ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年12月14日

セロニアス・モンク ザ・ユニーク

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セロニアス・モンク/ザ・ユニーク
(Riverside/ユニバーサル)

さて、「プレイズ・デューク・エリントン」でRiversideからデビューし直したセロニアス・モンクでしたが、このレコード、これまで出した彼の作品の中ではまあまあ売れた方ではありましたが、モンクの名を広く世間に知らしめるまでには至りませんでした。

「うう〜んセロニアス、これは困った。俺はアンタの演奏は素晴らしいと思う。がしかし世間にはまだまだ上手く伝わってはいないみたいだ・・・」

レーベルオーナーのオリン・キープニュースは頭を抱えます。

「ふぅん、そうかぁ・・・(それならそれで別に構わんが、そろそろ自分で作った曲をレコーディングしたいなぁ)。」

「聞いてるかセロニアス?」

「あぁ、聞いてなくはないよ」

「レコードが売れないことには話にならないんだよ、次のレコードを作るにも資金が要る」

「(だからオリジナルをレコーディングさせてくれ)へぇ、そういうものかね・・・」

「次のレコーディングなんだが、スタンダード集にしようと思うんだ。もちろんトリオでね」

「う〜ん、私はオリジナルをやりたいんだ。サックスも入れて欲しい。曲はもう出来ている・・・」

「それは次のセッションじゃダメかな?」

「気持ちは分かるがまずはスタンダードだ」

てな具合に、揉めたかどうかは解りませんが、多分揉めたでしょう。しかしやはり先立つものがないと曲の発表どころではありません。モンクはスタンダードでアルバムを作る事に同意してスタジオに入ります。

そうして出来上がったアルバムに、キープニュースは「ザ・ユニーク」というタイトルを付けてレコードにしました。

このユニークには

「セロニアス・モンクって面白いよ」

という意味と

「さあ聴いてくれ、ここに収められているのはみんながよく知るスタンダードだ、しかしね奥さん、ただのスタンダードじゃあないんだよ。えぇ、並の弾き方じゃない、一度聴いたら忘れられないこれはちょいと変わった他じゃあ聴けないユニークなスタンダード・アルバムだぁ」

という二重の意味を込めたんだと思います。



【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
オスカー・ペティフォード(b,@B〜F)
アート・ブレイキー(ds,@B〜F)

【収録曲】
1.ライザ
2.メモリーズ・オブ・ユー
3.ハニーサックル・ローズ
4.ダーン・ザット・ドリーム
5.二人でお茶を
6.ユー・アー・トゥー・ビューティフル
7.ジャスト・ユー、ジャスト・ミー


実際に、モンクはおなじみのスタンダード・ナンバーを、のっけから"ハズし"も"崩し"も"ズラし"も全開の、まるで曲を一回完全にどかーんと壊して楽しく組み直したような、そりゃもうオリジナルにしか聴こえないようなゴキゲンな演奏に終始していまして、ホントに痛快です。

メンバーは前作から引き続きのオスカー・ペティフォードと、Riversideでは初共演ですが、実はモンクとは以前からちょくちょく共演したり、セッションではモンクやミルト・ジャクソンと共謀して、わざと複雑なリズムやバッキングを編み出して、ホーン奏者達を困らせて喜んでいたアート・ブレイキー。

本作ではこのブレイキーの煽りまくるやんちゃなドラムが、モンクの「スタンダード、やりたい放題」に見事に火を点けてます。

1曲目からハイテンポで不協和音も"フレーズのぶった斬り"も炸裂してて笑いが止まらんのですが、ハイライトはファッツ・ウォーラー作の「ハニーサックルローズ」。

ファッツ・ウォーラーはモンクも直接影響を受けた「ぶんちゃっ、ぶんちゃっ♪」のストライド・ピアノの名人ですが、モンクの奇妙によじれながらの「ぶんちゃっ、ぶんちゃっ♪」のキケンな香りのプンプン漂うカッコ良さ/疾走感が、もうアホみたいに中毒性高いのですよ。

と、思わせつつ、淡々と美しいバラードの「ダーン・ザット・ドリーム」や「ユー・アー・トゥー・ビューティフル」など、ドキッとさせる演奏もしっかりとあり「ハチャメチャなようで実は深い」「哲学的な破天荒」なモンクの魅力は全編で炸裂しています。

それにしてもモンクの弾くスタンダードはまるでモンクが作った曲であるかのように斬新で刺激的ですね。

「なんて豊かな音楽だろう」

聴く度にそう思います。



(この外れたバネがピョンピョンしてる感!ペティフォードのベースソロもよろしいなぁ♪)


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2016年12月13日

セロニアス・モンク・プレイズ・デューク・エリントン

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セロニアス・モンク・プレイズ・デューク・エリントン
(Riverside/ユニバーサル)

思えば2016年後半は「チャーリー・ラウズ強化月間」でした

ラウズのテナーマンとしてのカッコ良さと、セロニアス・モンクのバンドでの「堅実で忠実な若頭ぶり」の両方をじっくりと時間をかけて聴き比べ、レビューにしていくことで、多くの方々に「おぉ、チャーリー・ラウズってそんなカッコイイのか、じゃあ聴いてみようかな?」と思ってくれるところまで何とか行けたんじゃないでしょうか。

や、そこまでまだ多くの人に興味を持って頂けてなくても、ジャズの歴史をそんなに激しく揺さぶりはしなかったけれども、良質な”ジャズ気分”の味わえる演奏を生涯プレイしつづけたこの素晴らしいテナー吹きのことを、更に多くの人に知ってもらうための啓蒙活動は、無視されようが笑われようが今後も続けて行きたいと思いますので、皆さんどうかひとつよろしくお願いします。

で、ラウズの演奏聴きたさに、60年代以降のモンクの演奏を、ここんとこ暇を見ては聴いていました。

その、楽しさと軽やかさ、そして淡々とした表情の中に拡がる何やら超然とした深遠な世界の魅力には、聴く度にすっかり心ほだされてしまうんですが、そこでぼぅっとなっている時に、ふと1950年代、つまり初期のモンクを聴きたくなりました。

今日、しとしとと冷たい雨の中、車でず〜っと聴いていたのは、1955年作の「プレイズ・デューク・エリントン」。

モンクが世に認められるきっかけとなった、リバーサイド・レーベルからの第一作目なんですねぇ。

実はモンク、40年代の初めから活躍していた「結構腕のいいピアニスト」でした。

音源がないので何とも言えませんが、実際に演奏を観た人達の証言によると「アート・テイタムのように、右手左手を駆使してノリノリのスピードで弾きまくるテクニカルなピアノ」だったようです。

そんなモンクは40年代後半に、ジャズの全く新しいスタイル、そう"ビ・バップ"の誕生に深く関わり、スタイルを一変。

ビ・バップといえば、初期バド・パウエルみたいな、高度なフレーズを超高速で弾きまくるあのスタイルでありますが、バドはいわばモンクの弟子です。ところが師匠のモンクは、ビ・バップが生まれるやいなや、自分一人でとっとと"次"へ行きました。

リズムを更に独自のアクセントと"間"で、一端ブチ壊して新たに作り上げたような、更にわざとハズした音を効果的に混ぜ込んで、聴く人の耳にたくさんの不思議を刻み込む、あの独特のスタイルを、完全に作り上げ「よし、俺はもうコレで行くぞ」と決めちゃったんですね。

モンクは今でこそ「ワン&オンリーのスタイルを築き上げ、後のジャズに大きな影響を与えた」とか言われてますが、当時は流行のビ・バップのような、単純明快なノリを求めるリスナーの理解を得ることは出来ず、活動も低迷してました。

そんなモンクの演奏を「いや、分かりやすいし面白い!」と、最初に認めたのは、ブルーノート・レーベルのオーナー、アルフレッド・ライオンです。

ライオンは47年から52年までモンクのレコーディングを続け、2枚のアルバムを出しましたが、これがほとんど売れず、また、モンクもバド・パウエルを庇って麻薬不法所持の疑いで逮捕され、ニューヨークでの演奏許可証を没収されてしまいます。

失意のモンクはフランスでソロ・ピアノ・レコーディングを行ったり、Prestigeレコードで"小遣い稼ぎ"のレコーディングを行うも、普段は奥さんの稼ぎで生活しながら、ひたすら自宅でピアノの練習と作曲に精を出しておりました。

そんな不遇のモンクにある日転機が訪れます。生活苦のためにモンクは友人や音楽関係者からちょこちょこ借金をしていましたが、その中にリバーサイドという小さなレコード会社のオーナーで、オリン・キープニュースという人がおりました。

この人が「なぁモンク、カネはいいからウチでレコーディングしないかい?」と声を掛けたのが、モンクにとっては運命の一言でありました。

オリン・キープニュースは、モンクの才能を理解していた数少ない音楽関係者だったんですね。そしてPrestigeで飼い殺しみたいな扱いを受けていたモンクを何とかしてやりたかった気持ちもあったでしょう。

モンクはキープニュースの言葉に乗ってPrestigeとの契約を消化してRiversideに移籍します。

ここから初期モンクの名盤が沢山生まれ、それが今の正当な評価にも一気に繋がってくるんですが、キープニュースのモンクの売り出し方は、最初は意外にも慎重でした。

まず、モンクの余りにも強すぎる個性。これは認知されれば最大の強みにはなるでしょうが、いかんせん他の演奏家とアプローチが違い過ぎます。

それにジャズの世界では、やはりウケるのはスタンダードや、有名ミュージシャンが作曲してヒットさせた曲です。いきなり無名のアーティストがオリジナルばかり発表しても、ほとんど聴かれることなく、モンクにはまた「売れないレコード」を作らせてその繰り返しになるでしょう。

キープニュースは言いました。

「セロニアス、オリジナルを演りたい気持ちは分かるし、オレもアンタの曲は好きなんだが、まずはアンタのピアノを多くの人に聴いてもらう事からはじめないか?」




【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
オスカー・ペティフォード(b,@〜EG)
ケニー・クラーク(ds,@〜EG)

【収録曲】
1.スウィングしなけりゃ意味ないね
2.ソフィスティケイテッド・レディ
3.アイ・ガット・イット・バッド
4.黒と茶の幻想
5.ムード・インディゴ
6.アイ・レット・ア・ソング・ゴー・アウト・オブ・マイ・ハート
7.ソリチュード
8.キャラヴァン


「どういう事かね?俺はオリジナルをやっちゃいかんのか」

「まぁ聞いてくれ、アンタは最も偉大なピアニストで、最も素晴らしい曲を多く書いてるジャズマンは誰だと思う?」

「決まってる、それはデュークだ。デューク・エリントン」

「尊敬している?」

「もちろんだ」

「何曲か弾けるかい?」

「当然だ」

「おお、素晴らしい!実にオリジナリティに溢れる演奏だ」

「言いたい事が段々分かってきたよ」

「それは嬉しいね、まずはデュークの曲でアルバムを作ろうか!」

という訳で出来上がった「セロニアス・モンク・プレイズ・デューク・エリントン」です。


内容はモンク独特の"ハチャメチャ"は割と抑えて、エリントンの素晴らしい楽曲を、モンクが詩的イマジネーションに溢れた解釈で、実に丁寧かつエレガントに弾いています。

バックを務めるのは、オスカー・ペティフォードとケニー・クラーク。

実はこの2人は、モンク同様ビ・バップ誕生に深く関わっていて、モンクとはその頃からセッションでよく遊んでいた仲。

つまり、この時代では珍しい「モンクが突然はっちゃけても、冷静に対処できるリズム隊」なんです。

このアルバムでは、二人は堅実な伴奏に撤しています。特に素晴らしいのはオスカー・ペティフォードのベース・プレイ。終始穏やかにリズムを刻んでいるだけなのに、何と存在感のある豊かな音色で、何て安定感のある太いグルーヴなんだろうと、聴いてて惚れ惚れしてしまいます。

モンクのピアノに関しては、本作はよく「個性が薄められた」と評されることも多いですが、果たしてそうでしょうか?"ハチャメチャ"は抑え気味と書きましたが、要所要所でしっかりと"間"と"絶妙なずらし"はしっかり聴いていて、決してモンクの個性がプロデュースによって削がれた感じはしません。

それにモンクの個性はハチャメチャだけにあらず、最初から斬新なメロディ解釈の裏に、しっかりとした古き良きジャズ特有のエスプリ、つまりワン・フレーズ弾いただけでむわぁっと立ち上る色気みたいなものがいつだってあるんです。





(このさり気ない崩し方と”間”ですよね〜、そしてしっかりスウィングしてます。カッコイイ♪)

「ソフィスティケイテッド・レディ」「黒と茶の幻想」「ソリチュード」などは、エリントン曲の中でも特に美しく、芳醇な香気の漂うナンバーですが、モンクのピアノがメロディを奏でた後に残る余韻の素晴らしい物語性に、まずはじっくり耳を傾けてみてください。

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2016年12月08日

セロニアス・モンク クリス・クロス

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セロニアス・モンク/クリス・クロス
(Columbia/ソニー)


いやもうここ数日、日中にストーンズの「ブルー&ロンサム」を浴びるように聴き狂って、家に帰ると今度はブルースを浴びるように聴きたくなって、ブルースに目一杯まみれております。

んで、一日の疲れを心身にじわ〜っと循環させながら「あぁ〜・・・何かいいなぁ・・・」となったときに、シメにジャズを流し込む。

これがいいんですよ。

最初のうちはゴリゴリのジャズファンクとか、タフなボステナー系を聴いてトロ〜ンとしておったんですけどね、ブログに書くために先日ご紹介したセロニアス・モンクの「ストレート・ノー・チェイサー」を流してみたら、これが何か妙にしっくりくる。

60年代のモンクの音源は、括弧付きのブルースから軽やかに飛翔してゆく独自のブルース・フィーリングに溢れたピアノは、聴いているうちにどんどん心と体から重たいものをはがしてくれるような、そんな気持ちにさせてくれるんです。

アタシはジャズもブルースも大好きで、どちらの音楽も共通して「これがあればカッコイイ」と思えるのは、濃厚で味わい深いブルース・フィーリングなんですよ。

ただ、ジャズの場合はそれが、定型(つまり「あぁ、ブルースってこういうものだよね」という軽めの想像)を逸脱して、いわゆる音楽ジャンルとしての「ブルース」とは、全く根っこを同じくして違う種類の花を咲かせているものがあるんですね。で、そういう”変わった花”を見付けると「おや、こんなのもあるんだね」と、とても嬉しくなっちゃうのです。

セロニアス・モンク、特に刺激とくつろぎの配分が丁度半々ぐらいでとてもよろしい60年代以降のカルテット(チャーリー・ラウズが入ってるやつ)のアルバムは、アタシにとっては最高にリラックスできるし楽しくもあるし、聴く毎に色々な発見の喜びを教えてくれます。

本日ご紹介するのは、1963年にリリースされた「クリス・クロス」モンクがメジャーのColumbiaと契約して出したスタジオ・アルバムとしては2枚目の作品。

このアルバムをレコーディングした直後に、モンクは初来日を果たして、伝説の日本公演を行うんですけど、そのコンサートの素晴らしさはさることながら、記者会見のやりとりとか「モンク観たけど何かおかしな人だった」とかいう素敵な伝説もたくさん残しています。

モンクの音楽は、その他の誰とも比べられない、比べようがない超個性ゆえ、評価が宙に浮いて勝手に「難解だ」と思われておりました。

そんなイメージが先行して、みんな構えてコンサート会場にやってきたら、独特は独特だけれども、しっかりとノレるゴキゲンな演奏だし、ラウズが一生懸命ソロ吹いてる時に立ち上がってヒョコヒョコ踊り出したり、観ている人達は最初呆気に取られながらも「なんだ、モンクっておもしれーじゃん♪」と、実にほっこりしたそうです。




【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,@BCDF〜IK)
ジョン・オー(b,@B〜DF〜K)
フランキー・ダンロップ(ds,@B〜DF〜K)

【収録曲】
1.ハッケンサック
2.二人でお茶を trio
3.クリス・クロス
4.エロネル
5.リズマニング
6.ドント・ブレイム・ミー (リテイク1)piano solo
7.シンク・オブ・ワン
8.クレパスキュール・ウィズ・ネリー
9.パノニカ (テイク2)
10.カミング・オン・ザ・ハドソン (テイク3)*
11.二人でお茶を (テイク9) * trio
12.エロネル (テイク3) *

*ボーナストラック

この「クリス・クロス」は、正にその「ゴキゲン」と「ミステリアス」と「ちゃんと聴かせる」がしっかり詰まってます。

収録されているのはラウズ入りのカルテット8曲にラウズ抜きのトリオが2曲、そして完全ソロ・ピアノの計12曲です。編成が大きい曲はほぼノリノリの跳ねるような曲が多いし、選曲も初期の頃から演奏しているオリジナルに、お気に入りのスタンダードがちょこっと。

オリジナルもスタンダードも「あ、モンクだね♪」とすぐにピンとくる、ズラしの美学が盛大に炸裂♪

特にアタシがオススメしたいのは、モンクの「それ行け、やれ行け!」とばかりに繰り出されるアゲアゲブツ切りのピアノに、負けじとテナーを震わせて突っ掛からないソロを吹ききる「リズマニン」(昔は「リズム・ア・ニン」の表記で「おぉ、確かに忍者っぽいぞ、ニンニン!」と興奮したものです)ですねぇ。

ただ「楽しい/ゴキゲン」なだけでなく、ソロ・ピアノの「ドント・ブレイブ・ミー」での、ガラッとシリアスで、ピアノ芸術の深淵を、厳しく選ばれた音を紡ぐプレイにもハッとさせられて引き込まれますね。

聴く側にとっては実に程よく気合いの入った演奏を、しっかりとしたプロデュースがとても効いたバランス最高なアルバムです。セロニアス・モンク入門盤としてもぜひ。




(「リズマニン」「リズム・ア・ニン」どちらでもよろしい♪)



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2016年12月05日

セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー

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セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー
(Columbia/ソニー)

初期50年代(BLUENOTE、RIVERSIDE時代)のセロニアス・モンクは「強烈無比の異次元おじさん」であります。

何と言ってもモダン・ジャズ全盛期にありながら、最初からその、カギカッコの付いた「モダン・ジャズ」の範疇を軽々と飛び越えた超個性的なピアノ・プレイ、共演者をガンガン刺激し、時に完全に置いてけぼりにする楽曲やアドリブの展開など、もう本当にスリリングで、もうかれこれ20年以上の付き合いになりますが、今でも聴く度に「ふぇぇ、モンクすげぇ・・・」と、感嘆の溜息がついつい漏れてしまいます。

で、60年代以降、メジャー・レーベルのColumbiaに移籍した後のモンク。

これはアタシの大好きな「幻想異世界おじさん」のモンクなんです。

この時期は、モンクも自分のカルテット(ピアノ+テナー・サックス+ベース+ドラムス)メンバーを固め、良い環境の中で安定した演奏を聴かせてくれます。

特にテナー・サックスにチャーリー・ラウズが加わった事が、モンクの演奏にも、恐らく精神面にも大きな安定をもたらしたと思うんですよ。

モンク独特の世界に突っかかることなく、常に半歩引いた位置から的確なソロで見事モンクを引き立てるプレイに満足げなモンクが「よしよし、ワシもやっとくつろいで好きにやれるわい」と、楽しくそして淡々と、自らが生み出した幻想世界にピアノの旋律を泳がせて遊んでいるかのようであります。

そんな60年代のモンクのアルバムは、Columbia盤の数々の名作ジャケットに、その「幻想おじさん」ぶりが見事描かれておるんですね。

 まずはコレ↓


【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,@〜CE〜H)
ラリー・ゲイルズ(b,@〜CE〜H)
ベン・ライリー(ds,@〜CE〜H)

【収録曲】
1.ロコモティヴ
2.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー
3.ストレイト・ノー・チェイサー
4.荒城の月
5.ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー
6.ウィー・シー
7.ディス・イズ・マイ・ストーリー、ディス・イズ・マイ・ソング*
8.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー (別テイク)*
9.グリーン・チムニーズ*

何ともソフトな色使いの不思議な構図の絵画がとても印象的なジャケットです。

最初下の方にモンクの顔が横たわってるなんて思いもよらなかったんで、それを見付けた時は思わず「おぉ!いた!!」とつぶやいてしまいました。それはさておき。

1966年にリリースされたモンクのColumbiaでの5枚目のスタジオ・アルバムであります本作は、モンクとカルテットの安定しつつ”ちょいと奇妙な音世界”がゆんわりと漂う7曲に、サラッと美しいソロ・ピアノ・トラックが2曲。アルバムとしてもバランスが実によろしくて、選曲もまた得意のミディアム・テンポを中心に、カチッとまとまったアルバムです。

モンクといえば「奇妙な」とか「風変わりだ」とかいうイメージがとてもあって、それはそれで一切間違ってはないのですが、この時期のモンクの演奏はとても自然に”ちょいとヘン”なことをやっていて、聞こえ方というものが実に自然で、本質的な”楽しさ””ウキウキ”を、まずは理屈抜きで味わえちゃうんです。

頑張っているのはやっぱりテナーのチャーリー・ラウズ。

タイトル曲の「ストレート・ノー・チェイサー」とかを、まず聴いて頂ければわかると思いますが、モンクのバッキングはかなり独特の”間”とタイミングで「・・・ゴーン!」「ガッキン♪・・・ゴンッ!」とバックでかなり自由に弾いてると思いきや、途中から一切弾いてない(!!)ベースとドラムだけ(コレも相当音数絞った軽快だけどシビアなバッキング)をバックに、実にスラスラ吹いておりますね〜♪ 




丁度このアルバムが録音されたのと同じ年(1966年)のライヴ動画があったので貼っときます。モンクのピアノはピョンピョン飛び跳ねてますが、よくよく聴いてくださいな、音数自体はおっそろしいほど少なくて空間がいっぱいありますよね。この間合いでゴキゲンにスイング出来るって、モンクはもちろん凄いけど、ラウズ、ラリー・ゲイルズ、ベン・ライリーの3人が、如何に凄い実力の持ち主かということです。


ラウズ入りのトラックではどれもこの調子で、カルテットの「ピアノ+テナー+ベース+ドラムス」の4つの動力が、最小限のパーツでしっかりと噛み合って動いてる、実に精妙の趣があります。

さてみなさん、収録曲に「荒城の月」があるのに「お?」となりましたね?そうなんです、実はこのアルバムは日本ではなかなか人気の盤なのですが、それはこの荒城の月が入っているからに他なりません。

大体60年代はジャズマンの間ではちょっとした日本ブームで、まぁその、単純に言えばアメリカでは普段はクラブで演奏して、ちょいと特別な時はホールコンサートが組めるぐらいのジャズマンでも、日本へ行けばツアーの先々でホールを手配してはくれるし、日本の客は真面目に演奏聴いてくれるし、ステージ降りても至れり尽くせりのおもてなしを必ずしてくれるということで、日本を訪れるジャズマンはみんな気を良くして「おかえしに」という意味で、日本の民謡や童謡(唱歌)をアルバムにいれたりしてたんです。

モンクの場合は、訪れたジャズ喫茶のオーナーが「お土産に」と渡したオルゴールが、この「荒城の月」だったんです。

この曲を気に入ったモンクは、事あるごとにこのオルゴールをジーっと聴いて「よし、この曲やるぞ!」と、いわゆる「サンキューニッポン」なノリじゃなく、音楽的に非常に真摯な欲求からカヴァーに至ったんですね。

プロデューサー 「おぉセロニアス、その何かエキゾチックで哀愁のある曲なんだい?いい曲じゃないか、作ったのかい?」

モンク「あぁ、これは日本の民謡だよ。メロディが気に入ったから、新作に入れていいかな?」

プロデューサー 「もちろん。日本で売れたらデカいぞ〜」

モンク(全く興味ない感じで鍵盤をいじっている)

プロデューサー 「あー・・・と、ところでセロニアス、この曲何てタイトルなんだ?」

モンク「知らない、メロディが気に入ってるんだ。何だっていいさ。レコードには"ジャパニーズ・フォークソング"とでも・・・」


実際の演奏も、16分を越えるかなりドラマチックなアレンジの中に、モンク独自の美学で「和」のフィーリングを幻想的に解体して再構築した、全くオリジナルな「幽玄」の世界を生み出しています。ここでもモンクの斬新なリズムとメロディの解釈にピタリと即応で応えるバックが素晴らしいですよ。

美しい幻想世界を淡々と、でもしっかりとスリルとミステリーの香を漂わせながら奏でるモンク。この冬のBGMにいかがですか?



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2016年11月30日

チャーリー・ラウズ モーメンツ・ノーティス

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チャーリー・ラウズ/モーメンツ・ノーティス


(Storyvile/Solid)

はい、明日から12月ですが、当ブログでは

「11月はチャーリー・ラウズ強化月間だい!」

と勝手に盛り上がりまして、アルバムを2枚ほどレビューを致しましたが、直接のお問い合わせも、このブログを経由してのポチもまだないようで・・・。ついでにちょいと前に

#チャーリー・ラウズとブッカー・アーヴィンのいないジャズなんて考えられない人RT

を、ツイッターで流してみましたが、コチラのツイートも反応してくれたのが僅か1名の方のみという淋しい状況。


よよよよよよ・・・(泣)


うん、確かにチャーリー・ラウズはそんな有名でもないし、派手な人ではないです。ジャズ界隈でもいまだにその評価が「何かセロニアス・モンクのとこにいた人でしょ?へー、ソロアルバムも出してるの、あ、そー」みたいな感じで不当に低いです。

断言しますがラウズのソロ作こそ、適度にブルーで程よくハードボイルド。何より大事なのはラウズの誠実なテナー・サックスのプレイが、聴いてる人の気持ちをじわじわと自然に豊かなものにしてくれるのです。刺激だけでは到底間に合わない「あ、これはいい音楽を聴いたなぁ・・・」というしみじみとした感慨を、そのジャズの良心がギュッと詰まった素敵な演奏で、私達の心に優しく植え込んでくれるのです。

正直なところを言いますと、モンク・カルテットでのラウズの、ひたすらリーダーを立てて破綻のない演奏をやっているラウズは、当初あまり好きではありませんでした。


でもどこかで、アタシはこう感じてもいたんです。

「ちょっと待って、このオーソドックスなスタイルと、人の良さそうな柔らかいトーンは、もしかしてモンクよりもっと普通のジャズを、渋く吹いたらカッコイイんじゃない?」

と。

で、ホントに"もののついで"に、たまたまフラッと入ったCD屋さんにラウズの「ヤー!」が置いてあって、それを何の気なしに買って家でボケーっと聴いていた時にグッときたのが、バラードの「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」。

これがもうどれほど素晴らしいバラードだったか・・・。とにかくアタシの認識はガラッと一転して、ソロのラウズ、モンク・カルテットでのラウズを徹底して聴き込んで、ジャズの表面の刺激を求めるだけでは分からなかった奥深い味わいの虜になりました。




【パーソネル】
チャーリー・ラウズ(ts)
ヒュー・ローソン(p)
ボブ・クランショウ(b)
ベン・ライリー(ds)

【収録曲】
1.ザ・クラッカー
2.レット・ミー
3.ジューボイエ
4.ウェル・ユー・ニードント
5.ロイヤル・ラヴ
6.ア・チャイルド・イズ・ボーン
7.リトル・シェリ
8.ロイヤル・ラヴ(別テイク)
9.レット・ミー(別テイク)
10.ザ・クラッカー(別テイク)
11.ウェル・ユー・ニードント(別テイク)



で、本日のオススメは、一貫してまろやかでハートウォームな音色で、実に多彩な表情に溢れるラウズのソロ作の中では、最もハード・ドライヴィングなノリを楽しめる、1977年製作のアルバム「モーメンツ・ノーティス」です。

70年代といえば、ラウズは長年奉公してきたモンク・カルテットを卒業し、滅茶苦茶ヤル気をみなぎらせていた時期で、気鋭のリズム・セクションが繰り出す斬新な解釈の4ビート(時に8ビートや16ビートに変化する!)に乗って気持ち良く吹きまくるアルバムなんですよ。

メンバーは、メリハリの効いたピアノ・プレイはもちろん、70年代にジャズ・ファンク(やや)フリー系の曲をたくさん書いていたヒュー・ローソン、惜しくも先頃亡くなりましたが、60年代以降のソニー・ロリンズの録音には欠かせない職人ベーシスト、ボブ・クラウンショウ、そして!ラウズとは共にモンクを長年支え、もう"あ・うん"で演奏できる仲の盟友ベン・ライリー。

この渋〜いメンツに渋〜いラウズですから、内容は悪かろうはずがありません。

1曲目、ヒュー・ローソン作曲のノリノリの、何故かヒジョーにロックを感じる「ザ・クラッカー」から、バンド全体がガッツリ一丸となった素晴らしくホットなノリを浴びた瞬間に「あ、これ決まったわ」となること必至ですが、更にほとばしる熱気の鋭利な4ビート・ミディアムや、気持ちソウルやロック寄りのナンバー、そしてモンクの「ウェル・ユー・ニードント」。

これはもうラウズとライリーの「目ェつぶってでも出来るぜぇ♪」な圧倒的"オハコ感"溢れる、多分モンクそんなに知らない人でも、のけぞりは間違いない名演ですが、極め付けはバラード名演の「ア・チャイルド・イズ・ボーン」。

「ススス・・・」と、吐息の混ざる豊潤な憂いを含んだ音色で"唄"を紡いでゆく、ラウズのいいところの集大成のような、どんな言葉を尽くして書いても、それら全てが薄っぺらくなるような、理屈抜きのバラードですよ。

アルバム全体としても、尋常じゃないバンドの熱気が、最後まで飽きさせずに全部の曲をしっかりじっくりと聴かせてくれますので「ラウズかぁ、まだ持ってないんだよね」という方には、最初の1枚としても全然Okです。そんぐらい、ジャズとしての密度は濃厚です。や、ラウズ自体はどんなに気合い入ってても、柔らかく人なつっこい音で破綻なく吹いてるんですけど、それが最高なんですわ。




(最初聴いて「これは何ということでしょう!」と叫びました、バラード名演です。)

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