2019年06月01日

ランブリン・ジャック・エリオット The Essential

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The Essential Ramblin' Jack Elliott
(Vanguard)


音楽としての”フォーク”は、元々は「古い民謡」という意味であり、”フォーク・シンガー”と呼ばれる人達というのは、主にアメリカ南部の白人黒人両方に伝わるバラッドと呼ばれる伝承歌を歌う人達でありました。

これが戦後、いわゆるポピュラー・ミュージックとしての”フォークソング”になり、日本で流行った頃は青春と連帯の象徴のような音楽になっておったような気がします。

つまりフォークってのは、戦後になって「売れる音楽」になってから、古い伝統の殻を脱ぎ捨てて、何か全く別の新しい音楽ジャンルに生まれ変わった。不思議です、本当に不思議です。


というわけで、元々は素朴な伝承音楽であった”フォーク”が、ポピュラー・ミュージックとして広く歌われる”フォークソング”になったきっかけは、戦後のビートニクに始まった「見つめる文化」というのがきっかけでありましょう。

「見つめる文化」ってのは、アメリカ型の「新しく派手なものをとにかくじゃんじゃん作って消費しようぜ」という資本主義文化へのカウンターとして生まれた「いや、ちょっと待て。消費してるうちに俺達は大事なものを見失ってきたんじゃないか?今世の中で何が起こってるのかとか、俺達がどこから来てどこへ行くのか、ちょっと立ち止まって見詰め直してはみないか」みたいな運動のことを、アタシが勝手にそう呼んでおるのです。

この「見つめる文化」の旗手として、オリジナルの「フォークソング」を多数作詞作曲し、一気に世界的な流れにしたのは、言うまでもなくボブ・ディランなんですが、今日はそんなディランが「僕は彼の(音楽的な)息子なんだよ」と公言してはばからなかった程に大きな影響を与えたフォークの巨人、ランブリン・ジャック・エリオットという人のお話であります。

この人は1940年代から50年代にかけて、ピート・シーガー、ウディ・ガスリーといった、いわゆる戦後フォークの立役者達と共に世に出て来た大御所の1人です。

彼らの時代の”フォーク”は、戦前の古いバラッド(伝承歌)や白人も歌ってたブルース(アイリッシュ系などの貧しい白人達は黒人と同じ環境で働き、自然と交流があったためブルースも歌ってました)、そして社会問題を歌うプロテストソングなどが歌われておりました。

よく並び称されるウディ・ガスリーは、南部で生まれ育ち、不況の煽りを受けて一家離散、日雇い労働を転々としながら各地を歌い歩き、労働組合の運動に参加した事がきっかけでオリジナルのプロテスト・ソングも作るようになったという、典型的なフォークシンガーでありますが、エリオットの場合は、大都会ニューヨークの裕福な医者の家に生まれ、ある日サーカスで見たロデオのショーに感動し「俺はこれになりたい!」と、何と15歳の時に家出して、そのまんま旅から旅のミュージシャン稼業にいつの間にかドップリ染まっていたという、なかなかに変わった経歴を持っておる御仁であります。

放浪しているうちに、ウディ・ガスリーと知り合って意気投合をし、一緒にさすらいの旅もやっていたようです。


元々が大都会ニューヨークにて、ユダヤ系というある意味生粋に都会っ子として育ったエリオットにとっては、アメリカの古い伝承音楽の世界は、全くの未知な刺激に溢れたものでありました。

特に彼は他のフォークシンガー達よりも、黒人音楽でありますブルースに深く傾倒しておりました。

「移民の国であるアメリカの音楽ってのは、アフリカから奴隷として連れて来られた黒人音楽が、その精神的な柱になっとるんじゃあなかろうか」

と、本人が語っておった訳ではないんですが、独特ののほほんとしたフットワークの軽い声とは裏腹に、まるで自分自身の”放浪の民族”としてのアイデンティティをそこに厳しく求めているかのように、エリオットは「そんな曲までやるんだ!」とびっくりするぐらい、有名曲から戦前にしか歌われてなかったようなマイナー曲まで自身のレパートリーに取り込んでおります。

「フォークソング」っていうのは、伝承歌の事ではあるんですが、その伝承というのが最初から色んな人種の人達の、それぞれ違った境遇から生まれ、それが人種や境遇を越えて共有されて「フォークソング」になる。


ランブリン・ジャック・エリオットという人は、そのことを最も教えてくれる人であります。




Essential Ramblin' Jack

【収録曲】
1.Roving Gambler
2.Will the Circle Be Unbroken
3.Diamond Joe
4.Guabi Guabi
5.Sowing on the Mountain
6.Roll on Buddy
7.1913 Massacre
8.House of The Rising Sun
9.Shade of The Old Apple Tree
10.Black Snake Moan
11.Portland Town
12.More Pretty Girls Than One
13.San Francisco Bay Blues (Live)
14.Buffalo Skinners (Live)
15.Sadie Brown (Live)
16.Don't Think Twice, It's All Right (Live)
17.Blind Lemon Jefferson (Live)
18.Ramblin' Round Your City (Live)
19.Talkin' Columbia (Live)
20.Tennessee Stud (Live)
21.Night Herding Song(Live)
22.Lovesick Blues (Live)
23.I Belong to Glasgow (Live)


実は87歳になる今も現役で、相変わらずギター1本持って飄々と変わらぬスタイルで歌い続けているランブリン・ジャック・エリオット。アルバムもそれこそ膨大な量リリースされていて、しかもその全てが時代に合わせて作風を変えたとか、アレンジを今風にしたとかそういうのが全くない、実に自然体のものばかりなんです。

どれもハズレはないからと、また簡単に思ってしまいがちなんですが、最初に聴くにゃ最適なのが、コチラの60年代フォークの大手、ヴァンガード・レコードからリリースされたベストアルバムが良いでしょう。

深刻な内容の歌でも、マイナーコードが絡むやや重たい曲でも、カラッと軽妙な語り口で歌って、リズミカルなコードストロークで軽妙に聴かせるのがこの人の最高にイカした所です。

ちょいと鼻をつまんだような声と砕けた歌い方は、そのまんまボブ・ディランへと受け継がれておりますね。

カントリーの前身であるヒルビリーも、レッドベリー、ブラインド・レモン・ジェファソン、ジェシー・フラーらが歌った古いブルースも、まんべんなく収録されております。特に後半がライヴなんですが、この肩の力がまったく入らない、ステージなんか感じない、あぐらかいた真ん中でのほほんと歌ってるようなアットホームな雰囲気が最高なんです。

フォークってのが元々どんな空気から生まれたのか?というシリアスな問いをお持ちの方には、このどこまでも作ったところのない自然体なノリを楽しみながら噛み締めて頂きたいし、フォーク何それ?な人も、弾き語りの最高にセンス良い人としてランブリン・ジャック・エリオット、楽しんで頂けると思います。いやほんと、色々ともっと深い事言いたかったんですが「この人かっこいいんですよ」で、とりあえずはいいんじゃないか、それ以上の説明はいらんじゃないかと、今ほへ〜っと聴きながら思うに至りました。



















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2019年05月27日

フィッシュボーン Fishbone

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フィッシュボーン/FISHBONE

(Columbia)

凄いんですよ、凄いんですよフィシュボーン!

・・・あ、すいません。興奮してつい髪の毛が逆立ってしまいましたが、フィッシュボーンです。

はい、落ち着きましょう。では続きを書きます。

アタシがCD屋稼業の修行をしていた東京で、兄貴と呼んで親しんでいた女性の同僚がおりました。

とてもサッパリした気持ちの良い人なので、島に帰ってきてからもやりとりは続き、何だかんだもう20年になります。

互いに一匹狼で、他人とベッタリしない性分なので、メールも何ヶ月かに一度「おーい、生きてるかー?」「あいよー」みたいなもんなんですが、まぁだからこその長い付き合いで、その間それぞれ音楽の稼業を離れ、今はお互い勤め人をやっております。

それが再び音楽の話題で盛り上がったのが去年の事。

あのね、フィッシュボーンなんですよ。

そう、フィッシュボーン。東京での修行時代に「フィッシュボーンいいよね〜」「いや〜あの人達は凄い」と盛り上がったバンドだったんです。

お互い音楽の出発点の所に、日本のレピッシュというバンドがいて、まぁそのレピッシュというバンドは、バンドブームでビートパンクとかヴィジュアル系とかハードロックとかが盛り上がってる中、スカやファンクとかその他もろもろの「非ロックな音楽」をはちゃめちゃに混ぜこぜにして、結果パンクよりパンクなハードなサウンドと一筋縄ではいかないディープな世界観というのを持ってるバンドで、そのレピッシュが一番影響を受けたバンドとしてフィッシュボーン聴いてヤラレたという経緯があります。

でも、この経緯持ってる人は、同年代でも実に少ない。

そもそも、フィッシュボーン自体も、まだ”ミクスチャー”なる言葉が生まれるずっと前からロックにスカやレゲエ、ファンクなどを派手にまぜこぜにした元祖ミクスチャーな音楽をやっていて、しかもそれが他のどのバンドとも似ていない、全く独自のものだったのに、長らく大ブレイクとは無縁の「知る人ぞ知るバンド」でした。

ぶっちゃけますと、アタシは「レピッシュが影響受けたバンドだから」とフィシュボーン買ったはいいけど、最初はそのスカとかファンクとかのノリがどうもよく分かりませんでした。

当時好きで聴いていた、パンクなどのドンダンドダダダンな分かりやすくスピーディーな8ビートじゃないリズムと、ディストーションで歪ませたギターが「ギュワーン!」と鳴っていないものは、先入観からどうもユルいと思ってたんですね。

ところが、しばらく置いといてある日何気に「う〜ん、もいっかい聴いてみようかな」と思って聴いたら、ジャンルがどうのとか、ビートがどうのじゃない、何か本質的にハチャメチャで、凄くパンクで暴力的なものを、いきなり感じて、で、ヤラレてしまいました。

音楽ってそういうのがあるんですよ。

だからアタシが後にジャズを聴いて「これはパンクだ!」と思えるようになったのも、ハタチ過ぎてソウルやファンクにも抵抗なくハマる事が出来たのも、実はフィッシュボーンとの、この原体験のような出会いがあったからかも知れません。

それから東京での「フィッシュボーン好き!」「マジで?アレは最高だよね!」との意気投合を経てつい去年のこと。


「兄貴!フジロックの中継でフィッシュボーンやるってよ!!」

「うぉぉマジか!」

「やべーやべー」

「やべーやべー」

という・・・。はい、落ち着きましょうね。

日本屈指の野外フェス『フジロックフェスティバル2018』に、何とフィッシュボーンが出演して、更にそれをYoutubeで中継するっていう一大事件があり(当日はボブ・ディランの出演も大きな話題となっており、とても刺激的なフジロックでした)、アタシらはもーハタチそこらの頃に戻ってキャッキャしておったんです。

その中継は、前々からの「フィッシュボーンはライヴがヤバイ」という評判を、想像を遥かに超える威力で裏付ける圧倒的なものでした。

79年に結成、83年にレコードデビューですから、メンバーは全員え?還暦過ぎてる!?

それなのに音はやたらズ太くて強靭だわ、リズムはその辺の若者バンドより元気で恐ろしい程の生命力に溢れているわ、何より50過ぎのはずのフロントマン、アンジェロ・ムーアの、飛んだり跳ねたり走ったりの全身全霊で煽るパフォーマンスの凄さには、圧倒されて顎が外れそうになりました。






FISHBONE

【収録曲】
1.Ugly
2.Another Generation
3.?(Modern Industry)
4.Party at Ground Zero
5.V.T.T.L.O.T.F.D.G.F.
6.Lyin' Ass Bitch



アタシはパンクロックが好きで、パンクロックは「パンク」っていう思想に基づいた音楽だと思っております。

じゃあパンクってどんな思想?と言われると、一言では上手く答えられません。

でも、フィッシュボーン聴くといつも「これはパンクだな・・」と思います。

何故なら彼らは黒人である自分達のアイデンティティを、スカやファンクやレゲエといったルーツ・ミュージックで表現しつつ、同時にアホみたいな激しい演奏とパフォーマンスで、自らのアイデンティティを豪快にぶっ壊しているように思える、いや、全身で感じるからです。

アタシは一体何を言ってるんでしょうねぇ。

落ち着きましょう、アルバムはもう正直どれでもいいんですが、ブログで初めて紹介するのでファーストの『フィッシュボーン』です。

1980年代は、イギリスで発生したオシャレな2TONEというスカが人気でした。

そんな時代にスカをやるバンド!・・・え?スカだよね?スカ、なんつーかスカなんだけどやたら激しくないかい?あ、いや、ファンク?という困惑も、恐らくたくさんあったと思います。

一言でいえばハチャメチャ。更に良く言えばたった6曲のミニアルバムでよくまぁこんだけ色んなジャンル詰め込んで、しかも最初から最後までうねりまくるぶっといグルーヴと激しいホーンヒットが一瞬もテンションを下げないインパクトと破壊力十分な作品に仕上げたなぁと。

で、敢えて悪く言えば、とにかく突っ走り過ぎ。たった6曲のミニアルバムで、よくもまぁこんだけ節操なく下品にジャンル詰め込んで、しかも最初から最期までやかましく、ゴリゴリに凶悪な音で聴く人を一瞬も穏やかな気持ちにさせない、悪ふざけに満ちた暴力的な作品に仕上げやがったなぁと。

・・・あれ?良く言っても悪く言っても同じような意味の言葉しか出て来ないぞ。


まぁいいか、フィッシュボーンはパンク。パンクの型にはまらないパンク!





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2019年05月01日

テッド・ニュージェント 閃光のハードロック

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テッド・ニュージェント/閃光のハードロック
(SMJ)


音楽を意識して聴くようになった最初の頃は、とにかく知識とか深い思い入れとかは当然のようになかったので、耳に入る”激しいもの”は手当たり次第何でも聴きまくっておりました。

最初にハマッのはパンクロックでしたが、パンクと他のロックの違いなど、何となくしか分かるはずもなく、髪の毛が立ってようが長かろうが、その当時アタマの悪い中学生だったアタシには大体同じです。

ただ、その頃(1980年代末から90年代頭ぐらいの時期)流行ってた邦楽のロックは何で髪の毛短かったりおっ立てたりしてんのに、洋楽は何でロン毛なんだろうという疑問がうっすらとありました。

ほんで「ロン毛のやつら」というのは、あれはハードロックとかヘヴィメタルとか言うんだという事を、雑誌とかで見て知って、何となく覚えて行く訳です。

で、こういう事で何かよくわからんくなったら、親子である以上に音楽の先輩であるウチの親父に訊くのが一番でして(何せ恐ろしく雑だけどそれ故に核心を突く答えを与えてくれるんで)、「ハードロックとヘビメタってどう違うのよ?」と、尋ねてみたら。

「それはアレよ、ハードロックっちゅうのが古くて、メタルは新しいのよ」

と、恐ろしく雑で核心を突く一言で返してくれたので

「ほうほう、じゃあハードロックにはどんなバンドがおって、メタルにはどんなバンドがおるのよ?」

と、訊くと、ハードロックにはレッド・ツェッペリンとかディープ・パープルとかモーターヘッドとかいて、ヘヴィメタルはジューダス・プリーストとかメタリカとかがカッコイイ。モトリー・クルーはどっちかわからんが良い。

という事を言っておりました。

なるほど、じゃあ俺に合うのはハードロックかなとぼんやり思って、レッド・ツェッペリンのベスト・アルバムを中学校卒業と同時に入手して、ディープ・パープルは深夜のテレビ番組から(!)カセットテープに録音して聴いてました。確か「ハイウェイ・スター」と「スモーク・オン・ザ・ウォーカー」か何かだったと思います。

正直その頃のハードロックに対する感想は

「うむ、好きな曲は好きだけど、全体的にはよくわからん」

でしたが、分からないなりにその気骨のある硬派な感じは好きでした。

で、それからしばらくして親父がサンプルのカセットを「これ良かったぞ」と持ってきてくれたんです。

「これ何?」

と訊けば

「これがハードロックよ」

と。

それはダム・ヤンキースという、全く名前を聞いた事もないバンドのアルバムでした。

凄いメンバーが集まった凄いバンドという事でありましたが、当然分かりません。

曲調はどっちかといえば明るく大人な感じのアメリカン・ロック。

ハードロックと言うには余りにもあっさりとして心地良い感じ(バラードのいい曲も結構ありましたからね)でしたが、ところどころ凄く野太くてパワフルに鳴り響くギターが、群を抜いた存在感を放っていて、その豪快なプレイには素直に惹かれました。

親父に

「このギターがカッコイイなぁ〜」

と言えば、待ってたかのように

「だろが!このギターが一番凄い訳よ。コレがテッド・ニュージェントじゃ」

と、急に興奮し出しました。




閃光のハード・ロック

【収録曲】
1.ストラングルホールド
2.炎の突撃隊
3.ヘイ・ベイビー
4.命がけのロックン・ロール
5.蛇皮服のカウボーイ
6.モーター・シティ・マッドハウス
7.狂っちまった人生
8.ユー・メイク・ミー・フィール・ライト・アット・ホーム
9.森の女王


テッド・ニュージェント、実は60年代のサイケ/ガレージバンドの時代から活躍するベテランで、70年代にはソロ・ギタリスト(たまに歌も歌う)としてデビュー。

一貫してエフェクターを使わず、セミアコとかフルアコをアンプに直でぶっこんで、弦を思いっきり掻き鳴らす、ソロは力の限り引っ張りまくるチョーキングをかます。

セミアコやフルアコというギターは、エレキギター初期の構造ですので、生音でもある程度響くように、ボディの一部が空洞になって、バイオリンみたいなFホールっていう穴がオシャレに空いてます。

見た目すごくカッコイイんですけど、歪ませたりアンプのボリュームを上げると、この空洞部分が共振し過ぎて、音は割れるし「キィィン!」というハウリング・ノイズが発生するんですね。

テッドのギターは、そんなセミアコフルアコの「ワイルドな木鳴り」と「ハウリングしてもそれを効果音として使えるタフネス」が、ぶっとい音になってガンガンのギンギンに響いております。

正直大音量での扱いは非常に難しい種類のギターを、こんな風に歪ませた音で「ズン!」と鳴らすだけでも相当なテクニックなんですが、そういう小賢しい事すら考えさせてくれないワイルド極まりないアメリカンハードロックギター、ほんとカッコイイです。

アルバムは、70年代以降のソロ名義、ほんで、実はソロとやってることそんな変わんない初期のガレージバンド『テッド・ニュージェント・アンド・ザ・アンボイ・デュークス』の3枚のアルバムもどれもオススメですが、とりあえずソロ・ファースト・アルバムの『閃光のハードロック』を。

これもうズ太いギターとタフに粘るビートを聴きながら「く〜、たまんないね!」と言うだけのアルバムです。ロックは気合い。







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2019年04月27日

ザ・ポリス アウトランドス・ダムール

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ザ・ポリス/アウトランドス・ダムール
(A&M/UMSジャパン)

さて、今日はポリスです。

このブログでこんな有名過ぎるぐらい有名なバンドを取り上げると、よく数日後に知り合いから「どうしたんだ!?」とツッコミが入ったりするんですが、いやいや、有名とかマイナーとかそんなのは関係ないですよ。

音楽を、特に洋楽を手探りで聴き始めた中学の頃ってのは、当然そのジャンルの成り立ちとか、バンド同士の関連とか、そういう難しい事はよく分からないので、例えば雑誌とかで「パンク」だったらパンクと一括りにされて掲載されているものを、割と片っ端から聴いてました。

とある雑誌のパンク、ニューウェーブ特集みたいなページにポリスも載ってました。

その頃(1990年前後)といえば、スティングですね。えぇ、このバンドのヴォーカルベースだった、あのスティングが、ポップスとして多くのヒットを放つスターとして、テレビとかにもちょこちょこ出てて、アタシみたいな頭の悪い中学生から見たら、何だかオシャレで大人〜な感じの歌を歌う人として「へぇ〜」という感じだったんです。

で、そのスティングがまさか”あの”ポリスのスティングだったとは、思いもよらなかった訳です。

個人的にはポリスってバンドは「警察」って名前を付けるぐらいだから、そらもうさぞかしトンガッてて、反権力で、あっぶないバンドなんだろうと。


当然聴きたくなりますよね。

勝手にピストルズとかクラッシュみたいなのを想像して「パンクバンドはファーストだ!」という、これまた勝手な基準でもって、名曲と呼ばれる『ロクサーヌ』が入ってるファーストを、ウキウキで買いました。

正直な感想としては、パンク特有のあのゴリゴリした感じも破れかぶれでヘタクソな感じもさほどなく「あれ?何か俺間違えてポリスじゃなくて違うの買っちゃった?」というものでありました。

で、がっかりしたか?と言われたら実はそんなことはなかったんです。

1曲目『Next To You』は、モトリー・クルーのような、明るく疾走感があるゴキゲンなロックンロールで、しばらくはコレがお気に入りになって

「ふんふん、ポリスはパンクじゃないけど、かっこいいロックだね〜」

と、割と軽い感じで淡く好きになりました。

ポリスというバンドは、その後のスティングのポップス・シンガーとしての大成功も含め、実にメジャーな存在であります。

大抵のロックバンドは、街の不良が不良仲間とツルんでロックバンドを結成して、アンダーグラウンドな場所からメジャーに這い上がるというイメージがありますが、ポリスの場合は学校の先生をしながらジャズバンドでベースを弾いていたスティングと、ヘンリー・パドゥーパというギタリストに、プログレッシブ・バンドのカーヴド・エアーでドラムを叩いていたスチュワート・コープランドで結成され、後にアニマルズでギターを弾いていたアンディ・サマーズが加入して、ヘンリーが脱退。

メンバーそれぞれの経歴を見ても、非常に異質です。

パンクロックというよりは、やっぱりプログレなどの大人なロックをやった方がしっくりきそうな経歴のメンバーが揃ってますが、メンバー達がそう思ったのか、それともレコード会社の意向か、ポリスは当時流行だったパンクのスタイルで売り出されることになりました。




アウトランドス・ダムール


【収録曲】
1.ネクスト・トゥ・ユー
2.ソー・ロンリー
3.ロクサーヌ
4.ホール・イン・マイ・ライフ
5.ピーナッツ
6.キャント・スタンド・ルージング・ユー
7.トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ
8.俺達の世界
9.サリーは恋人
10.マソコ・タンガ


その頃は演奏が上手いとかそういう事は全く分からなくて、とにかく1曲目がカッコイイし、名曲と呼ばれてる『ロクサーヌ』は、張り裂けるように切ないギターのカッティングとスティングの美しいハイトーン・ヴォイスがグッサリ胸にきて、なるほどやっぱりいい曲、と素直に感動しておりましたが、アタシがポリスの本当のカッコ良さに気付くのは、やっぱり自分がギター持って楽器やるようになってからです。

ポリスの曲は、とっつき易いメロディーのポップさと、3ピースというシンプルな編成が生み出す無駄のないノリの良さにあると思うのですが、ともすればスカスカになりがちなこの3ピースという編成の中で、薄くならずにしっかりと芯のあるサウンドが気持ち良く響くのは、8ビートからレゲエまで、どんなビートも凄い小技をサラッと盛り込んでしっかりと刻むスチュワート・コープランドのドラムと、ヴォーカリスト、スティングが弾く、実はズ太く鳴ってるメロディアスなベースラインにその真髄がありました。

特にスティングのベースは「ベースといえばドドドドダダダダとルートを刻むもの」と思っていたアタシの常識を覆すほどにヴォーカルと呼応してて、時にすごくセンスのいい”時間差のオブリガード”なんかもこれまたサラッと入れて、聴けば聴くほど凄いんですよ。

で、アンディ・サマーズの「歪み」よりも「響き」を重視した、限りなくクリーンなセッティングのギターが、カッチリしたリズムの上を心地良く浮遊したり、鋭く突き抜けたりする。

「ポリスはパンクか?」という問いは、アタシの中では最初から今も頭のどこかでぐるぐるしていたりするんですが、演奏だけを素直に聴けば、ロックの”当たり前”をやってないという意味でパンクだと思います。

何よりも彼らの誠実に練り上げられたポップな曲は、曲単体としての魅力が凄いですよね。歌詞もどこか文学的な物語な質感に溢れ、これまた日を追う毎に好きになっております。











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2019年04月22日

モンクス ブラック・モンク・タイム

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MONKS/BLACK MONK TIME
(Polydor)


パンクロックの直接の先祖となるガレージロックの存在を知ったのがハタチそこらの頃。

丁度オルタナやグランジブームが一通り落ち着いた後に60年代のリバイバル的な動きがロックの一部にあって、その頃ギターウルフやMAD3、ルルーズマーブルといったカッコいいバンドを知り「ガレージって良いな」と思っておりました。

で、ガレージの本場アメリカにはどんなバンドがいたんだろうと興味を持ち始めたそのタイミングで『ナゲッツ』というガレージロックのコンピレーションが発売になりまして、これがまた有名無名織り交ぜた(つうかその当時ほとんど知らないバンドばかり)、いい感じに雑多で混沌とした素晴らしいアルバムでした。

「ガレージ」と一口に言っても、その実は「アメリカのキッズ達が、”これがかっこいいロックだろう”というそれぞれのイメージを衝動にまかせて音にしている」という側面がありまして、爆音でファズギターをガンガン響かせながらがなりたてる、パンクロックのご先祖みたいなのもあれば、ビートルズをもっとポップにしたようなものもあったり、本当に色々なんです。

さて、そんな60年代の、ロックが正にアメリカで生まれておぎゃあと産声を上げているその瞬間を記録したような素晴らしいナゲッツBOXに、見た目も音を強烈な異彩を放っているバンドがおりました。

コレですよコレ。


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全員がキリスト教修道士の格好をして、しかもご丁寧にワシら日本人が「ザビエルカット」と呼んでいるあのてっぺんを剃り上げた髪型をしている(!!)


そんなイカした奴らのバンド名が、修道士(日本ではよくお坊さんと訳される)を意味する『モンクス』!

つっても彼らがホンモノの修道士な訳がなく、まぁ単なるジョークか、ロック一流の反骨精神の現れとして、こんな格好をしておったんじゃあなかろうかと思います。

まずアタシは、ナゲッツのブックレットに貼られた彼らの写真を見て大笑いすると共に、音を聴く前からファンになってしまったんですが、肝心の音の方は、良い意味で素人臭さのある他のバンド達よりもグッとまとまって力強く、楽曲のクオリティも相当高いような気がしました。

音はファズギターとやんちゃなオルガンを軸にした、いかにもハードなロックンロールといった感じで、シャウトするヴォーカル共々実に鋭く耳に刺さってくる硬派なサウンドの質感は、特にその時求めていた”ガレージ”のイメージにピッタリと合って、すっかりこのバンドには夢中にさせられてしまったんです。

もう見た目からして本当にアンダーグラウンドでマイナーなカルトバンドかと思ったら、実はデッド・ケネディーズやビースティ・ボーイズといった大物バンドの口から賞賛の声が出ていたり、元祖パンクと実験的ロック・ミュージックを繋いだバンドとして、意外やその後のミュージシャン達を中心に、実に真面目に高い評価を受けてた凄いバンドだったんですね。

モンクスの場合は、その経歴も実に個性的です。

まず、この人達は元々アメリカの兵隊さんです。

駐留軍としてドイツに赴任してきてバンドを結成、当初は基地内で流行のR&Bなどをカヴァーして演奏するバンドでしたが、やってるうちに段々楽しくなってきて、遂には任期が終わって本国へ帰る段になると

「何か楽しいからこっち残るわ。軍?あぁ当然辞めるね」

とアッサリ退役して本格的な音楽活動を始めたといいますから大したもんです。おじちゃんはこういう話大好きだ。




BLACK MONK TIME

1.Monk Time
2.Shut Up
3.Boys Are Boys and Girls Are Choice
4.Higgle-Dy-Piggle-Dy
5.I Hate You
6.Oh, How to Do Now
7.Complication
8.We Do Wie Du
9.Drunken Maria
10.Love Came Tumblin' Down
11.Blast Off!
12.That's My Girl
13.I Can't Get over You
14.Cuckoo
15.Love Can Tame the Wild
16.He Went Down to the Sea
17.Pretty Suzanne
18.Monk Chant (Live)


奇抜な出で立ちでまず人目を引いて、R&B仕込みの確かな演奏力でオーディエンスの耳をかっさらうモンクスは、ドイツを中心にカルト的人気をすぐに獲得しました。

そして当時はイギリスで、アメリカのブルースやR&B、ロックンロールなどに影響を受けたバンドがそれらを独自に練り上げたロックを次々生み出していた、俗にいう”ブリティッシュ・インヴェンション”勃興の時代。

モンクスはそんな音楽シーンの移り変わりの空気も敏感に取り入れ(イギリスで観たキンクスに強い衝撃を受けたそう)、激しく荒々しいサウンドを、英国流のキャッチーな楽曲で次々料理し、仕上がった音楽がこれまた典型的なアメリカンガレージでもブリティッシュ・ポップでもない、全く独特のロックだったという事で、その存在は本国アメリカから遠く大西洋を隔てたヨーロッパで、ますます異彩を放つことになります。

アルバム『ブラック・モンク・タイム』は、彼らの異彩に目を付けたドイツのメーカーがケルンでレコーディングした唯一のメジャーアルバムです。

アルバム全体を聴いてみると、コンピで収録されていた断片では分からなかった彼らの楽曲バリエーションの豊富さと、ひとつひとつの楽曲の完成度の高さ、そこに絡むファズギターやオルガンのぶっ飛んだプレイの凄まじさに驚きます。

彼らの評価としては「破壊衝動とポップさが絶妙なバランスで昇華した」とか「アメリカのガレージバンドにはないポップな曲作りが凄い」とかいうのがあって、それは確かにそうなんですが、例えばレッド・ツェッペリン登場より前に、高音を張り上げてシャウトするゲーリー・バーガーのヴォーカルとか、サイケデリックに先駆けて即興性が高く、既にソロやバッキングのあちこちで大胆にスケールアウトするオルガンとか、ポップさがブリティッシュのそれでは完全になく、後のドイツを代表する実験バンド「CAN」とも通じる、明るいんだけどどこかあやうい方向に行ってしまいしょうな狂気を孕んだものであったりとか、とにかく色んな要素がイギリス、アメリカ、ドイツなどの同時代のバンドと比べて”早い”んですよ。

加えてモンクスには「そのサウンドアイディアはどっから?」とか「この楽曲は誰から影響を受けた?」と思わせるような、妙な突然変異ぶりがあって、最初は「きゃーかっこいいー!ぶっとんでるー!」と思って聴いてたのに、いつの間にか深い闇の奥底に引き込まれるように真剣に聴いてしまうようになります。

再結成してライヴなどもやっていたようですが、2014年にヴォーカルのゲーリー・バーガーが亡くなってからの活動は不明。アルバムのブックレットには、いい感じのおじいちゃんになってもやっぱり修道士の格好をして楽しそうに演奏している彼らの写真が付いていたりして実にゴキゲンであります。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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