ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年11月20日

ウエス・モンゴメリー ア・デイ・イン・ザ・ライフ

4.jpg

ウエス・モンゴメリー/ア・デイ・イン・ザ・ライフ
(A&M/ユニバーサル)

ウエス・モンゴメリーといえば、ジャズ・ギターの奏法をとにかく一歩先を行く斬新なものにした革新者であります。

親指一本で信じられないぐらいの流麗で力強い単弦ソロや、オクターブ弦を同時に鳴らす”オクターブ奏法”を繰り出し・・・と、まぁ専門的なことを言えばいくらでも言えるしキリがありませんが、とにかくウエスの凄いところは、たとえばジャズとかギターの音とか、そういうことに全く興味がない人にも

「あら、このギターちょっといいわね」

と言わせてしまうとこなんですよね。

「まさかそんなヤツおらんだろー」

と、お思いの方には、アルバム「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を聴いて頂いております。



【パーソネル】
ウェス・モンゴメリー(g)
ハービー・ハンコック(p)
ロン・カーター(b)
グラディ・テイト(ds)
レイ・バレット(perc)
ジャック・ジェニングス(perc)
ジョー・ウォーレルズ(perc)
ドン・セベスキー(arr,cond)
with.オーケストラ

【収録曲】
1.ア・デイ・イン・ザ・ライフ
(原曲はビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に収録)

2.ウォッチ・ホワット・ハプンズ
(ミシェル・ルグラン作「シェルブールの雨傘」挿入歌)

3.男が女を愛する時
(パーシー・スレッジが歌った1966年のR&B大ヒット曲)

4.カリフォルニア・ナイツ
(レスリー・ゴーアの1967年のヒット曲。当時のポップスを代表する歌)

5.エンジェル
(ジミヘンではありません、ウエス・モンゴメリーの本作唯一のオリジナル・ナンバー)

6.エリナー・リグビー
(ビートルズ、アルバム「リボルバー」収録)

7.ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
(「柳よ泣いておくれ」で知られるジャズ・スタンダード)

8.ウィンディ
(アソシエイションズが歌ってヒットした、60年代ソフト・ロック名曲)

9.トラスト・イン・ミー
(戦前から演奏される有名スタンダード)

10.ジョーカー
(元々はミュージカル・ナンバーで、セルジオ・メンデスとブラジル66が歌ってヒットさせたブラジリアン・ポップス)

これ凄くいいんですよ〜、内容はビートルズ・ナンバーを中心に、ポップスのヒット曲を爽やかなストリングス・オーケストラをバックに演奏しているんですけど、ウエスのギターはアドリブ控え目に、原曲のポップなメロディーを、しっかりと”ジャズの音”で弾いております。

曲目の内訳を【収録曲】のところに書いてあったんですが、ビートルズの2曲を筆頭に、このアルバム収録当時のポップスのカヴァーが中心です。

アルバムが収録された1967年は、丁度ロック全盛期で、世界中をビートルズ旋風が席捲していた時代。

ジャズはセールス的に苦戦を強いられておりましたが、ジャズの演奏家達も「これじゃいかん」と自分達の演奏の中に、何か新しいものを見出そうと必死で模索していた時代ですね。マイルス・デイヴィスはエレクトリックなバンドを実験的にやり出して、色んな人がソウル・ジャズとかジャズ・ファンクとか、とにかく世間で流行している音楽の要素を取り入れながら、次々とジャンルを跨いだ面白い作品を出し始めていた時代。

後に”フュージョン”という音楽が、こういった流れの中から生まれてきますが、ウエスのこのアルバムは、その元祖ともいえるかも知れません。

楽曲はポップで、ストリングスやパーカッション(ソフトなやつ)を配した、これまたポップなアレンジ。でも、その中でキラッと渋い光沢を放つ、熟練のジャズなフィーリング。聴き易いけれども決して軽薄な音ではなくて、入り込む人の耳をしっかりと惹きつけて離さない後味の物凄いコクがあるんです。

ウエスがギター弾きまくってる、あるいはジャズしまくってるアルバムなら、断然初期のRiverside盤でしょうが、後期のポップなアルバムには、抗し難い音楽的な魅力が詰まってるような気がします。


(「男が女を愛する時」短い演奏でアドリブも抑え気味ではあるんですが、これが泣けますね)


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月15日

ビリー・ホリデイ 奇妙な果実

5.jpg
ビリー・ホリデイ/奇妙な果実
(Comodore/キングレコード)

昨日に引き続きビリー・ホリデイです。

何と言いますか、コレはアタシのもしかしたら思い入れに関する部分も多分にあるとは思いますが、一旦想いを語ってしまうと「あ、しまった、アレもあった。コレもあった。」と、後からどんどん想いが湧き出してくるシンガーがビリーなんです。

彼女を語るには、その余りにも不幸な生い立ちと、余りにも不幸な最期というのが必ずセットになります。

私生児として生まれ、そしてシンガーとして脚光を浴びたのも束の間、私生活では麻薬とアルコール、そしてパートナーとなる男性達からの暴力や金銭トラブルなどなどなど・・・。

ザックリ言ってしまえば、彼女の唄の力、そしてアーティストとしての魅力というのは、ほとんどがそのハード過ぎる人生の中で傷ついたり、打ちひしがれたりした心の傷の生々しさだったりすると思うんです。

でも、アタシの中ではどうしても「心の傷=音楽のカッコ良さ」には安直に結び付けたくない葛藤があります。

それはもちろん、ミュージシャンのハードライフを、まるで芸能ゴシップみたいにあげつらって見世物にしたくない、彼女の心の傷ばかりに関心を引くリスナー達によって、肝心の唄がぞんざいに扱われたくないということもありましょうが、やはりアタシは誰がどう言おうが、読み物に何が書かれていようが、彼女の唄が好きなんです。

こういうことを話すとキリがありませんので、今日はサクサク作品を紹介しましょうね。



【パーソネル】
ビリー・ホリデイ(vo)
フランク・ニュートン(tp)
ドク・チータム(tp)
フレディ・ウェブスター(tp)
ヴィック・ディッケンソン(tb)
タブ・スミス(as)
スタンリー・パイン(ts)
レン・ディヴィス(ts)
ケネス・ホロン(ts) 
ソニー・ホワイト(p)
エディ・ヘイウッド(p)
ジミー・マックリン(g)
テディ・ウォルターズ(g)
ジョン・ウィリアムス(b)
ジョン・シモンズ(b)
エド・ショーネシー(ds)
シドニー・カトレット(ds) 

【収録曲】
1.奇妙な果実
2.イエスタデイズ
3.ファイン・アンド・メロウ
4.ブルースを歌おう
5.ハウ・アム・アイ・トゥ・ノウ
6.マイ・オールド・フレーム
7.アイル・ゲット・バイ
8.水辺にたたずみ
9.アイル・ビー・シーイング・ユー
10.アイム・ユアーズ
11.エンブレイサブル・ユー
12.時の過ぎゆくまま
13.ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ
14.恋人よ我に帰れ
15.アイ・ラヴ・マイ・マン
16.明るい表通り


はい「奇妙な果実」です。

ビリーの名刺代わりの代表曲であり、ジャズというジャンルを超えて、今もなお世界中の人々に聴かれ続けている名曲「奇妙な果実」の初演ヴァージョンが入っており、かつタイトルにもなっている、これはLP時代からビリーの作品の中で最も有名な一枚であります。

ビリーがこの歌の元となる歌詞と出会ったのは1939年、メジャー・レーベル”コロムビア”の契約シンガーであり、ニューヨークの人気クラブ”カフェ・ソサエティ”の専属として、正にニューヨークの並み居る歌手達の中で頂点を極めていた時、ルイス・アレンという詩人(本業は教師)から、一遍の詩を見せられたことがきっかけでした。

これこそが「奇妙な果実」。

その詩は、当時アメリカ南部で頻繁に起きていた、悲惨な黒人リンチの様子を、余りにも生々しい描写で淡々と書いたショッキングなものでした。

これを読んだビリーは「唄おう」と決意したのですが、その背景には、人種差別に対する抗議の怒りというよりも、実際に南部で、黒人ミュージシャンであったために病院で診察をことごとく拒否されて亡くなった彼女の父親の話も、心にオーバーラップしたからだとも言われております。

ビリーは早速コロムビアに打診して「奇妙な果実を録音したい」と願いますが、メジャー・レーベルであるコロムビアは、そういった社会性の高い(そして、白人層に対して心象の良くない)歌をレコーディングすることに難色を示します。

そこで「じゃあウチで吹き込みなよ」と、声をかけたのが、当時レコード店兼レーベルだった「コモドア」という小さな会社だったのです。

このレーベル、小さいながらも当時のスイング・ジャズのとてもいい音源を結構残していて、ビリーの「奇妙な果実」も、バックには素晴らしいミュージシャン達が集って、演奏も選曲も、アルバム単位で素晴らしく、結果ビリーのコモドア・レコーディングは真摯にレコードを追いかけているジャズファンの間で「アレは素晴らしい」と話題になります。

当時はシングルのSP盤の時代だったので、コレがLPになるのは、リリースから何十年も経ってからなのですが、とにかくLPとなって、ビリーの死後(戦後)、丁度社会運動も大いに盛り上がってきた時流にも乗って「ビリー・ホリディの奇妙な果実は、社会問題に関心がある人間なら聴かねばならない問題曲」とまで言われるようになって、さっきも言ったように、世界中に拡がります。

しかし、アタシが注目したいのは、そういった社会運動あれこれが絡んだ時代も過ぎた80年代とか90年代、そして21世紀になった現在でも、ビリーのこのアルバムは「ジャズ・ヴォーカルの代表的名盤」として、音楽を愛する人々から、正当に評価され続けているということです。

それもそのはず、このコモドア・レコーディングは「奇妙な果実」1曲のみではなく、この1枚のアルバムの中に、しっとりとした曲、穏やかな曲、やや明るめの爽やかな曲と、単に"暗い”だけではない彼女の素晴らしい魅力が、絹のようになめらかな伴奏と共に、丁度良い塩梅でまとめられているのです。

「イエスタデイズ」「水辺にたたずみ」「ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ」なんかは、後年も彼女のライヴでは欠かせないレパートリーとして、多くのアルバムにレコーディングされた曲です。

ビリーの声、力強さとか華麗な明るさとはちょっと違う位置にある独特のものですが、その一語一語を噛み締めるように、隅々まで切々とした感情(哀しさと優しさ)が行き渡っていて、これはもうやめられませんわ・・・。



(個人的にこのアルバムの中で一番好きな「水辺にたたずみ」)


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月14日

Lady Day: the Complete Billie Holiday on Columbia 1933-1944

4.jpg
ビリー・ホリディ/Lady Day: the Complete Billie Holiday on Columbia 1933-1944
(Columbia)

そういえばジャズについてはたくさん書いておりますが、ジャズ・ヴォーカルのことはあんまり書いてないなと、ブログの過去記事を見て思いました。

いや、ジャズ・ヴォーカルが嫌いとか苦手な訳じゃないんです。

むしろアタシは、疲れた時、なーんにも考えたくない時、ただもう優しさに包まれて眠りたい時は結構な頻度でヴォーカルものを聴いております。

エラ・フィッツジェラルドにサラ・ヴォーン、ヘレン・メリル、アニタ・オデイ、サッチモ、カーメン・マクレエ、ダイナ・ワシントン、ナット・キング・コール、ジョニー・ハートマン、アン・バートン、ブロッサム・ディアリー、ジュリ・アレン、ジュリー・ロンドン、フランク・シナトラ、ジミー・ラッシング、ビッグ・ジョー・ターナー、マーク・マーフィー、ミリー・ヴァーノン・・・あぁ! 彼女(彼)たちこそ、もう40の中年オッサンなアタシにとっては救いの大天使達なのです。

なのでいつか書こう!それこそ読んでくれている人にも、ジャズ・ヴォーカルの人間的な優しさ(慈愛)に満ち溢れた声が届くような文章を・・・!

と、思っていますが、実はアタシにとっては、彼女(彼)たち”大天使”の上の存在がおりまして、この人のことをいつか書こう、いつかじっくり書かねばと思いながら

「あぁぁあああ!!好き過ぎて書けない!!!!」

と、ずーーーっと悩んでおりました。




その人の名はビリー・ホリデイ。



ジャズの世界では、他の並み居るヴォーカリスト達と一線を引くように”不世出の”という特別な称号でもって讃えられ、かつ”レディ・デイ”という美しい名前でその唄の切なさ/儚さが今も多くの人々の口から語られている特別な存在・・・。

かつて、アタシは十代の時に戦前ブルースにハマりました。

18の頃の、暑い夏だったと思います。

夏休みで奄美に帰省したその時、実家(サウンズパル)の試聴機に入ってる『ブルースベスト』みたいなタイトルのオムニバス盤を何気に聴いておりましたら、ジャケ裏のクレジットに「奇妙な果実/ビリー・ホリデイ」とありました。

中学の頃、そういえば親父に言われたことがあります。

「お前、ブルース聴くんだったら”奇妙な果実”ぐらい知っとらんといかんぞ」

反抗期だったアタシは「あぁ、はいはい」ぐらいに聞いてましたが、気にはなってたんです。

かつて、ブルースの故郷アメリカ南部では、ほとんど集団ヒステリーとしか言えない白人による黒人のリンチ殺人が盛んに行われていて、あろうことかそれがまるでサーカスやスポーツの見世物のように宣伝され、土産物まで売られて、娯楽として人々に受け容れられていたことを。そして「奇妙な果実」は、とある女性シンガーが、そういった狂った風習に、渾身の静かな怒りを向けて唄った伝説的な曲であるということを・・・。

でも、その頃はまだその唄がビリー・ホリデイの代表曲であるということも、その歌詞の内容も、実際のアメリカ南部での酷い有様がどのようなものだったかも知りません。ブルースというのはあくまで「自分自身の気持ちの暗い部分に妙にフィットして、それととことん向き合わせてくれるか、それとも真逆を向いて踊らせるかをさせてくれる、実にゴキゲンな音楽」でしかありませんでした。

ヘッドフォンを耳に充てて、初めて聴いたその唄は、暗く冷たい地の底で、弱弱しい声の女性が悲痛な呻き声を上げているかのように聞こえました。

ビリーの声は、それは何と言ったら良いか、単純に人種差別反対だとか、社会派のミュージシャンがひとうつの問題に怒りや否定の意思を表明して・・・とか、そういう類のものではなくて、もっと根源的な・・・こ
ういう言い方は余り好きではないのですが、実際に不幸で理不尽な死にみまわれた人々の無念や悲しみを、この翳りのある声を持つシンガーが、自身の内側に掬い上げ、声として唄として搾り出すように吐き出している。そんな生々しさを感じました。そして、言葉で説明のしようもないぐらい激しく打たれました。

「これがビリー・ホリデイ・・・」

そこから先も数日間はしばらく”絶句”の状態が続きましたね。

これはもう、こういうオムニバスで有名な曲だけを聴いていたんじゃ、きっと気持ちが収まらないと観念したアタシは、東京に戻って早速ビリー・ホリデイをたくさん買ってじっくり聴くことを決意しました。

その頃、まだ東京のあちこちを知らなかったアタシが唯一心の拠り所にしていた池袋のヴァージン・メガストアのジャズコーナーに行き、国内盤輸入盤も含めて思いの他大量にあった『ビリー・ホリデイ』のコーナーの前で立ち尽くし、どれを買ったらいいかしばらく途方に暮れてしまったことは言うまでもありません。

その時「あぁいかん、とりあえずベスト・アルバム買お。そしてどうせなら2枚組だ!」と、たくさんの呆然を振り切って買ったのが、当時ソニー・ミュージックから出ていた2枚組の「レディ・デイの肖像」というアルム。はい、ベスト盤だと思ってましたらコレが違ったんですね。戦前に録音された彼女の音源のほとんどをキッチリ集めた初期音源集。

すべて「奇妙な果実」が生まれる前の録音です。当然入ってなかったんですが、結果としてこのアルバムと初期ビリーと出会えたことが、アタシにとっては最高に幸せなことだったんです。



(今ではコチラのタイトルで、曲も増えてリイシューされてます↓)



【パーソネル】
ビリー・ホリディ(vo)
ロイ・エルドリッジ(tp)
バック・クレイトン(tp)
テディ・ウィルソン(p)
ベニー・グッドマン(cl)
レスター・ヤング(ts)
ベン・ウェブスター(ts)
ベニー・カーター(as,cl)
フレディ・グリーン(g)
ミルト・ヒントン(b)
ジョー・ジョーンズ(ds)
ケニー・クラーク(ds)




【収録曲】
(Disc-1)
1.Your Mother's Son-In-Law
2.Riffin' the Scotch
3.I Wished on the Moon
4.What a Little Moonlight Can Do
5.Miss Brown to You
6.Sunbonnet Blue
7.What a Night, What a Moon, What a Girl
8.Im Painting the Town Red
9.It's Too Hot for Words
10.Twenty-Four Hours a Day
11.Yankee Doodle Never Went to Town
12.Eeney Meeney Miney Mo
13.If You Were Mine
14.These 'N' That 'N' Those
15.You Let Me Down
16.Spreadin' Rhythm Around
17.Life Begins When You're in Love
18.It's Like Reaching for the Moon
19.These Foolish Things
20.I Cried for You
21.Guess Who
22.Did I Remember
23.No Regrets
24.Smmertime
25.Billie's Blues
26.Fine Romance

(Disc-2)
1.Fine Romance
2.I Can't Pretend
3.One, Two Button Your Shoe
4.Let's Call a Heart a Heart
5.Easy to Love
6.With Thee I Swing
7.Way You Look Tonight
8.Who Loves You
9.Pennies from Heaven
10.That's Life I Guess
11.I Can't Give You Anything ButLove
12.One Never Knows, Does One
13.I've Got My Love to Keep Me Warm
14.If My Heart Could Only Talk
15.Please Keep Me in Your Dreams
16.He Ain't Got Rhythm
17.This Year's Kisses
18.Why Was I Born
17.I Must Have That Man
20.Way You Look Tonight [Alternate Take]
21.Who Loves You (Alternate Take)
22.Pennies from Heaven (Alternate Take)
23.That's Life I Guess (Alternate Take)
24.I've Got My Love to Keep Me Warm (Alternate Take)


まず、このアルバムは、ビリー・ホリディのデビューからその周辺の時期(1930年代初頭)から最初の絶頂期(1930年代中盤)の素晴らしい歌唱が収められております。

バックを固めるのも、ベニー・グッドマンにレスター・ヤング、テディ・ウィルソン、ベン・ウェブスターなどなど、当時のスウィング・ジャズの超一流どころのスター・プレイヤー達。

や、その時はバックのメンツがそんなに凄いとか、正直知らずに聴いてたんですけどね。ビリーの可憐で、でもどこか独特の哀しみをうっすらと纏っているような歌唱に、最高に上質で、最高に”香る”演奏で応えるバックのサウンドを聴いて「すげぇ!コレが戦前のジャズか」と、訳も分からず勝手に感動したもんです。

「What a Little Moonlight Can Do」での、軽やかに飛翔して、意外にもパワフルなところも聴かせるベニー・グッドマンのクラリネット、そして今も”伝説”として語られる「All of Me」での、レスター・ヤングのテナーとの、魂の通い合った切ない切ない声とテナーの涙なしには聴けないやりとりなどなど・・・。「奇妙な果実」が収録されておらずとも、アタシは十分にビリー・ホリデイという人を知ることが出来ましたし、その素晴らしさもまた十分に感じることが出来ました。今でも事ある毎に聴いている愛聴盤です。

ビリーの唄は「楽器のよう」と言われておりました。それまでヴォーカリストは譜面に忠実に、アレンジに添うように(或いはヴォーカリストの唄い方や声の質に合わせてアレンジはあらかじめしっかりと作り込まれるもの)唄っていたのですが、ビリーは独自の間とタイミング、絶妙な”ズラし”で、まるで楽器がアドリブで唄うような、今のジャズ・ヴォーカルの基本中の基本となるスタイルの骨組みを、この時代すでに作り上げていたのです。

多くの人が言うように、確かにビリーの声は明るくはありません。でも、この初期音源の、哀しいけれどそれを振り切って懸命にスウィングしようと張り切って、或いはバラードで内側から滲むヒリヒリした情感と苦しくせめぎあいながらも、澄み切った優しさを感じさせるビリーは格別です。

あぁ・・・書きたいことは無限にありますが、ビリーについて書いていたら多分一晩では終わらないでしょう。

とりあえず皆さんは、まずビリーの繊細で美しく、そして何よりこの時代のジャズならではの香気溢れる演奏にも耳を傾けながら、ひたすら空気感とか叙情を感じてください。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月11日

ロン・カーター スパニッシュ・ブルー

4.jpg

ロン・カーター/スパニッシュ・ブルー
(CTI/キングレコード)


ツイッターを見ておりますと「11月11はベースの日!」というタグが付いたツイートで盛り上がっておりました。

アタシはてっきり11月11日は「ポッキーの日」とばかり思っていたんで、朝起きてツイッターを見ると新垣結衣さんを讃えるツイートで、タイムラインが埋め尽くされているんだとばかり思っておりましたが、これは意外でした。

「何で11月11日はベースの日なんだろう?」と思ったら、1111の数字の並びが、弦が4本あるベースと同じであるからとか。

ほうほう、これは面白いですなぁ。

知らなかったアタシは、早速感化されて今日は”ベースもの”を聴いてたんですが、さて皆さんは”ベース”といえば、誰を思い浮かぶでしょうか?

ざっとアタシの中でも、色々なジャンルの色々なベーシストが思い浮かんだのですが、

o0424020710243418834.jpg

SHIMA-CHANG・・・(ポッ)


あぁぁあ・・・!!(汗)


・・・

というわけで、今日は皆さんに「ベーシストのカッコ良さ」というのをお伝えしたい。

カッコイイといえば、やっぱりジャズですよね。ウッドベースのカッコ良さはやはり特別です。

弾けずとも、持っているだけでカッコイイ、それがウッドベースだとアタシは思ってるんですが、ジャズ界には「ミスター・ベース」と呼ばれる超カッコイイ、ダンディーなおじさまがおります。

それがロン・カーター

5.jpg

いや〜素敵、オシャレ、こういうおじさまにアタシはなりたい。。。

190はあろうかというスラッとした長身で、知的なお顔、そしてスーツの着こなしも実にシャレてます。これぞジャズマンです。

と、のっけから興奮気味ですいません。ロン・カーターはルックスだけじゃなく、当たり前ですがベーシストとしての腕も一流で、何より音色もアプローチも、実に”あ、これはロン・カーター”と呼べる、結構濃い個性を持っているんですよ。今日はそのへんの話をば・・・。


ロン・カーターがジャズの世界でその名を知られるようになったのは1960年代。

彼のキャリアの最初の方で一番デカいのは、もちろんあのマイルス・デイヴィスの最後のアコースティック・バンド。すなわちウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムスという、当時の若手の中でも選りすぐりの”新しいセンス”を持ったメンバー達と、ジャズの歴史と常識を次々塗り替えた時期であります。

それ以前にも「チェロ&ベース奏者」として、エリック・ドルフィーの名盤「アウト・ゼア」など、どちらかというと、オーソドックスなモダン・ジャズのベーシストというより、どこかメジャーな路線から離れた前衛的な感覚を持つプレイヤーと思われていたフシがあります。

実際に彼の演奏は、ゴムのように弾力のある音色と、不穏さを醸し出す微妙なピッチで、コードとコードの間を漂いながら、どこかおぼろげな独特の雰囲気を醸すプレイでありました。

よく「ロン・カーターは音程が悪いから・・・」と、否定的な意見も確かに読むこともありますし、それはある意味で間違ってはいないと思いますが、しかししかし、アタシはロン・カーターの不安定な(あえてこう言いますよ)音程が醸し出す微妙な”揺れ”の空気、これにとってもジャズを感じてたまんないんです。えぇ、好きなんです。

マイルス・バンドで大活躍した後の70年代に、ロン・カーターは次々にソロ・アルバムをリリースします。

丁度この頃は後に”フュージョン”と呼ばれるクロスオーバーなジャズが出始めの時期でもあり「ちょいとフツーじゃないジャズがまだやりたい」と、恐らく思っていたであろうロン・カーターにとっては、この時流が追い風となり、日本を中心に人気が出て、彼のアルバムはよく売れるんです。






【パーソネル】
ロン・カーター (b)
ヒューバート・ロウズ (fl)
ローランド・ハナ (p,el-p)
レオン・ペンダーヴィス (el-p)
ジェイ・バーリナー (g)
ビリー・コブハム (ds)
ラルフ・マクドナルド (per)

【収録曲】
1.エル・ノーチェ・ソル
2.ソー・ホワット
3.サバド・ソンブレロ
4.アーカンソー


1974年にリリースされた「スパニッシュ・ブルー」は、当時の日本のジャズ喫茶でも人気があったアルバムで

・スパニッシュ

・マイルスの曲、

・ブラジルっぽいスローな曲

・ユルめのジャズファンク

と、バリエーション豊かな選曲で、ロン・カーターという人の魅力が総合的に楽しめます。

この作品を出しているCTIっていうレーベルがまた、60年代以前に活躍した大物たちの演奏を、ちょいとクールで爽やかなアレンジで色付けして、硬派を気取ってたアタシは最初バカにしてたんですけど、そんなアタシに「気合いの入った初期フュージョンはカッコイイ」ということを教えてくれたレーベルです。

このアルバムでも、多国籍な雰囲気とラストのアーバンファンクな曲調とアレンジが、そこはかとないフュージョン感ではあるんですが、@Bでのひんやりとした哀愁とか、ビシッと決まる4ビートは流石のAとかで、一本筋が通った”ジャズ”に仕上がっております。ロン・カーターのベースもここでは割とカチッとしたピッチで演奏全体を的確に支えていて、ベーシストとしての確かな腕前にも満足♪

あと、このアルバムはフルートのヒューバート・ロウズがとても素晴らしいです。グイグイ前に出てスイングするテクニックももちろんですが、この人の音色自体がとっても澄み切っているくせにやたらこう泣かせるところがあるんですよね。だからロン・カーターのウッドベースとエレキの中間みたいな不思議なベースの音ともすごく相性よく響きあっています。「哀愁紳士」ローランド・ハナのカッチリと泣かせるピアノもええよ。




(スパニッシュだねぇ、カッコイイねぇ・・・)


”ロン・カーター”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月05日

チャーリー・ラウズ&ポール・クイニシェット ザ・チェイス・イズ・オン

4.jpg
チャーリー・ラウズ&ポール・クイニシェット/ザ・チェイス・イズ・オン
(BETHLEHEM/EMIミュージック)

ひきつづきセロニアス・モンクの良きパートナーでありつつ、モダン・ジャズ・テナー・サックス、屈指の実力派であるチャーリー・ラウズの作品をご紹介いたします。

ラウズが安定した力量の持ち主で、かつワン・アンド・オンリーの上質な”味わい”の持ち主であるということは、前回ご紹介しました「ヤー!」の頁で触れました。

もちろんモンクのバックで、カクカクポンポン(どんな擬音だ)と、空間を自在に変化させて楽しむモンクのピアノにピッタリと寄り添って、一服の清涼剤として、或いは演奏全体をキリリと引き締める香辛料としてリーダーのプレイを忠実に引き立てる「とてもよくできた若頭」としてのラウズもカッコイイんですが、自身のリーダー作で「好きなジャズを肩肘張らずにとことん楽しみながら味わいで聴かせるラウズ」これがたまらないんです。

何というか、ラウズのふくよかで優しい厚みのあるテナーの音は、ジャズっていう音楽を聴いて感じる多幸感のようなものが、エキスとしてギュッと凝縮されているような気がするんです。ほら「理屈じゃないんだよね、聴いてて何となく心地いいのよ」というあの感じ。

実際にラウズのそんなに多くないソロ・アルバムは、実にハズレがありません。

どのアルバムも、モダン・ジャズの上質な旨み成分が、ラウズの伸び伸びと楽しそうなブロウからじんわり滲み出ていて、例えば夜、ちょっとまったりした時間を過ごしたい時なんかもう最高です。今の季節でしたらそうですねぇ、コタツに入ってちょいと一杯やる時のBGMにはバッチリなんじゃないかと思います。聴き手に多くを要求しない、かといって無味乾燥じゃなくて、真剣に聴けばそれなりのドッシリした聴き応えを感じさせてくれるのもまたラウズ。

今回も、そんなラウズの”幸せ盤”を紹介しましょうね♪



【パーソネル】
チャーリー・ラウズ(ts)
ポール・クイニシェット(ts)
ウィントン・ケリー(p,@BCE〜G)
ハンク・ジョーンズ(p,AD)
フレディ・グリーン(g,AD)
ウェンデル・マーシャル(b)
エド・シグペン(ds)

【収録曲】
1.ザ・チェイス・イズ・オン
2.ホエン・ザ・ブルース・カム・オン
3.ジス・キャント・ビー・ラヴ
4.ラスト・タイム・フォー・ラヴ
5.ユーア・チーチング・ユアセルフ
6.ニッティン
7.テンダー・トラップ
8.ザ・シングス・アイ・ラヴ


丁度ラウズがモンクのバンドに加入するちょいと前、同じくテナー奏者のポール・クイニシェットと組んで録音したテナー・バトル盤。タイトルも「チェイス(追っかけっこ)」ですねぇ。

よっしゃあ、テナーバトルだぜぇ!ブリブリゴリゴリに吹き合ってガチンコでやりあってるぜぇ!

と、思うでしょうが、このアルバムは実際に”バトル”という感じで2人が飛ばし合うのは1曲目のタイトル曲だけ。あとはまろやかなまろやかなポール・クイニシェットと、ややパリッとした音で悠然たるフレーズを美しく紡いでいくラウズとの、心温まる2テナー共演盤に仕上がっております。

これは、ラウズの尋常じゃない協調性の高さ(でないとモンクとは演れないもんね)もありますが、共演のポール・クイニシェットの個性に拠るところも大きいんです。

クイニシェットは、ラウズより10歳ぐらい年上で、スウィング時代から活躍しておる大ベテランテナー奏者です。

ジャズ・テナーの世界では、初めてまろやかで流れるようなスムースな奏法(後にチャーリー・パーカー、スタン・ゲッツなどにものすごい影響を与えた)を確立したレスター・ヤングと、音色からフレージングからとてもよく似ていたために、レスターの”大統領(プレス)”というあだ名にちなんだ”副大統領(ヴァイス・プレス)”というニックネームを持っていた人です。

このクイニシェットのスタイルというのが、スウィング時代の良きエスプリと、モダン時代のフレージングの
オイシイところを絶妙な配合(7:3ぐらいかな〜)で併せ持っていて、ラウズとの相性もすごくんですよ。

というわけでこのアルバムでのラウズは、そんな先輩クイニシェットのキャラをよくよく考えて、他のソロ作よりも若干強めのトーンで、結構力強く吹いております。よく「同じ楽器だとどっちが誰の音だかわかんないよ」と、悩ましい盤もあったりしますが、コレに関しては心配ご無用。「やわらかくひたすらスムースな音のクイニシェット・やや硬質で元気な音のラウズ」で、キャラがしっかりと際立っております。

互いの演奏巧者ぶりがミディアム・アップの曲調で見事に捉えられた@、それぞれに憂いを染み込ませた音をアドリブをやりとりしながら上質に掛け合わせてゆくバラードのACなど、重ねられる毎に深みを増す、上質な”男の会話”が穏やかに流れて、聴く方もウットリします。

ラウズの良さって”何度聴いても飽きないところ”だと秋の夜長にしみじみ。これもまたいいアルバムです。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする