2019年05月05日

キング・オリヴァー The Complete1923 Jazz Band Recordimgs

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King Oliver/The Complete1923 Jazz Band Recordings
(Archeophone Records)


皆さんこんばんは、いつの間にやら時代は平成から令和に代わり、いつの間にやらゴールディン・ウィークでございますねぇ。

まとまった休みだからガッツリ旅行とかイベントとか行くよって人もいらっしゃるでしょうし、のんびり静かに過ごしてる人もおられるでしょう。「休み?んなもん関係ないよ!」という人もいらっしゃる。はい、アタシもゴールデン・ウィークとは言いながら、休んだり仕事に出たり、何だかんだドタバタしておりました。

そんな中、家でのんびり聴いていたのは、古き良き時代のジャズです。

おっと、アタシは個人的に「古き良き」って言葉が実はあんまり好きじゃない。

今の時代はそりゃあ世知辛いけど、昔は昔の苦労や不便があったはず。

それを思うと「今が全部ダメで昔が全部良かった」なんてことは無責任には言えません。

でもね、古い音楽を聴いてると「あぁ、いい時代の空気が流れて鳴ってるなぁ〜♪」って無条件に思えてくるんですよ。

これはもしかしたら、時代がどうこうというんじゃなくて、その音楽をやってる人達が、その時代の一番いい空気を集めてそれを音にしていたからなんじゃないかって思えるから、そして逆にその「自分が生きてない時代の空気」ってのが、古いも新しいもなく、とてもカッコ良く穏やかに刺激的なものだったりするもんだから、えぇ、こと音楽に関してだけは、この「古き良き時代」って言葉、今後も使おうと思っております。


で、今日は「古いジャズを聴こう」ってなった訳ですね。

ジャズってもしかしたら皆さんは、1960年代とか50年代のモダン・ジャズでも「十分古い音楽じゃな〜い」って思われるかも知れませんが、今日アタシが昼間自分ちの畳に寝っ転がって、ほへ〜っとヨダレ垂らしながら聴いていたのはそんじょの古さじゃありません。何と、日本で言えば大正時代の1923年のジャズであります。

1923年といえば、レコードがブ厚く思いSP盤に録音されて、それなりの数が流通するようになった最初の頃、そんな時代に「ジャズ」という音楽がブルースと共に

「最新のイカした音楽だぜぇ♪」

と、世に出回るようになったんですね。

最初にそのジャズっていう音楽を誰が考えて演奏したのか、その辺りはよく分かってはおりませんが、大体1880年代の終わり頃には、西洋音楽のメロディーを、黒人が独自のアクセント(シンコペーションってやつです)でもってリズミカルに演奏したラグタイムという音楽が出来上がっていて、それがジャズの原型と言われております。

ほんで「ジャズ誕生の地」と飛ばれる軍港の街ニューオーリンズでは、歓楽街に立ち並ぶいかがわしいお店でもって、このラグタイムに軍隊のマーチングバンドとか黒人音楽のブルースとかを織り交ぜたものが景気演奏されていて、これが「イカすぜ!」って意味と「いかがわしいぜ!」って意味の卑猥なスラングをもじった「ジャズ」っていう言葉で呼ばれるようになったんだとか。

そんなこんなの1905年頃、そんな中に一人のコルネット奏者がニューオーリンズに現れて、それまではバンドが「せーの」で調子を合わせた合奏をしていたこの音楽で「自由にアドリブで演奏する」ということをおっぱじめた。

バディ・ボールデンと名乗る、このクレオール(黒人とフランス系白人の混血)男のコルネットは、自由自在な即興演奏はもちろん「ミシシッピ川の向こうからも聞こえる」と言われる程のデカい音。

更にそのパフォーマンスが酒を浴びるようにかっくらいながら、動き回ったり楽器を放り投げながら吹きまくる、しかも仕事が続く時は全く寝ないで何日もぶっ続けで(!)夜通しやっていたと。

こんなもん狂人じゃないか!と思ってたら、やっぱりバディ・ボールデンという人は大酒を飲みながらそんなパフォーマンスをやってるうちに本当に発狂して、それから生涯精神病院で過ごさざるを得なくなったみたいです。

この人は、その革新的なコルネット・プレイで「初代ジャズ王」と呼ばれた程なんですが、残念ながらレコードを残しておりません。

う〜ん残念、でもバディ・ボールデンが築いた原初ジャズの形式を受け継いで、更に完成度の高い音楽へと発展させた”2代目ジャズ王”の演奏は、しっかりとレコードに残されておりまして、現在誰もが聴いて楽しむ事が出来ます。

そう、アタシが聴いていたのは、このキング・オリヴァーの初期の1923年録音のアルバムだったんです。

いや〜、これいいですよ。細かい事はどうでもいいって人は、もうこれから先はぜひ読まずに下のリンクをポチっとやって聴いて欲しい。天気のいい日にのんびり聴くには最高の、カラッと明るく景気のいい、グッド・オールド・ミュージックなんですよね〜。




King Oliver

【パーソネル】
キング・オリヴァー(cornet)
ルイ・アームストロング(cornet)
オノレ・ダトリー(tb)
ジミー・ヌーン(cl)
ジョニー・ドッズ(cl)
ジョニー・センシア(banjo)
リリアン・ハーディン(p)
ベイビー・ドッズ(ds)

【収録曲】

(Disc-1)
1.Just Gone
2.Canal Street Blues
3.Mandy Lee Blues
4.I'm Going Away To Wear You Off My Mind
5.Chimes Blues
6.Weather Bird Rag
7.Dipper Mouth Blues
8.Froggie Moore
9.Snake Rag
10.Snake Rag
11.Sweet Lovin' Man
12.High Society Rag
13.Sobbin' Blues
14.Where Did You Stay Last Night
15.Dipper Mouth Blues
16.Jazzin' Babies' Blues

(Disc-2)
1.Alligator Hop
2.Zulus Ball
3.Workingman Blues
4.Krooked Blues
5.Chattanooga Stomp
6.London (Cafe) Blues
7.Camp Meeting Blues
8. New Orleans Stomp
9. Buddy's Habit
10.Tears
11.I Ain't Gonna Tell Nobody
12.Room Rent Blues
13.Riverside Blues
14.Sweet Baby Doll
15.Working Man Blues
16.Mabel's Dream
17.Mabel's Dream
18.Mabel's Dream
19.The Southern Stomps
20.The Southern Stomps
21.Riverside Blues


アタシがキング・オリヴァー知ったのは、ブルースをこれまた原初的なスタイルで唸る神懸かりな天才シンガー、テキサス・アレクサンダーのアルバムで、地の底から響くような沈鬱なアレクサンダーの横で「ぷわぁん、ぷわわぁん♪」と、何とも腰の砕ける呑気な音のコルネット吹いてるのを聴いて「あ、これ好き」と思ったのが最初の最初です。



「ジャズ」って言うと、何だか都会の夜の音楽みたいなイメージがあって、特に戦後のモダン・ジャズは確かにそんな雰囲気に満ち溢れているんだけど、キング・オリヴァーら戦前の名手ののどかな音を聴けば、まだジャズもブルースも同じ場所で仲良く演奏されていた時代の、明るい陽射しが降り注ぐ、アメリカ南部の真昼の大地が、何とも言えないエスプリと共にふわぁ〜っと思い起こされます。

で、キング・オリヴァーの、オリジナル・バンドでのジャズが聴けるのが、この1923年録音集です。

音を聴く前に、若き日のルイ・アームストロングとか、その奥さんになるリリアン・ハーディンとか、最初期のジャズ・クラリネット2大巨匠と呼ばれるジミー・ヌーンとジョニー・ドッズが2人共参加してたり、ディキシーランド最高のバンジョーマン、ジョニー・センシアがフツーに居たりと、まずはそのメンバーの豪華さにビビりますね。

特にこのレコーディングは、ルイ・アームストロングにとっては記念すべきデビュー録音なんです。

さて、肝心のキング・オリヴァーの音楽なんですが、彼は影響を受けたとされるバディ・ボールデンのようにクレイジーに吹きまくるタイプではなく、作曲家/編曲家として若い頃から評価されていただけの事はあり、まずバンド全体のサウンドをキッチリまとめた完成度の高い演奏を聴かせる音楽家です。

その上で自分自身のメロディアスなコルネットを始めとする各人のソロや、アレンジの中で際立つ個性をしっかりとピックアップする達人で、どの曲も不足なくゴキゲンな雰囲気で、最初から最後までテンションを下げる事なく楽しく聴かせます。

そう、この「楽しい」ってのが、キング・オリヴァーの一番の持ち味ですね。

もしかしたら精神がぶっ壊れるほどの激しい演奏を目の前で繰り広げていたバディ・ボールデンを見て「あ、こんなことやってたら死ぬか狂うかしかないわ、だったら俺はこの人がやってる事をもっと音楽的に完成されたものにしよう」と、オリヴァーは理知的な方向へ早々と舵を切ったのかも知れません。

そこに純粋にバディ・ボールデンのプレイに憧れて、でっかい音でアドリブをガンガン吹いてやるぞ!と意気込む若いルイ・アームストロングを加えた事によって、穏やかさと溌溂とした元気との絶妙なバランスが取れた仕上がりになっております。

この時代のアドリブは、もちろんその後のジャズのような長尺のスーパープレイではないのですが、きっちりとまとまった上質なオールド・ジャズのアレンジの中でコルネットやクラリネット、そしてピアノそれぞれのプレイをじっくり聴けば「譜面のあるラグタイム」から「譜面にないジャズのアドリブ」の間を行き来する黎明期の雰囲気を、楽しみながら味わえることでしょう。や、まずはコイツをツマミに一杯やってね〜と言いたくなる最高のゴキゲン音楽ですよ♪








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2019年04月29日

カウント・ベイシー カンザス・シティ・セヴン

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カウント・ベイシー/カンザス・シティ・セヴン
(Impulse!/ユニバーサル)


ジャズを構成する最も大事なものとして「スイング(スウィング)」とか「スイング(スウィング)感」というものがあります。

ほんでもってアタシはよく、ジャズの初心者ですって方から

「あの〜、アンタさっきからスイングスイング言ってるけど、そのスイングってのの意味がわからん」

と言われます。

あちゃー、そうですよねー。ジャズ好きの間では当たり前に使われる言葉で、ついアタシも「分かってること前提」で当たり前に使っちゃいますが、いやいや、こういうのがいかんのです。だからジャズは難しいとか敷居が高いとか思われちゃう、うぅ・・反省・・・。

「スイング」ってのはですね、えぇと、アレですよ。ジャズのゴキゲンなリズムを聴いていると、自然と体が小刻みに揺れたり、指とか手とかがリズムに合わせて動いたりするでしょう。そう、それがスイングなんです(!)

ん〜、それでもよく分かんないという方には、スイングという言葉ひとまず置いといて、音楽全般で使われる「グルーヴ」ってヤツはどうですかね?それでもピンと来ない方にはバイブス!これでどうだ!!

つまり「スイング」ってのは、言葉ではうまく説明できないけど、音楽からは確実に感じる事の出来るノリのことだと思って頂ければ結構です。

ジャズって音楽は、誕生してから大体100年経ちますが、その間新しい演奏法が次々と生み出されたり、周辺の色んな音楽の要素を取り入れながら、複雑に進化してきました。

が、元々は夜の歓楽街で「そこにいる人達をいかに楽しませ、踊らせる事が出来るか?」という事を第一に考えなければならないパーティー・ミュージックだったんです。

で「かっこいいジャズを聴きたいけどどういうのを聴けばいいか?」という、究極の問いに関してなんですが、それにはアタシ、こう答えます。

「てなわけで、聴いててスイングを感じるものがいいんですよ」

と。


つまり要するに

「難しいことさておきで、聴いて心地良くなるやつ、ウキウキでノれるやつが一番♪」

という訳ですね。


何だかとっても漠然とした、禅問答のような話に思えるかも知れませんが、実はジャズの世界には、この

「スイングすること」

に関しては並ぶ者がいない達人がおります。

カウント・ベイシーです。

ベイシーといえば、戦前からの「ビッグバンド/スウィング・ジャズ」を代表する名バンドリーダーで、凄腕のピアニスト。

とにかくもう「ビッグバンドといえば?」という問いには、デューク・エリントンと並んで必ず名前の挙がる凄い人なんです。


ベイシーの何が凄いのか?それは一言でいえば

「みんながみんな派手な足し算でノリやムードを演出していた中、一人だけ引き算の必要最小限の音とリズムで、ノリノリのサウンドを出す事に成功したこと」

でありましょう。


ベイシーは、リズムの基本であるリズム・セクション、つまりドラムとベースとピアノが刻むビートというのを、物凄く重要視しました。

ベイシー楽団の演奏は、そのリズムを聴いてるだけで十分に”曲”として聴けるぐらいにリズムが音楽してるんですが、派手にどんどこやっていたのではなく、むしろその逆で、リズムは無駄をとことん省いた「チーッチキ、チーチッキ」のシンプルな4ビート。

ドラムもホーンが入った”ここぞ!”という時以外はこれを絶対に崩さないし、ベースもルートを脱線しません。

おまけに本人が弾くピアノも、かなり音が少ない(!)でも、この隙間だらけ、空間だらけのリズム・セクションの音がギュッと中心に集まって、芯のある強靭なビートを生み出すんですね。そして、隙間と空間が、サウンドの一部として全体を心地良く揺らす。

で、ベイシーの凄い所は、このリズム・セクションを、ギターを加えて更に補強しているところです。

フレディ・グリーンという「リズムしか刻まない」職人ギタリストがいるんですね。この人はたった1枚しか出していない自分のリーダー作でも一切ソロ弾かずに黙々とコード弾いてるという、ちょっと常人には想像の付かない思考の持ち主なんですが、隙間だらけのベイシー・リズム・セクションにこの人のギターが加わったらもう凄い。

何が凄いかって、この人の黙々とコードだけを刻むギターが入る事によって、シンプルなリズムが更にシンプルに聞こえちゃう(!!)

えぇ、そこなんですよベイシーの凄い所は。音を足してるはずなのに、色々な楽器を加えれば加えるほど、演奏自体の質感が拡散せずに中心に凝縮されて、リズムの快感と個性的なソロイスト達のプレイがより単体でカッコ良く目立っているように感じる。

もちろんビッグバンドだから、ホーンのアンサンブルがド派手に「ぶわぁぁああん!!」と鳴り響く瞬間はベイシー・バンドにもあります。

でも、そこは「ここだ!」って時の本当に究極の必殺技で、実際はイントロとかでちっちゃく鳴ってるリズム・セクションの音を聴いて「何だこれすげー!」と心くすぐられる事がほとんどです。




カンザス・シティ・セヴン

【パーソネル】
カウント・ベイシー(P,org)
サド・ジョーンズ(tp)
フランク・フォスター(ts)
フランク・ウェス(fl)
エリック・ディクソン(ts,fl)
フレディ・グリーン(g)
エド・ジョーンズ(b)
ソニー・ペイン(ds)

【収録曲】
1.オー・レディ・ビー・グッド
2.シークレッツ
3.アイ・ウォント・ア・リトル・ガール
4.シュー・シャイン・ボーイ
5.カウンツ・プレイス
6.セナター・ホワイトヘッド
7.タリー・ホー、ミスター・ベイシー
8.ホワッチャ・トーキン

(録音:1962年3月21日/3月22日)



はい、リズムについて、スイングについて、語り出せばキリがありませんので、ややこしい説明は後にして、今日は「そんなベイシーの凄いスイングがギッシリ詰まった名盤」をご紹介します。

ベイシーといえばビッグバンドなのですが「引き算で完璧に作り上げられたグルーヴの凄さ」といえば、ビッグバンドから選りすぐりのメンバーを集めた”カンザス・シティ・セヴン”という7人編成のこのアルバムを、まずは聴いてみてくださいな。


録音は1962年、世間はビッグバンドどころかマイルスやコルトレーンが「モダン・ジャズよりずっと新しい音楽を作るぞー!」と張り切っていた時代です。

そんな時代に、大ベテラン、ベイシーの「おう、世間はどーか知らんが、コレが粋なジャズってもんだぁ♪」っていう余裕の声が聞こえてきそうなくつろぎの音楽。いいですねぇ。

7人編成といえば、それでもまだジャズ・コンボの人数といえば多い方でありましょうがそこはベイシー、自分も含めて4人のリズム・セクションは派手な展開に一切走らない堅実な”刻み”に集中し、3人のホーン奏者には「音を必要以上に重ねず、ソロでしっかりと聴かせるべし」と指示したのか、大人数(ビッグバンドに比べたら少ないけど)ならではのけたたましさが全くありません。

実はベイシーは、この”カンザス・シティ・セヴン”というバンドを、ビッグバンド率いる前からちょくちょくやっています。

それには多分、まだビッグバンドやってなかった頃にその前段階としてお試しのコンボをやってみたとか、40年代は第二次大戦による徴兵とかでのメンバー不足や戦争不況による問題とかで、ビッグバンドの運営そのものが厳しかったという物理的な事情もあったっぽいですが、その時代からベイシーの”ビッグバンドじゃない編成のバンド”は、群を抜く素晴らしい演奏を聴かせ、レスター・ヤング等の優れたソロイストの魅力を世間に存分に伝えました。

1962年のこのアルバムの空気は、実は戦前録音の”カンサス・シティ・セヴン”よりももっと”間”が心地良いくつろぎ感に溢れていて、更にクリアな録音で、ベイシーのピアノの”タメ”の効いたカッコ良さ、やっぱりフレディ・グリーンの刻みが効いてるリズムのしなやかな強さ、そして前でソロを吹くサド・ジョーンズ、フランク・ウェス、フランク・フォスター、エリック・ディクソンの洗練されたアドリブのメロディーが、どれも不可欠の響きで優しく絡み合います。

戦前の単なる懐古ではなく、リズムも上モノも、モダン・ジャズの時代に対抗するかのように、より無駄を省いた核の部分の味わいで”聴かせるプレイ”に進化させているところがまた良いのですよ。

「スイング」というのは言うまでもなく”ノリ”のことですが、このアルバムはガツンと来るテンションの高いそれではなく、穏やかな雰囲気に心地良く酔ってるうちに自然とウキウキさせられる、そんな至芸が詰まっております。











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2019年04月21日

クリフォード・ブラウン ジャズ・イモータル

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クリフォード・ブラウンwith.ズート・シムズ/ジャズ・イモータル
(Pacific Jazz/ユニバーサル)

今だから白状しちゃいますが、アタシはどうもトランペットという楽器を、多少苦手としているところがあります。

トランペットという楽器は、その構造上、どうしても「鋭い音でけたたましく鳴り響く」という楽器としての特性を持っておるんです。

元々の歴史を紐解いても、金管楽器のご先祖であるところのラッパというやつが、軍隊で使う進軍ラッパがそのご先祖でありますので、これはある意味しょうがない。

実際にジャズという音楽で使われるようになってからでも、初期ニューオーリンズジャズで最初にソロ楽器としてバンドの花形のポジションに居たのはコルネットという、トランペットの前身楽器です。

サックスやクラリネットなど、他の管楽器もあったのに、どうしてコルネットがソロ楽器として注目を浴びたのかといえば、それもやはり「音のデカさ」ゆえ。

時が過ぎ、モダン・ジャズでもトランペットがソロやアンサンブルをリードする主役級の楽器として変わらず人気でありました。

そこでもやはり「パリパリパリ!」と力強い炸裂音のような轟を挙げて前に出るのがトランペットの醍醐味であり、コレが体調の良い時は「いいぞやれやれ!」と楽しく聴けるのですが、体がしんどい時はどうも受け付けない。

例外的に、わざとそのけたたましさを、穴にミュート突っ込んで抑えた奏法をやっていたマイルス・デイヴィス、そしておよそラッパらしからぬ、柔らかくて繊細な音で吹いているチェット・ベイカー(特に晩年のやつ)、そして、結構なボリュームで吹いてるはずなのにその響きにはどこか底無しの憂いが被さっているようなブッカー・リトルなんかは、最初からすんなり「お、いいな」と思って聴けました。

これはアタシの勝手な偏見であり、実はジャズにはただけたたましいだけではない素晴らしいトランぺッターはたくさんいるんだ。

と、気付かせてくれた素晴らしいトランぺッターのお話を今日はいたします。

クリフォード・ブラウンといえば、ジャズファンの中では、もしかしたらマイルス・デイヴィス以上に「モダン・ジャズを代表する名トランぺッター」と、高く評価する人も多いでしょう。

確かにこの人こそ、1940年代末に巻き起こったビ・バップ・ムーヴメントの中で、独特の流れるような美しいメロディ感覚と、力強さの中に繊細な響きを有する絶妙なバランスの上に成り立ったトーンでもって、その後のハードバップの軸となった「聴かせるトランペット」の基本形のようなスタイルを作り上げた人であります。

アート・ブレイキーの、初代ジャズ・メッセンジャーズのメンバーに抜擢され、更にマックス・ローチと自身のバンドを共に立ち上げて、まだ駆け出しの新人だったソニー・ロリンズをそこで起用し、さあいよいよこれから歴史を作って行くぜ、という時に、25歳の若さで不幸な事故によって天に召されてしまいますが、その人気も影響力も未だ根強く、多くのトランぺッターのプレイスタイルには、この人からの影響をどこかで必ず感じ取ることが出来る程であります。

ところがアタシは、そんなモダン・ジャズの代表格のようなトランぺッター、クリフォード・ブラウンを、よく知りもしない頃に聴かず嫌いをしておりました。

理由は「モダン・ジャズを代表するトランぺッターだから」

いやもう恥ずかしい限りなんですが、理由も何もない完全なる偏見です。偏見は絶対によくないですねぇ。



ジャズ・イモータル


【パーソネル】
クリフォード・ブラウン(tp)
スチュ・ウィリアムソン (valve-tb)
ズート・シムズ(ts)
ボブ・ゴードン(bs)
ラス・フリーマン(p)
ジョー・モンドラゴン(b, 1-3)
カーソン・スミス(b, 4-9)
シェリー・マン (ds)
ジャック・モントローズ(arr)

【収録曲】
1.タイニー・ケイパーズ
2.風と共に去りぬ
3.ファインダーズ・キーパーズ
4.ブルーベリー・ヒル
5.ジョイ・スプリング
6.ボーンズ・フォー・ジョーンズ
7.ボーンズ・フォー・ズート
8.ダーフード
9.タイニー・ケイパーズ(別テイク)
10.風と共に去りぬ(別テイク)


(録音:@〜C1954年7月12日、C〜H8月12日)


そんなアタシの偏見を見事打ち砕いていたのが、このズート・シムズを始めとした西海岸オールスターズとの素晴らしい共演アルバムです。

元々テナー吹きとして、ズート・シムズには何とも言えないラフでワイルド、でも仕事はキッチリする、カッコイイ男の魅力を感じておったので「ん、クリフォード・ブラウンの作品でもズートが入ってるんならハズレはなかろう」と、エラソーに思って買ったんですね。

しかしコレが、もう見事なぐらい見事に、ズート以上にクリフォード・ブラウンの、その流麗さの中に秘めたエモーションを感じさせるトランペットのカッコ良さに最初からヤラレてしまった、アタシにとっての非常にエポック・メイキングな(使い方合ってるかー)な1枚になったんです。

1950年代、モダンジャズの主流はニューヨークを中心とした東海岸と、LAやサンフランシスコのある西海岸とでそのスタイルを異にしておりました。


ニューヨークはあちこちから集まって来たミュージシャン達が、日々クラブで切磋琢磨して、日々新しい”演奏の現場のジャズ”をホットに演奏し、ミュージシャンもバンドも非常に勢いがあり、一方の西海岸は映画の都ハリウッドがあって、そこで映画音楽の仕事をするミュージシャン達によって、小粋で華やかなアレンジが発展し、ニューヨークとはまた違った独自のジャズが盛り上がっておりました。


クリフォード・ブラウンは言うまでもなく、ニューヨークでバリバリに名を売って全国規模の人気を誇っていた東海岸派。

ズート・シムズも後にニューヨークに出て来て多くのアルバムをリリースしておりますが、元々はカリフォルニア生まれの西海岸っ子であります。

そして、バックを固めるミュージシャン達は、全て西海岸で活動していた腕利きが揃い、彼らがしっかりキッチリ固めた土台の上を、クリフォード・ブラウンがの華麗なアドリブが舞う、舞う、舞う!で、本当に美しいんですよねぇ。

元々クリフォードのトランペットは、ブルージーなコクを醸しながらも爽やかでスマートな味わいがあるのですが、それが軽やかな西海岸アレンジにとてもマッチしていて、とかくジャズといえば「この人のこのプレイが!」とか「炸裂するエモーションがっ!」とか、そういう脳味噌にアタシもなりがちなんですが、ここでは最初から最後まで変わらぬテンションで、ジャズどうのの前に「最高にくつろげる上質な音楽」がじっくりと味わい深く演奏されております。

編成は4本のホーンが入ったセブンテットというなかなかの大所帯なんですが、ズートもスチュ・ウィリアムスンもボブ・ゴードンも、派手なソロは取らずに素晴らしいハーモニーで主役を立てる事に専念。サラッと安心して聴けるけど、よくよく耳を澄ますとその綿密なアンサンブルの美しさの細かい所に「すげー」と感動することうけあい。

特に評価の高いマックス・ローチとの双頭リーダー作や、ジャズ・メッセンジャーズでの「良い感じの激しさの中で目立つ流麗なトランペット」ももちろんたまらんものがありますが、ここでの終始落ち着いたプレイも良いもんです。てか、クリフォード・ブラウンはどれも良い。聴かず嫌いを激しく後悔しているアタシが言うんだから間違いないです。





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2019年04月14日

ラッキー・トンプソン ラッキー・ストライクス

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ラッキー・トンプソン/ラッキー・ストライクス
(Prestige/OJC)


はぁぁぁあああああい皆さん、大変お久しぶりです。

実はアタシは生活のために正業をやっておりまして、2月後半から4月ってのは、その正業がすっごいすっごいすっごい忙しい時期で、ちょいとブログからは遠ざかっておりました。

忙しいと音楽を聴く時も中身をじっくり落ち着いて・・・という風にいかなくなりますし、日中の疲れのせいで聴ける音楽というのも限られてきます。

家に帰って激しく困憊している時の音楽といえば、アタシにとってはこれはもうジャズであります。

しかも、個人的にはとても好きなフリージャズとかではなく、どっちかというと「さあ聴くぞ!」と気合いを入れなくても楽しめる、くつろいだ雰囲気のモダン・ジャズがいい。

それにしても、例えばマイルス・デイヴィスとかジョン・コルトレーンとかチャーリー・パーカーとか、そういうビッグネームのよりかは、その周辺でイイ味を出している、知る人ぞ知るぐらいの知名度の人の演奏が程良くて、疲れた心と体にはじんわり染みるものが多いような気がします。

大河ドラマなんかそうですよね。主役はその時代をときめくスターや注目の若手が演じる事が多いのですが、大河の肝である重厚な雰囲気というのは、やっぱりその脇を固めるベテランや個性の強い役者さん達の演技如何にかかってる、えぇ、ジャズもやっぱりなんつうかそういうところがあるようなんです。

で、ここんところアタシのヘロヘロな心身をいい感じのジャズで癒してくれるのがこの人、ラッキー・トンプソンです。


このラッキーストライクのジャケットを見れば、ジャズ好きならば「あぁ、知ってる知ってる!」となる人で、良い加減の豪快さと音色の暖かさを持つ、実に深いテナー・サックスの職人芸で聴かせてくれる人。

40年代から活動するベテランで「スウィングからビ・バップに至る過程でのジャズ・サックスのモダン化に多大な功績を残した重要なプレイヤー」とも評され、メロディ感覚にブレがなく、自然に豊かにアドリブを飛躍させる堅実なプレイは、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー、ミルト・ジャクソン、マイルス・デイヴィスといった仲間のミュージシャン達からも高く評価されておりましたが、ミュージシャンをまるで物のように使い捨てにしていた音楽業界のシステムに対してかなり厳しい姿勢で抵抗した人で、結局リーダー作も少なくスターダムには上がることのなかった気骨の人でもあります。





Lucky Strikes

【パーソネル】
ラッキー・トンプソン(ss,ts)
ハンク・ジョーンズ(p)
リチャード・デイビス(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.イン・ア・センチメンタル・ムード
2.フライ・ウィズ・ザ・ウィンド
3.ミッドナイト・オイル
4.レミニセント
5.ムンバ・ヌーア
6.アイ・フォーガット・リメンバー
7.プレイ・ルート
8.インヴィテーション

(録音:1964年9月15日)

1940年から50年代初頭にライオネル・ハンプトンやカウント・ベイシー、ビリー・エクスタインといった人気オーケストラのメインソロイストとして大活躍しながら、50年代半ばには未だ人種差別が色濃く残るアメリカのシーンに見切りを付ける形でヨーロッパへと移住したトンプソン。

結局そこでも満足の行く活動が出来なかったのか、1963年には再びアメリカへ舞い戻り、何枚かレコーディングをした後に今度はスイスへ行き、またすぐアメリカへ戻って今度は音楽学校の先生をしながら演奏活動もしていたんですが、結局その後は消息を絶ち、90年代にはホームレスをやっていたとも言われており、不遇の中で最終的には生活保護者の保護施設で2005年に81歳の生涯を終えております。


その才能を認められながらも商業的な成功を手にすることはなく、ひっそりと消えて行ったミュージシャンではありますが、それ故に彼の残した音楽は、どれもほんのりとした哀しみに彩られたもののように感じてしまいながら、ついつい聴き入ってしまいます。


個人的に最高だと思うアルバムが、1964年の『ラッキー・ストライクス』。

1964年秋、つまり最初のヨーロッパ移住を終えて帰国したトンプソンが、アメリカで勝負をかけて(いたと思う、きっと)レコーディングしたアルバムです。

恐らく藁をも掴む思いでトンプソンはレコーディングのチャンスを手にしたとは思うのですが、そのレコード会社は正統なギャラを払わない事で悪名高かったプレステイジ。

結局このアルバムも本人の魂込めた演奏に見合った報酬を彼にもたらすこともなく、失意のトンプソンは今度はスイスに旅立ってしまう訳ですが(どうして意欲的なレコード会社のあったフランスやドイツじゃなくてスイスだったんだろうと、ここでも彼の不運を思って胸が詰まります)、その代わり彼の演奏と参加したメンバーは素晴らしいの一言ではとても片付けられない程に秀逸であります。

トンプソンのテナーやソプラノは、凄い技巧を派手に披露して吹きまくる類のものではありません。

むしろひとつひとつの音を、ゆっくりと噛み締めるように丁寧に吹く、まるで穏やかな語り口調のようなサックス。それを上品な絹糸でくるむように、優しくサポートするハンク・ジョーンズのピアノがまず美しいし、淡々と時を刻みながらアドリブのストーリーを豊かに膨らませてゆくリチャード・デイヴィスのベースとコニー・ケイのドラムのコンビネーション、それらが憂いを帯びた穏やかさの中で、何を求めるでもなく、ただしっとりとたゆたっている様が何とも言えません。

ビブラートがほとんどない、ため息のようなソプラノが奏でる『イン・ア・センチメンタル・ムード』、柔らかなテナーの音が隅々まで切ない『アイ・フォーガット・リメンバー』の2曲のバラードがまずもってオススメですが、ミディアム・テンポのブルージーな曲も、やっぱりどこか切なくて音そのものや音の隙間から、ほろほろとこぼれてくるやるせなさを感じるのがいいんですよね。










『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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2019年03月24日

ミルト・ジャクソン、ジョー・パス、レイ・ブラウン BIG3

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Milt Jackson , Joe Pass , Ray Brown/Big3
(Pablo/OJC)


アタシはこのブログがある日突然なんかの天変地異で消えて無くなってしまうまで、言い続けたいことがいくつかありますが、そのひとつが

「おい、ミルト・ジャクソンって人はほんとにすごいぞ」

ということであります。


ミルト・ジャクソンという人は、ジャズを代表するヴィブラフォン奏者で、戦後すぐぐらいの時期から50年代にかけて、ジャズを一気に進化発展させ、モダン・ジャズと呼ばれる音楽を作ったパイオニアの一人といわれていて、一説によると夜な夜な腕自慢がステージに上がるニューヨークのクラブで、この人やセロニアス・モンク、チャーリー・パーカーにディジー・ガレスピーといった人達が「腕自慢のやつらをステージから引きずり下ろすため」に、コードチェンジをものすごく複雑にしたり、テンポを恐ろしく早めたり、とにかく難しいアレンジをして遊んでたところから、後に”ビ・バップ”と呼ばれるモダンジャズの原型が生まれたなんて話もあります。

とにかくまぁそんな大物でありますが、凄いのはこの人が単なるテクニック一辺倒の人ではなくて、コーンと1音鳴らすだけで豊かに拡がる底なしのブルース・フィーリングを持っていて、その味わいの深さで多くのジャズファンを唸らせ、ジャズにそんなに興味ない人にまで「この鉄琴すごくいいよねー」と言わせ続けてきたことにあります。


「どんな人でも安心して聴けるジャズ・グループ」として、長く世界的人気を誇ったMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の中心メンバーとしてフロントを張りながら、自身のリーダー作とおびただしい数のセッション参加作を世に出し、90年代まで長く活動をつづけました。

大体キャリアの長いミュージシャンというのは、時期によってノッてる時期とそうでない時期があったり、また「若い頃は勢いあったけど、歳取って落ち着いた」なんてこともまぁよくあるのですが、この人は時期や作品によるムラが一切ない。どの時期のどのアルバムでも華麗なマレットさばきで内なるブルース・フィーリングを、最高に粋なフレーズでもって心地良く聴かせてくれる。

おまけにおびただしい数の共演盤では、自己のスタイルが究極に完成されている一流中の一流どころ、ザッと名を挙げるだけでもセロニアス・モンク、マイルス・デイヴィス、カウント・ベイシー、コールマン・ホーキンス、ウエス・モンゴメリー、オスカー・ピーターソン、ソニー・ロリンズ、ケニー・バレル、ジミー・スコット、レイ・チャールズ(!)、ジョシュア・レッドマン(!!)まで、世代も個性も違う人達との共演をあっさりこなすだけでなく、共演者の良さを最大限に引き出しながら自分の持ち味もその中で最高に発揮するという、何というかもう才能とかセンスとかいう言葉でも補えないぐらいの素晴らしい立ち回りを演じていて、かつどのアルバムもジャズをジャズたらしめている空気の最上級のそれが全編に漂っている。

それゆえにアタシなんかは「ミルト・ジャクソン!もう全部最高っ♪」とキャッキャしてしまうんですよねぇ。






Big 3


【パーソネル】
ミルト・ジャクソン(vib)
ジョー・パス(g)
レイ・ブラウン(b)


【収録曲】
1.Pink Panther
2.Nuages
3.Blue Bossa
4.Come Sunday
5.Wave
6.Moonglow
7.You Stepped Out Of A Dream
8.Blues For Sammy

(録音:1975年8月25日)


さて「自分もソロで輝いて、共演者の個性も見事に引き出すミルト・ジャクソン」ですが、どれも絶妙なバランスで聴かせる名作の中で、共演者の腕前と気遣いのセンス共に最高なアルバムといえば、本日オススメの『ザ・ビッグ3』であります。


ミルト・ジャクソン、というかジャズの場合は、ベースとドラム(とピアノやギター)のリズム隊があって、フロントと呼ばれる管楽器がいるのが通常編成なのですが、ミルトの操るヴィブラフォンという楽器は、どちらの役割もこなせます。

だからミルトはその楽器の特性を最大限活かしてソロでは最高に輝くし、個性的なフロントマンを引き立てるリズムセクションの働きも完璧と言っていい程心得ておるんですね。

で、このアルバムです。

楽器の編成はヴィブラフォンとギター、ベース。

つまり、見方によってはここにはフロントの楽器はおらず、しかもリズムセクションの中心となるドラムもいないという、かなり変わった編成なんです。

え?そんなんで大丈夫?音、しょぼいんじゃない?と普通は思うところですが、ミルトが希代のギター、ベース2人の才能を最高に引き出して、フロントやドラムのあるフルバンドと同等かそれ以上に厚みと深みのあるサウンドを生み出しているんです。

まず、ベースのレイ・ブラウンとギターのジョー・パス。この2人が単独でも十分に凄い人達なんです。

レイ・ブラウンはアタシが思うにジャズ・ベーシスト中屈指の”豊かな木の鳴り”を響かせる達人。とにかくこの人は指が常人の2倍ぐらいあるんじゃないかと思うぐらい、ベースの音が太いんです。そのぶっとい音でグイグイと演奏全体をドライブさせる、とにかくこの人が参加してベースを弾いているアルバムは、演奏全体のグルーヴが違う。加えてミルトとは活動の初期の頃にディジー・ガレスピー楽団に共に在籍して、60年代は共同リーダーという形でバンドもやっていた、つまりは互いに良い相棒と呼び合える仲。

そしてギターのジョー・パスもまた、ジャズ・ギター界屈指のテクニックの持ち主です。

単音での細かいフレーズを高速のままどこまでもメロディアスに繋いでゆくテクニックはもちろん、その単音に絶妙に和音を絡めて、1本のギターでまるで歌と伴奏を同時にやっているように聞こえる奏法も編み出し、ソロでもヴォーカリストのバックでも大活躍。ミルト・ジャクソンよりちょい年下で、若い頃からその才能を期待されていた人ですが、麻薬中毒のため本格的なデビューは30過ぎてからという遅咲きの人でありましたが、中年になってから60年代以降の「ジャズ・ギターの最先端」を切り開いていった功績と、後のジャズやフュージョンのギタリスト達に与えた影響は果てしなくデカい人であります。


そう、このアルバムにはフロントを派手に彩る管楽器とリズムの中核であるドラムこそいませんが、ミルトの事なら他のミュージシャンよりもずっとよく分かってるレイ・ブラウンと、技の引き出しが多く、ミルトとは似たようなタイプの「派手も堅実も出来るギタリスト」のジョー・パスの3人がガッツリ組んで、完全にひとつの音を出しているようにスイングしてグルーヴしている三位一体のある種の究極が聴けるスグレものなのです。

ミルトとジョー・パスの両名は、派手に弾きまくればいくらでも派手に出来る人達。ところがここでその”派手”のカッコ良さが炸裂するのは『Blue Bossa』のみ。まずはコレが最高なんですが、アルバム全体ではスローやミディアムテンポで互いを支え合ってじっくり聴かせるナンバーが主です。

ボサ・ノヴァ曲の『Wave』など、涼やかにコーンと響くミルトのフレーズに丸みを帯びた優しい音色のジョー・パス、その両者のプレイにふくよかな低音で花を添えるレイ・ブラウン。演奏はこのパターンを堅持して進行して行きますが、普通に聴いていれば心地良く、意識して聴けばそんなさり気ない展開の中でやっている”実は凄いこと”の凄さに震える名人芸が仕込まれていて奥深いです。

ミルト・ジャクソンの素晴らしさ、まだまだ語り尽くせませんが今宵はこの辺で、以下に「ミルト聴くんならこれもいいよ」というアルバムのリンクも貼っておりますので、どうか併せてご覧ください。↓













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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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