ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年12月08日

セロニアス・モンク クリス・クロス

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セロニアス・モンク/クリス・クロス
(Columbia/ソニー)


いやもうここ数日、日中にストーンズの「ブルー&ロンサム」を浴びるように聴き狂って、家に帰ると今度はブルースを浴びるように聴きたくなって、ブルースに目一杯まみれております。

んで、一日の疲れを心身にじわ〜っと循環させながら「あぁ〜・・・何かいいなぁ・・・」となったときに、シメにジャズを流し込む。

これがいいんですよ。

最初のうちはゴリゴリのジャズファンクとか、タフなボステナー系を聴いてトロ〜ンとしておったんですけどね、ブログに書くために先日ご紹介したセロニアス・モンクの「ストレート・ノー・チェイサー」を流してみたら、これが何か妙にしっくりくる。

60年代のモンクの音源は、括弧付きのブルースから軽やかに飛翔してゆく独自のブルース・フィーリングに溢れたピアノは、聴いているうちにどんどん心と体から重たいものをはがしてくれるような、そんな気持ちにさせてくれるんです。

アタシはジャズもブルースも大好きで、どちらの音楽も共通して「これがあればカッコイイ」と思えるのは、濃厚で味わい深いブルース・フィーリングなんですよ。

ただ、ジャズの場合はそれが、定型(つまり「あぁ、ブルースってこういうものだよね」という軽めの想像)を逸脱して、いわゆる音楽ジャンルとしての「ブルース」とは、全く根っこを同じくして違う種類の花を咲かせているものがあるんですね。で、そういう”変わった花”を見付けると「おや、こんなのもあるんだね」と、とても嬉しくなっちゃうのです。

セロニアス・モンク、特に刺激とくつろぎの配分が丁度半々ぐらいでとてもよろしい60年代以降のカルテット(チャーリー・ラウズが入ってるやつ)のアルバムは、アタシにとっては最高にリラックスできるし楽しくもあるし、聴く毎に色々な発見の喜びを教えてくれます。

本日ご紹介するのは、1963年にリリースされた「クリス・クロス」モンクがメジャーのColumbiaと契約して出したスタジオ・アルバムとしては2枚目の作品。

このアルバムをレコーディングした直後に、モンクは初来日を果たして、伝説の日本公演を行うんですけど、そのコンサートの素晴らしさはさることながら、記者会見のやりとりとか「モンク観たけど何かおかしな人だった」とかいう素敵な伝説もたくさん残しています。

モンクの音楽は、その他の誰とも比べられない、比べようがない超個性ゆえ、評価が宙に浮いて勝手に「難解だ」と思われておりました。

そんなイメージが先行して、みんな構えてコンサート会場にやってきたら、独特は独特だけれども、しっかりとノレるゴキゲンな演奏だし、ラウズが一生懸命ソロ吹いてる時に立ち上がってヒョコヒョコ踊り出したり、観ている人達は最初呆気に取られながらも「なんだ、モンクっておもしれーじゃん♪」と、実にほっこりしたそうです。




【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,@BCDF〜IK)
ジョン・オー(b,@B〜DF〜K)
フランキー・ダンロップ(ds,@B〜DF〜K)

【収録曲】
1.ハッケンサック
2.二人でお茶を trio
3.クリス・クロス
4.エロネル
5.リズマニング
6.ドント・ブレイム・ミー (リテイク1)piano solo
7.シンク・オブ・ワン
8.クレパスキュール・ウィズ・ネリー
9.パノニカ (テイク2)
10.カミング・オン・ザ・ハドソン (テイク3)*
11.二人でお茶を (テイク9) * trio
12.エロネル (テイク3) *

*ボーナストラック

この「クリス・クロス」は、正にその「ゴキゲン」と「ミステリアス」と「ちゃんと聴かせる」がしっかり詰まってます。

収録されているのはラウズ入りのカルテット8曲にラウズ抜きのトリオが2曲、そして完全ソロ・ピアノの計12曲です。編成が大きい曲はほぼノリノリの跳ねるような曲が多いし、選曲も初期の頃から演奏しているオリジナルに、お気に入りのスタンダードがちょこっと。

オリジナルもスタンダードも「あ、モンクだね♪」とすぐにピンとくる、ズラしの美学が盛大に炸裂♪

特にアタシがオススメしたいのは、モンクの「それ行け、やれ行け!」とばかりに繰り出されるアゲアゲブツ切りのピアノに、負けじとテナーを震わせて突っ掛からないソロを吹ききる「リズマニン」(昔は「リズム・ア・ニン」の表記で「おぉ、確かに忍者っぽいぞ、ニンニン!」と興奮したものです)ですねぇ。

ただ「楽しい/ゴキゲン」なだけでなく、ソロ・ピアノの「ドント・ブレイブ・ミー」での、ガラッとシリアスで、ピアノ芸術の深淵を、厳しく選ばれた音を紡ぐプレイにもハッとさせられて引き込まれますね。

聴く側にとっては実に程よく気合いの入った演奏を、しっかりとしたプロデュースがとても効いたバランス最高なアルバムです。セロニアス・モンク入門盤としてもぜひ。




(「リズマニン」「リズム・ア・ニン」どちらでもよろしい♪)



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2016年12月05日

セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー

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セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー
(Columbia/ソニー)

初期50年代(BLUENOTE、RIVERSIDE時代)のセロニアス・モンクは「強烈無比の異次元おじさん」であります。

何と言ってもモダン・ジャズ全盛期にありながら、最初からその、カギカッコの付いた「モダン・ジャズ」の範疇を軽々と飛び越えた超個性的なピアノ・プレイ、共演者をガンガン刺激し、時に完全に置いてけぼりにする楽曲やアドリブの展開など、もう本当にスリリングで、もうかれこれ20年以上の付き合いになりますが、今でも聴く度に「ふぇぇ、モンクすげぇ・・・」と、感嘆の溜息がついつい漏れてしまいます。

で、60年代以降、メジャー・レーベルのColumbiaに移籍した後のモンク。

これはアタシの大好きな「幻想異世界おじさん」のモンクなんです。

この時期は、モンクも自分のカルテット(ピアノ+テナー・サックス+ベース+ドラムス)メンバーを固め、良い環境の中で安定した演奏を聴かせてくれます。

特にテナー・サックスにチャーリー・ラウズが加わった事が、モンクの演奏にも、恐らく精神面にも大きな安定をもたらしたと思うんですよ。

モンク独特の世界に突っかかることなく、常に半歩引いた位置から的確なソロで見事モンクを引き立てるプレイに満足げなモンクが「よしよし、ワシもやっとくつろいで好きにやれるわい」と、楽しくそして淡々と、自らが生み出した幻想世界にピアノの旋律を泳がせて遊んでいるかのようであります。

そんな60年代のモンクのアルバムは、Columbia盤の数々の名作ジャケットに、その「幻想おじさん」ぶりが見事描かれておるんですね。

 まずはコレ↓


【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,@〜CE〜H)
ラリー・ゲイルズ(b,@〜CE〜H)
ベン・ライリー(ds,@〜CE〜H)

【収録曲】
1.ロコモティヴ
2.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー
3.ストレイト・ノー・チェイサー
4.荒城の月
5.ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー
6.ウィー・シー
7.ディス・イズ・マイ・ストーリー、ディス・イズ・マイ・ソング*
8.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー (別テイク)*
9.グリーン・チムニーズ*

何ともソフトな色使いの不思議な構図の絵画がとても印象的なジャケットです。

最初下の方にモンクの顔が横たわってるなんて思いもよらなかったんで、それを見付けた時は思わず「おぉ!いた!!」とつぶやいてしまいました。それはさておき。

1966年にリリースされたモンクのColumbiaでの5枚目のスタジオ・アルバムであります本作は、モンクとカルテットの安定しつつ”ちょいと奇妙な音世界”がゆんわりと漂う7曲に、サラッと美しいソロ・ピアノ・トラックが2曲。アルバムとしてもバランスが実によろしくて、選曲もまた得意のミディアム・テンポを中心に、カチッとまとまったアルバムです。

モンクといえば「奇妙な」とか「風変わりだ」とかいうイメージがとてもあって、それはそれで一切間違ってはないのですが、この時期のモンクの演奏はとても自然に”ちょいとヘン”なことをやっていて、聞こえ方というものが実に自然で、本質的な”楽しさ””ウキウキ”を、まずは理屈抜きで味わえちゃうんです。

頑張っているのはやっぱりテナーのチャーリー・ラウズ。

タイトル曲の「ストレート・ノー・チェイサー」とかを、まず聴いて頂ければわかると思いますが、モンクのバッキングはかなり独特の”間”とタイミングで「・・・ゴーン!」「ガッキン♪・・・ゴンッ!」とバックでかなり自由に弾いてると思いきや、途中から一切弾いてない(!!)ベースとドラムだけ(コレも相当音数絞った軽快だけどシビアなバッキング)をバックに、実にスラスラ吹いておりますね〜♪ 




丁度このアルバムが録音されたのと同じ年(1966年)のライヴ動画があったので貼っときます。モンクのピアノはピョンピョン飛び跳ねてますが、よくよく聴いてくださいな、音数自体はおっそろしいほど少なくて空間がいっぱいありますよね。この間合いでゴキゲンにスイング出来るって、モンクはもちろん凄いけど、ラウズ、ラリー・ゲイルズ、ベン・ライリーの3人が、如何に凄い実力の持ち主かということです。


ラウズ入りのトラックではどれもこの調子で、カルテットの「ピアノ+テナー+ベース+ドラムス」の4つの動力が、最小限のパーツでしっかりと噛み合って動いてる、実に精妙の趣があります。

さてみなさん、収録曲に「荒城の月」があるのに「お?」となりましたね?そうなんです、実はこのアルバムは日本ではなかなか人気の盤なのですが、それはこの荒城の月が入っているからに他なりません。

大体60年代はジャズマンの間ではちょっとした日本ブームで、まぁその、単純に言えばアメリカでは普段はクラブで演奏して、ちょいと特別な時はホールコンサートが組めるぐらいのジャズマンでも、日本へ行けばツアーの先々でホールを手配してはくれるし、日本の客は真面目に演奏聴いてくれるし、ステージ降りても至れり尽くせりのおもてなしを必ずしてくれるということで、日本を訪れるジャズマンはみんな気を良くして「おかえしに」という意味で、日本の民謡や童謡(唱歌)をアルバムにいれたりしてたんです。

モンクの場合は、訪れたジャズ喫茶のオーナーが「お土産に」と渡したオルゴールが、この「荒城の月」だったんです。

この曲を気に入ったモンクは、事あるごとにこのオルゴールをジーっと聴いて「よし、この曲やるぞ!」と、いわゆる「サンキューニッポン」なノリじゃなく、音楽的に非常に真摯な欲求からカヴァーに至ったんですね。

プロデューサー 「おぉセロニアス、その何かエキゾチックで哀愁のある曲なんだい?いい曲じゃないか、作ったのかい?」

モンク「あぁ、これは日本の民謡だよ。メロディが気に入ったから、新作に入れていいかな?」

プロデューサー 「もちろん。日本で売れたらデカいぞ〜」

モンク(全く興味ない感じで鍵盤をいじっている)

プロデューサー 「あー・・・と、ところでセロニアス、この曲何てタイトルなんだ?」

モンク「知らない、メロディが気に入ってるんだ。何だっていいさ。レコードには"ジャパニーズ・フォークソング"とでも・・・」


実際の演奏も、16分を越えるかなりドラマチックなアレンジの中に、モンク独自の美学で「和」のフィーリングを幻想的に解体して再構築した、全くオリジナルな「幽玄」の世界を生み出しています。ここでもモンクの斬新なリズムとメロディの解釈にピタリと即応で応えるバックが素晴らしいですよ。

美しい幻想世界を淡々と、でもしっかりとスリルとミステリーの香を漂わせながら奏でるモンク。この冬のBGMにいかがですか?



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2016年11月30日

チャーリー・ラウズ モーメンツ・ノーティス

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チャーリー・ラウズ/モーメンツ・ノーティス


(Storyvile/Solid)

はい、明日から12月ですが、当ブログでは

「11月はチャーリー・ラウズ強化月間だい!」

と勝手に盛り上がりまして、アルバムを2枚ほどレビューを致しましたが、直接のお問い合わせも、このブログを経由してのポチもまだないようで・・・。ついでにちょいと前に

#チャーリー・ラウズとブッカー・アーヴィンのいないジャズなんて考えられない人RT

を、ツイッターで流してみましたが、コチラのツイートも反応してくれたのが僅か1名の方のみという淋しい状況。


よよよよよよ・・・(泣)


うん、確かにチャーリー・ラウズはそんな有名でもないし、派手な人ではないです。ジャズ界隈でもいまだにその評価が「何かセロニアス・モンクのとこにいた人でしょ?へー、ソロアルバムも出してるの、あ、そー」みたいな感じで不当に低いです。

断言しますがラウズのソロ作こそ、適度にブルーで程よくハードボイルド。何より大事なのはラウズの誠実なテナー・サックスのプレイが、聴いてる人の気持ちをじわじわと自然に豊かなものにしてくれるのです。刺激だけでは到底間に合わない「あ、これはいい音楽を聴いたなぁ・・・」というしみじみとした感慨を、そのジャズの良心がギュッと詰まった素敵な演奏で、私達の心に優しく植え込んでくれるのです。

正直なところを言いますと、モンク・カルテットでのラウズの、ひたすらリーダーを立てて破綻のない演奏をやっているラウズは、当初あまり好きではありませんでした。


でもどこかで、アタシはこう感じてもいたんです。

「ちょっと待って、このオーソドックスなスタイルと、人の良さそうな柔らかいトーンは、もしかしてモンクよりもっと普通のジャズを、渋く吹いたらカッコイイんじゃない?」

と。

で、ホントに"もののついで"に、たまたまフラッと入ったCD屋さんにラウズの「ヤー!」が置いてあって、それを何の気なしに買って家でボケーっと聴いていた時にグッときたのが、バラードの「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」。

これがもうどれほど素晴らしいバラードだったか・・・。とにかくアタシの認識はガラッと一転して、ソロのラウズ、モンク・カルテットでのラウズを徹底して聴き込んで、ジャズの表面の刺激を求めるだけでは分からなかった奥深い味わいの虜になりました。




【パーソネル】
チャーリー・ラウズ(ts)
ヒュー・ローソン(p)
ボブ・クランショウ(b)
ベン・ライリー(ds)

【収録曲】
1.ザ・クラッカー
2.レット・ミー
3.ジューボイエ
4.ウェル・ユー・ニードント
5.ロイヤル・ラヴ
6.ア・チャイルド・イズ・ボーン
7.リトル・シェリ
8.ロイヤル・ラヴ(別テイク)
9.レット・ミー(別テイク)
10.ザ・クラッカー(別テイク)
11.ウェル・ユー・ニードント(別テイク)



で、本日のオススメは、一貫してまろやかでハートウォームな音色で、実に多彩な表情に溢れるラウズのソロ作の中では、最もハード・ドライヴィングなノリを楽しめる、1977年製作のアルバム「モーメンツ・ノーティス」です。

70年代といえば、ラウズは長年奉公してきたモンク・カルテットを卒業し、滅茶苦茶ヤル気をみなぎらせていた時期で、気鋭のリズム・セクションが繰り出す斬新な解釈の4ビート(時に8ビートや16ビートに変化する!)に乗って気持ち良く吹きまくるアルバムなんですよ。

メンバーは、メリハリの効いたピアノ・プレイはもちろん、70年代にジャズ・ファンク(やや)フリー系の曲をたくさん書いていたヒュー・ローソン、惜しくも先頃亡くなりましたが、60年代以降のソニー・ロリンズの録音には欠かせない職人ベーシスト、ボブ・クラウンショウ、そして!ラウズとは共にモンクを長年支え、もう"あ・うん"で演奏できる仲の盟友ベン・ライリー。

この渋〜いメンツに渋〜いラウズですから、内容は悪かろうはずがありません。

1曲目、ヒュー・ローソン作曲のノリノリの、何故かヒジョーにロックを感じる「ザ・クラッカー」から、バンド全体がガッツリ一丸となった素晴らしくホットなノリを浴びた瞬間に「あ、これ決まったわ」となること必至ですが、更にほとばしる熱気の鋭利な4ビート・ミディアムや、気持ちソウルやロック寄りのナンバー、そしてモンクの「ウェル・ユー・ニードント」。

これはもうラウズとライリーの「目ェつぶってでも出来るぜぇ♪」な圧倒的"オハコ感"溢れる、多分モンクそんなに知らない人でも、のけぞりは間違いない名演ですが、極め付けはバラード名演の「ア・チャイルド・イズ・ボーン」。

「ススス・・・」と、吐息の混ざる豊潤な憂いを含んだ音色で"唄"を紡いでゆく、ラウズのいいところの集大成のような、どんな言葉を尽くして書いても、それら全てが薄っぺらくなるような、理屈抜きのバラードですよ。

アルバム全体としても、尋常じゃないバンドの熱気が、最後まで飽きさせずに全部の曲をしっかりじっくりと聴かせてくれますので「ラウズかぁ、まだ持ってないんだよね」という方には、最初の1枚としても全然Okです。そんぐらい、ジャズとしての密度は濃厚です。や、ラウズ自体はどんなに気合い入ってても、柔らかく人なつっこい音で破綻なく吹いてるんですけど、それが最高なんですわ。




(最初聴いて「これは何ということでしょう!」と叫びました、バラード名演です。)

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2016年11月20日

ウエス・モンゴメリー ア・デイ・イン・ザ・ライフ

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ウエス・モンゴメリー/ア・デイ・イン・ザ・ライフ
(A&M/ユニバーサル)

ウエス・モンゴメリーといえば、ジャズ・ギターの奏法をとにかく一歩先を行く斬新なものにした革新者であります。

親指一本で信じられないぐらいの流麗で力強い単弦ソロや、オクターブ弦を同時に鳴らす”オクターブ奏法”を繰り出し・・・と、まぁ専門的なことを言えばいくらでも言えるしキリがありませんが、とにかくウエスの凄いところは、たとえばジャズとかギターの音とか、そういうことに全く興味がない人にも

「あら、このギターちょっといいわね」

と言わせてしまうとこなんですよね。

「まさかそんなヤツおらんだろー」

と、お思いの方には、アルバム「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を聴いて頂いております。



【パーソネル】
ウェス・モンゴメリー(g)
ハービー・ハンコック(p)
ロン・カーター(b)
グラディ・テイト(ds)
レイ・バレット(perc)
ジャック・ジェニングス(perc)
ジョー・ウォーレルズ(perc)
ドン・セベスキー(arr,cond)
with.オーケストラ

【収録曲】
1.ア・デイ・イン・ザ・ライフ
(原曲はビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に収録)

2.ウォッチ・ホワット・ハプンズ
(ミシェル・ルグラン作「シェルブールの雨傘」挿入歌)

3.男が女を愛する時
(パーシー・スレッジが歌った1966年のR&B大ヒット曲)

4.カリフォルニア・ナイツ
(レスリー・ゴーアの1967年のヒット曲。当時のポップスを代表する歌)

5.エンジェル
(ジミヘンではありません、ウエス・モンゴメリーの本作唯一のオリジナル・ナンバー)

6.エリナー・リグビー
(ビートルズ、アルバム「リボルバー」収録)

7.ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
(「柳よ泣いておくれ」で知られるジャズ・スタンダード)

8.ウィンディ
(アソシエイションズが歌ってヒットした、60年代ソフト・ロック名曲)

9.トラスト・イン・ミー
(戦前から演奏される有名スタンダード)

10.ジョーカー
(元々はミュージカル・ナンバーで、セルジオ・メンデスとブラジル66が歌ってヒットさせたブラジリアン・ポップス)

これ凄くいいんですよ〜、内容はビートルズ・ナンバーを中心に、ポップスのヒット曲を爽やかなストリングス・オーケストラをバックに演奏しているんですけど、ウエスのギターはアドリブ控え目に、原曲のポップなメロディーを、しっかりと”ジャズの音”で弾いております。

曲目の内訳を【収録曲】のところに書いてあったんですが、ビートルズの2曲を筆頭に、このアルバム収録当時のポップスのカヴァーが中心です。

アルバムが収録された1967年は、丁度ロック全盛期で、世界中をビートルズ旋風が席捲していた時代。

ジャズはセールス的に苦戦を強いられておりましたが、ジャズの演奏家達も「これじゃいかん」と自分達の演奏の中に、何か新しいものを見出そうと必死で模索していた時代ですね。マイルス・デイヴィスはエレクトリックなバンドを実験的にやり出して、色んな人がソウル・ジャズとかジャズ・ファンクとか、とにかく世間で流行している音楽の要素を取り入れながら、次々とジャンルを跨いだ面白い作品を出し始めていた時代。

後に”フュージョン”という音楽が、こういった流れの中から生まれてきますが、ウエスのこのアルバムは、その元祖ともいえるかも知れません。

楽曲はポップで、ストリングスやパーカッション(ソフトなやつ)を配した、これまたポップなアレンジ。でも、その中でキラッと渋い光沢を放つ、熟練のジャズなフィーリング。聴き易いけれども決して軽薄な音ではなくて、入り込む人の耳をしっかりと惹きつけて離さない後味の物凄いコクがあるんです。

ウエスがギター弾きまくってる、あるいはジャズしまくってるアルバムなら、断然初期のRiverside盤でしょうが、後期のポップなアルバムには、抗し難い音楽的な魅力が詰まってるような気がします。


(「男が女を愛する時」短い演奏でアドリブも抑え気味ではあるんですが、これが泣けますね)


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2016年11月15日

ビリー・ホリデイ 奇妙な果実

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ビリー・ホリデイ/奇妙な果実
(Comodore/キングレコード)

昨日に引き続きビリー・ホリデイです。

何と言いますか、コレはアタシのもしかしたら思い入れに関する部分も多分にあるとは思いますが、一旦想いを語ってしまうと「あ、しまった、アレもあった。コレもあった。」と、後からどんどん想いが湧き出してくるシンガーがビリーなんです。

彼女を語るには、その余りにも不幸な生い立ちと、余りにも不幸な最期というのが必ずセットになります。

私生児として生まれ、そしてシンガーとして脚光を浴びたのも束の間、私生活では麻薬とアルコール、そしてパートナーとなる男性達からの暴力や金銭トラブルなどなどなど・・・。

ザックリ言ってしまえば、彼女の唄の力、そしてアーティストとしての魅力というのは、ほとんどがそのハード過ぎる人生の中で傷ついたり、打ちひしがれたりした心の傷の生々しさだったりすると思うんです。

でも、アタシの中ではどうしても「心の傷=音楽のカッコ良さ」には安直に結び付けたくない葛藤があります。

それはもちろん、ミュージシャンのハードライフを、まるで芸能ゴシップみたいにあげつらって見世物にしたくない、彼女の心の傷ばかりに関心を引くリスナー達によって、肝心の唄がぞんざいに扱われたくないということもありましょうが、やはりアタシは誰がどう言おうが、読み物に何が書かれていようが、彼女の唄が好きなんです。

こういうことを話すとキリがありませんので、今日はサクサク作品を紹介しましょうね。



【パーソネル】
ビリー・ホリデイ(vo)
フランク・ニュートン(tp)
ドク・チータム(tp)
フレディ・ウェブスター(tp)
ヴィック・ディッケンソン(tb)
タブ・スミス(as)
スタンリー・パイン(ts)
レン・ディヴィス(ts)
ケネス・ホロン(ts) 
ソニー・ホワイト(p)
エディ・ヘイウッド(p)
ジミー・マックリン(g)
テディ・ウォルターズ(g)
ジョン・ウィリアムス(b)
ジョン・シモンズ(b)
エド・ショーネシー(ds)
シドニー・カトレット(ds) 

【収録曲】
1.奇妙な果実
2.イエスタデイズ
3.ファイン・アンド・メロウ
4.ブルースを歌おう
5.ハウ・アム・アイ・トゥ・ノウ
6.マイ・オールド・フレーム
7.アイル・ゲット・バイ
8.水辺にたたずみ
9.アイル・ビー・シーイング・ユー
10.アイム・ユアーズ
11.エンブレイサブル・ユー
12.時の過ぎゆくまま
13.ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ
14.恋人よ我に帰れ
15.アイ・ラヴ・マイ・マン
16.明るい表通り


はい「奇妙な果実」です。

ビリーの名刺代わりの代表曲であり、ジャズというジャンルを超えて、今もなお世界中の人々に聴かれ続けている名曲「奇妙な果実」の初演ヴァージョンが入っており、かつタイトルにもなっている、これはLP時代からビリーの作品の中で最も有名な一枚であります。

ビリーがこの歌の元となる歌詞と出会ったのは1939年、メジャー・レーベル”コロムビア”の契約シンガーであり、ニューヨークの人気クラブ”カフェ・ソサエティ”の専属として、正にニューヨークの並み居る歌手達の中で頂点を極めていた時、ルイス・アレンという詩人(本業は教師)から、一遍の詩を見せられたことがきっかけでした。

これこそが「奇妙な果実」。

その詩は、当時アメリカ南部で頻繁に起きていた、悲惨な黒人リンチの様子を、余りにも生々しい描写で淡々と書いたショッキングなものでした。

これを読んだビリーは「唄おう」と決意したのですが、その背景には、人種差別に対する抗議の怒りというよりも、実際に南部で、黒人ミュージシャンであったために病院で診察をことごとく拒否されて亡くなった彼女の父親の話も、心にオーバーラップしたからだとも言われております。

ビリーは早速コロムビアに打診して「奇妙な果実を録音したい」と願いますが、メジャー・レーベルであるコロムビアは、そういった社会性の高い(そして、白人層に対して心象の良くない)歌をレコーディングすることに難色を示します。

そこで「じゃあウチで吹き込みなよ」と、声をかけたのが、当時レコード店兼レーベルだった「コモドア」という小さな会社だったのです。

このレーベル、小さいながらも当時のスイング・ジャズのとてもいい音源を結構残していて、ビリーの「奇妙な果実」も、バックには素晴らしいミュージシャン達が集って、演奏も選曲も、アルバム単位で素晴らしく、結果ビリーのコモドア・レコーディングは真摯にレコードを追いかけているジャズファンの間で「アレは素晴らしい」と話題になります。

当時はシングルのSP盤の時代だったので、コレがLPになるのは、リリースから何十年も経ってからなのですが、とにかくLPとなって、ビリーの死後(戦後)、丁度社会運動も大いに盛り上がってきた時流にも乗って「ビリー・ホリディの奇妙な果実は、社会問題に関心がある人間なら聴かねばならない問題曲」とまで言われるようになって、さっきも言ったように、世界中に拡がります。

しかし、アタシが注目したいのは、そういった社会運動あれこれが絡んだ時代も過ぎた80年代とか90年代、そして21世紀になった現在でも、ビリーのこのアルバムは「ジャズ・ヴォーカルの代表的名盤」として、音楽を愛する人々から、正当に評価され続けているということです。

それもそのはず、このコモドア・レコーディングは「奇妙な果実」1曲のみではなく、この1枚のアルバムの中に、しっとりとした曲、穏やかな曲、やや明るめの爽やかな曲と、単に"暗い”だけではない彼女の素晴らしい魅力が、絹のようになめらかな伴奏と共に、丁度良い塩梅でまとめられているのです。

「イエスタデイズ」「水辺にたたずみ」「ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ」なんかは、後年も彼女のライヴでは欠かせないレパートリーとして、多くのアルバムにレコーディングされた曲です。

ビリーの声、力強さとか華麗な明るさとはちょっと違う位置にある独特のものですが、その一語一語を噛み締めるように、隅々まで切々とした感情(哀しさと優しさ)が行き渡っていて、これはもうやめられませんわ・・・。



(個人的にこのアルバムの中で一番好きな「水辺にたたずみ」)


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