元レーベルの”カプリコーン”がすぐに飛び付いて、その年のうちにデビュー・アルバムの「ザ・オールマン・ブラザーズ」はリリース。






【収録曲】
1.ドント・ウォント・ユー・ノー・モア
2.ノット・マイ・クロス
3.腹黒い女
4.トラブル・ノー・モア
5.ハングリー・ウーマン
6.夢
7.ウィッピング・ポスト


まず、ここで聴けるのは、アメリカ南部に深く根を張るブルースやカントリー、そしてR&B(サザンソウル)の濃厚なフィーリングを、楽曲やサウンドの隅々まで充満させた、密度の濃い”新しいロックサウンド”であります。

左右のチャンネルに分かれた2本のギターは、”空駆けるスライド”と評されたデュアンと、そのスライドにギンギンのフレーズで絡んでくる”もう一人のリード・ギター”ディッキー・ベッツ。

そしてこのバンドのもうひとつの目玉であるツイン・ドラムが繰り出すパワーと間合いの調整が完璧な横ノリグルーヴ、その真ん中にドンと構えて、ズ太いビートを送り込むベース。

まずもってハタチそこらの若者バンドのデビュー作とは思えない熟練の演奏テクニックなんです。そしてライヴ盤以上のライヴ感に溢れながら、全体をじっくりしっかり聴かせる熟成されたサウンドなんです。

で、ここで開花したのが、ヴォーカル&キーボードのグレッグ・オールマンの色んな才能であります。

まずはソングライターとして、このアルバムはスペンサー・ディヴィスの@、マディ・ウォーターズのカヴァーC(コレが最高なんだ)を除いて全てオリジナルなんですが、楽曲を書いたのは全部グレッグ。

先ほど「ブルースとカントリーとR&Bの濃厚なフィーリングを充満させた新しいロック」と書きましたが、グレッグの書く曲こそが、正に骨太で聴かせる”ツボ”と、いかにもアメリカン・ロックなやさぐれた優しさ(わかるべか)が、ノリノリのナンバーだろうがバラードだろうが一本筋が貫かれてる。

これもまたハタチそこらの若者とは到底思えない、人生の悲哀を含んでザラッと吐き出すかのようなやるせない声、そして声にピッタリと合った優しくてワイルドなオルガンの音もまたたまらんのです。

最初の頃はアタシも

「どうやったらこんなスライド弾けるんだろう」

と、ギターにのみ集中して聴いてたんですが、聴き込むにつれて、そしてロック以外の色んな音楽を知るにつれて、つくづくこの独自の土臭い横ノリと、やるせないグレッグの声の魅力にめろんめろんになってしまいます。サウンドもグルーヴも、とにかく歌ってるんですよね。本当に理屈じゃない部分で感動させてくれる最高にイカシたバンドのイカシたアルバムです。

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2017年05月23日

サンタナ キャラバン・サライ


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サンタナ/キャラバン・サライ
(ソニー・ミュージック)


サンタナの4作目のアルバム「キャラバン・サライ」。

うん、個人的に”好きなアルバム”といえば、それは真っ先にこの前作の「3」であり、荒削りな音も含めて純粋にラテン・ロックをあひゃあひゃ言いながら楽しめるといえば、ファーストになるのでありましょうが、このアルバムに収録されている深い瞑想性に溢れた音を聴けば、いや、もう「キャラバン・サライ」というタイトルだけを聴いても、自然と気持ちが幽玄に誘われ、高揚でもあり陶酔でもある特別な感情に、心の中がいっぱいになってしまうのです。

ロック繚乱の60年代末にデビューし”ラテン・ロック”という新風をシーンに流し込んだサンタナでありましたが、彼らの創造性はそれだけに終わりません。

中心メンバーであるギターのカルロス・サンタナは、デビュー前からジャズ、特にジョン・コルトレーンの実験的でスピリチュアルな音世界に傾倒し、同じぐらいリアルタイムでリリースされたマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」等のエレクトリック・ジャズに大いに興味を示し、マイルス・デイヴィスと積極的に交流をしておりました。

また、その頃の白人/黒人を問わず多くの芸術的完成を持つ若者を魅了していたインド哲学にも相当のめり込み、アメリカを拠点に多くの著名人の弟子を抱えていたヨーギ・シュリ・チンモイに弟子入り。そしてラヴィ・シャンカールにシタールの手ほどきを受けるなど、その没入ぶりは本格的なものでした。

ジャズとインド哲学からの影響が、サンタナの音楽を一気に深化させました。

前作「3」から本作に至るまでの「ロックとラテンの融合」という意味においては、基本的な路線は変わっておりません。

けれども、アルバム1枚がまるでひとつの壮大なスケールの組曲であるかのような音楽性、そして何よりもそれまでの「内にあるものをエモーショナルに放出する」という表現手法は、ここへ来て内面へ収束するエネルギーの反動を受けて放出、という、あいやすいません、哲学的に言うと何だか難しくなってしまいますが、とにかく内へ内へと精神的な世界の深い部分にまで入り込む思念的なサウンドと、やっぱり爽快でどこまでもよく伸びるギターの響きと、より洗練されて、ひとつの確固たる世界を確立しているバックとが絶妙なバランスで溶け合って、唯一にして無二な音楽を、ここで奏でておるのです。




(ギター・レジェンド・シリーズ)


【収録曲】
1.復活した永遠なるキャラバン
2.躍動
3.宇宙への仰視
4.栄光の夜明け
5.風は歌う
6.宇宙への歓喜
7.フューチュア・プリミティヴ(融合)
8.ストーン・フラワー
9.リズムの架け橋
10.果てしなき道


CDを再生してしばらく「リーン、リーン」と鳴り響く虫の声(何と2分以上も鳴ってる!)に引き続き、かなりよじれた感じのサックスの音が、揺れ系エフェクトをかけたエレピがリズムを導くオープニング・ナンバー「復活した永遠のキャラバン」が荘厳にアルバムの始まりを告げ、ギターが本格的に雄大なソロを奏でるのはA「躍動」から。

そして「宇宙への仰視」ではスピリチュアル・ファンク、ヴォーカル入りで一番ロックっぽい「栄光の夜明け」前半のハイライトである「風は歌う」へと、演奏は様々なジャンルを横断しつつも、一貫して共通した荘厳なムードを保持しながら流れて行きます。

後半は、愛と平和のメッセージを込めた、サン・ラーばりのコズミック・ソウル「宇宙への歓喜」(この曲は原題の「All The Love Of The Universe」と呼びたいです、ハイ)、静寂を敷き詰めたシンセのゆわんとした浮遊からパーカッションがその静寂に浮遊する「フューチャー・プリミティヴ」、そのままでの流れからカルロスのギターとラテンのゴキゲンなリズム、ささやくようなヴォーカルとがまた素晴らしい融合の「ストーン・フラワー」更にテンポアップしてアルバム中最高の盛り上がりで聴かせる「リズムの架け橋」そして最後は一曲丸々壮大なエンディングのようなアレンジの上で目一杯の情念と余韻を響かせて飛翔するギターが最高にエモーショナルな「果てしなき道」。

はい、細かく一曲一曲解説しましたが、特に後半かなり激しく盛り上がっているはずなのに、聴いた後に不思議な静寂が心の内にゆわーんと漂う、本当に本当に不思議な感触を、壮大な感動と共に残すアルバムです。

収録曲はほとんどインスト、聴きようによってはジャズでもありますが、この強烈なオリジナリティ、やはりサンタナであります。本当に素晴らしい。



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2017年05月15日

ジョニー・ウィンター 狂乱のライヴ


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ジョニー・ウィンター/狂乱のライヴ


「暑い夏に冷たい飲み物をガブガブ飲むのは、逆に内臓に負担をかけて夏バテを起こしやすい、飲むならば暖かいほうじ茶がいい」

って、皆さん知ってました?

アタシはもちろん知ってました。えぇと美味しんぼという漫画に書いてありました。この前読んだのですよ、フォッフォッフォ・・・。

という訳で、暑い夏の107倍ぐらい熱いジョニー・ウィンターです。

今回ソニー・ミュージックの渾身の企画「ギター・レジェンド・シリーズ」では、ファーストと1971年の「ライヴ」と、もうひとつジョニー・ウィンターを聴くんなら絶対に避けて通れないアルバムがありまして、それが本日ご紹介する「狂乱のライヴ」です。

「狂乱」って凄いですね、タダのライヴじゃなくて狂って乱れておるんですよ、え?「ライヴ」だってそんぐらいヤバかっただろう、今更アタマに狂乱って付けんでも、それがジョニー・ウィンターのライヴだろ、という声も聞こえますが、えぇ、はい、その通りです。黙っててもステージの上では狂って乱れて弾きまくる男、いや”漢”それがジョニー・ウィンター。

分かってはおります、アタシもジョニー・ウィンター・ファンのはしくれですので、その一気にギアが入って狂い弾くオッソロシさは分かっておるつもりです。でも、いくら頭で理解して、聴いて理解しても、聴く度にそんな理屈を吹っ飛ばしてしまうのがこの「狂乱のライヴ」。

えぇ、狂っておるんです、乱れておるんです。前作の「ライヴ」が、ブルースもロックンロールもあって、それこそノリにノッたり、スロー・ブルースに「うぐぉ〜、たまらんっ!」となりながら、興奮しながらも楽しく聴けるライヴ・アルバムだとしたら、コレは一体何て言えばいいんでしょう、とにかく最初から最後まで一貫して”高い”を通り越してやぶれかぶれなテンションで、しかもほとんどの曲がノリノリのロックンロールで、聴く人を感慨に浸ったり、冷静に論じさせてさえくれない、えぇ本気でさいっしょかから最後まで「狂乱」であり「凶暴」なアルバムです。

ジョニーは本質的に「ロックンロールの人」であります。

ロックンロールの人だからこそブルースが骨まで染み込み、彼の表現上のコアになったというのはひとまず置いといて、ズバリ

「やかましくて騒がしい音楽」を、なーんも考えないでひたすら弾き倒してがなりたてる演奏こそが、本当の意味で彼の本質でしょう。





(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.マカロニ・ボニー
2.ロール・ウィズ・ミー
3.ロックンロール・ピープル
4.イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
5.追憶のハイウェイ61
6.スウィート・パパ・ジョン



録音は1976年。

メジャー・レーベルのCBSと破格の契約を果たして、それまで麻薬中毒による一時休養もありながらも、順調に
作品をリリースしていたこの時期、例の”オレがオレが”の性格が炸裂して

「何か前のアルバムはよォ、アレ、メジャーデビューしてすぐの頃だったし、正直好きに作らせてくれなかったんだよね。だから今度のは悪いけど最初から最後まで好きにやらせてもらうわ」

と言い出してリリースされたものであると、まことしやかにささやかれておりまして、内容を聴く限り多分そうでしょう。

編成は「ライヴ」と同じ、ギター×2、ベース、ドラムスでありますが、ここではギタリストがリック・デリンジャーからハードロック畑出身のフロイド・ラドフォードに代わっております。

おお、じゃあ今度はバッキングに徹したサイドギターを従えて、ジョニーが縦横無尽にソロを弾きまくるんだな!?

・・・いいえ、そうではありません。

ジョニーが縦横無尽に弾きまくるまでは合ってるのですが、リック・デリンジャーに引き続きコイツもジョニーのギターに合わせるでもなく引き立てるでもなく、何かもう勝手に弾いております。しかも、トータルなセンスがあり、挑みかかる時もある程度の駆け引きが出来ていたリック・デリンジャーに比べ、フロイド・ラドフォードは何もかも荒削りで「おぉぉ、来た来た!おぉぉ、やったれ!」感が強く、このライヴ全体のやぶれかぶれなテンションに勝手に貢献しておるのです。

いや、こんな「リーダーが好きに弾いてるのにバックも好きに弾く」を、他のバンドがやったらそれこそブーイングものなんでしょうが、そこはジョニー・ウィンターなんですよ、このギター2本の乱暴狼藉に近いどつき合いが、まったくタフでラフでワイルドなアメリカンロックのサイコーなとこなんだよなぁ・・・と、何故か納得させてしまうから不思議なんです。いや、聴く方も強引にねじ伏せる力技の究極が多分コレ。

はい「狂乱のライヴ」最初からハイ・テンションで、スローブルースなんて最後の「スウィート・パパ・ジョン」しか入っとらんのですが、コレがまたそれまでのノリノリギンギンなロックンロールナンバー以上にキレてブッ飛んでるので、しっとりとかじっくりとか、とても聴いちゃおれんです。

間違いなく70年代のリアル・ロックンロール最狂のライヴ・アルバムということで。

”ジョニー・ウィンター”関連記事

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2017年05月10日

サンタナ 天の守護神

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サンタナ/天の守護神

うっかりしているうちに夏ですよ。

あのね、奄美26℃うへぇ・・・。とか言ってたら、暑いのはこっちばかりでなく、本土の方でも夏日だよねとかいう声が聞こえたんですが、コレもアレですかね、温暖化というヤツでしょうか?

とにかく最近の気候やらを見ておりますと、本土が亜熱帯化しているという感じではございます。

あの、魚や海洋生物の分布が、この数年で明らかに北上しているようなんですね。

それはさておきサンタナです。

ソニー・ミュージックからの、財布のやさしいココロに嬉しい税込み¥1080のギター・レジェンド・シリーズから、本日はサンタナであります。

サンタナに関しては、これまでこのシリーズの特集の中でファーストサードについてはガッツリ書きました。

これは単純に、アタシが好きでよく聴くアルバムからレビューしようと思ってたというだけで、特に深い意味はございません。

シリーズには、これからご紹介しますセカンド・アルバムの「天の守護神」と、カルロス・サンタナが完全に主導権を握り、音楽性をグッとジャズ/フュージョン寄りのものにした名作4枚目「キャラバン・サライ」がありまして、ハッキリ言いまして初期のこの4枚はいずれ劣らぬ名作でございます。

ここだけの話ベスト盤で安く済まそうと思うよりも、¥4000ちょい出してこの4枚を揃えた方がサンタナの音楽を、飽きることなく濃厚に楽しめますので、これをお読みになっておられる皆様は、ぜひそうなさってください。

はい、じゃあ今日は前置き短めで早速アルバムの紹介に入らせて頂きますね。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.風は歌い、野獣は叫ぶ
2.ブラック・マジック・ウーマン〜ジプシー・クイーン
3.僕のリズムを聞いとくれ
4.ネシャブールのできごと
5.全ては終りぬ
6.マザーズ・ドーター
7.君に捧げるサンバ
8.ホープ・ユー・アー・フィーリング・ベター
9.エル・ニコヤ
10.全ては終りぬ (ライヴ)
11.祭典 (ライヴ)
12.ブラック・マジック・ウーマン〜ジプシー・クイーン (ライヴ)

セカンド・アルバムの「天の守護神」は、1970年、サンタナがデビューしたその翌年にリリースされました。

69年のウッドストック・フェスティバルで好評を得た余波に乗って、そのウッドストックで演奏して話題になった「ブラック・マジック・ウーマン」(フリートウッド・マックのカヴァー)のシングルが大いに売れましたが、ファーストには入っておらず、ファンが心待ちにしていたところに「ブラック・マジック・ウーマン」収録のフル・アルバム。これを喜ばないファンはおりませんということで、セカンドにして早くもこのアルバムはヒット・チャート1位に輝きます。

そこでサンタナがやった粋なことがあって、実はこのアルバムに収録されているヴァージョンは、シングルとは違うヴァージョンで、2曲のメドレーになっております。

実はその”メドレーのもう一曲”の「ジプシー・クイーン」が、カルロス・サンタナが心から敬愛する天才孤高の無国籍ジャズギタリスト、ガボール・ザボの楽曲で、カルロスはこの素晴らしいギタリストの曲を、ミーハー気分で自分達の事を知った人にも聴いて欲しかったんじゃないかと思えば、何かこう胸にグッとアツいものが込み上げてきます。

実際「ジプシー・クイーン」は、ややまったりした「ブラック・マジック・ウーマン」から一気に加速するラテン・ビートで、繋ぎや展開も、もちろんギターのインプロの出来も最高だし、この後4曲目以降のアルバムの流れをビシッと決めていて、全体の雰囲気も見事に引き締めてそして盛り上げておるんですね。

で、多くの人が「このセカンドこそ初期サンタナの最高傑作」と語っております。

確かにファーストでの、ややジャムセッション風なサイケ風味と、サードで聴かれる完成度を上げた楽曲とカルロスのギターの自由奔放なインプロヴィゼーションが織り成すめくるめくカラフルな展開の丁度中間を縫うような、楽曲の美しさとアドリブのスリルとが、まだまだアナーキーで不穏な空気を残す演奏の中で繰り広げられるその熱気は、本作独特のものであります。

「ブラック・マジック・ウーマン」の話題で語られがちではありますが、ラテンの大物ティト・プエンテのカヴァーであります「僕のリズムを聞いとくれ」での、パカポコ命のラテン魂グルーヴが滾るのや、その後のムーディー路線の嚆矢となった”泣き”のギターが優しく唄う「君に捧げるサンバ」等の、その他のシングル曲もすごくいいです。

何より本作から、サンタナのトレードマークともいえる、あの「ぐいいいーーん」と伸びてゆくギターの長いサスティンが、まだ未完成とはいえ、ハッキリと分かる形で聴けるというのが、彼のギターが好きな人(はぁいアタシです)にとっては嬉しいところ。

そしてアルバムの構成も「どこまでもアツく盛り上がるラテン・パーカッションvsギター、オルガンのハードバトル大会」と「美しく余韻を残す哀愁ナンバー」が、ほぼ交互に絶妙なバランスで収録されていて、大ヒット級シングル曲が目白押しといえども、やっぱりアルバムとして聴きたい、そんな豊かなストーリー性にも溢れております。

2枚目までの「ガッツリバンドサウンド」の質感は、ツボにハマると結構やみつきになりますもんね♪


”サンタナ”関連記事


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2017年05月09日

スティーヴ・モーズ ストレス・フェスト

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スティーヴ・モーズ/ストレス・フェスト
(ソニー・ミュージック)

で、本日は一気に時代は飛んで、スティーヴ・モーズです。

や、このブログをご覧の読者さんの反応はきっと

「スティーヴ・モーズ?」



「あぁ、リッチー・ブラックモアの後釜でディープ・パープルに入った人ね」

の2種類かと思います。

もしかしたら

「お、復活後のカンサスでギター弾いてた職人じゃないの」

と、嬉しい反応をしてくれる人が・・・。ん、100人中7人ぐらいはいるかも知れません(汗)

そう、スティーヴ・モーズは、知る人ぞ知るギター職人。いつでも安定したテクニック、そしてハードロックからプログレ、ジャズ・ロック、カントリーまで、どんなスタイルでも完璧に弾きこなせた上で、独自のテクニカルな味付けが出来る、一言でいえば

「本当にギターの巧い人」

です。

トレードマークのメカニカルな速弾き、表現力豊かなハーモニクス奏法や、ギターシンセを駆使したギター・オーケストレーションの分野においても”代表格のひとり”と言ってもいいでしょう。

問題は、そんな器用な人だから、器用貧乏なイメージがあって、熱心にテクニックを追究しているギター弾き以外の知名度が決定的に低いこと(あー)。

でも、アタシは思います。

「それでいい、スティーヴ・モーズはギター弾きにだけ人気があればそれでいい。ギターが上手くなりたい人だけが彼のプレイを聴けばいい。そういう人はきっと彼の演奏から何かを得ることが出来るだろうから」

と。

そもそも今紹介しているこのシリーズは”ギター・レジェンド・シリーズ”なのです。

出来ればギターを弾かない人にも、広くフツーに興味を持って頂きたいところではありますが、そういうのは、ガチのブルースの人達や、70年代ロックの名盤達がきっと担ってくれるだろう。そんなことよりも”ギター弾きによるギター弾きのためのギターの事しか考えてないようなアルバム”が、シリーズの中に一枚ぐらいあってもいいじゃないか。それがアナタ、スティーヴ・モーズの「ストレス・フェスト」だよ。と。

はい、ちょいと強気に出てしまっておりますが、実際”テクニカルな90年代以降のテイストに溢れたギター”というものにとことん特化したこういうアルバムが、シリーズの中にちょこんとあると、何だかアタシ、嬉しくなってきてるんです。

スティーヴ・モーズは1954年アメリカのオハイオ州生まれ。十代の頃にテレビで見たビートルズに感動してギターを始め、ロックンロールやカントリー、ロカビリーなどをコピーしまくります。

15歳で自分のバンドを組み、高校時代にクラシックギター奏者のフォアン・メルカダルという人の演奏を聴いて感動し(何か感動してばっかりだなオイ)「オレ、本格的に音楽勉強するよ」と、マイアミ音楽大学に進学しますが、この時の同級生に、ジャコ・パストリアス、パット・メセニー、ブルース・ボーンスビーといった天才達がおり、彼らとツルみながら、モーズ少年はよりキチガイじみたバカテクにオリジナリティを見出す道を模索することに没頭し、卒業後高校時代に組んでいたバンド”ディキシー・グリッドの名を改めた”ディキシー・ドレッグス”を結成します。

このバンドは、プログレッシヴ・ジャズ・ロックを愛好する人達を中心に今でも評価が高いインスト主体のバンドであります。

このディキシー・ドレッグスは、独特のユルさと緊張感を併せ持つサウンドで、ダラダラ聴きつつもハマると結構クセになりますので、気になる方はCDも出てますし、動画も結構ありますんで、ぜひ聴いてみてください。

おっと、スティーヴ・モーズの話に戻ります。

その後演奏活動の限界を感じたモーズは、1984年にディキシー・ドレッグスの活動を休止。”スティーヴ・モーズ・バンド”を結成して、独特のフュージョン・テイストのハードロックというスタイルを開花させ、好きに弾きまくります。

でも「ねぇ、お前が好きに気持ちよく弾いてるだけのインスト・アスバムは売れないよ」とでも言われたのか、85年のセカンドではヴォーカリストも迎えた大人のアメリカン・カントリー・ハードロックとでも言うべきアルバムを出しますが、こういうのが気に入らなかったのか、同時期に加入していたカンサス(人気のプログレバンド)との掛け持ちでの、「レコーディング→ツアー→レコーディング」という生活に嫌気が差したのか、あっさり音楽を止めて、何と航空便のパイロットに転職します。

パイロットって・・・。

でも、やっぱりギターが好きな彼は、収入の良いパイロットを1年ちょいであっさり辞めて、今度はソロ・アーティストとして復帰。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.ストレス・フェスト
2.ライジング・パワー
3.アイズ・オブ・ア・チャイルド
4.ナイトウォーク
5.ブレイヴ・ニュー・ワールド
6.4・ミニッツ・トゥ・リヴ
7.ジ・イージー・ウェイ
8.グラッド・トゥ・ビー
9.デリケイト・バランス
10.リヴ・トゥ・ライド
11.ピード・キング


でも、一部のギターファンから彼は熱狂的に迎えられ、80年代後半から90年代と、活動は非常に充実しておりました。

ソロとして好きなスタイルで演奏する一方で、かつての仲間達に声を掛け、ディキシー・ドレッグスを復活。更に1994年にはリッチー・ブラックモアがプイッと辞めてしまったディープ・パープルに、リッチーの後任として加入。

ディープ・パープルは、特に「第五期」と呼ばれる90年代の再結成後のパープルは、良くも悪くもリッチーのカリスマと存在感とオラオラで成り立っていたバンドでしたが(や、トミー・ボーリン時代のパープルもなかなかいいんだよ、と言えばまた違う話になってしまうのでまたいつか・・・)、ここでリッチーの後釜として

「上手い、センスいい、性格もいい」

の3拍子揃えた彼のプレイは、当初の予想以上に素晴らしいものでした。

で、モーズは今もディープ・パープルに所属しながら、世界中のファンに「ギターの素晴らしさ」を伝え続けています。

このアルバム「ストレス・フェスト」は、それこそパープルに加入して革新的名盤と呼ばれる「紫の証」のリリースと丁度同じ時期にリリースされた、トリオ編成のインスト作品。

パープルで綿密かつ大胆なアレンジに相当神経を使っていた時に、シンプルな編成でとことん好きなプレイを楽しんでいるモーズのリラックスした、でもソロとなると恐ろしい程に正確かつ高速なフレーズがぶっ飛ぶ、これもまた”本気”の作品。

演奏はディストーションをガッツリかけたハードロックなトーンでもって、フュージョン風のスタイルを貫いておりますて、ギターは”弾きまくり”と”大人の余裕”がめまぐるしく交錯します。うん、一言気持ちいい♪

ずっといい味を出しているデイヴ・ラルーの「全然重低音じゃないファンクベース」の、うっすい音でパキパキ言うチョッパーがまたいいんですよね。

ちょっと滅茶苦茶な喩えかも知れませんが、このアルバム


「リラックスして気合いを入れてギターを聴きたい」

人にはとにかくオススメです、うん、聴けばその意味も分かります。


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2017年05月06日

ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド ヘル・トゥ・ペイ

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ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド/ヘル・トゥ・ペイ
(ソニー・ミュージック)


只今せっせと書いております、ソニーから出た税込み¥1080のイカした企画「ギター・レジェンド・シリーズ」お楽しみ頂けてますでしょうか。

このシリーズで再発されているものは、アタシ個人的にはもちろん、ブルースや70年代のロックにハマるきっかけとなったアルバムや、ギターにのめり込むきっかけとなったギタリストのアルバムが多く、もうきゃっきゃしながら記事を書いておりますが、もちろんそれは単なる思い出補正だけでなく、改めて聴き返しても、そのアーティストや作品の持つ魅力というものが何にも勝っているからだろうと思いますので、今正にギターを弾いている方がもしこのブログを読まれておられますならば「何かギターのカッコイイやつ聴きたいな〜」と思った時の参考になさってください。

さて、本日ここで紹介致しますのは、このシリーズの中でも最も異色のギタリストと言っていいでしょうカナダが生んだ盲目の天才、ジェフ・ヒーリーであります。

はい、最初で大風呂敷を広げて申し訳ないのですが、彼の演奏自体は実に正統派。ブルースに影響を受けたロックの王道そのものなんでございますが、異色というのはこの弾き方です↓

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ギターを膝に置いて弾くこのスタイル

「おっ、スライドギターか!?」

と、思わせて、コレで速弾きからコード・カッティングまで、何でもこなすからぶっ飛びです。

ジェフがこの独特のスタイルになったのは、やはり盲目であるが故。

1歳の頃に癌を患い、視力を失ってしまった彼は、その後ギターを手にした時、全て耳コピの独学で覚えたといいます。

左手の親指まで広く使ったフィンガリングは、自然と自由度の高い独特の奏法を生み出し、地元カナダでバンド活動を始めてからは「ギターを膝に置いて物凄いテクニックで弾くヤツがいる!」と話題になり、22歳でデビュー。

このデビュー作がまた、適度に泥臭いブルース・ロックで最高なんですが、デビュー翌年の89年に、当時大人気だったパトリック・スウェイジ主演の映画(「ロードハウス肩〜孤独の街」)に「主人公の仲間で盲目のギタリスト」というまんまな役で出演したら、コレが結構な話題となって、アメリカで知られることとなりました。

でもって、その人気の余波を受けて1990年にリリースされたセカンド・アルバム「ヘル・トゥ・ペイ」を、本日はご紹介します。





(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.フル・サークル
2.アイ・ラブ・ユー・トゥー・マッチ
3.アイ・キャント・ゲット・マイ・ハンズ・オン・ユー
4.ハウ・ロング・キャン・ア・マン・ビー・ストロング
5.レット・イット・オール・ゴー
6.ヘル・トゥ・ペイ
7.ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス
8.サムシング・トゥ・ホールド・オン・トゥ
9.ハウ・マッチ
10.ハイウェイ・オブ・ドリームス
11.ライフ・ビヨンド・ザ・スカイ


はい、デビュー・アルバムでは自身のルーツであるブルースやサザンロック・テイストのサウンドの中で、その縦横無尽なギターの醍醐味を楽しませてくれたジェフ・ヒーリー。

本作ではよりポップで音楽的な幅を拡げた彼の、セカンドにして激しさと、成熟すら感じさせる懐の深い曲と歌とギターの持ち味が花開いておりますね。


2曲目「アイ・ラヴ・ユー・トゥー・マッチ」では、この人が参加すること自体がもうギタリストとしての保証書みたいなもん、のマーク・ノップラーが、ビートルズのカヴァーであるところの7曲目「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」には何とジョージ・ハリスンが参加しており、それぞれ粋なギターに絡む粋なギターで華を添えております。

楽曲はブルース・スプリングスティーンっぽい、弾けたスタイルのアメリカン・ロックに、ブルース/カントリーの哀愁溢れるバラードです。

本人の声の渋さもあって、もうアルバム5枚ぐらい出した中堅ロックスターみたいな貫禄ですが、聴いて一発ですぐにそれと分かるアタック強めでどこまでも伸びてゆくやんちゃなギター故に、タダのポップなアルバムでは終わらせてくれません。

聞くところによるとジェフ・ヒーリーは、この時期のライヴではフェンダー・ジャパンの入門モデル"スクワイヤ"のギターに、アンプもマーシャルの、練習スタジオにあるJC、エフェクターに至っては、マルチエフェクター全盛のご時世(1990年)に、安物のコンパクト・エフェクターをポンポンと繋げただけのセッティングで、凄まじい音出してたんだとか・・・。

そうなんです、この人のプレイ聴いてると、ロックだからとかブルースだからとか、曲がポップだとかそんなことはどうでもよくて、どんな曲でもどんなアレンジでも、鋭くて芯のあるギターが「ギュイーン!」と鳴り響く快楽に、耳を奪われるって最高だなー!ってなるのです。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年04月29日

ジェシ・エド・デイヴィス キープ・ミー・カミン

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ジェシ・エド・デイヴィス/キープ・ミー・カミン
(ソニー・ミュージック)

はい、皆さんゴールデン・ウィークがやってきた訳なんですけれどもねぇ、どこへ行きますか?アタシはあくせく働いておりますので、今のところ何をして楽しむとかそういう予定はないんです。

「お、おぅ、毎日がゴールデン・ウィーク(休日とは言ってない)」

という、摩訶不思議な呪文を唱えて、今年も何とか乗り切ろうと思っております。

さて、ここのところ特集しております、ソニー・ミュージックの「ギター・レジェンド・シリーズ」の話を、アタシはしたいんでありまして、ゴールデン・ウィーク全然関係ない。

このシリーズは、ロックにブルースにジャズにと、ギターという楽器にスポットを当てながら、同時に素晴らしいアメリカン・ルーツ・ミュージックの楽しさや奥深さを味わえる、本当に素敵なアルバムが多いです。

その人個人が「アメリカン・ルーツ・ミュージックの体現者」として、その名を知られているレジェンドばかりなウホッ!なシリーズなんですが、本日ご紹介するジェシ・エド・デイヴィスこそは、そんなグレイト・アメリカン・ルーツ・ミュージックの体現者の最高峰にいるレジェンド・オブ・レジェンドと言っていいでしょう。

と、ここまで書いて

「え?だ、誰!?」

となった人は多いかも知れません。

そうなんです、ジェシ・エド・デイヴィスは、そのセンスとアメリカン・ロック・スピリッツの塊のような素晴らしいギター・プレイで、エリック・クラプトン、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ロッド・スチュアート、レオン・ラッセル、ジョン・リー・フッカー、キース・ムーンなどの英米の大物ミュージシャン達のハートを掴み、それこそミュージシャンズ・ミュージシャンとして、知る人ぞ知る存在です。

特に我が国のロック・ファンには、ビートルズのソロ絡みなどの英国ロックの作品で知った人も多いと思うのですが、彼を知った人達が、たったの3枚しか出ていないジェシ・エド・デイヴィス名義のソロ・アルバムを聴くやいなや、アメリカン・ロックの濃厚な味わいにヤラレちゃう現象が、音楽好き界隈では起きておりまして、アタシはコレを

「ジェシ・エド・メロメロ現象」

と、今名付けたんですが、そんぐらい聴く人の心に訴える、土臭さと人肌の温かみに溢れた音楽を作っていた人なのであります。

その生い立ちからデビューを追えば、1944年(ミック・ジャガーと同い年)にアメリカ南部オクラホマに、両親共にネイティヴ・アメリカンの家庭に生まれ、少年時代はラジオで夢中になって聴いたブルースやロックンロールに魅了されてそのまま音楽の道へ進むことに。

で、最初に活動の拠点とする西海岸で出会って最初にバンドを組んだのが、後に”スワンプ・ロックの王様”と呼ばれ、アメリカを代表するシンガー・ソングライターの一人でありますレオン・ラッセル。

その後に、当時異色の黒人ブルース・ロック・シンガー&ギタリストとして、幅広い活動をしていたタジ・マハールにギターの腕が認められ、彼のバック・バンドのメンバーとなったのが1966年。この年にローリング・ストーンズ主催の一大イベント「ロックンロール・サーカス」に参加するためにタジと共に渡英しますが、この時ストーンズのメンバーやジョージ・ハリスン、そしてエリック・クラプトンらがこぞって彼のプレイを大絶賛

「すげぇよアイツ!何て美しいスライドだ!」

「いや、初めて見るヤツだけどカッコイイね」

「何か話してみたらめっちゃイイ奴だよ」

という風に、たった一度のコンサートで彼の株はミュージシャン仲間の間で急上昇し、その後このイベントで知り合った英国ミュージシャン達のレコーディングやセッションに呼ばれたり、ジェシはミュージシャン仲間内と、熱心なファンの間で「すげぇギタリスト」と密かにささやかれるようになっていきます。

で、元々がタジ・マハールのバックバンドの一員で、まぁとりあえず好きなギターが弾ければそれでいいと思ってたジェシは、まだソロ・プロジェクトとかそんなものは全く考えていなかったのですが、エリック・クラプトンから

「ジェシ、ソロ・アルバム作った方がいいよ。何ならオレが手伝うよ」

と、後押しされ、1970年ついにアトコ・レコーベルから1枚目の「ジェシ・デイヴィスの世界」を、翌年にはジョージ・ハリスン主催のバングラデシュ・コンサートに出演して、更にその翌72年にはセカンド・アルバム「ウルル」をリリースします。

いずれのアルバムも、クラプトンや盟友のレオン・ラッセル、ジョージ・ハリスンなど、気の合う仲間達が参加したり楽曲を提供したり、実にくつろいだ雰囲気の中、レイジーで幸福な時間が流れる極上のアメリカン・ロック・アルバムであります。


この、アトコからリリースされた2枚のアルバムは、いずれもワーナーから再発され、名盤としての評価も定着した感がありますが、1972年にレーベル移籍してリリースされた3枚目にして、ソロとしては最後の作品になってしまった「キープ・ミー・カミン」は再発もなかなかされず、待ち望んでいた方も多いアルバムです。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.ビッグ・ディッパー
2.シーズ・ア・ペイン
3.ホェア・アム・アイ・ナウ(ホェン・アイ・ニード・ミー)
4.ナチュラル・アンセム
5.フー・プルド・ザ・プラグ?
6.チン・チン・チャイナ・ボーイ
7.ベイコン・ファット
8.ノー・ディガ・マス
9.6:00ブーガルー
10.キープ・ミー・カミン


アタシも今までジェシ・エド・デイヴィスといえば、アトコからの2枚しか知らず、このアルバムは聴いたことなかったんですが、いや参った、素晴らしいです。

コノ人の素晴らしさは、アメリカの、それも南部のどこかルーズで気怠くて、でもしっかりとグルーヴしているバンド・サウンドに乗って、程よい手数と豊かな情感でもって歌うギターの、全く飾らない、気取らないカッコ良さにあるんですが、この3枚目は、割とキッチリ作ってある前2作に比べて、やってることは基本変わらない武骨なサザン・ロックなんですが、より肩肘張らないラフな作りが、ギターと歌(これが優しくて泣ける声なんですよ)のカッコ良さを更に引き立てていて、こりゃもうブルースやヴィンテージなアメリカン・ロックが好きなら一気に引き込まれてしまうことをお約束します。

1曲目からジャムセッション風のインストで、ブルース、バラード、カントリー・ロックと、実にリラックスした雰囲気の中、決してテクニカルではないけれど、暖かく深みのあるトーンで、歌うギター。

そう、この人のギターは、例えばデュアン・オールマンみたいに力強く根こそぎ持って行くわけでもないし、ライ・クーダーみたいに流麗なテクニックで何でもこなしますってタイプじゃないけど、とにかくく味や匂いがしそうな"いい音"で、曲の雰囲気や展開に一番しっくりくるフレーズを出してくる。一言で「たまらんギター」というのがコノ人の魅力なんですよね。きっと彼のプレイを目の当たりにした人達も

「一言、たまらん」

と、ベタ惚れしちゃったんでしょうね。

中盤からホーン・セクション加わってファンクやりだすんですが、これがまた黒人ファンクとはまた違うし、かといって薄味の洗練された感じには全然なってないし、やっぱり"たまらん"のですよ。

ジェシ・エド・デイヴィスは、ミュージシャンズ・ミュージシャンで、派手なスターになる気は多分なかった人ですが、かといって演奏はロック初心者や、知らない人を冷たく拒む人では決してありません。

この素晴らしいアルバムが\1080というプライスで出たことによって、たくさんの人に聴かれて、これまでの「知る人ぞ知るマニアックな名手」という評価が少し変わってくれればいいなと思います。




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2017年04月27日

リック・デリンジャー オール・アメリカン・ボーイ

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リック・デリンジャー/オール・アメリカン・ボーイ
(ソニー・ミュージック)

さて、今日は「ロックンロール」というものについて、柄にもなく真面目に考えております。

ロックンロールとは?

言うまでもなくロックのルーツであり、そして言うまでもなくそれは、1950年代に隆盛を極めたエレクトリック・ブルースの”よりキャッチーで踊れる音楽”です。

はい、チャック・ベリーやリトル・リチャードらが、当初「リズム・アンド・ブルース」としてその新しいスタイルをレコード(ドーナツ盤)に吹き込みました。

それらは当時「レース・レコード」と呼ばれた黒人向けのレコードとして売られた訳ですが、これが何と刺激を求める白人の若者も手に取って次々購入するようになった。

これを受けて音楽業界側が

「黒人白人両方のマーケットにPRできる新しい名前を」

ということで付けた名前がロックンロール。

ほうほう

んで、そこから数年経て、ロックンロールはその中心であるチャック・ベリーや人気DJアラン・フリードの逮捕とか、エルヴィス・プレスリーが兵役へ行くことでシーンから一時消えたこととか、リトル・リチャードが牧師になるために大衆向けの音楽活動を停止したとか、バディ・ホリーが飛行機事故で亡くなったとか、とにかく様々な理由で一気に盛り上がったものが一気に下火になります。

そこからは再びアメリカの黒人と白人の若者は、また別れました。

しかし、一度ロックンロールで人種の垣根を越えた若者達は、それぞれを取り巻く社会問題や、それぞれのルーツと真剣に向き合うことに没入します。

これがソウル・ミュージックを生み、フォーク・リヴァイバルに火を付け、この流れが一旦イギリスへ渡って再びアメリカに帰ってくることによって「ロック」の大波となってゆくのです。

はい。で、ロックの時代になってロックンロールはどこへ行ったんだろう?

「ロックロックって言うけど、ロールはどうした?」

と言ったのは、かのキース・リチャーズでありますね。

そう、端的に言えばロックは60年代後半から70年代、そして80年代90年代と、どんどん先鋭的に進化して、ロックンロール独特のルーズなカッコ良さや、いわゆる”粘るグルーヴ”よりも、派手さや速さがサウンドにプラスされ、加速して炸裂する音楽になって行きました。

しかしまぁブルースの時代からの「クレイジーになれる音楽」というものを考えればこの進化は当然であります。

で「ロックンロールは死んだのか?消えてなくなってしまったのか?」といえば、実はそうじゃないんだよ、ということを今日は話したかった(長い!)。

はいすいません、ロックンロールですね。

実はアメリカでは、60年代も70年代も80年代も90年代も、ロックンロールというものはずーっとメインストリームで生きております。

アタシなんかがパッと思い浮かぶのは、やっぱりガンズ・アンド・ローゼスやモトリー・クルー、ニューヨーク・ドールズ、エアロスミスなんかは、ロックというよりも粘りのあるロックンロールです。

あと、アメリカではないけれどAC/DC!

これらはいずれも70年代以降のバンドです。

何が言いたいかというと、1970年代以降もロックンロールは多くの若者に愛され、そして演奏されてきたということなんですね。

で、ロックンロール・・・というよりも、1970年代以降の「新しいロックンロール」というものを語る時に、まずハズせない永遠の名盤を、今日はご紹介します。

はい!




(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.ロックンロール・フーチー・クー
2.ジョイ・ライド
3.ティーンエイジ・クィーン
4.チーフ・テキーラ
5.アンコンプリケイテッド
6.ホールド
7.恋と涙のエアポート
8.ティーンエイジ・ラヴ・アフェア
9.イッツ・レイニング
10.タイム・ワープ
11.スライド・オン・オーヴァー・スリンキー
12.ジャンプ・ジャンプ・ジャンプ


いえぇぇ〜い、リック・デリンジャー!


リック・デリンジャーといえばジョニー・ウィンターの初期バンド「ジョニー・ウィンター・アンド」の中心メンバーで、あの狂熱の名盤「ライヴ」でバリバリに気合いの入ったセカンド・ギターを弾きまくっておりますが、ソロ・アーティストとしてはこれが実にキャッチーで芯の強いロックンロールを聴かせてくれる人なんです。

本人はジョニー・ウィンターや、その弟のエドガー・ウィンターと長く活動して、プロデュースもやっておる、やんちゃなギターとは裏腹に、実はマルチな人だったりもするんですよ。えぇ、ついでに言うとルックスも良かったので、若干アイドルみたいな感じで売り出そうという動きもあったとかなかったとかなんですが、本人そういうのも上手に利用して「かっこいいロックンロールってのはこういうヤツ!」と、見事その後へのお手本を示したアルバムを、デビュー作として作り上げました。

それが「オール・アメリカン・ボーイ」であります。

まずはこの、カラッとした、実にノリの良いサウンドの中に、キラ星の如く輝く活きのいいナンバーやバラードを、なーんにも考えずに聴いてくださいな。

ジョニー・ウィンターを始め、ロックの色んな人たちがカヴァーしている「ロックンロール・フーチー・クー」や、アコギで弾かれる切ない風情のスライドと、いかにもカントリー・ポップなノリのグルーヴ、切々とした高めの声とのマッチング感が最高な「チーフ・テキーラ」、大人な雰囲気満載の楽曲に、泣きのギターが炸裂するバラード超大作「ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ」など、とにかくこのアルバム、70年代めちゃくちゃ売れたとか、超有名な人の大名盤という訳では決してないんですが、聴いてすぐに「あ、コレはゴキゲンだね」と思えるし、今でも多くのロッカー達に愛されている「ロック・カヴァーソングのスタンダード」がいっぱい入ってるんです。つまり、時代やスタイルを超えて誰もが楽しめるゴキゲンな音楽。あ、それがロックンロール♪

でも、ポップでキャッチーでも、ギターは相当に鋭いんで、そこんとこヨロシク♪




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