2017年07月15日

超やさしい!初心者のためのジャズ 入門ベスト10

みなさんおはようございます。

土日からの「海の日」で、3連休の方も多くいらっしゃるのではないでしょうかね?えぇ、生きるためにしょうがないんですが、この世で最も人間に不必要なもの、それは仕事と思っているアタシは連休ではございません(><;

水木しげる先生がおっしゃるように、それこそ夢中になってやらざるを得ないようなことを夢中でやっておれば、食うために困らない程度のお金が畳の下とかにいつのまにか置かれているとか、そういう風になればいいですがね、まぁアタシが生きてるうちはそういうことにはならんでしょう。真面目に働きます。

で、話はガラッと変わりますが、サウンズパルは地下CD屋です。

お店もやっておったんですが、今はアタシは正業をしながら個人でお客さんからの注文をお受けしております。

このブログは、そんなしがない田舎の離島の地下CDのブログなんでございますけれどもね、ありがたいことに全国にちょいとした数の、結構熱心に読んでおられる方々がいらっしゃる。

音楽が好きな方の優しさは嬉しいですね、えぇ、ありがたいものです。

で、読んでいらっしゃる方々の中には

「音楽をいろいろ聴いてみたいけど、超初心者で何から聴けばいいのかわからない」

という方がかなりいらっしゃるようなんです。

特に

「初心者向けのやつを教えて!」

というリクエストが来るのはジャズなんですね。

おし、わかりました!今日は「時間がないよ」という皆さんのために手短に

【超やさしい!初心者のためのジャズ 入門ベスト10】

をご紹介しましょう。紹介するアルバムの詳細については、それぞれのリンク先の文章を読んでくださいね。

ではいきますよー


【@クールな大人のジャズ】


ジャズといえば「夜のバー」というイメージをお持ちの方も多くて、そういうちょっと大人な雰囲気を味わいたいというご要望にお応えできるものといえばやっぱり初期のマイルス・デイヴィス!マイルスのミュートをかぶせたトランペットがふわぁ〜んと鳴ると、空間の雰囲気が一気に”夜”になります。


【Aやるせないピアノ】


「ピアノでいいのない?」というお問合せはお店に立っていた頃も一番多かったです。「どういうピアノが聴きたいですか?」という問いに「綺麗で切なくてうっとりできそうなやつ」と答える方にはビル・エヴァンスの切なさの極みのバラードなんかどうでしょう。

【Bノリノリのピアノ】


とくれば10本の指をフルに使って、どんな速い曲でもバラードでも最高にスイングさせてくれるオスカー・ピーターソンですよ♪この人は物凄いテクニック持ってますが、ただテクニックが凄いだけじゃなくて、ノリノリにさせながらもしっかりとメロディを聴かせる人です。

【C男は黙ってテナー・サックス】



「テナーサックスの渋い低音がたまんないわ」というのは意外と女性の方に多いですね。そして「渋い低音のテナー」といえば、そのスタイルを作り上げたコールマン・ホーキンスでしょう。戦前から活躍してる人ですが、50年代60年代のちょっとモダンなバックを付けた作品が素晴らしいです。コチラはミルト・ジャクソンの落ち着いたヴィブラフォンと伊達男ケニー・バレルのギターも全部渋い♪


【D民族系、クラブ系入ったフリーダムなやつ】


「クラブ系」というキーワードも、ジャズを聴く上で欠かせないものになってきましたね。あと「スピリチュアル」という言葉にピンときてジャズを聴く、そんな方にやっぱり聴いて欲しいのがファラオ・サンダース。この人の音楽はクラブのフロアーからアフリカが見えます。


【Eしっとりとジャズ・ヴォーカル】


部屋で聴いていて、その声を流していると空間全体に哀愁が沁みてくるのがこの人、ジミー・スコット。ホルモンの障害で女性のような少年のような不思議な声です。でもこの声だからこその感動があります。やっぱり”声”って尊い。


【Fビッグ・バンドでスウィング!スウィング!スウィング!】


ビッグ・バンドを聴く醍醐味は、何といってもやっぱり「楽しい!」ということに尽きます。ビッグ・バンドといえばのデューク・エリントンはやっぱり最高に偉大で、演奏もキッチリして言うことありませんが、戦前の「楽しいビッグバンド」を、もっとカジュアルに楽しみたい人は、歌あり笑いありのキャブ・キャロウェイが最高ですよ♪


【G朝に聴きたい爽やかなジャズ】


アルト・サックスの詩人でしょうね。アート・ペッパーの演奏はオシャレで軽やかで音色も綺麗です。そして聴きやすい。でもそれだけじゃないたっぷりの余韻が哀愁となって心にいつまでも残ります。つまり飽きないんです。

【Hオーイェー!ファンキーにいこうぜ♪】


「難しいことはわからん!ソウルフルで真っ黒で、とにかくオルガンが派手に鳴ってくれりゃゴキゲン。ジャズはブラック・ミュージックだぜぇ?」なものを求める方(はぁい、アタシです♪)もうコレですよコレ。ノーベル賞に”ノーベルゴキゲン賞”というのがあれば間違いなく受賞クラスのジャズファンク名盤、しかもライヴ。アツイんだぜぇ♪


【Iお前ら生ぬるい、ジャズに必要なものはスリルだろ】




はい、明後日から始まる「大コルトレーン祭」の告知も兼ねてコルトレーンです。「コルトレーン?有名人じゃないの?」と思った方もそうでない方も、強烈にヤバくてぶっ飛んだ最晩年のフリージャズなコルトレーンは一度聴いてほしいなぁ。はい、これは願望です(^^;











『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年07月03日

レニー・トリスターノ ニュー・トリスターノ

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レニー・トリスターノ/ニュー・トリスターノ

「毒を食らわば皿まで」

という言葉が好きなので、今日もしつこくレニー・トリスターノをご紹介致します。

トリスターノという人は、その音楽同様にとてもストイックな人で、自分にも他人にも妥協をいうものを一切許さない性格でした。

そんな人ですので、多くの弟子を育てつつも、音楽以外のことでツルんだりフザケたことをやったりする、いわゆる”お友達”のクルーは持ちません。

むしろ高潔な人ですから、酒や麻薬やギャンブルに溺れるミュージシャン達の集団には「お前たちは何故音楽に集中しないのか」と、イライラしながら見ていたんだろうと思います。

トリスターノはだからレコード会社との関係性も、より高潔なものを求めました

一人の芸術家として扱うこと、レコードの中身に関しては完全なる主導権を自分に取らせること。

メジャーレーベルのアトランティックと契約する時も、トリスターノの契約条件はレコード会社にかなり厳しめの注文が並んでいたといいます。

ところが言うまでもなくレコード会社というのは「売れるもんを作ってなんぼ」であります。

売れることなど一切考慮に入れず、ただひたすらに厳しく己の世界を追究するトリスターノに

「いや、先生。もっとこういう風にした方がリスナーも喜ぶかと・・・」

と、ちょくちょく言ってくるレコード会社に

「いや、私はもっとこう表現の高みを感じられるものを作りたい」

と譲らないトリスターノ。

更にトリスターノが

「レコーディングしたい」

と言っても

「いやぁ、あまり売れないからなんとかかんとか」

と、何かと理由を付けてそれを先延ばしにするレコード会社。

結局メジャー契約をしてもなかなか売り出すチャンスを掴めないアトランティック側の苛立ちと、満足行くリリースをさせてもらえないトリスターノの不信感は募るばかりで、遂にはトリスターノの方が

「お前らなんぞもう知らんわい!」

と、1960年代以降は自主レーベルを作ってそこから作品を出すことを決めて、以後彼は亡くなるまで特定の商業レーベルからのリリースはほとんど行いませんでした。


で、今日なんですが、ご紹介するのはそんなトリスターノ先生が、大手アトランティックから出した貴重な二枚のアルバムのうち、昨日ご紹介した「鬼才トリスターノ」とは対になって語られる「ニュー・トリスターノ
」であります。






【パーソネル】
レニー・トリスターノ(p)

【収録曲】
1.ビカミング
2.C マイナー・コンプレックス
3.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ
4.デリバレイション
5.シーン・アンド・ヴァリエイションズ
6.ラヴ・ラインズ
7.G マイナー・コンプレックス


1962年、トリスターノがレーベルに「怒りの起き土産」として最後に残した作品は、あの鋭い切れ味と容赦ないほど硬質で透明で重厚な美学の結晶といえる「鬼才トリスターノ」よりも更に容赦ないトリスターノの完全ソロ・ピアノ作であります(!)

先に結論から言っておきますと、ジャズという音楽に・・・・、いや、音楽に打ちのめされたい!

と、思う方はもう有無を言わさずお聴きなさい。

冷徹にすら思える崩れないリズム、鍵盤に打ち下ろされる凍ったハンマーのような打撃力の強い音塊、バッハ、シェーンベルクからと思われるクラシカルな(雰囲気で酔える”柔らかクラシック”ではないっす)ハーモニーなのに、ズンズンと直角な渦を描きながらいつのまにか奇妙に歪んで横に横に伸びてゆくメロディーとリズム。

ここにはトリスターノの全てが詰まってます。

一言でいえば「空前絶後」いや、相当に古い音源なんですが、古さは一切なくて、かといって派手な新しさもなくて、ただもう音楽の核。それも太陽から遠く離れた冷たい惑星の限りなく絶対零度に近い氷の核、そのカッコ良さと圧倒的な質量だけがここにあります。

たとえば左手が4分音符で綺麗なベースラインを弾く上に、わざと強引に8分とか16とかの拍の違う右手を重ねて、それが寸分の狂いもなく流れていく。そこから生まれるグルーヴは、前にも言いましたが決して「ノレる、踊れる」グルーヴではないのですが、大きく空間を歪めて揺さぶって、聴く人の神経に直接作用する危険極まりないものなんです。

で、右手のフレーズも、通常だったらメジャーかマイナーの音階で、どこかで「パタン」とオチを付けて途切れるところを、オチを持って来ずに敢えて繋がりをうにょうにょと融解させて、息継ぎナシで延々と繋げてゆく。この”ブレスなし”のどこへ連れていかれるか分かんないフレーズが生む、これまた特異なグルーウも大変にヤバイんです。

このヤバさを体験しないでここまで読んでしまった人は、もう半分ぐらい中毒なんで、トリスターノを何でもいいから今聴いておくべきです。











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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月29日

レニー・トリスターノ 鬼才トリスターノ

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レニー・トリスターノ/鬼才トリスターノ
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)

さて、ここんとこずっとアート・ペッパーにハマッておりまして、いわゆる1950年代のクール・ジャズというものについて考えを巡らせておりますが、実はこの”クール・ジャズ”には、西海岸のオシャレで軽妙な(でもその奥底にはどうしようもなくやるせない詩情が渦巻いている)ものとは別に、東海岸はニューヨークで発生してその後のジャズ演奏に計り知れない影響を与えたクール・ジャズが存在するというお話を致しましょう。

今日ご紹介するのはピアニストで作曲家のレニー・トリスターノです。



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カッコイイですよね〜。アタシは「ジャズ界の成田三樹夫」と呼んでおりますが、どの写真を見ても何というか、ジャユミュージシャンというよりは孤高の哲学者みたいなオーラを放っていて実に知的でカッコイイ。

えぇ、いつ紹介しよう、いつ紹介しようと思いつつも、今まで好き過ぎてなかなかレビューが書けなかった。そんぐらいの心の師匠(マスター)なんですね。その後のジャズ、いや、音楽全般に与えた影響は計り知れないけれども、その前にアタシに与えた影響が計り知れない。と、朝から訳の分からんことを言っておりましてごめんなさい、ここんとこは皆さんがサラッと流してくださると信じまして、話を続けます。

レニー・トリスターノは1919年にシカゴでイタリア移民の家に生まれまして、小さい頃に視力を失ってしまいますが、その頃から音楽に関する並ならぬ関心を持ち、クラシックのピアノ教室に通いながらピアノの演奏と音楽理論を習います。

彼が住んでいた頃のシカゴというのは、ニューオーリンズから北上してきた第一世代のジャズ・ミュージシャン達がニューヨークよりも大勢おりまして、まぁ移住者の黒人と移民のイタリア系は居住区もそれぞれ近いところにいたんですね。それでジャズをやる黒人やクレオールの連中が、何やら表で賑やかにやっておるけれどもあの音楽は何だろうな、ピアノで弾けないかしら、やってみようか。

とかレニー少年は思っているうちにジャズの魅力にドップリとハマったんでしょう。24歳の時にシカゴの音楽院を卒業してしばらく経ってから「今ジャズはニューヨークのが最先端だぜ」という話を聞いたのか、ニューヨークに進出して音楽活動を始めます。

大体のミュージシャンは、一攫千金を夢見て楽器片手にナイトクラブの世界へ飛び込むというのが常でありましたが、トリスターノの場合はちょっと変わっていて、自宅アパートに当時最先端の録音機材を揃えて音楽教室をやりながら黙々と理論と作曲の研究に没頭して、今で言う宅録というものを繰り返してたんです。

で、驚くべきことに、既に1940年代という時代に”無調”の音楽を演奏しております。

いわゆるメロディやコード、そしてリズムの「お約束」を取っ払ったスタイル、後の”フリー・ジャズ”と呼ばれる演奏を、セシル・テイラーやオーネット・コールマンが1950年代の後半です。トリスターノの場合は特にジャズのスタイルとしてではなく、彼自身造詣が深かった現代音楽のやり方を実験的にジャズと融合させて個人的に録音を試みていただけとはいえ、これは実に革新的なことであります。

更に彼は自宅にて、当時開発されたばかりのテープでもって多重録音もやっております。

えぇと、ポピュラー音楽で最初に多重録音を使用してヒットとなったのがパティ・ペイジの「テネシーワルツ」。これが1950年のことでありますから、もう凄いとしか言いようがありません。

もっとも、彼の場合は何か目新しいことをやって世間を沸かせようとしていたんじゃなくて、ただひたすらに自己の音楽を理想に近い形で創り上げるための手段としてのテクノロジーだったようです。だとしたらますます凄いですよね。


そんなトリスターノのアパートには、すぐに”新しい音楽”を生み出そうという意欲に溢れた若者達が出入りするようになりました。

リー・コニッツやビリー・バウアー、ロニー・ボール、ジェフ・モートンといった、後の彼の弟子達はもちろんでありましたが、中でも頻繁に訪れて音楽談義に花を咲かせていたのが、当時チャーリー・パーカーの相方トランペッターだったマイルス・デイヴィスと、アレンジャー志望だった若きギル・エヴァンスの2人です。

この時の会話の様子は残念ながら文献で詳しくまとめられてはおりませんが、コニッツやマイルス、ギルらが音楽理論的な質問を次々して、それにトリスターノがピアノによる実演を交えながらひとつひとつ的確に答えて行く類のものだったようです。

マイルスの証言としては、以下のようなものがありました。

『トリスターノのギグが終わった後な、何度かトリスターノに、彼がやっていたハーモニーについて質問したことがある。どれも独創的で、オレには彼が白いセロニアス・モンクに思えたよ』

トリスターノのひたすら知的で抑制の効いた奏法の中に無限の可能性を見たマイルスは、丁度ビ・バップの「とにかく速いソロ吹いて客を沸かせようぜ」という刹那的なノリに飽き飽きして、もっと鑑賞に向いたクールな音楽をやりたいと思っていたその矢先、自分がバンドを組んだらビ・バップから一歩も二歩も進んだ、クールで芸術性の高い音楽をやろうと決意したといいます。

マイルスやギル・エヴァンスがトリスターノから受けた影響の大きさや深さは、その後の彼らの作品、例えば「カインド・オブ・ブルー」や「スケッチ・オブ・スペイン」などを聴けば一目瞭然ですね。ちなみに「カインド・オブ・ブルー」に参加して印象的なサウンドの誕生に大きく貢献したビル・エヴァンスもトリスターノからは決定的ともいえるぐらいの影響を受けておりますし、マイルスが生み出したモード・ジャズと、その門下生であるウェイン・ショーターやハービー・ハンコックらが発展させた”新主流派”といわれる60年代の極めて知的でスタイリッシュなジャズにも、その横へ横へと独特の浮遊感を漂わせながら流れてゆくメロディや高度に計算されたアレンジには、どうしてもトリスターノの影を見てしまいます。






【パーソネル】
レニー・トリスターノ(p)
リー・コニッツ(as,D〜H)
ピーター・インド(d,@)
ジーン・ラミー(b,D〜H)
ジェフ・モートン(ds,@B)
アート・テイラー(ds,D〜H)

【収録曲】
1.ライン・アップ
2.レクイエム
3.ターキッシュ・マンボ
4.東32丁目
5.ジーズ・フーリッシュ・シングス
6.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
7.君がいたなら
8.ゴースト・オブ・ア・チャンス
9.君はわがすべて


とにかくもう後年のマイルス・デイヴィスから派生した様々なスタイルのジャズを聴いていると、それに関連してトリスターノのことをガンガン語りたくなるのですが、そこらへんの検証や「お、こういうところがトリスターノの影響だな!」という発見の楽しみは、半分皆さんに委ねようと思います。

もっと語れば高柳昌行とかエイフェックス・ツインとかエマーソン・レイク&パーマーとかクラフトワークとかジョー・サトリアーニとか本当に色々と出て来るんですが、そこまで語れば本当に収集が付かなくなります。

とにかくレニー・トリスターノがいなかったら、ジャズ、フュージョン、プログレ、テクノ、この4つの音楽はなかったか、あっても全然別物のようになっていただろうということは断言できます。厳しい姿勢でジャズからポップな要素をどんどん削ぎ落とした演奏を繰り広げていた人なのでリアルタイムでバカ売れはしませんでしたが、これだけ売れないで凄まじい影響を与えた音楽家というのはアタシは他に知りません。しつこいようですが皆さんには「それぐらい凄い人だったんだ」と思っていただけると本当に幸いです。

で、アルバム「鬼才トリスターノ」は、1955年に満を持してリリースされた、トリスターノの公式なデビュー作にして、彼の孤高の極みともいえる芸術表現がピアノを前面に押し出したスタジオ録音と、コニッツのサックス入りのライヴ録音の両方でじっくりと味わうことが出来る、まずは究極の一枚です。

というよりは、一切妥協をしなかった厳しい人だったためにレコード会社にも完璧を求めて喧嘩しちゃったんですね。だからメジャーレーベルから出されたちゃんとしたアルバムはコレと2作目だけのたった2枚なんですね。

前半、まるでリズムマシーンのように正確で鋭く4ビートを刻むドラムとベースに乗って、まるで”ジャズ化したバッハ”の如く鋭利な音階をヘヴィなトーンで鍵盤に叩き付けるピアノ。え?ジャズっていえばズラしたり伸ばしたりしてイェ〜イな感じを出す音楽だよね?何このピッチリとスキのないグルーヴは。え?何これ凄い、こんだけ無駄のない遊びのないノリなのに、何だか奥底からジワジワと揺さぶるものがある!ありえない!凄い!!

と、最初聴いた時思いました。

後で知ったんですが、このレコーディングではトリスターノがピアノを弾いて、その上にリズムを被せるオーバーダビングや、テープの回転数をいじってピシャッとならした、今でいうリミックスみたいなことをしておるんです。いや、言われなきゃ気付かない。それぐらい演奏が凄いんです演奏が。

キッチリ正しい演奏なのに、そこに乗っけられた情念の質量がハンパない。あの〜、正しく狂ってるって正にこんなののことを言うんだなと思います。

で、後半の演奏はホーン入り&お客さん入りのライヴといこともあって、よく知られたスタンダードを中心に、幾分柔らかで気品豊かに聴かせる演奏です。

前半の壮絶を先に浴びてますから、最初は「ん?意外と普通に綺麗なジャズだ」と思いましたが、軽やかな演奏のバッキングでかなりぶっ飛んだ和音を「ガコォ!」と食らわせたり、ソロ取ってるコニッツのフレーズに不思議な絡み方をしたり、で、その軽やかに吹いているはずのコニッツのアルトも、よく聴くと美しい展開のそこかしこに不穏な「間」や「横への逸脱」があったりして、後から後からジワジワくるんです。

聴いていて決して楽しい音楽ではありませんが、確実に人間の奥底に作用して不思議な中毒性を持つ、レニー・トリスターノのクール・ジャズは、聴けば聴くほどアタシ達を無限の可能性が広がる闇に連れてってくれます。ホントにねぇ、凄いんですよ。



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2017年06月28日

アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション

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アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション
(Contemporary/ユニバーサル)


「毒を食らわば皿まで」

という言葉が好きなので、今日もひつこくアート・ペッパーをご紹介したいと思います。

えぇ、これはもうね、しょうがないんですよ。ペッパーという人の甘美でいてどこか危うい演奏とアルト・サックスのえもいえぬ音色には、何というか「あぁかっこいいなぁ、もう一回聴いてみよう」と思ううちに何回もズルズルと聴く人を引き込んでしまう。もう何度も言いますが、正に”甘い毒”そのものだから、えぇ、これはもうね、しょうがないんです。ペッパーをよく知らないという人もですね、これはもうそういうもんだー、しょうがないんだーと思いながらここからの記事を読んでくださいね。

今日は人気の高いアート・ペッパーのアルバムの中でも「モダン・アート」と並んで特に代表的な名盤と言われている「ミーツ・ザ・リズムセクション」であります。

これはですのぅ、当時の西海岸白人ジャズ、いわゆる”クールなウエスト・コースト・ジャズ”を代表する人気者のアート・ペッパーと、東海岸ニューヨークの粋でイナセなモダン・ジャズ、いわゆる”ハードバップ”を代表する大物のマイルス・デイヴィスのバンドのピアノとベースとドラムのリズムセクションの3人が競演した、今で言うところの「夢のコラボ企画」の走りみたいなアルバムなんですね。

当時はアメリカもニューヨークを中心とした東海岸と、カリフォルニアを中心とした西海岸では、そのスタイルが大きく異なっておりました。

そんなスタイルの違う人気者同士を共演させたら、きっと目新しいカッコイイものが出来るに違いない!ジャズ好きならばそう思うのが自然でありますね。そうでなくてもジャズが好きな人というのはジャズのどこが好きかというと

『個性的なプレイヤー同士が、その個性を思う存分ぶつけ合うことで生まれるマジック』

というのが好きなんです。

んで、ペッパーと”リズムセクション”という一言だけでもうあぁコイツらだとジャズ好きにはピンと来るぐらいに有名だったマイルス・デイヴィスのリズムセクション、すなわちピアノのレッド・ガーランドとベースのポール・チェンバースとドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズの3人による演奏は、果たしてどんな具合に仕上がったのでしょう?

はい、これが言うまでもなく「大成功」だったんです。

元より当時のマイルス・デイヴィスのバンドは、ハードドライヴィングなリズムを繰り出した派手な演奏、ホットな演奏をすることも出来ましたが、マイルスが目指すところは「勢いだけに頼らない都会的な洗練を生み出すサウンド」であり、選ばれたメンバー達もそれぞれそのコンセプトに適う実力とセンスを持った人達でした。

彼らのリラックスしてて都会的な”小粋”をふんだんに振りまくグルーヴ(特にレッド・ガーランドの優雅で気品に満ちたピアノはカッコイイですね)を得たペッパーが、持ち前のメロディアスな感性を全開にして吹かない訳がありません。

一説によるとこの日のレコーディングに臨んだペッパーは

「うえぇ、あのマイルス・デイヴィスのリズム・セクションと一緒にやるのかぁ。怖いなぁ・・・そうだ、クスリをキメたら少し大丈夫になるだろう」

と、自宅でラリラリになっていて、演奏どころか歩くのもヘロヘロな状態で、それでもビビリながらスタジオに入ったとか言われておりますが、本人の回想によると

『ん〜、マイルスのバンドとか言われても実際よくわかんなかったんだよね。ニューヨークで人気なんだって?ソイツらが西海岸にツアーに来て、レコード会社はわざわざ一緒にレコーディングさせるって言う。正直あんま乗り気じゃなかったのよ。オレはあん時体調悪かったし、何しろスタジオには1日しか入れない。で、一緒に演るのは知らんヤツらだし曲もマトモに準備してない。ビビッてなんかないよ、ただ困るよね。だから何とかバックれてやろうと思ったの。遅刻してきたのと体調悪かったのはそもそもクスリが原因だったってのは正直すまんかった』

ということだそうで、とにかく「知らない人と一緒に演奏するの悩んじゃうよね」というぐらいペッパーが物凄く繊細だったというのと、東海岸流儀の”出たとこ勝負のセッションをそのまんま一発録りしよう”というような感覚が、恐らくこの頃の”しっかりと譜面を用意してリハーサルもたっぷりやってからレコーディングする”というのが当たり前の西海岸のミュージシャン感覚にはちょっと理解できないことがあったんではないかと思われます。





【パーソネル】
アート・ペッパー(as)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
2.レッド・ペッパー・ブルース
3.イマジネーション
4.ワルツ・ミー・ブルース
5.ストレート・ライフ
6.ジャズ・ミー・ブルース
7.ティン・ティン・デオ
8.スター・アイズ
9.バークス・ワークス
10.ザ・マン・アイ・ラヴ (ボーナス・トラック)


ところが、そんな繊細さとか感覚の違いとかを、当日ややラリラリになりながらも演奏では見事克服したペッパーも偉いんですけど、ペッパーの緊張を解いてベスト・プレイを導き出したガーランドとチェンバースとフィリー・ジョーの3人が偉いと思いますわ。

こっからは想像の会話です。

ペッパー「・・・あ、どうもお疲れ様です。ご一統様お揃いで・・・」

ガーランド「おうおう、西海岸のスター様のご到着だ。いやぁはじめまして、噂はかねがね聞いてるよ。すっげぇクールなプレイするんだってな。ウチのリーダーも褒めてたよ(嘘、マイルスが注目してたのはチェット・ベイカーの方)」

ペッパー「いやそんな、嬉しいな。今日はひとつお手柔らかによろしく・・・。ん?君随分若いがいくつ?」

チェンバース「ポールだよ。歳はう〜んと、22です」

ペッパー「(ええぇ、こんな少年みたいなベーシストがそんな凄いのか・・・)よ、よろしくポール」

フィリー・ジョー「あー、えーっと、お兄さん大分ヘロヘロじゃねぇか。キメてきたんだろ?後でオレにもちょっと(以下不適切につき割愛)」

ペッパーとフィリー・ジョー(ニコニコ・・・)←会話の結果一番意気投合している。

エンジニア「よーし、じゃあはじめるか!時間ないぞー、一発でバシッとな」

ペッパー「え?ちょっと待って、まだ準備が。それに何やればいいのか・・」

ガーランド「オーケー、アート。まぁブルースやろうか」

ペッパー「(ブルースなら・・・)あ、わかった」

という訳で初顔合わせではお約束のブルース(ここではACEがそれです)を演奏して、お互いの実力の高さ、特にペッパーから見て、この3人の「ツーといえばカー」の見事な即応能力は相当にヤル気を出させて余りあるものだったと思います。

「オレ、こんなフレーズ思いついたんだー」

とガーランドが弾くピアノに合わせてバックの2人が完璧なリズムを提供、それに触発されてアドリブを繰り出すペッパーのプレイを気に入って「よし、じゃあこの曲はオレらの名前を取って”レッド・ペッパー・ブルースでどうだ?」と、笑いも混ぜながら和気藹々の中進むブルース・セッション。

やがて機嫌がよくなった4人で

「スタンダードならどの曲がいい?」

「オレ、あの曲好きなんだー」

「マジか?それニューヨークでもウケてるぜ」

「じゃあやろう」

と、スタンダードのセッションが始まって、生まれた名演が冒頭の『ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ』最初の3音が朗々と伸びてゆく大変にふくよかなこの曲は、ヴォーカルものではヘレン・メリルがクリフォード・ブラウンと一緒にやったもの、インストものならコレといわれるぐらいに素晴らしく完成度の高い”歌”が聴けて、文句ナシの一曲目ですね。

あと、ノリにノッて急速調のリズムの上でペッパーが珍しくアツく吹きまくる『ストレート・ライフ』、フィリー・ジョーが得意のラテン・リズムを転がしながら、ペッパーのアドリブから艶やかな色気を最大に引き出しております。

とにかくブルースもスタンダードも、ペッパーと”リズム・セクション”それぞれのリラックスした中にアツく燃える瞬間がいくつもある、見事にガチンコなやりとりの中で最高に活きておりますね。

最初は

「おうおう、西の代表ペッパーの軽快によく歌うサックスと、東のナンバーワン・リズムセクションのハードに粘るグルーヴの掛け合わせが最高だわい」

とか思ってて、実際にそういう味わいの違うもの同士の融合の奇跡な部分はあるんですが、聴く毎にペッパーの持つ狂おしいメロディ感覚と、リズム・セクションの小粋な深みのある演奏が、本当に自然に溶け合ってるなぁと思って感動し、その自然な心地良さに酔えるアルバムだと思うに至ります。

本当にたった1日の初顔合わせセッションなのに演奏のクオリティは高く、捨て曲もなく、この4人ずっと一緒に演奏してきた人達なんじゃないか?とすら思うほどです。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月27日

アート・ペッパー モダン・アート

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アート・ペッパー/モダン・アート
(Intro/ユニバーサル)


「サーフ・ライド」で若さ炸裂の爽快なペッパーのアルト・サックスを聴いていたら、ついあれも聴きたいこれも聴きたいと、この3日ぐらいすっかりアート・ペッパー祭状態でした。

サックスといえば突き抜けた過激なスタイルも大好物なんですが、そういう激しいヤツをガーッと聴いた後に、メロウなトーンで優しく切なく吹いているサックスを聴くと「おぉ、かっこいい・・・」と、クラッとなってしまいます。

でも、そこはジャズですがら、単純に”綺麗”とか”上手い”とかいうのではダメで、一見端正で破綻のない演奏の内側に、どこかやりきれない哀しさとか、もっといえば背後にうっすら感じる破滅の気配みたいなものがないと満足できません。

いかにも真夜中のバーなんかが似合う、ニューヨークの黒人ジャズに比べ、軽妙でオシャレ、カラッとした昼間の空気が似合って健康的だね、なんて言われる1950年代のウエスト・コーストの白人ジャズではありますが、実はアタシは、この一見健康的で何の屈託もなさそうな明るいジャズの中にこそ、そういった”どうしようもなさ”の類の気配をとても感じて、胸がギューッとなってしまうのです。

で、アート・ペッパーです。

50年代にジャズという枠組みを超えて、ハリウッド俳優並の人気を誇ったジャズ界の二大色男といえばチェット・ベイカーとこのペッパーですが、彼らの演奏は、正に切なさと狂おしさと、マイルドな表現の奥底に秘められた破滅の匂いそのものでした。

デビューしたその頃から、いわゆる重度の麻薬中毒患者だったんですね。

ペッパーの方は懸命な断薬治療をして中毒を克服しており、ベイカーの方は晩年までヘロインにドップリで、最後はホテルの部屋から落下するという、事故なのか自殺なのか他殺なのかよく分からない不幸な最期を迎えております。

最期に関してはともかく、50年代から60年代に活躍したジャズマンのほとんどは、麻薬や酒、ギャンブルに溺れ、異性関係でのトラブルをいくつも抱えるなんてことは珍しくないことでありました。物理的には黒人であれ白人であれ、来るか来ないか分からない仕事で一攫千金を狙い、レコード会社からは印税を搾取され、マフィアが経営するクラブで日銭を稼ぎ、少しカネが入ったら彼らの”ビジネス”の顧客にされて、色んなところから骨の髄まで搾り取られる生活の中におり、一方で華やかなステージで脚光を浴びてモテまくる。

こんな中にいたら、マトモな感覚なんか来るってしまいます。繊細で感性が敏感な人ほど、何が信じられることで何が信じられないことかの判断が崩壊し、唯一信じられるもの=「確実に現実から逃避させてくれるもの」としての麻薬に手を出すことに、さほど抵抗はなかったのかも知れません。

悲しいかなこれが当時のミュージシャンを取り巻く環境でありました。

才能に溢れながらも表現のことや生活のことで多くの苦悩を抱えていた若き日のペッパーも、苦悩の果てにやぶれかぶれになってヘロインに手を出したであろうことは想像に難しくありません。

デビュー作「サーフ・ライド」のセッションをすべてレコーディングした後に彼は麻薬の不法所持で最初の逮捕。最初は微罪だったので、療養施設でリハビリをして社会復帰した後に西海岸で最も売り出し中のジャズ・レーベル”コンテンポラリー”と契約を交わすのですが、実はこの間に小遣い稼ぎ(実際は麻薬を買うカネ欲しさ)にイントロという小さなレーベルでの仕事を一個だけ引き受けます。

スタジオに集められたのは”サーフ・ライド”でも素晴らしいコンビネーションをキメた、この時期の西海岸サウンドにはなくてはならないピアニストのラス・フリーマンに、ベースのベン・タッカーにドラムのチャック・フローレスという一流どころの面々でありましたが、ペッパーにとってはそんなことよりも日銭が欲しい、早くしようぜ、何やるの?うぅ〜ん、まず適当にブルースやって、後はスタンダードでもやるか。はい、じゃあはじめよう、ワン、ツー・・・。





【パーソネル】
アート・ペッパー(as)
ラス・フリーマン(p)
ベン・タッカー(b)
チャック・フローレス(ds)

【収録曲】
1.ブルース・イン
2.魅せられて
3.君微笑めば
4.クール・バニー
5.ダイアンのジレンマ
6.サヴォイでストンプ
7.恋とは何でしょう
8.ブルース・アウト


ぐらいの感じだったと云います。

実はこのペッパー、最初の逮捕と治療もどこ吹く風で、シャバに出たらもうとっととヘロインを仕入れて打ってたんですね。

初期ペッパーの名盤といえばもうひとつ「ミーツ・ザ・リズム・セクション」というアルバムがありますが、コレもレコーディングのときはもうクスリでヘロヘロになって、スタジオに遅刻してきて、吹いてる時も意識朦朧で大変だったそうなんですが、この時期のペッパーのコレが”平常運転”なのです。

でも、そんなヘロッヘロでまるでダメな状態のペッパー

「本当はチャーリー・パーカーみたいにエキサイティングなトーンでバリバリに速い曲を吹きまくりたいんだー!」

という思いとは裏腹に、麻薬の悪影響で思うように気合いが入りません。

でもね皆さん、ここからがあり得ない話なんですが、そんな”気合いが入ってないはずのペッパーの音”が、レコーディングされた演奏からは何とも甘く艶やかなトーンで、独特の憂いを帯びた美しい旋律を奏でているんです。

麻薬中毒のことを知らなければ、全く破綻のない「こういうスウィートな演奏をする人なんだ」で当たり前に通用する音です。

(恐らくは)ペッパーの演奏前の状態を見て「あぁ、コレはオレらが必死で盛り上げないとダメだぞ」と思ったであろうメンバー達の、すこぶる爽快な”カチッ”とした綺麗にスウィングするビートは全編に渡って見事で、特にバンドの中心となっているラス・フリーマンの決して主役を押しのけない、でもソロの中では全力で歌世界を築き上げる知性と品性に満ちたピアノは素晴らしいのですが、冒頭の「ブルース・イン」エンディングの「ブルース・アウト」で、ペッパーとピッタリ呼吸の合ったベースを聴かせるベン・タッカー、もう最高です。

そんなバックのキッチリしたグルーヴに、ペッパーの情緒てんめりで妖しく美しく鳴り響くアルト・サックスの音、えぇいもう麻薬中毒とかそういう色眼鏡ナシで聴きましょうや。

・・・でも、やっぱりどこか危険な香りがするよぉ!

この独特な危険なカッコ良さは、マイナー・レーベルでのちょっとしたレコーディングのつもりだった、ヘタをすれば録音したペッパー本人の記憶にもあんまり残ってないぐらいのレコードを、奇跡の大名盤に育て上げます。

くれぐれもペッパーは本調子ではないのです。で、どんなに素晴らしい才能を持っていても、麻薬がそれを終わらせることはあるけれど、開花させることは絶対にないのです。でも、このアルバム全編を覆いながらペッパーのプレイのあちこちから胸の内を破って出てくるかのような切ない切ないエモーションは、ちょっと何事でしょうという感じであります。やっぱりどうしようもなくジャズなアルバムなんです。

この音と出会ってしまったばかりにアタシの人生どこか変わってしまったかもなぁ・・・。

でも、まぁいいか。







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2017年06月26日

アート・ペッパー サーフ・ライド

4.jpg
アート・ペッパー/サーフ・ライド
(Savoy/日本コロムビア)

笑顔でサーフィンに興じる派手なビキニ姿の女性のイラスト。

いくら目を引くとはいえアナタ、これが1950年代に出されたジャズのアルバムのジャケットだと信じられますか?

そうなんです、ジャケットだけを見る限りではまーったくそんな雰囲気は致しません。

でもこれ、正真正銘の立派な50年代ジャズなんです。

中で演奏している方はもちろんビキニ姿の女性ではなくてこの人

5.jpg

はい、アート・ペッパーです。

1950年代にはチェット・ベイカーと並んで「ジャズ界を代表するイイ男」として抜群な人気があった人で、でも顔だけじゃなくてその軽やかさと芯の強さを併せ持つアルト・サックスのプレイにおいても、間違いなく時代を代表する実力者の一人でありましょう。

この時代のジャズ・シーンは、主にニューヨークのナイトクラブでの興行を中心とした東海岸ジャズと、ハリウッド等の映画産業と密接な関わりを持つ西海岸ジャズとに大きく分かれておりました。

ニューヨークでは40年代の後半にチャーリー・パーカーらによって、非常にスピーディーで迫力に満ちたジャズ、つまりビ・バップが生み出され、とにかく現場でのアドリブ合戦に強いプレイヤーが次々とそれまでの常識を覆すような演奏でシーンを沸かせておりました。

それに対する西海岸のジャズは、夜はクラブで演奏するミュージシャン達も、ちょくちょいく映画や舞台の音楽の仕事に呼ばれ、スタジオでしっかりと譜面を見ながら、アンサンブルを重視した知的かつ軽妙な演奏を得意としておりました。

とはいえ、東と西、それぞれの地域のジャズマン達が、互いのことなど全く眼中になく、それぞれのスタイルの範疇でジャズをやっていたのかといえばそうではなく、西海岸のミュージシャン達はビ・バップのスピーディーでエキサイティングな演奏をセッションではこぞってやっておりましたし、東海岸のミュージシャンの中でも、マイルス・デイヴィスのような、若く探究心に溢れたミュージシャン達は西海岸のバンドのアレンジを熱心に研究し、またツアーで互いに行き来をしながら親しくセッションをしたりレコーディングの話なんかも持ち掛け合ったりしながら、1950年代は東と西で競合しながら互いの良いところを取り込んで、両方の個性がグングン確立されていった時代、と言えましょう。

さて、本日の主役のアート・ペッパーですが、この人は西海岸にこのバンドありと言われたスタン・ケントンのビッグバンドに若き白人アルト奏者として籍を置くことでミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせました。

ケントンのオーケストラは、クラシックの技法なども積極的に取り入れ「ホールでダンスするためだけのジャズではなくて、コンサートでキチンとした鑑賞に耐えうるジャズを作ろうよ」と、緻密でドラマチックなスコアを練り上げて楽曲を完成させ、また「コイツはできる」と思ったメンバーには、そのアレンジの中で出来るだけ本人の感性に任せたソロを取らせる人でもありました。

ペッパーはそんなケントンのバンドで、才能をグングン発揮して1952年、27歳の時に満を持してソロ・デビューのレコーディングを行います。

その後彼はソロ・アーティストとして知らない人はいないぐらいの存在になり、その端正なルックスに劣らない詩的な叙情に溢れたサックス・プレイで多くの人の心を捉え、また、麻薬中毒による長い社会不在と奇跡の復活を繰り返した正にジャズマンを地で行くような劇的な人生などなど、まぁとにかく話題には事欠きませんが、本日はペッパーの記念すべき1952年の初リーダーセッションと翌年翌々年のセッションを集めたデビュー・アルバム、冒頭でジャケットのお話をした「サーフ・ライド」をご紹介いたしましょう。




【パーソネル】
アート・ペッパー(as)

(@〜B)
ラス・フリーマン(p)
ボブ・ウィトロック(b)
ボビー・ホワイト(ds)

(C〜E)
ハンプトン・ホーズ(p)
ジョー・モンドラゴン(b)
ラリー・バンカー(ds)

(F〜K)
ジャック・モンテローズ
クロード・ウィリアムソン
モンティ・バドウィック
ラリー・バンカー

【収録曲】
1.ティックル・トゥ
2.チリ・ペッパー
3.スージー・ザ・プードル
4.ブラウン・ゴールド
5.ホリデイ・フライト
6.サーフ・ライド
7.ストレート・ライフ
8.ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト
9.シナモン
10.ナツメグ
11.タイム・タイム
12.アーツ・オレガーノ



さてさてアタクシ、冒頭で「このサーフィンのジャケットがジャズのアルバムなんて信じられないわ」と申し上げまして、読者の皆さんもにわかにそのようにお思いになっておるとは思いますが、実は1950年代はまだロックやポップスもない時代、ブルースからロックンロールが生まれチャートではR&Bが破竹の快進撃を続けていたことは確かに事実ではありますが、この時代ポピュラー音楽といえばやっぱりジャズだったんです。

で、最新のトレンドだった西海岸のクールなジャズを売り出すために、ジャケットに持ってきたレジャー界の最新トレンドがサーフィン。

元々はハワイやポリネシアの極めて民族的な意味合いが強かったこの海での遊びがアメリカに渡ったのは、1900年のアメリカによるハワイ併合がきっかけであります。ハワイに入植した若い軍人達が兵役を終えてこの遊びを本国に持って帰ったのですが、アメリカで温暖かつサーフィンが出来る広い海岸があるという条件を満たしていたのが西海岸のカリフォルニア。

で、第二次世界大戦も終わってアメリカが豊かになり、レジャーとかリゾートとかいう考えがぼちぼち定着し始めた1950年代初頭、アメリカの西海岸に住む、裕福な白人の若者達の間で「サーフィンっていうクールな遊びがあるんだぜ」と流行りました。日本で言うところの太陽族みたいなもんですな。

つまりこの、オシャレ最先端のジャケットの中に入っているのは、サーフィンのメッカ西海岸の最高にカッコイイ音楽なんだぜ。ということを、実に当時の若者に分かりやすく説明しているのでありますよ。

ビーチボーイズの「サーフィンUSA」が世界中でヒットしてブームが巻き起こる10年以上前に、こんなところで音楽とサーフィンのコラボは既に始まってたんですなぁ。

SP用に録音していた音源がLPになって、ジャケはその時に作られたとはいえ、これは物凄く歴史的なことかも知れません。

おっと、ジャケットの"サーフィン"の話はこれに終わりません。実は内容とも密接にリンクしておりまして、それまでの西海岸ジャズといえば、先に申し上げたように、綿密なアンサンブルが生み出す心地よいグルーヴにノレるものと相場が決まっていたのですが、ここでペッパーは、東海岸のホットでスピーディーなビ・バップのやり方を大胆に取り入れたスリリンなプレイを繰り広げて、新しい西海岸ジャズの「速いけどクールなスタイル」を確立しております。

初期のペッパーといえば、繊細で軽やかなフレージング。そいつにたっぷりの情緒や哀感を乗っけて吹く50年代後半のスタイルがすぐに思い浮かびますが、もっと初期のコチラでは、意外やスパッと芯の強い音で勢いに任せてひたすら吹きまくる、若さと勢いのあるスタイルです。

ハンプトン・ホーズやラス・フリーマンなど、西海岸一流のバックによるスマートな伴奏を得てかっ飛ばすワン・ホーンの前半に、ジャック・モントローズのテナーとハイテクなやり取りを聴かせつつ、ソロになるとやっぱりたまらなくなって疾走するかのような後半、どちらもかなりパワフルで勢いありすぎてもう笑いしか出ないぐらいの快演で、このスリル、疾走感はたとえるならばやはり波乗りでしょう。









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2017年06月16日

ソニー・クラーク クール・ストラッティン


5.jpg

ソニー・クラーク/クール・ストラッティン
(BLUENOTE/EMIミュージック)

はい、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」であります!

いやもうこのアルバムをきっかけにジャズを知った人がどれぐらいいるだろう、このアルバムからはじまって、今広大なジャズの大海原のまっただ中にいる人はどれぐらいいるだろう、というほどの大人気のアルバム、いわゆる「名盤」というやつでございますね。

とにかく日本では、ジャズの名盤なんとかとかいう本が出されたらその本の表紙を飾ることがとても多く、ちょいとオシャレなカフェなんかでもレコードやポスターで飾ってあったりします。

とりあえず人気の理由のその中身に関しては、後で解説するとして、まず第一にこのジャケットですよ。ジャズ初心者、あるいはジャズとかよくわからないけど聴いてみたいという心をくすぐる、何というか「ジャズ」と聞いて何となくイメージが湧き上がるこのクールすぎるポートレイト、えぇ、最高じゃないですか。

大体アレだ、このかっこいいジャケットに、タイトルが「クール・ストラッティン」って、うん、英語の意味はよくわからんが、言葉が表紙に合ってるねぇ。ところでお前さん”ストラッティン”ってどういう意味だい?あぁそいつは「イイ女が気取って歩く」っつう意味のスラングだよ。と、調子に乗って小噺のひとつでもやり出したいぐらいのジャケットです。

あのね、アメリカにこういう言葉あるかわかんないけどね、こういうのを”粋”って言うんだね八っつぁん。何言ってんだい熊さん、お前さん字をちゃんと読みなよ”クール”ってのがアメリカで言うところの”粋”って意味なんだぜ。

・・・えぇ、はい。小噺がとめどなくなりそうなので(汗)

ジャケットの魅力に関しては、つまりそういうことでございます。あのね、ジャズのことなんかよくわかんないんだーって人が見ても「カッコイイ写真だな」「綺麗な脚だな」って思うでしょ?何となく雰囲気で。つまりその雰囲気が大事なんです。ジャズなんてもんは小難しくああだこうだ言わないでも、雰囲気で十分に楽しめるもんなんです。

先に結論が出てしまいましたが、ソニー・クラークという人と、このクール・ストラッティンっていうアルバムを、やれジャズの巨人だとか、歴史を変えた一枚だとかそういうんでなしに、純粋に耳で聴いてジャケットを目で楽しんで「あ、これはいい音楽だ」と素直に思ってそれを暖かく共有している日本のジャズ好きは素晴らしいです。

そうなんです、ソニー・クラークという人は歴史に大きく足跡を残したり影響を及ぼしたりした、いわゆる”巨人”ではなくて、むしろそんなに有名でもないまま若くしてあっけなく亡くなった人であり、また、彼の音楽も、歴史を大きく変えたとか、斬新で刺激的だとかそういうのとは対極にある、どっちかというと”フツーのジャズ”です。

でもその”フツー”が凄い、他の人にはちょっと真似できない味わいを、この人は確実に持っておるから凄いんですよ。聴いて一度でも「あ、いいね」と思ってしまったらついつい気になって二度三度聴いてしまうような、本当に麻薬のような味ですね。



【パーソネル】
ソニー・クラーク(p)
アート・ファーマー(tp)
ジャッキー・マクリーン(as)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.クール・ストラッティン
2.ブルー・マイナー
3.シッピン・アット・ベルズ
4.ディープ・ナイト


さぁ、もうジャケットに「イイネ!」と思ったら、迷わず中身を聴いてみましょう。

アナタはこのアルバムのジャケを見て、どんなサウンドを思い浮かべるでしょう。都会の夜の空気? ちょっとモノクロームな感じのくすんだピアノや管楽器の音?それとも酒とタバコの匂いが充満するバーかどこか?

はい、イメージ膨らませましょうね。アナタがイメージを膨らませてこのアルバムに収められている音楽を耳にしたならば、多分それはどれも正解です。そうです、これがジャズの音です。

ちょいと湿った丸みのあるトーンで、重く切ないムードを込めた音を鍵盤に落とし込むソニー・クラークのピアノの魅力と、タメの聴いた、いかにも黒人ジャズって感じのファンキーな楽曲、そしてその両方に潜む、麻薬のような魅力を引き出して止まない共演者達のややワルな個性。これがいいんですよ。

トランペットのアート・ファーマーは、けたたましく吹かない知性派と呼ばれている人で、そのひとつひとつの音を丁寧に紡いでゆく、やっぱりちょっとくぐもった音色で、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンも、この人は飛ばせば凄く飛ばすことも出来る人ですが、基本的に明るく鳴るアルト・サックスという楽器をよりジャズっぽい雰囲気に合わせるためにあえてチューニングを落とした、ハスキーな音が印象的。

この、実に渋いトランペットとサックスが表に立って絶妙な呼吸でタメの聴いたアンサンブルで粋なテーマを奏でてアドリブに入ってゆく、そのバックで後ノリの和音で良いアクセントを突きながら、ミドルテンポの快調なノリにどこか引きずるような影を付けてゆくクラークのピアノ、これがブルースとか、ちょっとラテンのリズムが絡んだマイナー調のナンバーとかと絡むと、もうそこはジャズというジャズの”薄暗い天国”なんですね。

あぁ、もうあえて皆まで言いますまい。アタシもモダンジャズ初心者の頃に買って、その時「よくわからんけど何かいいな」と好んで聴いてました。で、今久々に聴いてみてもやっぱり”何かいい”これですよこれ、つまり”雰囲気がいい”、つまり何十年聴きつづけても飽きない。

派手派手じゃないけど、こういう深い味わいが滲むアルバムが「初心者のために」と、結構分かりやすい位置にあるって、すごく幸せなことなんだな。

という訳でアタシはあと5回ぐらいコレを連続で今日は聴きます、あぁたまんないね。。。






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2017年06月10日

ソニー・クラーク・トリオ(BLUENOTE)

4.jpg
ソニー・クラーク・トリオ
(BLUENOTE/EMIミュージック)

さて、昨日の引き続き”そこはかとなく哀愁のピアニスト”ソニー・クラークであります。

でもって「ソニー・クラーク・トリオ」という全く同じタイトルでありながら、中身はまるで別物のブルーノート盤。

はい、実はこのアルバム、クラークの数少ない作品の中でも人気、というか「ジャズのピアノトリオ作」という意味においては我が国では屈指の人気盤で、今でもブルーノートのタイトルが再発されると決まって売り上げの上位が定位置という、ものすごく有名なアルバムなんですよ。

その昔お客さんと

「ジャズ入門用にどんなものをオススメすればいいか?」

というテーマで長々と話し込んだことがありまして、アタシはどっちかというと

「ん〜、聴いてもらって”あ、コレが好き!”ってのを選んでもらえばそれでいいんじゃないですかねぇ」

と、割とテキトーな感じだったのですが、お客さんの方が真剣に、色々と提案をしてくれました。

その結果

【初心者にオススメできるジャズ】あるいは【初めての人も安心して聴けるジャズ】の定義というものが出揃って、ザッとまとめればこんな感じになります。

・ジャケットがオシャレ 

「これは名盤」とか言われても中身知らなかったら、だからまずは持っていて嬉しくなるようなセンスのあるジャケットだと聴いてみようかな?って気持ちになる。

・やっぱりピアノもの

もちろんサックスとかトランペットとかビッグバンドとか、それぞれの魅力は奥深いものがあるけれど、まずは、じっくりも聴けるしサラッと流してもいいもの。とくればやっぱりジャズの基本のピアノ・トリオじゃなかろうかと。

・選曲は親しみのあるスタンダード系で

スタンダードというのは、色んな人が演奏している馴染みの曲ですな。たとえばテレビのCMなどでよく使われるような「あ、これは知ってる。どこかで聴いたことある」という曲がアルバムに入っていれば、それだけ親しみも湧くでしょう。

・それでいて軽くない、ある程度”重み”のある演奏

とはいうものの”オシャレ””聴きやすい””親しみやすい”だけでは飽きてしまいます。そこはジャズならではのディープさ、飽きのこない尽きせぬ味わいが、聴けば聴くほどジワッと滲んでくるものが長く愛されます。


そんなことを柄にもなくクソ真面目に論じておりましたら当然

「じゃあその条件を満たすアルバムってあるの?」

という話になりまして、はい、ここでびっくりしたのが、ほんの数秒で同時に

「ソニー・クラークのトリオ!」

と、いう結論が出ました。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(P)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.ビ・バップ
2.時さえ忘れて
3.トゥー・ベース・ヒット
4.タッズ・デライト
5.朝日のようにさわやかに
6.四月の思い出


嘘のような話ではありますがホントです。

実際にアタシもそのお客さんも、モダン・ジャズとかピアノ・トリオとかよーわからん聴き始めの時に


「このジャケ、よく見るしカッコイイんだけど有名なアルバムなのかな?じゃあ買ってみようか」

と購入して、すっかりその魅力にヤラレて夢中で聴いていたという共通の経験があります。

はい、クラークのピアノは、先日のTime盤にも書いたように「軽快にスイングしててもどこか哀しげに漂うムード」の魅力ですね。

こちらブルーノート盤でのメンバーは、ベースにポール・チェンバース、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ。

どちらもクラークとは同年代の若手ですが、2人は既にあのマイルス・デイヴィスのバンドのメンバーとして大いに名を上げていた時期で、人気実力共に一流のバックを付けて、いかにブルーノートがクラークを売り出したかったかも分かります。

で、このアルバムでのクラークは、粘りのある音色でとてもよく歌うチェンバースのベースと、シンバルが派手にガシガシ言うフィリー・ジョーのラウドなドラムに乗ってじんわり。

そう、普通ならよく動くベースと躍動感溢れる激しいドラムに乗せられるままに、ガンガンに弾きまくってしまいそうなものですが、クラークはスピードに乗りながらも、湿り気のある音色で、一音一音をじっくり的確なフレーズを選びに選んで弾いており、その”間”と”タメ”によってやっぱりこの人ならではの哀感が余韻となってジワジワ流れておるのです。

選曲は全部有名スタンダードです。

どの曲も素晴らしいのですが特に名演として名高いし、実際聴いて最高にカッコイイとアタシも思った「朝日のようにさわやかに」この”引きずるような”とよく言われるピアノ演奏に、モダン・ジャズのカッコイイところは良い感じに凝縮されとると思います。ハイ。

同じタイトルでも雰囲気とコンセプトの戦前違うBLUENOTEとTIMEのソニー・クラーク・トリオ。もちろんどちらが好きかは聴く人の好み次第ですが、やっぱり両方聴き比べてそれぞれの良さを皆さんには噛み締めて欲しいです。この人こそ噛めば噛むほど味の出る人ですよ。







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2017年06月08日

ソニー・クラーク・トリオ(Time)

887.jpg

ソニー・クラーク・トリオ
(Time/Solid)


ジャズのピアニストの中で、不思議と日本でだけ異常に人気という人がおります。

それが今日ご紹介するソニー・クラーク。

1950年代のモダン・ジャズの典型的な”ファンキーで味わいのあるピアノ”であり、どちらかというと派手にダーッ!と弾きまくるタイプではなく、じんわりと情感を込めた一音で聴かせるタイプの職人的なタイプのピアニストなんです。

で、50年代とか60年代の、ジャズ全盛期の頃は「味があるよね〜」というタイプのピアニストってすごく多かったんですね。

ザッと名前を挙げますと、ジュニア・マンスだとかタッド・ダメロン、エルモ・ホープ、それからマイルス・デイヴィスは実はこのタイプのピアニスト大好きで、有名どころだけれどもマイルスのバンドにいたレッド・ガーランドやウィントン・ケリーなんかも実はこのタイプであります。

で、そのマイルスや初期のバンドのピアニスト達に多大な影響を与えたアーマッド・ジャマルなんかもいいですね。ジャマルの繋がりで言えば同じシカゴのARGOレーベルに一枚だけアルバムを残して儚く消えていったドド・マーマロサなんかも・・・あ、いや、キリがないのでこの辺にしておきますが、とにかく

「ジャズを聴いてみよう」

から

「自分だけの好きなジャズを見付けたい」

というステップを経るにあたって、こういった、まぁ簡単に言ってしまえば、渋く通好みな人達の演奏に

「うわぁ、何かわからんけどすごくいいわぁ〜」

となるのは凄く素敵なことなんですね。

おっとっと、話が大分横道を経てしまいそうなので、ソニー・クラークに戻します。

ソニー・クラークという人は、そんな”何かいいね”と言われてそこはかとなく愛されるタイプのピアニスト達の中でも、特に日本人に愛されるサムシング・エルスを持っております。

そのサムシング・エルスとは何か?ということになりますが、コレが

”そこはかとない哀愁”

なんです。

演奏の中で出てくるマイナー・コードを、ちょっとした間とタイミングでもって引きずるように切ない余韻を匂わせる独特の演奏と音色、それは一言でいえば”哀しさ”なんでが、といって哀愁タップリとかそんなのじゃなく、ファンキーな曲の中にジワッ、ジワッと染み込んでいる、本当の意味での”そこはかとない哀愁”であります。

その”そこはかとなさ”というのは、実はアメリカ人にはよーわからんらしく、日本人でソニー・クラークのファンが多いことを知ったアチラのジャズファンが

「ソニー・クラーク?うん、まぁ確かに味のあるいいピアニストだよ、でも何で日本でそこまで人気ダントツなのかがよくわからん」

と、首をかしげたという話もあちこちで読んだり聞いたりして、すっかりおなじみだったりするんです。

このクラークの”そこはなとない哀愁”をすっかり気に入ってかわいがっていたのが、ジャズではこれはもう支持率No.1の人気レーベル「ブルーノート」であります。

モダン・ジャズ・ピアノといえばこの人に影響を受けていない人はいない巨人、バド・パウエル直系の、よく跳ねるバップ・ピアニストでありながら、彼が繰り出すフレーズには、どこか後を引く切ない味わいがあった。

これを聴き逃さなかったブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンは、クラークとすぐさま契約を交わし、その年(1957年)と翌年のうちに何と4枚のアルバムを作りました。

麻薬中毒で若くして亡くなったクラークが生涯に残したアルバムはたったの6枚なんですが、そのうち5枚がブルーノートでの作品であり、もう何か説明するのもまどろっこしいぐらいの、以下のアルバムなんかは、今でも大人気の名盤として多くの人に聴かれ、そしてこよなく愛されております。


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クラークはそんなこんなで「ブルーノートを代表するジャズマン」と、我が国では認識されていて、その認識はおおむね間違いではないんですけど、実は、彼が整然にたった一枚だけ別のレーベルに残したアルバムがあって、そしてその一枚というのが、これがどう聴いても彼の本質を無駄なく浮き彫りにしたピアノトリオの名盤なのでご紹介します。

あ、散々ブルーノートの話で煽ってすいませんね(汗)「ブルーノートでのソニー・クラークに関しては明日以降気合い入れて書きますんで許してちょう。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(p)
ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
マックス・ローチ(ds)

【収録曲】
1.マイナー・ミーティング (take8)
2.ニカ (take5)
3.ソニーズ・クリップ
4.ブルース・マンボ
5.ブルース・ブルー (take3)
6.ジァンカ (take3)
7.マイ・コンセプション
8.ソニア (take1)
9.マイナー・ミーティング (take10)*
10.ニカ (take2)*
11.ニカ (take4)*
12.ブルース・ブルー (take1)*
13.ジァンカ (take1)*
14.ソニア (take3)*

* ボーナストラック



はい、1961年録音の「ソニー・クラーク・トリオ」であります。

実は同じタイトルでブルーノートからもピアノトリオのアルバムが出ていてややこしいので、アタシは「TIME盤」と呼んでおります。えぇ、そうなんです。クラークが、亡くなる2年前に突如フイッと違うレーベルで吹き込んだアルバムで、時期も時期だけにあぁそうか、ブルーノートとの契約が切れたから他のレーベルで仕事してたんだ。と思ったら、この後に再び古巣のブルーノートで「リーピン・アンド・ルーピン」というラスト・アルバムを吹き込んでいるので経緯はよくわかりません。

アタシも最初は

「ふーん、クラークのブルーノート以外でのアルバムねぇ。よくわからんけどカネがなくなったからテキトーに吹き込んだ”日雇い”の仕事なんじゃね?」

とか、結構ナメてかかってたんですが、ナメてました、すいません。コレ、クラークの本気が他のどのアルバムよりも凄まじく感じられる名盤です。

まず、クラークがトリオで一緒にレコーディングしているのが、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)とマックス・ローチ(ドラムス)という二人の御仁。

実はこの2人、ビ・バップ時代からのベテランで、クラークにとっては最高に影響を受けて尊敬するバド・パウエルとしょっちゅうチームを組んで演奏していた、まさに理想のリズム隊なんです。

ズッシリと安定感抜群のフレーズを繰り出しながら、アドリブに即応して絶妙な”ハズし””スカし”が天才的なベースと、シャープなドライヴ感で気持ちよく突っ走るドラム。

この2人が繰り出す独特のエッジの効いたリズムに乗って、クラークはいつになくハードに、無駄のない音色で”ビシッ””バシッ”と、ジャズ・ピアノのアドリブとしては実に的確でクールなフレーズを次々に決めてくれるんです。

尊敬する先輩達のすこぶるカッコいいビートに、本能剥き出しで迫る気合いの入ったピアノは、それまでのクラークとは全く違う、いや、どっちがいいとかじゃない「これでしか聴けない」味わいです。

で、全曲オリジナル(おぉ!)で固めたクラークの楽曲もいいんですよ。例によって彼の楽曲は、カッコ良くスイングする中にやっぱり哀愁がじわっと滲み出てくる「あぁ、せつねぇ!」があります。はい、このアルバムでは、哀愁ありまくってます。

「TIME盤ソニー・クラーク・トリオ」は、まろやかな哀愁ピアニストのキャラクターをかなぐり捨てたクラークの、孤高で厳しい面が見られる、モダン・ジャズ・ピアノの美しいワン・アンド・オンリーなのです。


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2017年06月02日

オーネット・コールマン ヴァージン・ビューティー

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オーネット・コールマン/ヴァージン・ビューティー
(Portrait/ソニー・ミュージック)

人間誰しもが「バカになりたい」と思うことがある生き物です。

特に何となく忙しない今の世の中に生きていると

「もー、何をー、ふんがふんが♪」

となるストレスっていっぱいありますね。

優れた音楽家というのは、その「ふんがふんが♪」に絶え間なく挑み、人々を息苦しいストレスから解放してくれる人々のことなんだと、アタシは確信しております。

ジャズの世界には、オーネット・コールマンという人がおりまして、この人はフリージャズの大将とか、ジャズの常識を覆したとか、色々言われてるんですが、そういう難しいことを全部脇にでも置いて考えると、この人ほど自由に好き勝手、ストレスと一番遠い地平にある音楽を作った人はいなかった。

もちろん、いろんな”約束事”の多いジャズにおいて

「コードもメロディも関係ないよ、音が鳴ってる空間の中で、自分にとって一番”コレは気持ちいい!”という音を出すことが大事なんだよね。これ、ハーモロディックね」

と、独自の謎理論を持ち出して、そのお約束のことごとく逆を行く斬新な表現方法が変えたものは多いでしょう。何より同業のミュージシャン達から

「あの人は凄い、ああいう風に自由にやるのは、実際なかなか勇気がいることだ」

と、批判と同じぐらいのリスペクトも集めておりましたが、実は本人にとっては

「ん?自分にとって一番気持ちいい音楽やってりゃそれでOKなんじゃないの?」

という気持ちだけが、彼を創造に向かって後押ししてたものだったんじゃないかと思います。

特に1970年代以降、フリーキーなジャズをやるだけでは飽き足らず、バンドを電気化して、ファンクとか民族音楽とか、ロックとか、そういう”その辺にある音全部”を演奏の中に取り入れてドンチャカやっていた時期の彼の音楽は、ジャズとかどうでもよくて、ミクスチャーとかそういったことはさらにどうでもよくて、売れるとか売れないとか、そんなことは究極にどうでもいい、ただ、オーネット・コールマンによるオーネット・コールマンのための”快楽温泉ぬるま湯地獄ミュージック”であるような趣がヒジョーに強いのであります。

ぶっちゃけて言えばフリージャズとか前衛音楽とか言われて何かと賛否両論のセンセーションを巻き起こして、つうか周りが勝手に沸き上がってその渦中にいたオーネットが開き直って

「んもー、おじちゃんバカになっちゃうぞー」

と、とちキレた結果の音楽として、たくさんのエレキギターがそれぞれ勝手にぎゅよ〜ん、ずんちゃかずんちゃか♪ 2台のドラムがこれもそれぞれ勝手にずんどこどこどこずんどこどん♪ と、どこの国のかもよーわからんが、とにかく底抜けにハッピーでじゃんじゃかな祭囃子ビートを叩き出している上で、やたらすっとんきょうでヨジレまくりながらも、訳のわからない凄みに満ちたアルトサックスを「のへー、のへー」と吹きまくってしまっている。つまり同じバカなら躍らにゃ損々♪ とばかりに音盤に刻んだもの。それが”プライムタイム”と呼ばれた電気オーネット・バンドのサウンドなのであります。

さぁ皆さん聴きましょう♪ これを聴けばたちどころにー!ストレスから解放される、たちどころにー!明るくノーテンキな人間になれる、たちまちのうちにー!些細なことなんてどーでもよくなれる。

・・・と、まではいかんかも知れませんが、この底抜けに明るくて、気持ちいいんだか悪いんだかよく分からないぐねぐねうねうねしたビートと、明後日の方向にばかりすっ飛んでゆく、すこぶるピーヒャラなサックスが織り成す独自のポジティヴ・マジックに身を浸すのは、まず間違いなく楽しいと言っておきましょう。




【パーソネル】
オーネット・コールマン(as,vln)
ジェリー・ガルシア(g,@EF)
バーン・ニックス(g)
チャールズ・エレビー(g)
アル・マクドウェル(b)
クリス・ウォーカー(b)
デナード・コールマン(ds,key,perc)
カルヴィン・ウェストン(ds)

【収録曲】
1.3ウィッシーズ
2.ブルジョワ・ブギ
3.ハッピー・アワー
4.ヴァージン・ビューティー
5.ヒーリング・ザ・フィーリング
6.シンギング・イン・ザ・シャワー
7.デザート・プレイヤーズ
8.ハネムーナーズ
9.チャンティング
10.スペリング・ジ・アルファベット
11.アンノウン・アーティスト


電気化オーネットの名盤としては、以前にもレビューした「ダンシング・イン・ユア・ヘッド」という70年代のウンニャラな名盤がありますが、それをよりポップで分かりやすい(のか?)ノリでまとめたのが、1988年録音の「ヴァージン・ビューティ」。

オシャレな感じにこの音楽を言ってしまえば

「アンダーグラウンドほにょほにょコンテンポラリー・ジャズ・ファンク」

なんですが、別にオシャレなんてどうでもいいよという人は、このアルバムに収録された音楽が、スコーンと突き抜けた”ほにょほにょ”であることだけをとりあえず頭に入れてください。

二台以上のエレキギターとツインドラムによる脈絡は全くない軽快なビートに、ベニョベニョな無脊椎動物フレーズをタレ流す2本のエレキベースのアクが加わって、コレだけでも全然美味しい(のか?)んですが、そこに、やっぱり勝手に入ってきて勝手にブルースとファンクとあと何かよーわからんものをネチャネチャさせながら吹き散らかしては去ってゆくオーネットのアルト・サックスと、混沌の具合でいえばサックスよりもっと「おぅ?」なトランペットとヴァイオリンが、もう聴いてる人の脳味噌を優しくかき混ぜてくれます。

ノリとバックの質感は、80年代っぽいややチャラめのファンクではあるんですが、繋がりや協調性の全くないフレーズやバッキングを、たったひとつのメインリフ(なのか?)を絡めながら何度も何度も繰り返すやり方は、後のトランスミュージックとかミニマルテクノのそれに近く、実に摩訶不思議。

そんなオーネットのコンセプトに非常に共感したのが、グレイトフル・デッドという、ユルユル即興ロックの大将で、このアルバムには@EFの3曲で参加してます。

ジャズの大御所とロックの共演とか言うと、これまた刺激的な異種格闘技戦かと思いきや、ガルシアさんのギター、気持ちいい音でバンドに負けないラリラリなフレーズをべよーんと弾いて馴染んでいて、実に自然。


「バカになりたい」

と思った時は聴きましょう。とは言いませんが、コレさえ聴けばアナタも一段格上のバカに・・・いや、違う、ラグジュアリーな・・・これも違う。えぇと、よくわからんくなってきたのでよくわからんまま終わります。うん、これでいいのだ。




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