ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年02月10日

阿部薫 なしくずしの死

887.jpg
阿部薫/なしくずしの死
(コジマ録音/ALM Record)

昨日今日と、ちょいと低血圧で頭がフラフラして体調がよろしくありません。

こんな時に聴く音楽は、あー、何かこうまったりしてて、じっくり聴くとかいうよりは、余り考えないで聴けるBGM的なやつがいいかもなぁ・・・などと頭は考えておったのですが、ボーッとする頭でフラフラと選んでいたのは、そういった「耳に心地良いだけの音楽」とは間逆の阿部薫。

そう、阿部薫。

知らない人は全然知らない、けど、彼の「壮絶な美」としか言いようのない演奏を一度聴いた人はきっと忘れることはできない”特別中の特別”を持つ表現者です。

阿部薫は”一応”ジャズの文脈で語られる人です。

確かに彼が生前に暴れまわった場所は主にジャズ喫茶のステージで、ビリー・ホリディ、エリック・ドルフィーに決定的な衝撃を受け、アルト・サックスを手にしております。

しかし、彼が楽器を通して内なるギリギリの世界から放つ音は、いわゆるカギカッコ付きの「ジャズ」というものを突き破って聴く人の心に直接突き刺さります。

でもって”一応”サックス奏者と言われております。

先も言ったように、阿部薫はアルト・サックスを武器に、ジャズの世界に単身斬り込みをかけましたが「闘争に手段は選ばない」とばかりに、アルト・サックス、バス・クラリネット、ソプラノ・サックス、ソプラニーノ・サックス、ハーモニカ、ピアノ、ギター、尺八など、様々な楽器を扱うマルチ・プレイヤーなのですが、彼の出す音は「色んな楽器を器用に使ってカラフルな音を時代に出す」とかいうのとは間逆で、様々な楽器を使っても、することはただひとつ「命を懸けてソイツから最も美しい音を出すこと」でありました。


阿部薫の演奏は、完全即興のものがほとんどで、いわゆる"フリージャズ"として語られることが多いです。

しかも、彼は「無伴奏ソロ」つまり他の楽器をバックに付けず、扱う楽器ひとつだけを手に、完全即興に挑むことがライヴやレコーディングでは多かった人でした。

故に阿部薫の演奏は、音が炸裂し、鳴り響いている時と、完全に無音になる時の、異常な緊迫感に満ち溢れています。

苦しいといえば大変に苦しい、そして聴き手にも、一切の妥協や甘えを許さない、非常に厳しい音楽だと言えるかも知れません。




【パーソネル】
阿部薫(as,ss)

(Disc-1)
1.Alto Improvisation No.1
2.Alto Improvisation No.2

(Disc-2)
1.Soprano Improvisation No.1
2.Alto Improvisation No.4 part 1
3.Alto Improvisation No.4 part 2
4.Soprano Improvisation No.2


アルバムを聴いてみましょう。

若くして亡くなったこともあり、生前に発売されたアルバムはとにかく少ない阿部薫ですが、その中でも特に壮絶なソロ・パフォーマンスを収めたライヴとして有名な「なしくずしの死」という作品があります。

このアルバムは1975年、「なしくずしの死コンサート」として、青山タワーホールで行われた演奏(2曲)と、入間市民会館で収録された音源(4曲)が2枚のCDにまとめられております。

「なしくずしの死」とは、阿部薫(そしてコンサート・プロデューサーの)が愛読していたルイ・フェルディナン・セリーヌの小説のタイトルです。

セリーヌもまた、人間の本質を鋭くえぐった稀代の作家ですが、これについて書き出すと止まらなくなりますのでここでは割愛。

演奏は、そのセリーヌの「なしくずしの死」の朗読(フランス語)のアナウンスから始まります。

朗読の声が激しくなってフェイドアウトする、その後に生じる一瞬の静寂を切り裂くアルトの咆哮。

高く細く、鋭い音が、キリキリと空間を軋ませながら、場の空気をあっという間に塗り替えます。

1曲目はそれから20分以上、アルト・サックスが絶妙と嗚咽を激しく繰り返します。

や、阿部薫はどの曲もどの演奏も、大体このパターンなのですが、そうとは分かっていても、どの曲どの演奏の、どの瞬間も聴き逃すまいと、必然的に没入してしまいます。

いや、阿部薫の演奏というのは、知らず知らず聴き手をそのような心境にさせてしまう。それだけ強い磁場を持つ演奏なのです。

いきなり喉元にギラギラした刃を突き立てられているかのような、それは厳しい表現行為です。しかしその刃の透き通る妖しい美しさを、脳裏に同時に刻み付ける。

そう、阿部薫の即興演奏は、フリーキーでアナーキーで、場合によってはジャズという音楽にも背を向けているようにも思えます。フリージャズでそこまで思わせてくれる人って、実はあんまりいません。

でも、じゃあ音楽としてはどうか?と問えば、阿部薫が、グチャグチャに破壊して、氷の瓦礫を山と築くこの音楽は、純粋に美しい。

何というか、ジャズというひとつのジャンルには背を向けているかも知れないけれど、その裁断されたメロディの中には、あらゆる「うた」が生きております。

ジャズ、シャンソン、そしてよく言われる歌謡曲やジンタ、童謡などの、日本人の心の奥底に刻まれている、哀しく懐かしい「うた」の感触が、彼のフリーフォームなはずの演奏からは、ヘタなポップスなんかより全然リアルに感じます。

そこは彼がソプラノで吹いているDisc-2の1曲目を聴いてみてください。

これ、聴いてる人の内側の原風景を、外側から切り込み入れて映し出す大変ヤバイ曲(演奏)です。

今日は一日中阿部薫を聴いていましたが(実はメインで聴いていたのはこのアルバムではなかったのですが、そんなことはこの際関係ない)、ええ、阿部薫、常にギリギリのところで身を削ってギリギリの音を出していた人です。

彼の音楽は、そんな「ギリギリ」だから切実に心に響くし、フリーフォームだから余計に、定型化されている音楽より、そのコアにある「うた」の部分が美しく輝いているのです。


とか何とか言っても、世の中には「阿部薫?なにそれ」な人の方がほとんどだと思います。

願わくば一人でも多くの人が、この残酷なまでの「うた」の美しさに満ち溢れた表現に出会い、そして撃ち抜かれますように。



”阿部薫”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月07日

ライオネル・ハンプトン スターダスト

4.jpg

ライオネル・ハンプトン/スターダスト
(Decca/ユニバーサル)


ジャズが好きです。

何でジャズがこんなに好きになったのか、それは色々あり過ぎて一言では説明できないのですが、とにかく好きです。

まぁちょっとお聞きくださいな。

音楽っていうのは不思議なもんです。

「こういう気持ちになりたい!」

と思いながら聴く時はもちろん多いのですが、じっくり聴く音楽となると、それとはちょっと違って

「自分の中のこんな感情」

というやつを引き出してくれるものであったりします。

ちょいと大袈裟な言い方かも知れませんが、人生って感情の積み重ねなんですね。

嬉しいこと楽しいこと、辛いこと悲しいこと・・・。

そういうのが生きてると必ず付いて回るんですけど、多くは日常を生きているうちにだんだん薄まっていったり、別の感情に取って変わったりする。

特に悲しかったり、切なかったりする感情は心の引き出しが、表に出ないように、しっかりと鍵をかけて保管してくれますね。

えぇと、何の話だったか。そうジャズ。

「あぁ、ジャズって本当にいいな・・・」

と思ったことのひとつに、そういった心の引き出しにしまってた感情を、心の奥底からスーッと引っ張り出してくれるというところがあります。

切なかったり苦しかったり、自分にとってはどちらかというとネガティヴな感情のはずなのに、耳から心にジャズが入って引き出すそれは、ヒリヒリじんわりと、痛みを伴いながらも心地良いもんなんです。

ジャズが好きです。

特にオールド・ジャズ、アーリー・ジャズと呼ばれる古い時代のジャズには、その作用が高い割合で含まれているようで、その何ともまろやかな音色と、ノスタルジックな音質に心を漂白させながら、よく物思いにふける時があります。





【パーソネル】
ライオネル・ハンプトン(vib)
チャーリー・シェイヴァース(tp)
ウィリー・スミス(as)
コーキー・コーコラン(ts)
トミー・トッド(p)
バーニー・ケッセル(g)
スラム・スチュワート(b)
リー・ヤング(ds)
ジャッキー・ミルズ(ds)

【収録曲】
1.スターダスト
2.ワン・オ・クロック・ジャンプ
3.ザ・マン・アイ・ラヴ
4.オー、レディ・ビー・グッド



その代表的な1枚と言ってもいいのが、ジャズ・ヴィブラフォンの名手、ライオネル・ハンプトンの「スターダスト」


5.jpg

1947年にレコーディングされたライヴ・アルバムで、あらゆる意味での「ジャズってこうなんだよ、くーっ!」というものが目一杯詰まった名盤として、多くのジャズ好きの心のふるさととして今なお聴かれ続けております。

まずは何も言わずに、タイトル曲の「スターダスト」を聴いてみてください。

出だしからまろやかでまろやかで、伸びのあるメロディアスなアルト・サックス、くすんだ音色で溜息のようなトランペット、フレーズから蒸気と共にやるせない煙草の煙が立っていそうな、ウォームなテナー・サックス。

それらがソロを取っている間、星屑のように、或いは儚いシャボンのように、キラキラと輝きながら余韻を残して消えてゆくヴィブラフォン。ハミングと共に奏でられる、切ない切ないベースソロ。それに続くピアノだってベースだって、雑味のない音色でキュンキュンくるよ〜。

で、満を持して「カツン!」と強めのアタックから入ってくるライオネル・ハンプトンのヴィブラフォンのソロがまたたまんない。徐々にテンポを上げながら「イェ〜」「アァ〜♪」と本人の声も入ってるんですが、これが最高に音楽。

そしてゆったりした時間の中で、それぞれの楽器がソロの最高の盛り上がりの時に、自然と客席から起こる歓声と拍手。

あぁ、いいなぁ、これを聴いている間は、最高の音楽と心の内から剥がれて落ちる、哀愁とか郷愁とか、そういうのでクシャクシャになった心のカケラが浄化されてゆく感覚にずっと浸っていられる・・・。


2曲目以降も極上のスウィング・ジャズで、ライオネル・ハンプトンについても、このアルバムに参加している名手中の名手といわれるメンバー達についても、もっといっぱい語りたいことはありますが、とりあえずそういうお勉強的なことは後でいいから、皆さんは「スターダスト」を聴いて、それぞれの心の内にあるヒリヒリしたものを、この最高の音楽にそっと浸してみてください。

ジャズが好きです。

うん、それ以上に音楽って特別なものなんです。すごくすごく特別で、いいものなんです。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

ホレス・シルヴァー ソング・フォー・マイ・ファーザー

4.jpg
ホレス・シルヴァー/ソング・フォー・マイ・ファーザー
(Bluenote/EMIミュージック)

「ミルト・ジャクソン・クァルテット」を聴いていましたら、ホレス・シルヴァーを聴きたくなってきました。

ホレス・シルヴァーといえば、多分ジャズを好きになった人、でもって最初に何を聴くべきか迷って、名門BLUENOTEレーベルのアルバムに手を出した人にとっては、恐らく最初に「おっ」と気を引くアーティストだと思います。

そうでなくても

「オシャレでファンキーなジャズ」

を、追い求めている人は、大体最初付近に出会って、そのカッコ良さにヤラレる人であると思います。

かく言うアタシもそうでした。

フリー・ジャズからモダン・ジャズへと、ジャズの好みの幅が段々と拡がってきた最初の頃に出会ったのが、ホレス・シルヴァーのファンキーな名曲「ソング・フォー・マイ・ファーザー」(確かクラブジャズ系のオムニバスに入ってた)を聴いて

「うぉお!何このオシャレでカッコイイ曲は!?これもジャズか、これもジャズでええのんか!?」

と、びっくらこいたものです。



【パーソネル】
ホレス・シルヴァー(p)
カーメル・ジョーンズ(tp,@ACD)
ブルー・ミッチェル(tp,B)
ジョー・ヘンダーソン(ts,@ACD)
ジュニア・クック(ts,B)
テディ・スミス(b,@ACD)
ジーン・テイラー(b,BE)
ロジャー・ハンフリーズ(ds,@ACD)
ロイ・ブルックス(ds,BE)

【収録曲】
1.ソング・フォー・マイ・ファーザー
2.ザ・ネイティヴス・アー・レストレス・トゥナイト
3.カルカッタ・キューティ
4.ケ・パサ
5.ザ・キッカー
6.ロンリー・ウーマン

ジャズの世界で「ファンキー」といえば、元々はいわゆるファンクやソウル系のあの感じではなく("ファンキー"という言葉がちらほら聞けるようになった50年代半ばはソウルもファンクもまだ生まれてなかったから当然といえば当然ですが)、ゴスペル音楽から導入したコール&レスポンスの繰り返しで沸き上がる、いわゆる"黒っぽさ"のことをそう言っておりました。

その"ファンキー"のジャズにおける元祖は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。

色々あって途中仲違いしてしまいましたが、シルヴァーはそのオリジナル・メンバーで、初期のジャズ・メッセンジャーズではブレイキーのドラムにピッタリと息を合わせたグルーヴィーなピアノで"ファンキー"を次々生み出しておりました。

袂を分かつた後、ブレイキーはよりゴスペルに根ざした"ジャズのファンキー"を追究し、シルヴァーは60年代に入ると自らのバンドを率いて、ゴスペルやR&Bの感覚にラテンなどのエッセンスも積極的に演奏に取り入れ、独自の"ファンキー"を極めておりました。

このアルバムは1964年、絶好調のシルヴァーが、自分自身の「ファンキージャズ」を高らかに宣言しただけでなく、この時代のブルーノートというレーベルのカラーを決定付けた、素晴らしいインパクトと存在感に満ちたアルバムです。

まず、シルヴァーは、ピアニストとしてはもちろん凄腕ですが、そのテクニックを演奏面で弾きまくって炸裂させるタイプではなく、練り込まれたバンド・サウンドの中で、曲やアレンジのカッコ良さを引き立てる、センスの良いプレイをすることに専念しているような、非常に効果的で"ツカミ"に溢れた演奏を聴かせます。

特にこのアルバムでは、ジャケットに写っているホレスのおとーちゃんに捧げたアルバムで、ポルトガル系の血を引くおとーちゃんを意識して、ラテン風味のアレンジが、洗練されたモダン・ジャズ・サウンドと自然に融合して、それがそれまでのストレートなハード・バップにはないオシャレ感の肝になってるんですね。

「ジャジーな曲にラテンを絡める」という手法は、90年代以降のクラブジャズやハウスのミックスものなんかではもう当たり前だったりしますが、このアルバムとチック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」がなかったら、果たしてその手法はすんなり成り立っていたかなと思います。

バンド・サウンドも実に引き締まってて無駄がなくカッコいいですね。個人的にこのアルバムはジョー・ヘンダーソンの、ファンキーだけれどもどこかナイーブで掴み所のない"やや変"なテナーを楽しみつつ、シルヴァーのセンスの良さにグッとくるアルバムだとも思います。

1964年といえば、あのビートルズがデビューした年でもありますね。同じ年にロックとジャズ、それぞれのフィールドから究極にポップでセンスと洗練の塊のようなバンドと作品がリリースされたことに、何か時代の大きなうねりも感じますね。




(定番のFUNKYチューンです。元祖レアグルーヴ名曲♪)

”ホレス・シルヴァー”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

ミルト・ジャクソン・クァルテット

5.jpg
ミルト・ジャクソン・クァルテット
(Prestige/ユニバーサル)


冬は大体体調がよろしいのですが、昨日まで不覚にも風邪を引いておりました。

先週末から何か咳がでるなぁと思っておりましたら、一昨日ついに頭痛と悪寒が酷くなり、節々も痛くなって「これは風邪だ」と。

風邪というのはアレですね、こういう風にこじらせてしまったら、もう何をしてもお手上げです。ひたすら水分を補給して、体を暖めに暖めて、内側の免疫力様の後方支援に回るしかない。

幸いにして昨日の朝、汗をどっさりかいて峠は何とか越えました。

さぁ、体調も回復したしドカッと景気の良い音楽なんか聴いて〜♪

と、思ってたのですが、いざ車でCDをセットしてみましたが、どうにも体が付いていかない。

いつもなら好んでガンガン聴いているはずのタイトなドラムとか、攻撃的なリズムとか、ギンギンのエレキギターとか、濃いぃヴォーカルのシャウトとか、大好きなんですよ。大好きなんですが今日は違う。

あれこれ考えて、MJQ(モダン・ジャズ・クァルテット)を聴こうと思ったんです。

あれいいですよね、けたたましいホーンが入ってないし、リズムは軽快だし、何より曲がクラシック調ですごく耳に優しい。

よいしょっ、とCD棚から取り出したはずのMJQ・・・



【パーソネル】
ミルト・ジャクソン(vib)
ホレス・シルヴァー(p)
パーシー・ヒース(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.ワンダー・ホワイ
2.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
3.ムーンレイ
4.ニアネス・オブ・ユー
5.ストーンウォール
6.アイ・シュッド・ケア


違う!

これは『モダン・ジャズ・クァルテット』じゃなくて『ミルト・ジャクソン・クァルテット』の方のMJQ!!

よほど風邪で体力と思考力が衰えてたんですな。。。

でも、今日のアタシには、このアルバムが一番フィットしました。

『ミルト・ジャクソン・クァルテット』は、モダン・ジャズ・クァルテットと同じ編成です。

メンバーもジョン・ルイスの代わりにホレス・シルヴァーがピアノ弾いてるということ以外は全く一緒です。

ですが、"たった一人のメンバーが違う"ということだけで、決定的な"違い"が生まれたりするのが、ジャズの面白いところ。はい、このアルバムは、いわゆるMJQの、クラシック風味溢れる典雅なそれとはサウンドの質感、全く違います。

最初アタシはこう思ってました

「ブルージーなミルト・ジャクソンとファンキー大先生のホレス・シルヴァーだったら、これはもうノリノリのファンキー大会だろうな〜♪」

と。

これも違いました。


一言でいえば「しっとりとした大人のアルバム」です。

1曲目こそちょっとノリのいいミディアム・テンポですが、これ以降はミルトのヴィブラフォンはじわっと奥底に秘めたブルース・フィーシングを滲ませながら、ホレス・シルヴァーのピアノは、ひたすら美しく儚げに絶妙な絡みでゆったり心地良く酔わせてくれます。

「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」での、ヴィブラフォンのコーンと澄み切った響きとか、「ムーン・レイ」での、どうしようもなく影を引きずったブルーな世界とか、もうたまらんですね。

ミルトのアルバムの中でも、このアルバム、実はかなり地味な方だと思います。派手に吹くホーン奏者はいないし、MJQと同じ編成/ほぼ同じメンバーながら、華やかで強いインパクトを持った曲が入ってない。

でも、ちょっと心身に元気がない時とか、特に「これを聴く!」と強く思わない時に聴くと素晴らしく染みるアルバムです。そして長く付き合える良い音楽です。












(3曲目「ムーンレイ」このダークな雰囲気がたまらんですね〜)

ミルト・ジャクソン”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

ジミー・スミス Root Down!

4.jpg
ジミー・スミス/ルート・ダウン!
(Verve)

いぇ〜い、大寒だぜ〜、寒いぜ〜!!

寒くなると皆さんアレですよね、オルガン・ジャズのファンキーでアッツいやつであったまりたくなりますよね?

や、曲がファンキーでアーシーで、アツいぜ!というのはもちろんあるんですが、ハモンド・オルガン、特に昔のジャズの人達が使ってるハモンドB3オルガンの音って、とってもあったかい。

オ〜ライ?

オ〜イェ〜?

というわけで、本日はオルガンです。

いくら奄美とはいえ、ここ数日北風ゴンゴンでハンパなく寒いので、こらもうコッテコテのやつを紹介しますね〜!

はぁい、ジミー・スミスです。


【パーソネル】
ジミー・スミス(org)
スティーヴ・ウィリアムス(harmonica,B)
アーサー・アダムス(g)
ウィルトン・フェルダー(el-b)
ポール・ハンフリー(ds)
バック・クラーク(conga,perc)

【収録曲】
1.Sagg Shootin' His Arrow
2.For Everyone Under The Sun
3.After Hours
4.Root Down (And Get It)
5.Let's Stay Together
6.Slow Down Sagg
7.Root Down And Get It (Alternate Take)


「ジャズでオルガン」

といえば、これはもうジミー・スミス。

何てったって、それまで地味な楽器に過ぎなかったオルガン、どころかジャズの演奏で使うと

「え?何で教会で使う楽器を、わざわざジャズのステージに持ってきてんの?」

と、不思議がられてすらいたというオルガンを

「んなこたぁねぇぜ、オルガンだって立派にスウィングできるんだぜぇ♪」

と、見事モダン・ジャズの楽器に仕立て上げ、60年代には後継者が続々と登場。

で、そこにソウルとかファンクのムーブメントと濃厚に繋がったジャズが生まれ、その中でオルガンはなくてはならない楽器になって行くんですが、ジミー・スミスのアルバムといえば、プレイ自体はファンキーだったりアーシーだったりするんですが、内容は意外と真面目(?)な4ビートでスウィングするアルバムが多いので、コテコテにファンキーで、いわゆるソウル・ジャズとかジャズ・ファンクなノリを求められる方には

「ん?ジミー・スミスってこんなだったっけ〜?」

と、言う方も多いです。

はい、そんな「ファンキーでアーシーでイェ〜イ」な方々のご要望をイェ〜イと満たすアルバムがこの「ルート・ダウン」。

これは凄いんです、ジミー・スミス史上、いや、ジャズ・オルガン史上すこぶるアツい。何てったってライヴですよ、しかも16ビート、更にブルース(!)でガンガンゴンゴン攻めまくる。

1972年、ジミー・スミスは長年契約していたBLUENOTEからVerveという、ジャズでは大手名門のレーベルを経て、レコード会社からの独立と自身のライヴハウス経営に向けて動いておりました。

で、長年住んでいたニューヨークから、西海岸のロサンゼルスに拠点も移して頑張るぞー!と燃えていた丁度その時のロサンゼルスでのライヴですね。

メンバーは、ドラムのポール・ハンフリー以外はほとんど無名の若手ばかり、なおかつギターのアーサー・アダムスに至っては、B.B.キングに影響を受けたブルースマン。

これが結果的に素晴らしくジャンルレス、というか「ジャズ」の「」を見事に取っ払って、ジャズにソウルにブルースにファンク、この時代に至るまでのヒップなブラックミュージックがアツアツに混ざりあって沸騰する、ズバリな熱演を生んだ訳です。

@の16ビートからクライマックスで4ビートでの疾走とか、Bのブルースハープ入りのどストレートなモダン・ブルースとか、ビースティ・ボーイズがサンプリングしたCとか、もう「ファンキー!」と叫ばずにおれない名演てんこ盛り。ジミー・スミスの傑作、アツいジャズファンク名盤であることは間違いなくて、更に70年代のクラブの濃厚な空気もそのままの温度で体験させてくれますよ。これ聴いてあったまろう!








(イェェェェェェェェエス!!!!)


”ジミー・スミス”関連記事




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする