2018年06月03日

カリプソ・ローズ ファー・フロム・ホーム

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カリプソ・ローズ/ファー・フロム・ホーム
(Because/Pヴァイン)


はい、気温も順調に真夏日の軌道に乗ってきましたので、今日は皆さんが大好きなカリプソでございます。

カリプソってなぁに?

と、よく訊かれますね。えぇ、アタシも2ビートのスッタンスッタンのビートに乗って、ゴキゲンなパーカッションやらが鳴り響いてトロピカルな旋律とメロディが聞こえたら「あ、カリプソ♪」と、よく意味もわからんまま言っておりました。

カリプソってのはアレですね、一言でいうと「カリブ海の島々の音楽」です。

南北のアメリカ大陸があって、その丁度真ん中付近の右側のところがカリブ海ですね。

そこにはいろんな島がありまして、ざっと有名な所だけ挙げてもキューバやジャマイカ、ドミニカ、バハマ、トリニダード、トバゴとか、ひとつの島とかいくつかの島も合わせて独立国となっているのも多いです。

ここはコロンブスがアメリカ大陸を発見してから「ヨーロッパからの船団が最初に立ち寄る停泊地」として開発され、入植がなされました。

そして、この島々は奴隷貿易の拠点でもあったんですね。

大陸各地に送られる奴隷達もたくさんおりましたが、ここで形成された大規模なサトウキビ畑(植民地政策に砂糖は欠かせないものでした)で働く労働力として、たくさんの黒人奴隷が働かされておった訳です。

元々住んでいる人達が少ないものですから、カリブの島々は人口に対する黒人の割合というものがとても多くなります。

そこで彼らの故郷であるアフリカの音楽的な特色が色濃く残ったまま発展していったのが徐々にカリプソという音楽になりました。

アフリカの音楽的特色というのは、色々ありますが一番大きなのが様々なパーカッションを使って繰り出される独特のリズムです。

アメリカでは黒人奴隷に対してパーカッションやアフリカの宗教などはとにかく危険と見なされて、徹底的に禁止されておりました。

が、カリブはそこのところが比較的ユルかった。一説によるとカリブの島々はフランス植民地だった所が多く、フランスはイギリスと比べて色んな意味でユルかったようで、奴隷達が太鼓でコミュニケーションを取ることも「まぁよかろう」と禁止しなかったから、カリプソにはアフリカ音楽の伝統が色濃く残っているとも言われております。

確かに、アメリカのブルースがああいったどこかやるせない感じの音楽なのに対し、カリブの音楽は陽気で横揺れの心地良いグルーヴなのには、その昔の政治的な事情もろもろが影響しているだろうとは思います。


さてさて、一口に「カリプソ」と言っても、その中身は実に多種多様、一言で「これがカリプソだ!」と即答するのは実に難しいんですが、今日はカリプソを代表するシンガーとして、1950年代から活躍する女王、カリプソ・ローズをご紹介して、カリプソをまだよく知らない方への参考にして頂きたいと思います。

カリプソ・ローズはトリニダード・トバゴに1940年に生まれ、60年代にはもう既に同地の国民的シンガーになりましたが、その人気は周辺諸国だけにとどまらず、アメリカやフランス、イギリスなどの国でもヒットを飛ばし、世界中に「カリプソ」という音楽を広めた人でもあります。


トリニダード・ドバゴといえば、ちょいと詳しい人なら「あ、あのスティール・パンの国だ」とすぐ反応してくださることでありましょう。そう、スティール・パン、またはスティール・ドラムと呼ばれるあのドラム缶で出来た、独特の涼しげな音を出す不思議な楽器の本場です。

トリニダードは、他の南米諸国と同じようにカーニバルが盛んな土地で、スティール・パンもズラッと並んでトラックの荷台の上でパレードしながら演奏するという、何とも賑やかな使い方をされておりますね。

カリプソという音楽そのものも、実はこのトリニダードのカーニバルから発展して拡がっていったんだという話があるように、ここはカリプソの本場も本場。

「チャカスッチャカ、チャカスッチャカ」という駆けるようなテンポのリズムが忙しなく鳴らされる、カリプソならではの独特のリズムが、後にソウルや他のラテン諸国のメロディーなども絡めて「ソカ」と呼ばれる音楽へと進化して行きます。カリプソ・ローズがデビューして人気を博していった時代は、正にトリニダード・トバゴの、カーニバルの時に演奏される”お祭り騒ぎの音楽”であったカリプソが、ホールでの演奏にも対応出来るように、どんどんポップス化していった正にその過渡期であります。




【収録曲】

1.Abatina
2.I Am African
3.Leave Me Alone (Feat. Manu Chao)
4.Far from Home
5.Calypso Queen
6.Zoom Zoom Zoom
7.Trouble
8.Love Me or Leave Me
9.No Madame
10.Woman Smarter
11.Human Race
12.Wah Fu Dance!



実はカリプソという音楽は、アメリカのジャズやR&Bにも多大な影響を与えていて、たとえばルイ・ジョーダンやボ・ディドリー、ソニー・ロリンズなんか聴いておりますと、特にリズム面において「あ、これはカリプソ!」とバッチリ分かる曲や演奏があったりして、どっちも知るととても楽しいのです。

カリプソ・ローズの昔の演奏を聴いていると、アメリカのポピュラー音楽やジャズなんかを、陽気で激しいカリプソにアレンジし直してカヴァーしています。

その背景には「アメリカのミュージシャンがアタシ達の音楽やってるのを、逆にこっちが歌ったら面白いかもね♪」という、ちょっとキュートないたずら心がチラッと見えたりしてカッコイイんです。そう、このカリプソ・ローズという人は、レジェンドでありながら、そしてカリプソの根っこにあるソウルを常に熱くたぎらせながら、今風のアレンジにも全然ひるむことなくチャレンジし続け、そして世界でのカリプソ人気をどんどん不動のものにしていってる、本当にカッコイイおばちゃんなんですよ。

2016年にリリースされた『ファー・フロム・ホーム』は、正にそんなローズおばちゃんの根っからのパワフルさと、骨太さを保ちながら美しく進化してきたカリプソの集大成です。

何と、このアルバムでは元マノ・ネグラ、現在はミクシチャー・ロックのカリスマとして多くの世代から支持を集めるスペイン系フランス人ミュージシャン、マヌ・チャオとガッツリ組んで、極上のラテン〜カリプソの、楽園のような音楽を聴かせてくれます。

いやもうこれ、凄いですよ。カリプソの「チャカスッチャカ」の強靭なビートに、ラテンの哀愁のメロディーも乗れば、サンプリングされたコーラスも実に渋くキマッてるし、何よりローズ自身の声が、とても御年70ン歳の妙齢のご婦人の声とは思えないほど明るく張りがあって、聴くだけで元気が出てくる、ジャンルなんざ関係ねぇ!ってなるぐらい突き抜けたアルバムです。いやほんと、凄いよなぁ、スカまでやってるんですけど、それが全然取って付けたような不自然さはなくて、むしろ「あぁ、スカのルーツってやっぱりカリプソだよ」と思わせてくれるこの説得力。

よくある「ワールド・ミュージックの現代版アレンジで聴きやすい」とか、そういう作為は全く感じません。むしろ素直に楽しく聴いてるうちにローズの声のパワーにすっかりノックアウトされて、カリプソという音楽を、気付けばより深く楽しめる一枚。つうかもうカリプソ入門用として、持っておいても全然良いです。色々と音楽的に特色ある部分を挙げればもっともっと魅力を語れそうな気もしますが、こういうのは理屈より先に楽しむことが大事だよ、ということで。










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2018年05月19日

アルゼンチンのタンゴ

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アルゼンチンのタンゴ
(Naxos)


クラシック・ギターの音色が好きです。

「パラン」と「ポワン」の絶妙な中間、あの美しくふくよかな弾力でコーティングされた、どこか遠くへ連れて行ってくれそうな、静かな哀愁を湛えた音。

いわゆる鉄弦のアコースティック・ギターとはまた違って、ナイロン製の柔らかい弦だからこそのこの音色、これがいいんですよね。

その昔は”ガット”と呼ばれる羊の腸を弦としていたことから”ガットギター”とも呼ばれるこの楽器は、エレキやアコギも全部ひっくるめて「ギター」と呼ばれるものの最初の形だそうです。

その原型はインドやペルシャ方面から、徐々にその形を変えてイベリア半島、つまり今のスペインにやってきて、長い時間をかけてギターという楽器になって行ったと。

ちょっと歴史的な事になりますが、スペインっていう所は、今でこそバリバリのヨーロッパで、バリバリのキリスト教国でありますが、その昔はイスラム教徒が支配していた時期も結構長くて、北アフリカ経由で今で言うアラブ諸国やインドからの移民も多く、彼らがギターの原型をこの地で生み出し、フラメンコなどの音楽も作って、独自の文化を育んできたんですね。

クラシックギターが、旋律の中でその豊かな余韻を伸ばす時、こちらの心の中にも郷愁がきゅ〜んと伸びて、何とも胸を締め付けられる感覚になりますのは、その音色が出来上がるまでの悠久の歴史みたいなものが、知らず知らずのうちにこっちの心に響くからなんだろうなぁとか、勝手に思っております。

そんなクラシックギターの音色、存分に楽しめるものとしては、もちろんクラシックの、特にスペインの作曲家の作品なんかがとてもいいんですが、近年になって『クラシックギターで聴くアルゼンチン・タンゴ』というものが密かに盛り上がっていて、えぇ、これが大体ギター1本とかで演奏されているのが多いので、ギターをじっくり聴きたいという方には、とってもオススメできるんですよ。

え?クラシックなのにタンゴ?タンゴってあのバンドネオンとか使ってやるやつでしょ?それに何だか社交ダンスのイメージがあって、ギターで演奏するってのはあんまり想像できないんだけど大丈夫かぁ?

と、お思いの人は多いと思いますし、アタシも最初はそんな風に思っておりましたが、これが大丈夫なんですね。

タンゴという音楽は、元々アルゼンチンの酒場で生まれた、娯楽音楽です。

当初タンゴの大きな目的は、もちろんその場にいる人達を踊らせることでありましたが、徐々に進化するにつれて、ホールでの鑑賞にも耐えうる芸術音楽として世界に認知されるようになりました。

その最大の功労者は、クラシック理論も極めたタンゴ・マエストロ、アストル・ピアソラであります。


ピアソラが作った、リズムとハーモニーの粋を尽くして作りこんだ楽曲は、1990年代以降クラシック演奏家達の愛好するところとなって、ヨーヨー・マやクレーメルらによる『プレイズ・ピアソラ』系アルバムがリリースされると、これが好評を博し、今やクラシックのコンサートでは、盛り上げるに欠かせないレパートリーとして、タンゴ曲が演奏されるなんてことが当たり前になりました。

ヴァイオリンやチェロ奏者が録音したタンゴが世界的に受け入れられているのを見て「これはいいな!」とやる気を起こしたのが、クラシック界のギター奏者達なんです。

何でかというと、クラシックの重要レパートリーといえば、ほとんどがオーストリアやドイツなど、交響楽が発達した時代の有名作曲家達のものです。

そこにギターが入り込む余地というのはほとんどなく、レパートリーに出来るものといったらやはり最初からギターのために作られたスペインの作曲家の曲か、ルネッサンス期の主にイタリアの音楽、そしてバッハぐらいのものという選択肢の少なさに、ギター界(ってあるのかな?)は悩まされておったんですね。


ピアソラの曲やタンゴの曲は、ギターでも演奏出来るし、その哀愁溢れる楽曲は、クラシックギターの音色とピッタリの相性です。

それに元々スペインの植民地で、タンゴを作った人達もスペイン系移民ということで、これはもうタンゴとクラシックギターの親和性というのはナチュラルに高い訳でありますよ。







【収録曲】
1.凧が飛ぶ夢(ブラスケス)
2.決闘のミロンガ(モスカルディーニ)
3.最後のグレーラ(ピアソラ)
4.リベルタンゴ(ピアソラ)
5.想いのとどく日(ガルデル)
6.帰還(ガルデル)
7.ミリタリー・タップ(モレス)
8.メランコリコ(フリアン・プラザ)
9.ノスタルヒコ(フリアン・プラザ)
10.南(トロイロ)
11.ティリンゴたちのために(モスカルディーニ)
12.アディオス・ノニーノ(ピアソラ)
13.ブエノス・アイレス午前零時(ピアソラ)
14.ハシント・チクラーナ(ピアソラ)
15.勝利(ピアソラ)
16.ラ・レコータ(コセンティーノ)
17.わが愛のミロンガ(ラウレンス)
18.ミロンガ・デル71(ビターレ)

(演奏:ビクトル・ビリャダンゴス)


クラシックギターの良質な音盤を、素晴らしく掘り下げた深い内容で世に出しているレーベルといえば、香港の”Naxos"です。

セールス的には大丈夫かと思ってしまうぐらい、マイナーな作曲家のものなんかも惜しげなくリリースしてくれるこのレーベルはクラシックギター好きには実に有難く、かつ「有名/無名に関係なくいい音楽聴きたいぞ」というシビアな欲求も満たしてくれる、本当に素敵なレーベルなんですが、ここが「クラシックギターで聴くアルゼンチンタンゴ」の決定盤ともいえるアルバムを出しております。

はい、粋なジャケットに『アルゼンチンのタンゴ』というまんまなタイトルが付いたこのアルバム。

完全にギター1本で、アルゼンチンのタンゴがたっぷり楽しめる。しかも、演奏しているのはアルゼンチン生まれアルゼンチン生まれのクラシックギター奏者、ビクトル・ビリャダンゴス。地元でタンゴという音楽の空気や意味が、骨の髄まで染み込んでいることはもちろん、それを理論も技術もしっかり極めたクラシックギターのやり方で聴かせてくれる名人が弾いておりますから、これはもうギター好きにとっては願ったり叶ったりな内容でないはずがございません。

アタシは正直最初「うん、お目当てのピアソラの”リベルタンゴ”が入ってるから買ってみたけど、ピアソラ以外の作曲家ほとんど知らんなぁ、いいのかな、大丈夫かな」とかなり不安だったんですが、これがピアソラに一切劣らない、狂おしい抒情に溢れた名曲揃いで、個人的にこのアルバムをきっかけに、ピアソラ以外のアルゼンチン・タンゴの(日本では)あんまり知られていない素晴らしい作曲家達を知ることに繋がりました。

演奏は、タンゴの情熱を上質な”憂い”に仕立て上げてじっくり聴かせる素晴らしいものです。

ビリャダンゴスは、流石に名手と呼ばれるだけあって、感情に流されず、奥底にあるエモーショナルを旋律の深いところに込めて弦を弾くことに関しては余人の及ばない領域ですね。「しっとりと聴かせる」の幅をまずしっかりと定めて、その中でヒリヒリとしたタンゴならではの感情の高ぶりを無駄のない、後から余韻がじんと染みる表現で丁寧に聴く人の耳と心に染み込ませてくれるので、聴いてて疲れないし、どの曲も飽きません。









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2017年10月11日

ペドロ・サントス クリシュナンダ

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ペドロ・サントス/クリシュナンダ
(CBS/Mr.Bongo)

で、10月になって10日以上が経過しておるんですが、相変わらず汗ばむ陽気が、ここ奄美では続いております。

まーなんだかねー、こんなクソ暑いのに選挙まで始まったんじゃあうるさいし暑苦しいことこの上なくてたまんないよねー。

とかいうのが、街で会う友人知人らとの共通の挨拶のようにもなっております。

あぁ、ほんともう・・・。

と、暗くなってもしょうがないので、どうせだからまだ何となくほにょほにょしてる、この夏っぽい空気を楽しむ方向に持っていきましょう。

ブログでは久々のブラジル音楽です。

ブラジルといえば、ボサ・ノヴァが圧倒的人気を誇る昨今ですが、ボサ・ノヴァが誕生した1960年代というのは、ブラジル音楽全般でも、あらゆるところで様々な新しいサウンドが生まれ、面白い作品がたくさん残されているんです。

ボサ・ノヴァを生み出したブラジル音楽といえばやはりサンバ、そしてヨーロッパ音楽のルーツを色濃く残すショーロでありますが、そのサンバから、よりポップで活きのいいビートを強調した音楽としてMPBというのが生まれました。

1960年代、ブラジルの若者達は、洒落たバーやカフェでボサノヴァを楽しみ、更にもっと砕けたカジュアルな遊び場で、最新のMPBに合わせて踊るライフスタイルを謳歌しておりましたが、1964年にクーデターによる軍事政権が誕生し、歌詞にちょっとでも反体制的と見られるものがあったら発売禁止や投獄など
厳しい弾圧を行い、そのためボサ・ノヴァの主だった歌手や作曲家は、次々に海外へ亡命、特にアメリカへ渡った人が多く、ボサ・ノヴァは本国を離れて、アメリカでブームが起きて、やがてそれが世界的な流行へと拡大していった訳なんですね。

で、本国に残されたミュージシャン達はどうしたか?

彼らは

「おい、うっかり政府批判みたいなこと歌ったりしたらえらいこっちゃで、でも楽しみたいからノーテンキな音楽やるんやで」

と、サンバの繊細な悲壮感やボサ・ノヴァのメッセージ性をなるべく思い出させないような、イギリスやアメリカのロックなどに影響を受けた、メッセージも何もない、ただ「踊ろうぜ!楽しもうぜ!」(暴動を連想させる「騒ごうぜ」はアウト)と、ひたすら快楽的な音楽をやるようになったんですね。

この中から徐々にアメリカのサイケデリック・サウンドに影響された連中が、快楽的なサウンドに土着的な要素やサウンドコラージュなどのエフェクト音をまぜこぜにした音楽をやるようになり、これが「ブラジリアン・サイケ」として、後年愛好家やコレクターの間でカルトな人気を得るようになるんですが、その頃は軍事政権が厳しく音楽家の出入りを禁じていましたものですから、このテの音楽はリアルタイムでは外に流れず、主に国内だけで消費されて盛り上がっておったのです。

え?じゃあなんでアメリカやイギリスの音楽はブラジルでガンガン流行ったの?って?そこはほれ、あんまり大きな声では言えませんが、軍事独裁政権というのは、当時世界的な流行だった左翼革命政権とか、考え方が社会主義に近い政府が南米に出てくることに危機感を持ったアメリカがこっそり支援してたからなんですよ。

はい、大人の事情わかりました?というわけで、今日はそんな”ブラジリアン・サイケ”の面白いアルバムを皆さんにご紹介いたしましょう。




【収録曲】
1.Ritual Negro
2.Ague Viva
3.Um So
4.Sem Sombra
5.Savana
6.Advertencia
7.Quem Sou Eu?
8.Flor De Lotus
9.Dentro Da Selva
10.Desengano Da Vista
11.Dual
12.Arabindu


パーカッション奏者、ペドロ・サントスによる、1968年リリースの、これは何といえばいいのか、トロピカルに打ち鳴らされるパーカッション、B級映画のサントラのような、壮大なのかチープなのかよくわかんない、ゴージャスなホーン・セクションが入ったファンクっぽい音楽なのかなーと思ったら、妙ちきちんなアナログシンセによる効果音に、必殺仕事人の音楽みたいなエレキギター、テープの回転数をいじって作られた、空間系ならぬ”空間歪み系”のエフェクトの数々・・・。

さながらこれは、アマゾン川流域の、すごーい奥地にある幻のリゾートホテル(結局奥地すぎて客がこなくなって倒産した)の廃墟で行われる、原住民と原住民化したヒッピーによる、トロピカル盆踊りといったところでしょうか。

ただ、欧米のサイケはファズギターとオルガンなんかがメインですが、こちらは余りにも多様な音が絶妙に入り乱れている上に、土着の楽器や土着の臭いをふんだんに散りばめた楽曲ゆえに、サイケと意識しなくてもナチュラルにサイケな音楽になっているというところがミソなんです。

最初は「すげぇ、こんな音楽聴いたことねー!」でびっくりしますが、聴いているうちに不思議な中毒性にジワジワやられて「あひゃひゃひゃ〜、これすろくいいよえー」とか言いながら聴いてしまうようになってしまいます。

とりあえず”サイケ”つってもそんなにエグくないし激しくないし、いい感じのカフェでBGMでかかっていても、シャレたDJイベントで流れてても全然おかしくないぐらいクールですが、緩やかに効いてくるほんわかした猛毒が込められている音楽ですので、良い子はぜひ聴きましょう

それにしてもこの辺の南米サイケの音盤って、昔はCD化はもちろんされていなくて、LPはン万円もするオリジナル盤を探し回ってやっと入手できるかできないかだったのに、今はCDで聴けるし、最発盤のアナログ↓も出ております。

時代は変わりましたのぅ。。。









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2017年06月22日

アタウアルパ・ユパンキ 1936-1950

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アタウアルパ・ユパンキ/1936-1950 En Sus Primeros Anos
(Take off)

先週からタンゴについて考えたり感動したりしております。

その絡みで「アルゼンチンの音楽」を集中的に聴く時間を設けておりますが、アルェンチンといえばタンゴともうひとつ、忘れてはならない音楽としてフォルクローレでありますね。

フォルクローレというのは、読んで字の如く、英語の”フォーク(Folk)”と同じで、この言葉は「民謡」を意味しておりまして、ザックリといえばフォルクローレというのはアルゼンチンに限らず、ペルーとかチリとかメキシコとか、中南米の広い範囲で古くから歌われてきた先住民のインディオ達の民謡や、それらを元にした音楽のことでございます。

はい、南米という地域は、元々住んでいた先住民と、途中からスペインやポルトガルから入植してきた白人、そして彼らが奴隷として連れてきたアフリカ系住民。この3つの民族の系統の文化が複雑に入り乱れて、それぞれの民族の文化風習を色濃く残す音楽が次々と生まれてきたという歴史があります。

そういうことを少しでも頭に入れて中南米の音楽を聴けば、たとえばブラジルのボサ・ノヴァやサンバ、キューバ音楽とかも「なるほどそういうことか!」と理解が深まってなかなか楽しめたりしますが、今日はとりあえず南米を代表する民族音楽のフォルクローレですね、そちらをご紹介しましょう。

アルゼンチンには、タンゴの神様としてカルロス・ガルデル、その革命家としてアストル・ピアソラという世界的な巨人がおりますが、実はフォルクローレの神様と呼ばれる人も出ておりまして、その人がアタウアルパ・ユパンキという人です。

深みのある優しい声で、アンデスの大自然、人々の暮らし、それにまつわる悲喜こもごもを、何とも切なく時に軽妙な語り口のギターを爪弾きながら唄うその表現は、何と言うか”うたの根源”を、自然と心に印象付ける、詩的な叙情に溢れたものであります。

「フォルクローレ」といえば小学校の頃学校で習った「コンドルは飛んでゆく」あのどこか遠くへ連れ去られそうな切ないメロディーをアタシは覚えてて、で、大人になって上京してからは、インディオの民族衣装を着て木製の笛や太鼓などを4,5人で演奏するストリート・ミュージシャンの人らがよく駅前にいたりして「あぁ、こんな感じなんだろうな」と、何となくしか意識していなかったのではありますが、ある日アルゼンチン出身のジャズマン、ガトー・バルビエリが「トゥクマンの月」という、何とも切ない曲をエモーショナルにサックスで吹いてカヴァーしているのを聴いて、胸を打ち抜かれたんですね。

「この切ないメロディーは一体何だ!?」

と。

すっかりこの曲に心を鷲づかみにされて、これはてっきりガトーのオリジナル曲だろうと思っていたら、いや、これはユパンキという人の曲なんだと知って、あちこち探すまでもなくその曲が入ってるベスト・アルバムを買ったら、ガトーの激しく切ないジャズ・ヴァージョンと違って、歌とギターで優しく語りかけながら物語を紡いでゆくようなユパンキのヴァージョンに、全く別種の衝撃を受けたわけです。

元々先住民の家(母親はスペインのバスク系移民)で育ちながら、古い民謡を弾き語ることが好きだったユパンキは、アルゼンチン全土を放浪しながら唄い歩くことを若い頃に思い立ち、その放浪の旅の中でインディオのリアルな生活、その中に息付く古謡の数々をレパートリーとして体に染み込ませていった彼の歌とギターには、ブルースマン達のブルース・フィーリングに近い独特の奥深さが乗っていて、その優しく哀しげな声や音の精妙な”震え”が、インパクトをすり抜けて人の心の根っこの部分にそっと触れる度に、アタシは今でも切ないような懐かしいような、そんな特別な感情で穏やかに満たされた気持ちになります。



【収録曲】
1.インディオの道
2.マングルジャンド
3.夜が明けそめる
4.風よ、風よ
5.石と道
6.オニナベナの花
7.さすらい人
8.牛追い
9.広野
10.わたしは鉱夫
11.年経たサンバ
12.ポルテスエロの想いで
13.貧しいサンバ
14.パンピーノの歌
15.ビダーラ
16.インディオの牧歌
17.バグアーラ
18.マランボ
19.おやすみネグリート
20.熟れたトウモロコシの踊り(ウアフラ)


さて、フォルクローレの神様としては実は日本でも熱狂的な人気があったユパンキ、国内盤のベストも色々出てますが、今回のオススメは、素直にアタシが実際聴いて「これは本当に素晴らしい!!」と感動しまくった、初期音源集です。

1936年に28歳でデビューしたユパンキの、声とギターによる純粋な弾き語りを中心とした、フォルクローレの”うた”の部分の真髄がギュッと詰まった一枚です。

アンデスの人や風景、月の光、太陽の陽射し、冬の厳しさ、春の穏やかさ、果てしない山道をひたすら歩く馬車、牧場に木霊する牛追いの歌・・・そんな大自然と一体化した生活のあれこれが詩的に、もちろんスペイン語が分からなくても声と音を聴けば脳裏に広がる。美しい、本当に美しい。

ユパンキのフォルクローレは本当に、人間の根本にある大事な何かを思い出させてくれる音楽であります。



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2016年07月05日

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

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V.A/Buena Vista Social Club
(Nonesuch)


焼けるようなカンカンな日差しの中、車をかっ飛ばしながら聴くとすこぶる気分がアガるのが灼熱のラテン・ミュージック。

特にキューバはよろしいですね〜♪ メロディー自体はマイナースケールで、どちらかというと哀愁漂う感じなのに、コンガやボンゴ、その他諸々のパーカッション打ち出すコテコテの横ノリグルーヴが、何だか底抜けに陽気で、しみったれたことを考える余地をイイ具合に与えません。

特に「くー、たまらんなぁこれ」 「カッコイイべ、もうゴッキゲン♪」と、アタシのやや夏バテ気味の気持ちを元気にして余りあるのが、これはもう”キューバ音楽の代表的名盤中の名盤”「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」です。

1997年にリリースされたこのアルバムは、当時ワールド・ミュージックとしては異例の大ヒットとなりました。

メジャー・レーベルであるノンサッチがワーナーと組んでリリースして、それなりに宣伝もしたというのもありますし、世界中のルーツ音楽を心から愛する男、いや”漢”であるライ・クーダー師匠がプロデュースしてるというロック・サイドに対するデカいアプローチもあったでしょうが、それ以上に、このアルバムに参加しているキューバの大ベテラン・ミュージシャン達が、本気の色気をむせんばかりに放出したそのセクシーな音楽のカッコ良さが、当時世界中の”ホンモノ”を求める人達の心と激しく感応し、

「ライ・クーダーが参加してるキューバのアレ、いいよね」

「おぉ、俺もすげーなって思った。ラテンやばいね!」

と口コミが口コミを呼ぶ形で、日本でも気合いの入った音楽好きの心に届いたんだと思います。





【収録曲(メイン・ミュージシャン)】
1.Chan Chan(エリアデス・オチョア)
2.De Camino a La Vereda(イブライム・フェレール)
3.El Cuarto De Tula(ライ・クーダー)
4.Pueblo Nuevo(ルーベン・ゴンザレス)
5.Dos Gardenias(イブライム・フェレール)
6.¿Y Tú Qué Has Hecho?(コンパイ・セグンド)
7.Veinte Anos(オマーラ・ポルトゥオンド)
8.El Carretero(エリアデス・オチョア)
9.Candela(イブライム・フェレール)
10.Amor De Loca Juventud(コンパイ・セグンド)
11.Orgullecida(コンパイ・セグンド)
12.Murmullo(イブライム・フェレール)
13.Buena Vista Social Club(ライ・クーダー)
14.La Bayamesa(マニュエル・リセア)

ここでその素晴らしい声や楽器演奏を披露してくれているキューバのミュージシャン達は、この時点で既に80歳越えの、スーパーじいちゃん達なんです(紅一点のオマーラ・ポルトゥオンドですら67歳!)。

で、彼らはキューバの首都ハバナにある会員制クラブ「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の常連ミュージシャンで、すなわち「現役バリバリのライヴ・アーティスト」なんですが、このブエナ・ビスタというクラブがまたいいんですよ。

”会員制クラブ”って言うと、何だか金持ちのセレブ限定みたいなイメージがあるんですが、ブエナ・ビスタの入会条件は

「礼儀正しいこと」

「道徳心において優れていること」

の2点のみ。

南国キューバらしいこのおおらかさ(!)

実際にブエナ・ビスタの会員の人たちは、別に金持ちでもない、どっちかというと貧しい人も多く、でも、週末になると彼らの音楽を聴いて楽しく踊るためにとびっきりのオシャレをしてウキウキで集まるんだそうです。

その様子は、2000年に公開されてアカデミー賞にもノミネートした映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で素晴らしく描かれてますが、70、80のじーちゃん達がスーツにハットでキメて、葉巻吹かして笑顔で踊ってて、で、やっぱり”モテること”とか考えてるんですよ。

もーカッコイイ!これぞブルースです、うんうん。

このアルバムはもちろんスタジオ録音なんですが、どこまでもおおらかにそして窮屈さを一切感じさせないゴキゲンな演奏が、何というかとてつもなくライヴ感を醸し出しております。

いやしかし、どの人のプレイも色気色気、色気ありますな〜♪ 

こういうジジイに早くなりたい!




(最近の”ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”のアツい雰囲気♪)



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