2020年04月12日

ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

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ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
(BLUENOTE/EMIミュージック)

「ジャズの世界では言わずと知れた名盤なんだけど、何故かレビュー書いてなかったシリーズ」の第二弾は、もうちょっと別のアルバムをと思っていたのですが、せっかくジャズ・メッセンジャーズの事を書いたので、本日はそのままの流れで元祖ジャズ・メッセンジャーズのアルバムをご紹介しましょう。

「ん?ジャズ・メッセンジャーズっつってもホレス・シルヴァーじゃん、アート・ブレイキーじゃないじゃん。どうなってんの?」

と思ったアナタ、その疑問はかなり的を得ております。

実はですね、この”ジャズ・メッセンジャーズ”というのは誰がリーダーという訳ではなくて、皆が平等な立場である事を知らしめるために、リーダー名を付けず、作品を発表する時もコンサートの時も「〇〇のジャズ・メッセンジャーズ」というのではなく、シンプルにグループ名を表記しようという主旨だったんですね。

このグループは、色々と新しい作曲のアイディアを持ったピアニストであるホレス・シルヴァーと、色々と新しいリズムのアイディアを持ったアート・ブレイキーとが中心になって結成されたグループでした。ところがグループを結成したばかりの時に二人はどうもカネの事で仲違いしてしまい、シルヴァーの方がメンバーを引き連れて脱退し「ジャズ・メッセンジャーズ」という名前はブレイキーの元に残されます。

それ以後の1950年代後半から60年代、ブレイキーはジャズ・メッセンジャーズで大ブレイク、そしてシルヴァーはよりラテン風味やR&B風味などを取り入れたファンキー路線が当たりに当たり、どちらもこの時代を代表する優れたバンドリーダーとして評価されることになりました。

いや〜良かった。だってお笑いコンビとかでもよくあるじゃないですか、一方がブレイクしたらもう一方がまるで運気を全て相方に持って行かれたように転落人生を送るっていうのが。どちらかがそういう事にならず、本当に良かった。

大体グループを脱退したシルヴァーの方が、ブレイキーに対してあんまり怒っておらず

「そうだね、あの頃アートは悪いクスリに手ぇ出していて、そのカネ欲しさに出演料をちょろまかして懐に入れるなんてことがあったのサ。俺?怒ってないよ。ジャズミュージシャンならまぁあることだし、プレイに支障が出るほどハマッてたって訳でもなかった。ただね、あのまま安定した仕事が得られるグループとしてカネがすんなり手に入る状況を作るのはちょいとばかりヤバいなって思ってオレは手を引いた方がいいなって思ったんだよ。アートがギャラを独り占めしてるのをユニオン(ミュージシャンン組合)に淡々と訴えてね。何となく罪悪感みたいなのがあったんだろうね。それからあの人は俺を遠ざけた。だもんで俺も脱退を告げたんだ”バンドの名前はアンタにやるからリーダーとして1からグループやってよ”って。バンドリーダーになったらクスリを断ってちゃんとしなきゃいけねぇだろ?ほんで、あの人なら生活を改めてちゃんとやると思ったね。結果は見ての通りだ」

んで、ブレイキーとシルヴァーはその後何となーく気まずい感じだったんですが、シルヴァーの方はインタビューで

「アート・ブレイキーにはとても感謝してる。彼を通じて私の初期の作品が次々世に出ることになった。それらの作品は今でもお気に入りだし、私はアートの事が今でも大好きだ」

と言った。それをたまたま聞いてたブレイキーが

「あぁ、ヤツは俺の事怒ってないんだ。それにしても若気の至りとはいえ、オレもあの時は悪い事をしたもんだ・・・」

と、反省したのか、80年代末のある日同じコンサートで対バンがあった時、自分のグループの演奏を終えて舞台袖からジャズ・メッセンジャーズの演奏を見ていたシルヴァーをアートが見付け「ちょっと来いよ!」とステージに呼んでピアノに座らせ

「アレやろうぜ、昔一緒によくやった”メイリー”♪」

「オーケーやろう♪」

と、無事仲直りも果たしたんですね。

で、その後1年も経たないうちにブレイキーが亡くなっておりますから、ますますこの2人の運命的なものを感じずにはおれません。

シルヴァーとブレイキーは、やっぱり共に新しい音楽、それも頭に描いていたものがほぼ一致する、稀有なパートナーだったと初期の共演盤やその後それぞれのグループで活躍した両者のアルバムなんかを聴くとしみじみ思います。

特にピアニストとドラマーという違う楽器の演奏家でありながら”リズム”という面で、二人の呼吸はまるで双子のようにピッタリ合ってるんだよなぁと感動します。

では、そんな2人の息もピッタリなアルバムとして、本日は『ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』をご紹介いたしましょう。




ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

【パーソネル】
ホレス・シルヴァー(p)
ケニー・ドーハム(tp)
ハンク・モブレー(ts)
ダグ・ワトキンス(b)
アート・ブレイキー(ds)


【収録曲】
1.ルーム 608
2.クリーピン・イン
3.ストップ・タイム
4.トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン
5.ヒッピー
6.ザ・プリーチャー
7.ハンカリン
8.ドゥードリン

(録音:1954年11月13日,1955年2月6日)


最初に言っておきますが、実はこのアルバム「ジャズ・メッセンジャーズ」と銘打っておきながら、実はジャズ・メッセンジャーズ結成直前にレコーディングされた、実質的なホレス・シルヴァーのリーダー作です。

実際ブルーノーとから最初に10インチレコードでリリースされた時は確かリーダーのホレス・シルヴァー名義でした。その後10インチでリリースされたアルバムをブルーノートは全て12インチ化した時にジャケットやタイトルを変えてリリースしなおして、その時に活動していたジャズ・メッセンジャーズの名義にしたのでしょう。

でもまぁメンバーはシルヴァーとブレイキーとケニー・ドーハム、ハンク・モブレー、ダグ・ワトキンスというジャズ・メッセンジャーズの面々なので「ジャズ・メッセンジャーズのプレ・リリース盤」として聴くと良いでしょう。うん、ちょいとややこしいんですがそういうことで中身を解説します。

シルヴァーもブレイキーも、そのちょいと前の”ビ・バップ”の時代に世に出てきたジャズマンであります。ブレイキーは元々ビッグバンド出身で、シルヴァーはビ・バップ・ピアノの第一人者として人気絶頂だったバド・パウエルの影響を受けた若手の一人だったんですが、デビューする頃にはビ・バップの刺激的ではあるけれどやや単調なリズムから、より新しいリズムをジャズに取り入れたくてウズウズしてた。

そして、マイルス・デイヴィスがそう思っていたように、シルヴァーとブレイキーもまた「ただ熱狂するだけじゃなくて、じっくり聴いて楽しめるようなジャズを作りたい」と思っていた。

特にシルヴァーは両親が西アフリカに浮かぶ旧ポルトガル領ガーボベルデという国の出身で、ラテン系のルーツがあり、これを自分の音楽の前面に押し出したいという野望があった。ブレイキーもルーツであるアフリカン・ドラムやラテン・パーカッションなど様々なリズムを研究しながら、全くオリジナルなリズムで新しいジャズを作りたいという気持ちがあった。

そんなこんなで2人がガッツリ手を組んだこのアルバム。ほとんど初顔合わせに近いということで、全体的には「よく練られたアレンジがかっこいビ・バップ」な感じでありますが、それでもブレイキーが繰り出す小技がたくさん効いた立体的なグルーヴの上をこれでもかとピョンピョン跳ねるシルヴァーのピアノがもう水を得た魚みたいにカッコイイんですが、2人の凄さはテナーのハンク・モブレーやトランペットのケニー・ドーハムがソロを取ってる時のバッキングですよね。

ガンガンおかずを繰り出して煽りに煽るブレイキーと一緒になって、左手でもってガッコンガコン強烈なコードを叩き付けて煽るシルヴァーのピアノがすこぶるカッコイイ。いやもうカッコイイを通り越してヤバイ感じすらするのですよ。

アップテンポの1曲目『ルーム608』とか『ストップ・タイム』とか、ミディアムテンポでブレイキーがさり気なくルンバ混ぜてくる後のソロでグッとドスを効かせたブルージーなソロを取るシルヴァーも素晴らしいですなぁ。ハンク・モブレーのややダークなテナーのトーンも、ドーハムの1歩引いた知性溢れるトランペットも、いい味を出しながらピアノとドラムを見事引き立てております。

あと、このアルバムの目玉といえば、カラッと明るいファンキーナンバーの『ザ・プリーチャー』これですね。プリーチャーってのは説教師のことで、言うまでもなくゴスペルの雰囲気を曲にしたものですが、ニューヨークみたいな都会の教会の雰囲気ではなくて、南部の田舎の教会みたいな素朴な雰囲気です。

ブルーノートのオーナーのアルフレッド・ライオンはこの曲を聴いて「う〜ん、何だか古いデキシーランドジャズみたいな曲だなぁ。これはレコーディングできないよ」と難色を示しましたが「いや、オレらはこの曲は一周回って新しいと思ってる。レコーディングできないっつうんならアルバムのレコーディング自体辞めていいよ」と脅すような感じで迫り、レコーディングを強行させた訳なんですが、ハードバップの時代にはこういったゴスペル感覚が都会の若者に「ヒップだ」と大いにウケて流行する訳ですから、世の中何があるか分かりません。

あと、アタシはこのジャケットも好きなんですよね。何のポーズだかわかんないけど、このシルヴァーのおどけた表情とポーズだけ見ても「あぁ、このアルバムはいいやつだな」と思えてきますよね。










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2020年04月11日

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ モーニン

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アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/モーニン
(BLUENOTE/EMIミュージック)


4月も半ばに差し掛かろうという時期でございます。

「CD屋」と言ってはおりますが現在はお店を閉じて街角のあちこちで個人的にCDを売買する、かなーり怪しい地下CD屋でありますので、当然食うための正業を持っております。

この正業ってのが毎年年度末年度始めの頃がもー悲鳴が出る程忙しいお仕事ですので、毎日ヘトヘトにくたびれてブログの更新もままならずといった状況ですが、4月も半ば目前にして、ようやく沈静化の目処が付いてきました。

体調がまだ万全ではありませんが、コロナの世界的流行を受けて、自宅で退屈をしている方もいらっしゃると聞き及んでおりますので、そういった方々のせめてもの暇つぶしにでもなればと、ちょっとブログの更新を頑張りたいと思います。

そう思って昨晩は過去記事をてれ〜っと眺めておりました。

このブログの読者の皆さんはジャズ好きな人も多く、アタシもジャズ好きで記事を書くと良い反応も頂けますので喜んで書いておるのですが、過去記事を改めて読み返してみるとアレですね、いわゆる初心者にオススメの名盤や定番アルバムのレビューが少ない。自分ではそんなことないと思っておりましたが、記事にはその時個人的に聴いて「これは良い!」とオススメしたい作品を主に書いておりますので、ついうっかり後回しになってしまったんでしょう。うぅ...これではいけません。せっかく「この機会にジャズ聴きたい!」って方もいらっしゃると思うのに。

という訳で、今日からしばらく「ジャズまだ聴いたことない人も安心して聴ける、楽しめる定番作品強化月間」として、人気の有名アルバムの紹介に励みましょう。

第一弾は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』であります。

そうそう、ある程度上の年齢の方にとっては「ジャズを聴くきっかけになった1枚」であり、モダン・ジャズとかハードバップとかいう音楽について語る時は、もうコイツがないと始まらない、ぐらいの超人気のド定番でありますね。

1961年に日本ツアーを行い、その行く先々で拍手喝采の大人気となったアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。

それまで日本人にとって「ジャズ」といえば、戦後すぐに進駐軍と共に入ってきた戦前のスウィング・ジャズ。つまりグレン・ミラーやジーン・クルーパー、デューク・エリントンなどでありまして、ジャズはどちらかというと上質な社交の音楽みたいな感覚があったんですね。

でも50年代にアメリカでは既に「もっと若者も熱狂するような刺激に溢れたジャズを!」という意識の元に、少ない人数でミュージシャン達がアドリブの火花を激しく散らすビ・バップが生まれ、それが「それまでのジャズとは違う今の時代のジャズ」という意味で『モダン・ジャズ』と呼ばれるようになり、更にそのビ・バップをもっと形を整えて「熱狂も出来るし鑑賞しても聴き応えのある音楽」に進化させたのがハード・バップであり、アート・ブレイキーはそのハード・バップの生みの親の一人でもあったんですね。

特にブレイキーのハードバップは、リズムや楽曲にゴスペルやR&Bなどのキャッチーな要素を大幅に取り入れた”ファンキー”と呼ばれるやつでした。

簡単に言うと

「すっげぇ分かりやすいしノレるし、何かよーわからんけど凄く黒人の音楽って感じがする!!」

てやつだったんです。

そんなブレイキー、ジャズ・メッセンジャーズの来日は、刺激に飢えていた日本の若者にとっても「まぁジャズってこんなだよね」と、ひと昔前のムーディーなやつを想像していたご年配にとっても、価値観を激しく揺さぶるようなセンセーショナルな出来事でありました。

結果公演は大成功、多くの日本人がモダン・ジャズという最高にカッコイイ音楽に目覚め、街にはジャズ喫茶という、当時高級品で庶民の手にはなかなか届かなかったレコードを良いオーディオシステムで聴かせるお店があちこちに出来、そこではやっぱりアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが日本でのコンサートで拍手喝采を浴びたあの人気曲『モーニン』が流れ、またはリクエストされ、巷で都市伝説として云われているように「その辺のそば屋の出前のあんちゃんまでが鼻歌で歌ってた」という大ブームになりました(そば屋の出前のあんちゃんが実は元から筋金入りのジャズ好きだったという可能性は一旦置いときますね)。


個人的な事を申し上げれば、アタシの家も実は親父がこのアルバムでジャズに目覚めたクチでありまして(1944年生まれ)ドラムまでおっぱじめ、家でもよくこのレコードはかけていたし、鼻歌でもよく歌ってたし、自宅にあるピアノでもって右手だけでメインテーマのフレーズをよく弾いておりました。

そんなアルバムだったので、ジャズとかよーわからん時から既に”耳タコ”だったし、反抗期なアタシに「ジャズ=おっさんが聴く退屈な音楽」というイメージをある意味で植え付けた曲こそが『モーニン』だったので、コルトレーンでジャズに目覚めた後も実はしばらく避けていたアルバムではあったんです。

ところがまぁアタシもコルトレーンを皮切りに、いわゆるモダン・ジャズ、ハードバップなものの良さも一丁前に何となく分かるようになって「アート・ブレイキーも良さそうだな、でも何か今更な感じがしてちょっと恥ずかしいな」とか、そういう小生意気な事も思ったりして、何となーくレコード屋さんとかでこのジャケットを見ても戸惑って結局別のアーティストを買ってしまうという、そういうことを何度も繰り返しておりましたねぇ。




モーニン+2

【パーソネル】
アート・ブレイキー(ds)
リー・モーガン(tp)
ベニー・ゴルソン(ts)
ボビー・ティモンズ(p)
ジミー・メリット(ds)

【収録曲】
1.モーニン
2.アー・ユー・リアル
3.アロング・ケイム・ベティ
4.ドラム・サンダー組曲
5.ブルース・マーチ

(録音:1958年10月30日)


結局『モーニン』は、長い間気になるけど持ってないアルバムのままでした。ある日ブルーノート・キャンペーンのサンプラーCDで初めてちゃんと聴いてみたら、いやアナタ、これが、凄い!「こんなにカッコ良かったか!?」ってぐらいにねぇ、カッコ良かったんですよ。

まず、最近は「美の壺」と呼ばれてる(?)あの有名なテーマを、ボビー・ティモンズがピアノで奏でます。

「たったたららららった〜♪」

と、単音のこれ以上ないぐらいにシンプルなリフなんですが、ここにギッシリとブルース・フィーリングというかそういうブラック・ミュージックならではの”粋”みたいなもんが詰まってますね。えぇ、他の人が弾いてもこうは行くまいと思えるぐらい何かがムンムンか香ります。

で、

「たったたららららった〜♪」

の直後、サックスとトランペットが

「ちゃ〜、ら♪」

と、応答のようなフレーズを吹く。

コレが「コール・アンド・レスポンス」というやつでして、古くは奴隷時代のワークソングの昔からある伝統的な黒人音楽の手法で、教会で歌われるゴスペルでよく使われてきました。

『モーニン』作曲したのもボビー・ティモンズで、彼は教会の牧師さんの息子として、幼い頃からこのコール・アンド・レスポンスがもう身に沁みついていたんですね。だからこの曲はジャズなんだけれども、そのゴスペルの雰囲気をジャズでひとつやってみようと思って作ったらしいんです。

ゴスペルをちょっとでも知ってる人なら、このコール・アンド・レスポンスってのが生み出す盛り上がりは体験してると思います。そのグワ〜っとくる盛り上がりをジャズで、しかも全然違和感なくやってのけてしまうんだから本当に凄い訳なんです。

で、このツカミに溢れた後のリー・モーガン→ベニー・ゴルソン→ボビー・ティモンズのソロが輪をかけて凄い。テーマはあくまでキャッチーなんですが、アドリブに入ったらもう真剣勝負のこの上なくジャズな感じの雰囲気が自然と別の盛り上がりを作り上げるんですね。しかも3人共に全く違う個性で。

『モーニン』以後の曲も、くつろいだ感じのハードバップという枠組みの中、メンバー達が全く違うそれぞれの個性で大いに見せ場を作って盛り上げます。1958年、ジャズが最も新しい音楽として充実していた時代の良さがどの瞬間にも詰まっていて、この時代を代表するモダン・ジャズの名盤として、やっぱりイチ押しせねばならぬ聴き応えに満ち溢れた作品なのです。







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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2020年03月08日

アート・ブレイキー ア・ジャズ・メッセージ

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アート・ブレイキー ア・ジャズ・メッセージ
(Impulse!/ユニバーサル)

2020年3月6日、ジャズ・ピアニスト、マッコイ・タイナーが亡くなりました。享年81歳。

最近はどのジャンルの音楽でも、レジェンド達の訃報が続くばかりで、本来アタシは追悼文の類はあんまり書かないようにしておりますし、それにもう大ベテランならその死を悼みつつも「今まで本当にありがとうございました、どうか安らかに。でもアナタの音楽はこれからも変わらずずっと聴き続けます」でいいと思うんです。

なので、今回もしんみりとはしません。特にこのブログは「その音楽やアーティストをあんまりよく知らない人に素晴らしい音楽やアーティストを知ってもらうブログ」です。「マッコイ・タイナーってカッコイイよ!」という事をいつものごとくなるべく小難しい言葉を使わずに紹介していきたいと思いますね。

昨日の3月7日、やはりマッコイの死を惜しむツイッターの書き込みが多く、アタシもマッコイについて色々書きました。

特にアタシにとっては、これはもうジャズという音楽にのめり込むきっかけとなったジョン・コルトレーンの全盛期といえる1960年代を支えたピアニスト。書かない訳にはいきますまい。

リーダー作『タイム・フォー・タイナー』について書いたのですが、とあるフォロワーさんの「参加作のこれがいい」という書き込みを見て

「そうだった!これがあった!!」という気持ちと「そうだった!これ最高だった!!」という気持ちの両方で、激しく首を縦に振りました。

それが、アート・ブレイキーのリーダー作『ア・ジャズ・メッセージ』。

アート・ブレイキーといえば、有名な『モーニン』を筆頭とする、自身のバンド”ジャズ・メッセンジャーズ”でのファンキーでノリノリな名盤や名演がわんさかあって、そのほとんどがブルーノートからリリースされているんで、すっかり「ジャズ・メッセンジャーズのボスでブルーノートの人」というイメージもあるんですが、ところがどっこい、メッセンジャーズでの活動の傍ら、ブルーノート以外のレーベルで、しかもジャズ・メッセンジャーズではないソロ名義の録音をひょいっと残していたりする。

で、その辺のアルバムが、まージャズ・メッセンジャーズのブルーノート作品達ほどの華やかさとかインパクトはないんだけれども、非常にリラックスした味のある良盤が多いんですよ。

ともかくブルーノートとの契約が「ジャズ・メッセンジャーズ」に限られていて、ソロでのレコーディングに関してはまぁいいよ、というか黙認という形だったのか。いやいや、インパルスで1961年にレコーディングされた最初のアルバムは、タイトルもそのものズバリの『Jazz Messengers』ではないか!一体どうなってるのかよーわからん。

ともかくも、ブレイキーは今度は単身で、ブルーノートとの契約をフツーにやっている1963年という年に、わざわざインパルスに出向いてレコーディングを行っております。

参加メンツはインパルス側が集めた面々で、唯一のホーン奏者として、ブレイキーとは40年代からの付き合いの仲間であるソニー・スティット、ピアノが当時快進撃を続けていたジョン・コルトレーンのグループにいたマッコイ・タイナー、そしてベースにこれまたコルトレーンのセッションにちょこちょこ参加していたアート・デイヴィスと、ガッチリ手堅い顔ぶれであります。





【パーソネル】
アート・ブレイキー(ds)
ソニー・スティット(ts,@BD,asACE)
マッコイ・タイナー(p)
アート・デイヴィス(b)


【収録曲】
1.カフェ
2.ジャスト・ノック・オン・マイ・ドア
3.サマータイム
4.ブルース・バック
5.サンデイ
6.ザ・ソング・イズ・ユー

(録音:1963年2月16日)


この人選は「ベテランで正統派のブレイキーとスティットの脇を、気鋭の若手のマッコイとデイヴィスに固めさせたら面白い事になるだろう」という、インパルスのプロデューサー、ボブ・シールの目論見がモロに出ております。

ブレイキーという存在感のあるドラマーのリーダー作でワン・ホーン、となると例えばソニー・ロリンズとか、もっと大御所のコールマン・ホーキンスなんかを持ってくれば、話題はかっさらえたかも知れませんが、恐らくは「それではちょっとホーンが強すぎる」との判断かソニー・スティット。

しかし、スティットはこういうセッションでは確実に良い仕事をするサックス吹きです。バッパーとしては抜群のテクニックを持っていながら堅実に共演者のスタイルに合わせて引き立てることも出来る。しかもブレイキーとは若い頃からの共演で互いのクセをも知り尽くした仲、ついでに言えばジャズ・メッッセンジャーズでは聴かれない若干オールドスタイルのプレイもきっとこの2人なら聴かせてくれるはず。

という訳で、スティットは全編で上手い具合に大活躍、とはいってもバリバリに吹きまくってるというのではなく、ここでは常に若干の余力を残しながらの、押しも引きも心得て全体を引っ張る見事に大人なフロントプレイ。マッコイも程よいバランスでもって情念と情緒の間を行き来する知的なプレイであり、アート・デイヴィスのベースに至ってはピタッ、ピタッとブレない音程で気持ちのいいウォーキングのお手本のようなベースラインを聴かせます。

リーダーのブレイキーのドラムも、ジャズ・メッセンジャーズのように派手なロールをバシバシ決めたり、フロントを煽りまくるスタイルではなく、いつもよりリラックスした貫禄のドラミングですね。しかし1曲目「カフェ」のオープニングはラテン・パーカッションのビートだし、スティットのソロの前に「ャア」と気合いを入れる声が聞こえたり、しっかりと野性味を感じさせる”いつものブレイキーもしっかりとおります。

2曲目「ジャスト・ノック・オン・マイ・ドア」は、スティットがアルトに持ち替えて朗々と吹くブルース。ブレイキーのドラムは余裕の叩きっぷりですが、おおらかな良いグルーヴです。そしてマッコイのピアノも洗練された都会のファンキーさ。

3曲目「サマータイム」はもう有名過ぎるぐらい有名な哀愁ナンバーですが、やや早めのテンポでキレ良く吹くスティットのシンプルなアドリブが好調。コルトレーンがアトランティック盤『マイ・フェイバリット・シングス』に収録したサマータイムとちょっと雰囲気が似てますから、マッコイのプレイも左手の「バーン!」からの右手の「コロコロコロ・・・」が出てきてややコルトレーン・バンドでの演奏っぽくなっております。デイヴィスの安定した歌心溢れるベースソロもお見事です。

4曲目「ブルース・バック」は、今度はテンポをグッと落としたスローブルースですね。ブレイキーの重く引きずるようなビートに導かれて眺めのイントロを弾くマッコイのピアノは実にアーシー、その後にアルトを吹くスティットの泥臭さもたまんないです。サックス奏者の実力を聴き分けるには、その人が吹くブルースを聴けば良いとはよく言いますが、ここでのスティットのゴキゲンに粘るアドリブはもう超一流の証ですね、その後の触発されたマッコイのソロがまた最高にブルースです。

そして5曲目、個人的にこのアルバムの目玉曲だと思っている「サンデイ」であります。や、曲自体はミディアム・テンポのカラッと明るいどこにでもありそうなさり気なく優しい曲なんですが、ウキウキするようなブレイキーのドラムとデイヴィスの弾むベース、「ふわぁ〜」と吹くだけで空気が華やぎ、そしてシンプルなテーマから無限の素晴らしい”歌”が出てくるスティットのテナーによるアドリブ、それを引き継いで美しいフレーズを小節毎に丁寧に重ねていくマッコイの端正なピアノ。この連携が本当に素晴らしいんです。

一言でいえばこのアルバムは「ブレイキーのリラックスした日常なセッション」であり、どちらかといえば派手なインパクトのあるジャズ・メッセンジャーズの作品に比べると地味な印象があるかも知れません。でも、ブレイキーはじめ他のメンバー達のリラックスした演奏ならではのまとまりの美しさと、くつろぎながらも集中して聴くとグイグイと引かれる味わいの深さみたいなものが、他のどのアルバムにもないぐらい素晴らしく充実してるんです。

そしてラストを飾る「ザ・ソング・イズ・ユー」無伴奏で高らかに歌い上げるスティットのサックス、さり気なく入って品よく感動をキープするリズム、美しく流れる高音を軽快に転がすピアノと、この全てが”ちょうどいい”アルバムのクライマックスを大団円でしっかりと決めてくれます。いやぁ良い、良いアルバムです。








ア・ジャズ・メッセージ







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2020年02月24日

リー・モーガン キャンディ

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リー・モーガン/キャンディ
(BLUENOTE/EMIミュージック)


最近改めて「トランペットを聴いてみよう」という気になって聴いております。

そういえば最初に自分が聴いて「いいな」とアルバム単位で思ったトランペットものって何だっただろう?とか思い出していたら、リー・モーガンの『キャンディ』が浮かんできました。

ジャズに目覚めた当初、アタシの好みといえばフリー・ジャズ。そしてImpulse!やESPを皮切りに、CANDID(チャールス・ミンガスとその一派の作品がたくさんあったから)とかPrestige(エリック・ドルフィーがアルバムを多く出してたから)を、いわゆるレーベル買いしておりました。

はい、皆さんここで「おいおい」と思ったことでしょう。

そうなんです、ジャズといえばやっぱりレーベルとして一番有名で、何となく信頼と実績のとかいう言葉がピタリとハマる、天下のBLUENOTE(ブルーノート)の名前が出て来んのはおかしいだろう、お前ふざけてんのかと、今画面の向こうからたくさんのお叱りを受けました。

えぇ、ブルーノートはやっぱりジャズ初心者だったアタシでもその名前は毎日のように何かの本を開けば目に入ってきて、ジャズが好きな人と話をすればその名前を聞く、ぐらいの超有名レーベルだったんですが、そこはほれ、天性のひねくれ者の性分から

「ケッ、どーせそんなメジャーなところは当たり障りのない良い子ちゃんなジャズしか出してないんだろぉ!?」

と、ロクに聴きもせんのにそう思ってたんですね。

だから、ロクに聴きもせんのにロクに聴かなかった。えぇ、酷いです。あの頃の自分には助走付きでキックでも見舞ってあげたい。

でも、そのうちモダン・ジャズもカッコイイと思えてきた時に

「あ、ブルーノートのなんか聴いてみようかな」

という気持ちも一丁前に出てきました。

ほんでもって最初の頃に聴いたソニー・クラークとバド・パウエルに、そして忘れちゃいけないジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』



その全部にコロッと感動しちゃいまして、その日から

「いや〜、やっぱり何だかんだ言ってブルーノートのやつはどれもいいね〜」

なんて軽薄な事を言うようになりました。

それはさておきで、じゃあ次何を聴こうか?という事になって、コルトレーンの『ブルー・トレイン』でカッコ良かったリー・モーガンのトランペットと、バド・パウエルの『ザ・シーン・チェンジズ』でカッコ良かったドラムのアート・テイラーってのと、ソニー・クラークのピアノが、ノリノリなのに何か独特の哀愁あるじゃん!シブい!!と気に入ってしまったため、この3人が一緒に演奏しているアルバムなんかあれば聴いてみたいなーとか思って、東芝EMIが出していたブルーノートシリーズカタログみたいなチラシを(とにかく情報が欲しかったから、こういうフリーペーパーがCD屋さんにあれば片っ端からもらってたんです)、ボーッと眺めていたら、何とありました。リー・モーガンとソニー・クラークとアート・テイラーの共演盤、それが『キャンディ』でありました。

「おお、これは何かジャケットもオシャレだし、しかも管楽器がトランペット1本だけかー。いいんじゃない?」

ぐらいの軽い気持ちで聴いてみたら、これが素晴らしく思ってた以上に、それまで知らなかったストレートなジャズのカッコ良さ、トランペットという楽器の魅力、風格と夜の香気がじんわり滲む「あぁ、これがジャズなんだよなぁ・・・」という至福の感動を、しかも押し付けじゃなくてごくごく自然に知らしめてくれるアルバムでした。






キャンディ+1

【パーソネル】
リー・モーガン(tp)
ソニー・クラーク(p)
ダグ・ワトキンス(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1. キャンディ
2. シンス・アイ・フェル・フォー・ユー
3. C.T.A.
4. オール・ザ・ウェイ
5. フー・ドゥー・ユー・ラブ・アイ・ホープ
6.パーソナリティ
7.オール・アット・ワンス・ユー・ラヴ・ハー*

*ボーナストラック

録音:1957年11月18日(AE)1958年2月2日(@BCD)


リー・モーガンって人は、18歳でデビューした早熟の天才で、しかもそのデビューした年というのが、同じく天才でこの人こそはこれからのジャズ・トランペットのシーンを背負って立つだろうと言われていたクリフォード・ブラウンが突然の交通事故で、若い命を散らせてしまった年だったもんだから、もうこの人はクリフォード・ブラウンの生まれ変わりだろうと言われてた。

いやいや、23歳のブラウンが亡くなった年に既に18歳だから生まれ変わりもクソもあるかい、と普通は思うはずなんでありますが、モーガンのトランペット・プレイというものが、それぐらい驚くべきテクニックと鮮烈な個性があったから、聴いてる人はもう計算も何も出来ず、ひたすら彼の素晴らしさを形容する言葉を探しているうちに、そんなぶっ飛びの底なし沼にハマッてしまう。

それぐらいモーガンって人のトランペット・プレイは、多くの人の耳を引き付けたんです。

ほんで、リー・モーガンはソロ・アーティストとしてデビューして瞬く間に、ブルーノートを中心に僅か1年で7枚とかいう驚愕の枚数のアルバムをレコーディングして、怒涛のリリースを行います。

この『キャンディ』は、モーガンが僅か19歳(!)の時にレコーディングされた、ブルーノートでの7作目のアルバムなんです。

モーガンという人は、というよりも、この時代のトランぺッターというのは、レコーディングする時はサイドにもうひとつのホーンとしてサックス(大体テナーサックス)奏者を従えて、そのアンサンブルと丁々発止のやりとりを聴かせる編成が基本でした。

が、ここでは他のホーンを入れずにモーガンのトランペットだけのワン・ホーン。ということはそれだけモーガンのトランペットの腕前というのはズバ抜けていて、しかも周囲も求めていたんです「いぇ〜い、もっとお前のトランペットだけが聴きたいぜ〜」ってのを。

アルバムでのトランペット・プレイは、そんな期待を1ミクロンも裏切らない、どころか期待以上に饒舌で、感情豊かで、しかも渋味もあって、こんな貫禄と風格あるプレイがとても19歳の少年によるものなんて信じられないぐらいのミラクルが連発します。

オープニングはミディアム・テンポ。その後切々と歌い上げるバラードとノリノリのアップテンポが大体交互に選曲されておりますが、バラードではじんわりと切ない歌心で感動的なアドリブで聴かせ、アップテンポでは一切の迷いのないブリリアントな吹きっぷりで、聴く人の耳と心を根っこからしっかりと掴みます、掴んで放しません。もう一度言いますが、こんな完璧な情緒コントロールと大人のダンディな風格に溢れた演奏が、19歳の少年によるものだと言われて誰が信じましょう。

そしてバックのソニー・クラーク、ダグ・ワトキンス、アート・テイラーも、アップテンポとバラード両方で”しっとり”と”ファンキー”を全く芸風を変えずにしっかりと使い分ける、見事なサポートに徹しております。この3人、派手な弾きまくり叩きまくりは絶対にしないんです。だからこそこういったワン・ホーンもののバックに回れば、その”目立ち過ぎない圧倒的な個性”が無敵の強さを発揮する。

クラークはファンキーな曲でのややもっさりしたピアノの跳ね方と、バラードでのどこまでも静かに沈み込む悲哀に満ちたピアノが耽美の一言では語れないぐらいに魂入っていて、ブラシを中心にサラーっと静けさを際立たせるビートをバラードで、アップテンポでも軽快なブラッシュワークから、繊細で鋭いスティックさばきも聴かせるテイラーのドラムも実に歌っていて、その真ん中にぶっとい音で”ボン!”と存在するダグ・ワトキンスのベース、このトライアングルの堅実さが、アルバム全体の雰囲気もしっかりと作っていると言っても良いでしょう。

よくよく聴くと、全員が軽〜く演奏しているようでいて、内側からにじむ深い深いフィーリングが最高のアルバム。決して派手なアルバムではないんですが、この小さな編成の中に、ジャズのカッコ良さが物凄い質量で詰まっていると思います。えぇ、とても良いです。



posted by サウンズパル at 22:14| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月17日

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン トリビュート・ハンニバル

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ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン/トリビュート・ハンニバル

(Baystate/ソニー・ミュージック)


正月2日から鹿児島へ旅行へ行ってきまして、天文館の地理もよーわからぬままフラフラしていたら、ちょっと疲れてきた頃にジャストなタイミングで『モッキンバード』というレコード屋さんを見付けて入ってみました。

店内には棚に置かれたたくさんのエサ箱の中にレコードレコードレコード♪

いや嬉しいです、実に久しぶりのこの感覚。

とりあえず「欲しいものを探す」のはひとまず置いといて、隅から隅までエサ箱を漁るところから始めました。

今じゃポチッとやって、欲しいCDもレコードも買えてちゃう時代ですが、やっぱり特に狙っているものもなく、サクサクと箱や棚を漁って、思いもよらぬ良い盤との出会いがあるから、やっぱりお店で買うのがいいな。ていうか心おきなく一人でエサ箱を漁ってるこの時間、最高に幸せだな〜。と思いながら、30分ぐらい漁っていたでしょうか。


ザッと見た中で「これ、欲しいな」と目星を付けたいくつかのレコードのうち「今日は2枚だけ買おう」との決定に従って選んだ2枚が、フランキー・ライモンとハンニバル・マーヴィン・ピーターソン。

や、他にも欲しいのはいっぱいあったのですが、この2枚だけは何か強烈な一期一会を感じて選びました。決まったらもう即レジへ持って行き、そこからホテルに帰る前にある喫茶店でやりましたよアレ「収穫ブツを喫茶店でしげしげと眺めるというアレ」を。おっほっほ♪


さて、フランキー・ライモンの方は、過去にそういえばレビューを書きました。『ロックンロール』というタイトルは、全く未聴のアルバムかと思ったら、実はCDで持っていたこの↓アルバムの後半部分(CDは2in1だったのですね)でしたので




アルバムレビューは上記リンクを読んで頂くとして、本日はハンニバル・マーヴィン・ピーターソンです。


ハンニバル・マーヴィン・ピーターソンという人は、ジャズのトランぺッターであります。

ただ、1948年生まれ、ということはチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらが、モダン・ジャズの初期の革新的なスタイルである”ビ・バップ”を生み出してイケイケでシーンを賑わしていた丁度その頃に生まれた彼は、ジャズマンとしては、例えば有名なマイルスとかコルトレーンとか、更にその下のハービー・ハンコックやチック・コリアなんかよりも全然若い。

ジミ・ヘンドリックスよりも5つ年下なので、ジャズの人としてはとにかく若い世代なんです。

だから、本格的にソロ・アーティストとしてデビューしたのが1970年代になってから。その頃はもういわゆるモダン・ジャズの時代が過ぎ去り、ジャズは電気楽器や流行のファンクビートなどを取り入れた、フュージョンが新しいポピュラー音楽として人気を得ようとしていた頃でした。

ところがこの人は、そんなどちらかといえばソフトでメロウなジャズが流行だった頃に、そのけたたましく吠えるトランペットと生楽器でガッツリと固めた編成のバンドを武器に、まるでそのちょい前にあの世へ行ったジョン・コルトレーンの魂を継承したかのような、硬派でスピリチュアルなジャズを頑として演奏し、一部で強烈に支持されました。


アタシはといえば、ギル・エヴァンスの有名な『ギル・エヴァンス・プレイズ・ジミ・ヘンドリックス』というジミヘン曲のジャズ・アレンジっていうすんげぇカッコいいアルバムがあるんですけど、コレに入ってる「Crossingtraffic」っていう曲で、めちゃくちゃソウルフルでカッコいいヴォーカルがフィーチャーされてたんですよ。

「うおぉ!このヴォーカルの人ヤバい!!すっげぇ有名なソウルシンガーに違いない。なになに、ハンニバル・C・マーヴィン・ピーターソン?おお、ヴォーカルだけじゃなくてトランペットとコト?コトってあの琴!?へー、この人のアルバム出てたら聴きたいな」

と、衝撃を受けて、アルバムを探したんです。

ほんで、MSPというレーベルから出ていたアルバムを見付けて「お、これだこれだ♪」と、そのファンキーでソウルフルなヴォーカルと、恐らくはバックをゴキゲンに盛り上げているであろうジャズファンクサウンドを期待して、CDを再生しました。

そしたら何と・・・(!!)

そのサウンドは思っていたようなそれとは180℃違った、激しく荘厳で、最先鋭のフリー・ジャズとインドやアフリカ音楽のような”繰り返し”のリズムやバッキングのトランス感が耳を通り越して五感全部をごっそりと別世界に持って行くようなその、この世を超越した演奏に、更にアタシは衝撃を受けました。

いやいや、まさか60年代の大好きなフリー・ジャズの大物達以降の世代でこんな凄い人がいるなんて、これはハッキリ言ってアタシは全然物をしらなかったとさえ思いました。






トリビュート・ハンニバル(紙ジャケット仕様)

【パーソネル】
ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン(tp)
ディードレ・マレイ(cello)
マイケル・コクレーン(p)
エロール・ウォルーターズ(b)
マカヤ・ントショコ(ds)

【収録曲】
1.イーヴン・スティーヴン
2.ダホメイ・ダンス
3.セントルイス・ブルース
4.ウェル・ユー・ニードント
5.ミスティ

(録音:1976年1月16日)


鹿児島の素敵なレコード屋さんで見付けたハンニバル・マーヴィン・ピーターソンのアルバムは、正式タイトル『トリビュート・ハンニバル』ですが、喫茶店でライナノーツを見たらば『セントルイス・ブルース』という国内盤再発時独自のタイトルが付いておりました。

おお、セントルイス・ブルースといえば、戦前にブルースの皇后ベッシー・スミス他、色んな人にカヴァーされ、愛された実に古典的なスタンダードです。

ハンニバルのバイオグラフィを見れば、1948年アメリカ南部のテキサス生まれで、ジャズ・ミュージシャンとしてデビューする前は、テキサス・ブルースの巨人、Tボーン・ウォーカーや、エタ・ジェイムスなど、ブルース/R&Bのバンドのホーンセクションとして、ブラック・ミュージックの基礎をしっかりと叩き込まれており、その後ファラオ・サンダースやアーチー・シェップなど、敬愛するコルトレーンの愛弟子とも言えるジャズマン達のバックで先鋭的な表現を直に学び、個性を確立させていったとあります。

だからきっと古典的なブルースをやっても、そのフィーリングをしっかりと表現しつつも、きっと研ぎ澄まされた刺激的な演奏を聴かせてくれるに違いないというアタシの期待は、実にその通り叶えられた素晴らしい『セントルイス・ブルース』でありました。


アルバムは全体的にやはり激烈。レコードでいえば『セントルイス・ブルース』はB面で、A面の前半2曲が、いわゆる激しくて荘厳でトランスとトリップふんだんのスピリチュアル・ジャズのかなりハードなノリが炸裂。ハンニバルのトランペットは激しく吹きまくる時は本当にけたたましくて、背骨にビンビンくる程ですが、時折見せる丁寧なフレーズがまた、ほどよくグラングランにされたコチラの感覚にジワジワ〜っと染みてきて、これがまた中毒性高いのです。端的にいえばキます。


















『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 00:06| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする