ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年01月27日

ミルト・ジャクソン・クァルテット

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ミルト・ジャクソン・クァルテット
(Prestige/ユニバーサル)


冬は大体体調がよろしいのですが、昨日まで不覚にも風邪を引いておりました。

先週末から何か咳がでるなぁと思っておりましたら、一昨日ついに頭痛と悪寒が酷くなり、節々も痛くなって「これは風邪だ」と。

風邪というのはアレですね、こういう風にこじらせてしまったら、もう何をしてもお手上げです。ひたすら水分を補給して、体を暖めに暖めて、内側の免疫力様の後方支援に回るしかない。

幸いにして昨日の朝、汗をどっさりかいて峠は何とか越えました。

さぁ、体調も回復したしドカッと景気の良い音楽なんか聴いて〜♪

と、思ってたのですが、いざ車でCDをセットしてみましたが、どうにも体が付いていかない。

いつもなら好んでガンガン聴いているはずのタイトなドラムとか、攻撃的なリズムとか、ギンギンのエレキギターとか、濃いぃヴォーカルのシャウトとか、大好きなんですよ。大好きなんですが今日は違う。

あれこれ考えて、MJQ(モダン・ジャズ・クァルテット)を聴こうと思ったんです。

あれいいですよね、けたたましいホーンが入ってないし、リズムは軽快だし、何より曲がクラシック調ですごく耳に優しい。

よいしょっ、とCD棚から取り出したはずのMJQ・・・



【パーソネル】
ミルト・ジャクソン(vib)
ホレス・シルヴァー(p)
パーシー・ヒース(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.ワンダー・ホワイ
2.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
3.ムーンレイ
4.ニアネス・オブ・ユー
5.ストーンウォール
6.アイ・シュッド・ケア


違う!

これは『モダン・ジャズ・クァルテット』じゃなくて『ミルト・ジャクソン・クァルテット』の方のMJQ!!

よほど風邪で体力と思考力が衰えてたんですな。。。

でも、今日のアタシには、このアルバムが一番フィットしました。

『ミルト・ジャクソン・クァルテット』は、モダン・ジャズ・クァルテットと同じ編成です。

メンバーもジョン・ルイスの代わりにホレス・シルヴァーがピアノ弾いてるということ以外は全く一緒です。

ですが、"たった一人のメンバーが違う"ということだけで、決定的な"違い"が生まれたりするのが、ジャズの面白いところ。はい、このアルバムは、いわゆるMJQの、クラシック風味溢れる典雅なそれとはサウンドの質感、全く違います。

最初アタシはこう思ってました

「ブルージーなミルト・ジャクソンとファンキー大先生のホレス・シルヴァーだったら、これはもうノリノリのファンキー大会だろうな〜♪」

と。

これも違いました。


一言でいえば「しっとりとした大人のアルバム」です。

1曲目こそちょっとノリのいいミディアム・テンポですが、これ以降はミルトのヴィブラフォンはじわっと奥底に秘めたブルース・フィーシングを滲ませながら、ホレス・シルヴァーのピアノは、ひたすら美しく儚げに絶妙な絡みでゆったり心地良く酔わせてくれます。

「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」での、ヴィブラフォンのコーンと澄み切った響きとか、「ムーン・レイ」での、どうしようもなく影を引きずったブルーな世界とか、もうたまらんですね。

ミルトのアルバムの中でも、このアルバム、実はかなり地味な方だと思います。派手に吹くホーン奏者はいないし、MJQと同じ編成/ほぼ同じメンバーながら、華やかで強いインパクトを持った曲が入ってない。

でも、ちょっと心身に元気がない時とか、特に「これを聴く!」と強く思わない時に聴くと素晴らしく染みるアルバムです。そして長く付き合える良い音楽です。












(3曲目「ムーンレイ」このダークな雰囲気がたまらんですね〜)

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2017年01月21日

ジミー・スミス Root Down!

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ジミー・スミス/ルート・ダウン!
(Verve)

いぇ〜い、大寒だぜ〜、寒いぜ〜!!

寒くなると皆さんアレですよね、オルガン・ジャズのファンキーでアッツいやつであったまりたくなりますよね?

や、曲がファンキーでアーシーで、アツいぜ!というのはもちろんあるんですが、ハモンド・オルガン、特に昔のジャズの人達が使ってるハモンドB3オルガンの音って、とってもあったかい。

オ〜ライ?

オ〜イェ〜?

というわけで、本日はオルガンです。

いくら奄美とはいえ、ここ数日北風ゴンゴンでハンパなく寒いので、こらもうコッテコテのやつを紹介しますね〜!

はぁい、ジミー・スミスです。


【パーソネル】
ジミー・スミス(org)
スティーヴ・ウィリアムス(harmonica,B)
アーサー・アダムス(g)
ウィルトン・フェルダー(el-b)
ポール・ハンフリー(ds)
バック・クラーク(conga,perc)

【収録曲】
1.Sagg Shootin' His Arrow
2.For Everyone Under The Sun
3.After Hours
4.Root Down (And Get It)
5.Let's Stay Together
6.Slow Down Sagg
7.Root Down And Get It (Alternate Take)


「ジャズでオルガン」

といえば、これはもうジミー・スミス。

何てったって、それまで地味な楽器に過ぎなかったオルガン、どころかジャズの演奏で使うと

「え?何で教会で使う楽器を、わざわざジャズのステージに持ってきてんの?」

と、不思議がられてすらいたというオルガンを

「んなこたぁねぇぜ、オルガンだって立派にスウィングできるんだぜぇ♪」

と、見事モダン・ジャズの楽器に仕立て上げ、60年代には後継者が続々と登場。

で、そこにソウルとかファンクのムーブメントと濃厚に繋がったジャズが生まれ、その中でオルガンはなくてはならない楽器になって行くんですが、ジミー・スミスのアルバムといえば、プレイ自体はファンキーだったりアーシーだったりするんですが、内容は意外と真面目(?)な4ビートでスウィングするアルバムが多いので、コテコテにファンキーで、いわゆるソウル・ジャズとかジャズ・ファンクなノリを求められる方には

「ん?ジミー・スミスってこんなだったっけ〜?」

と、言う方も多いです。

はい、そんな「ファンキーでアーシーでイェ〜イ」な方々のご要望をイェ〜イと満たすアルバムがこの「ルート・ダウン」。

これは凄いんです、ジミー・スミス史上、いや、ジャズ・オルガン史上すこぶるアツい。何てったってライヴですよ、しかも16ビート、更にブルース(!)でガンガンゴンゴン攻めまくる。

1972年、ジミー・スミスは長年契約していたBLUENOTEからVerveという、ジャズでは大手名門のレーベルを経て、レコード会社からの独立と自身のライヴハウス経営に向けて動いておりました。

で、長年住んでいたニューヨークから、西海岸のロサンゼルスに拠点も移して頑張るぞー!と燃えていた丁度その時のロサンゼルスでのライヴですね。

メンバーは、ドラムのポール・ハンフリー以外はほとんど無名の若手ばかり、なおかつギターのアーサー・アダムスに至っては、B.B.キングに影響を受けたブルースマン。

これが結果的に素晴らしくジャンルレス、というか「ジャズ」の「」を見事に取っ払って、ジャズにソウルにブルースにファンク、この時代に至るまでのヒップなブラックミュージックがアツアツに混ざりあって沸騰する、ズバリな熱演を生んだ訳です。

@の16ビートからクライマックスで4ビートでの疾走とか、Bのブルースハープ入りのどストレートなモダン・ブルースとか、ビースティ・ボーイズがサンプリングしたCとか、もう「ファンキー!」と叫ばずにおれない名演てんこ盛り。ジミー・スミスの傑作、アツいジャズファンク名盤であることは間違いなくて、更に70年代のクラブの濃厚な空気もそのままの温度で体験させてくれますよ。これ聴いてあったまろう!








(イェェェェェェェェエス!!!!)


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2017年01月18日

ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット

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ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット
(Prestige/ユニバーサル)

はい、本日も”ジョン・コルトレーンと並ぶ”といわれるモダン・ジャズ・テナー・サックス界の雄、ソニー・ロリンズです。

大体アタシは夏になると「大コルトレーン祭」をやっております。そん時はもう朝から晩まで見事なコルトレーン漬けになりますので、必然的にロリンズを聴くのは「コルトレーンの季節」が終わった、秋から冬にかけてが多い。

あ、はい。「何じゃそりゃ?意味わからん」と思ってる方も多いと思いますが、ごめんなさいね。あんまり深い意味はないんで「あぁ、コイツにとってはそんなもんなんだろーな」ぐらいに思っててくだされば幸いです。


幸いついでに、サクサクと本日のロリンズオススメ盤を紹介しましょうね♪

「ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット」という少々長いタイトルの、1枚の作品があります。

アタシもロリンズを知ってすぐの頃は「長いタイトルだなぁ」としか思ってなかった。

しかし!

これが、その後50年、いや60年以上も「モダン・ジャズ・テナーの巨人」として頂点に君臨する(2017年の時点でまだ現役。えぇぇえ!?)ソニー・ロリンズの、記念すべき初リーダー・セッションも含む、非常に重要かつ中身もすこぶつカッコイイ名盤であるんです。

はい、サクサクいきますよ〜。

まず@〜Cが、1953年10月7日の「ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット」のセッション。

ミルト・ジャクソン、ジョン・ルイス、パーシー・ヒース、ケニー・クラークの4人が組んだバンドが「モダン・ジャズ・クァルテット(通称MJQ)」で、これもまたモダン・ジャズでは知らない人はいないぐらい人気のグループなんですが、結成したばかりのそのMJQと、デビューしたばかりのロリンズを組み合わせた、元祖夢の企画なんです。

そしてD〜K、コチラはケニー・ドリュー、パーシー・ヒース、アート・ブレイキーと、当代きっての名手をガッツリバックに揃えた(ヒースは何とMJQ結成前)、ロリンズの記念すべき本格的な初リーダー作。オマケのように入ってるLは、同じくモダン・ジャズ黎明期の名人ドラマー、ロイ・ヘインズに、何とピアノでマイルス・デイヴィスが参加した、正真正銘の初セッション録音(リーダーという訳ではなかったみたい)です。

後半2つのセッションはいずれも1951年。

51年といえば40年代後半から一部のヒップな若いジャズマン達のものだったビ・バップが全体に浸透し、いよいよジャズが「モダン・ジャズ」と呼ばれて盛り上がっていた丁度その時。

ロリンズは何とこの時19歳です。



【パーソネル】
(@〜C)
ソニー・ロリンズ(ts)
ミルト・ジャクソン(vib)
ジョン・ルイス(p)
パーシー・ヒース(b)
ケニー・クラーク(ds)
(D〜K)
ソニー・ロリンズ(ts)
ケニー・ドリュー(p)
パーシー・ヒース(p)
アート・ブレイキー(ds)
(L)
ソニー・ロリンズ(ts)
マイルス・デイヴィス(p)
パーシー・ヒース(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

【収録曲】
1.ザ・ストッパー
2.オール・モスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ
3.ノー・モウ
4.イン・ア・センチメンタル・ムード
5.スクープス
6.ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート
7.ニュークス・フェイド・アウェイ
8.タイム・オン・マイ・ハンズ
9.ディス・ラヴ・オブ・マイン
10.シャドラック
11.スローボート・トゥ・チャイナ
12.マンボ・バウンス
13.アイ・ノウ

はい、ここまで書いて

「モダン・ジャズって何よ?ロリンズ19歳でデビューしたとか言ってるけど何がそんなに凄かったのよ?」

と、お思いの方、多くいらっしゃることでしょう。サックリとご説明しましょうね。

まず、ビ・バップとかモダン・ジャズとか言っておりますが、これは物凄く乱暴にまとめてしまえば「ジャムセッションでの意地悪」がそもそもの始まりであります。

1920年代後半から30年代にかけて、実はジャズという音楽は、基本の形が早々と整っていたんです。

音楽というのは、大体がリズムと和音(コード)とメロディーで出来ておりますね。

ジャズの場合は、西洋起源の「長調(メジャー)と短調(マイナー)」のポピュラー音楽に、ちょっとだけ濁った響きの音(最初セブンス、後にナインスなど独特のコードをプラス)を加えて、拍子のカウントをずらした、いわゆるシンコペーションという、これまた独特の取り方でリズムを刻む。

つまり

「メジャーとマイナーを濁った響きで崩し、シンコペーションでリズムを刻んで、ソロイストがその上をアドリブでメロディー展開していけばジャズ」

という、今なお「ジャズ」という音楽を簡単に説明する時に使って全然OKな公式が、戦前にもう出来ておった。

作曲家や演奏家は「その上で独自の工夫を凝らす」ことで、ジャズは洗練と熟成への道を10年ぐらいかけてゆんわり歩いてたんですね。

ここに第二次世界大戦という出来事が起きて、若いミュージシャン達も兵隊に行ったりして、よほどの人気バンドであってもビッグバンドを維持するのが難しくなってきた。

だからミュージシャン達は小さな編成でやらざるを得なくなって「アドリブの個人技」と「ビッグバンドの迫力に対抗できるスピード感」に興味と感心を払うようになったんです。

で「なんか新しいことやろうぜ」と、思い立った連中の中で、とりわけ楽器が上手くてセンスのある連中が、わざと展開を難しくしたり、テンポを鬼のように早くしたり、不協和音ギリギリの難しいコードをの中にぶっこんだりして、ジャムセッションを繰り広げていました。

この、難しかったり早かったりする新しいジャズが「ビ・バップ」です。

楽器が上手くてセンスのある連中は、他の連中をやっつけるためにこの技法を編み出したと言われています。

さてさて、この「新しいジャズ」の演奏で、最も人々の度肝を抜いたのが、アルト・サックスのチャーリー・パーカーという人なんです。

彼の登場によって、それ以降のサックス吹きがみんなパーカーみたいになっちゃったと言われる程影響力があり、そのフレーズは鮮烈なものでしたが、パーカーが編み出したその奏法を、テナー・サックスでほぼ完璧に吹きこなし、かつそれだけじゃない、何かこう、テナーの新しくてカッコイイ表現をやってくれそうな予感を、聴く人にビンビン感じさせていたのがこの時期の、ハタチそこらの若いロリンズです。


ふー・・・。

さっくり行くつもりが、分かりやすく説明しようとするとどうしても回りくどくなってしまうのは、アタシの筆力不足もありますが、この時代のジャズはそんぐらいめまぐるしく進化していて、ミュージシャンの層も厚かったと思っていただければ幸いです。

演奏を聴いてみましょう。

どのセッションでもこの時代一流の凄いメンツをバックに、ロリンズは堂々たる吹きっぷりで、なおかつ音もズ太く、淀みなくスラスラ出てくるアドリブに圧倒されます。

そしてこのアルバムの真の聴き所、そしてロリンズを心底「凄い」と思わせる秘密兵器は、皆さん、バラードですよ。

アタシはこのアルバムに入ってる「イン・ア・センチメンタル・ムード」という曲が大好きなんです。

きっかけは、作曲者のデューク・エリントンが、何とジョン・コルトレーンと一緒に演奏しているヴァージョンを聴いて、泣くほど感動したからなんですが、このロリンズの「イン・ア・センチメンタル・ムード」には、ひたすら繊細でキュンとくるコルトレーンのそれとはまた違う、オリジナルのエリントンのヴァージョンで、ジョニー・ホッジスのアルトが紡ぐ、優雅で幻想的なそれとも違う、実に男らしい優しさと憂いと色気に満ち溢れた、このアルバムでのロリンズの演奏を耳にして男泣きしました。

これは"渋い"どころじゃない、いや、こんなふくよかでドラマチックなバラードは、熟練の名手でもそうは吹けんじゃないか。もちろん若造は言うに及ばず何ですが


・・・本当にハタチそこらの新人が吹いてんのか!?そこまで思います。今でも思います。

えぇ、ロリンズのアルバムの中でも、デビュー作ではありますが、聴けば聴くほどに深まる味わいはびっくりするほどふんだんに散りばめられていると思います。






(「イン・ア・センチメンタル・ムード」何というスケールの大きな素晴らしいバラードでしょう)



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2017年01月16日

アート・テイタム〜ベン・ウェブスター・クァルテット

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アート・テイタム〜ベン・ウェブスター・クァルテット
(Pablo/ユニバーサル)

鍵盤に指がタッチした瞬間に「ふわぁっ」と拡がる、上質なフィーリング。

その可憐でいて力強いソロが終わると同時に「ス・・・ススス・・・」と、たっぷりの吐息の中に目一杯の男の哀愁を詰め込んで鳴らされる、優しい優しいテナー・サックス。

あぁ・・・いいなぁ・・・、こんなのが聴きたかったんだ・・・。

もう何百回針を落として聴いているはずなのに、聴く度に泣かされる。そして、聴いた後はまるで恋の病にでもかかったかのように、ポーっとして言葉が何も出てこなくなる。

これですよ。

「ジャズってなぁに?」

って訊かれたら、色んな答え方、色んなたとえがそれこそ出てはくるのですが

「ジャズを聴いた時、すごくいいなぁと思うんだけど、どこか切なくなって胸が苦しくなる。そんなのが聴きたい。ある?」

って訊かれたら、アタシはもう何も言わずにこのアルバムを聴いてもらいます。

ピアノのアート・テイタムと、テナー・サックスのベン・ウェブスター。

それぞれ戦前のスウィング・ジャズが華やかだった頃から活躍し、どちらも素晴らしいテクニックと、独特のサウンドの”強さ”で、イケイケの名手の名を欲しいままにした、いわばその時代のスーパーヒーローです。

そんな2人が、晩年ともいえる1956年に、スタジオで再会し、繰り広げたこのセッションは、人生の酸いも甘いも知り尽くした男たちによる、静かで深い音楽がゆったりした時空を漂うバラード・アルバム。

アタシは普段から、これはモダン・ジャズだのビ・バップだの、フリーだのフュージョンだの何だの言いますが、コレに関してはそんな細かくてしちめんどくさいカテゴライズなど一切不要です。

ただもう上質な音と空気に酔いしれて、聴く人すべてが言葉を失えばいい。遠い目をした先に淡く浮かぶジャズの切なさ、秘めた狂おしさの幻影を、名手達が奏でる音のその向こうに見ればいい。そう思います。





【パーソネル】
アート・テイタム(p)
ベン・ウェブスター(ts)
レッド・カレンダー(b)
ビル・ダグラス(ds)

【収録曲】
1.風と共に去りぬ
2.オール・ザ・シングス・ユー・アー
3.ジョーンズ嬢に会ったかい?
4.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
5.ナイト・アンド・デイ
6.マイ・アイデアル
7.ホエア・オア・ホエン
8.風と共に去りぬ(別テイク1)
9.風と共に去りぬ(別テイク2)
10.ジョーンズ嬢に会ったかい?(別テイク)


ひとつだけ、テイタムのピアノについて述べさせてください。

このアルバムは、ほぼミディアムスロウのバラードアルバムなんですが、テイタムのピアノは、”美しい”とは言っても、決して綺麗なメロディや上辺の情緒に流れていません。

むしろガンガンに速いフレーズを繰り出して弾きまくっているんですが、何がどうなってそうなっているのか、演奏全体がとても優雅で気品に満ちた空気で覆われています。これは本当に何がどうなっているのか解りません。戦前のスイング時代を生きてきた人にしか出せない香気です。

あと、レッド・カレンダーのベースとビル・ダグラスのドラムスの、絶対に目立とうとしないけど、実はものすごくしっかり演奏の屋台骨を支えているリズムも見事です。こういうサポートは、技術があるから出来るといった類いのことではありません。





(いつ聴いても涙腺にクる「オール・ザ・シングス・ユー・アー」です。この音色、この”間”この雰囲気、もう何も言うことありません)



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2017年01月12日

ソニー・ロリンズ ウェイ・アウト・ウエスト

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ソニー・ロリンズ/ウェイ・アウト・ウエスト
(CONTEMPORARY/ユニバーサル)

まず、ジャケットがいいですね〜。カウボーイの格好をした男前なロリンズが、テナー抱えて「どうだ!」みたいな顔でカッコ良く写ってるこのジャケ。

大体ジャズのレコードといえば、ジャズマンがスーツ着て、楽器を吹いたり弾いたりしてる、実に自然に”キマッた”ワンシーンか、オシャレなロゴをビシッとこう配置したものが、50年代とか60年代は割と多くて、てかほとんどがそのパターンで、確かにそのパターンのジャケットはジャズのジャケットとしては一番普通にカッコイイとは思うんですが、たまにこういう意表を突いたパターンのやつがあって、それがとても印象に残るから、ジャズのジャケット鑑賞というのはやめられないんですね。

だから「このジャケいいな!」と思ったやつは、中身わからんでも買っといてまず損はないです。聴きましょうね〜。

はい、え〜と、そういうことで、今日はソニー・ロリンズの「ウェイ・アウト・ウエスト」をご紹介しました。



・・・え?

早い?


はいすいません。

だってこのアルバム、ホントにカッコ良くて、ともかく「全体的にいい!」の代表みたいな名盤なもんで、アタシとしては「まぁお聴きなさい、すごくいいから」で、自分一人で感動しちゃって、それからの言葉がなかなか出てこないんですよ。

・・・あー、いけませんね。このブログは「取り上げる音盤を聴いたことのない人にもキチンと魅力を伝えよう」という主旨のブログなので、はい、ちゃんと解説しましょうね。



【パーソネル】
ソニー・ロリンズ(ts)
レイ・ブラウン(b)
シェリー・マン(ds)

【収録曲】
1.俺は老カウボーイ
2.ソリチュード
3.カム・ゴーン
4.ワゴン・ホイールズ
5.ノー・グレイター・ラヴ
6.ウェイ・アウト・ウエスト


ソニー・ロリンズは、ジャズではもうお馴染みの、モダン・ジャズ・テナーの代表格であります。

まー、そんなことよく知らんという人に説明致しますと、モダン・ジャズという音楽がハッキリと定着した1950年代の初めに若くしてデビューしたロリンズは、何が凄かったかというと、19だかそこいらでシーンに出てきた時は既に「これ!」という自分のスタイルを、ほぼ完成させていたんです。

何を完成させていたかというと、これは音色とスピーディーなアドリブですね。

どっしりとしたテナーらしい音で、しかも最新の素早いコード・チェンジにスラスラ乗れるアドリブをまだ若いロリンズが何か知らんが余裕で吹けるもんだから、世間はびっくりした訳ですね。

そんなロリンズは、ニューヨークを拠点に活躍していましたが、その名声は遠く西海岸まで知れ渡りました。

日本に住んでるアタシらには、ちょっとピンと来ない話かも知れませんが、アメリカにはニューヨークを中心とした東海岸の文化と、ハリウッドを中心とした西海岸の文化というものがあって、ジャズの世界でもそれぞれ独自のシーンを形成してしのぎを削っておりました。

で「それぞれのシーンのトップミュージシャン同士が共演する夢の企画」というのがあって、そういう企画のアルバムが出せることが、何となく一流の証みたいな風潮がありました。

この「ウェイ・アウト・ウエスト」も、そういった東西対抗夢の共演モノの1枚で、西海岸のレーベル「コンテンポラリー」が出しております。

東海岸からはロリンズと、オスカー・ピーターソンのトリオなどで活躍していたレイ・ブラウンのベース。西海岸からは人気の白人ドラマー、シェリー・マンが参加しております。

サウンド・キャラクターも「東=ズ太くコクがある/西=繊細で軽やか」と、いい感じに分かれておりますが、これが一緒に演奏するとなるとあら素敵、レイ・ブラウンの重心低く、程よい粘りと余韻のあるベースを真ん中に、ロリンズのパコーンと抜けの良いテナーが前、そしてシェリー・マンの、乾いたキレのあるドラムスがしっかり後ろに定位置を取ったこのバランスが最高です。


(これこれ♪)

「サックス+ベース+ドラムス」というトリオ編成は、ジャズではとても珍しいのですよ。

やっぱりピアノがいないと音がスカスカになるし、その分アドリブの技量がものすごい試されるのですが、そこはアドリブの天才ロリンズです。少ない伴奏、ピアノが奏でる和音の導きがないスカスカの空間を逆手に取って、おおらかでタメや間合いの絶妙なアドリブで、どんどん唄を紡いで行きます。

ちなみにコルトレーンもアルバム「ラッシュ・ライフ」でこのトリオ編成に挑んでいるのは、ロリンズに影響されたからと言われておりますね。言われてみれば録音年は同じ1957年でラッシュ・ライフの方がちょい後なんですね。


ロリンズの「パカーン!スコーン!」と抜けるテナーの明るい音色もいいなぁ。






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