2015年04月18日

ジョアン・ジルベルト 声とギター

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ジョアン・ジルベルト 声とギター

(Verve/ユニバーサル)

【収録曲】
1.サンバがサンバであるからには
2.思い知るがいいさ
3.エクリプス
4.ナォン・ヴォウ・プラ・カーザ
5.ジサフィナード
6.バイーア生まれ
7.コラサォン・ヴァガブンド
8.罪の色
9.秘密
10.想いあふれて


ボサ・ノヴァの生みの親の一人であり、ブラジリアン・ミュージック界において最高のシンガー・ソングライターでもあるジョアン・ジルベルト。

1931年生まれにして、現在も精力的な活動を続けている彼が、2000年、69歳にしてリリースしたソロ・アルバム「声とギター」。

アルバム・タイトルが示す通り、歌と彼自身が奏でるギターだけの”必要最小限の音”で奏でられるボサ・ノヴァやサンバ。

空気のように心地よいジョアンの声と、シンプルだからこその音楽的な深さに酔いしれる絶品であります。

個人的な思い出としては、このアルバムリリース前後ぐらいに、ようやく「ボサ・ノヴァのカッコ良さ」に気付いた私としては、ジョアンさんの声とギターが鳴り終えた後の(例えばフレーズとフレーズの隙間の無音部とか)どうしようもない哀愁のゆらぎと、絶対に表には出ないけど、恐らくは底知れぬ狂気の部分までを感じさせてくれるこのアルバム、例えば文章書きながらとか、本を読みながらとか聴いていると、自然に”持っていかれそうになり”ます。

誤解のないように申し上げておきますが、このアルバムは心地良いボサ・ノヴァ・ミュージックの、最高に上質な部分が濃縮されたアルバムであることは間違いなくて、「今日は何となくボサ・ノヴァ聴いてのんびりしたいな〜♪」という方にはもちろん「やっぱりジョアンいいよね〜♪」と、満足させるに十分なクオリティの、21世紀ボサ・ノヴァ、いや、ブラジリアン・ミュージックを代表する名盤であることも間違いありません。

しかし、この穏やかで透明で爽やかな音楽の絶対に出ない”裏”にある狂気を、これはボサ・ノヴァ・ファンではなく、広く音楽全般の”ヤバさ”を求める方にはぜひ感じて頂きたいなと、私は切に願っております。

ヤバいよコレ、ほんと・・・。









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2015年04月06日

パウリーニョ・ダ・ヴィオラ&エルトン・マディロス 夜明けのサンバ

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パウリーニョ・ダ・ヴィオラ&エルトン・マディロス 夜明けのサンバ

(RCE/ボンバ・レコード)

【収録曲】
1.アルヴォレート
2.大多数は持ってない
3.14歳
4.ひどい苦しみ
5.気弱になる時
6.告白
7.完璧な恋
8.マスカラーダ〜眠れぬ夜に〜インジューリア〜ことづけ〜日は昇る〜涙の誓い〜黄金のバラ
9.愛の終わり
10.サンバ・オリジナル
11.アロー・アロー〜涙の太陽


暖かくなってきてすっかり春

というよりも、奄美はムシ暑く強烈な陽射しが容赦なく降り注ぎ、すっかり「夏」です・・・。

個人的にはヒジョーにこれ憂鬱な季節です。

しかしこんな季節に聴いて「あぁいいなぁ〜・・・」と、落ち着けるのがブラジル音楽。

「ブラジル音楽」と聴いてほとんどの人が思い浮かべるのは、ユル〜く穏やかなボサ・ノヴァでございましょうが、そのボサ・ノヴァのルーツであるサンバにも、心地良く切ない風が吹いている名盤が多いのでご紹介いたしましょう。

え? 「サンバつったら、カーニバルで演奏されるあの賑やかな音楽じゃないの?何でそれが心地良く切ないの?」

はい、そんな疑問はあって当然ですよね。

実は、カーニバルで演奏されるあの”サンバ”は、サンバのひとつの形態です。

ブラジル音楽の歴史というのは、実に複雑で、一言でざっくりとは説明できないのですが、まず、ポルトガルから渡ってきた白人音楽をルーツに持つ”ショーロ”という音楽が生まれます。

これは「かなしみ」という意味で、文字通りギターやフルート、その他管弦楽器を主体とした哀愁溢れる旋律が特徴的です。

続いて、彼ら白人によって奴隷としてアフリカ大陸から連れてこられた黒人達の音楽があります。

これには元々これといった固有の名称はありませんでしたが、打楽器を中心とした、非常にリズミカルなものであり、世代を重ねるうちにこれがサンバの原型となりました。

これらの音楽には、原住民であるインディオ達の民俗音楽も少なからず影響を与えて、その風味がそれぞれに加えられて行き、それぞれに浸透して、いわゆるブラジルの「ポピュラー・ミュージック」というのが、19世紀から20世紀にかけて徐々に形作られて行くのです。

ポピュラー・ミュージックとしてのサンバは、白人のショーロと黒人のサンバが融合して生まれました(この過程も複雑なんですが、ここでは省きます)。

んで、戦後ブラジルで「メジャーな音楽」、つまりサンバはブラジルのポップスや歌謡曲のようなものになりました。

独特の哀愁を帯びたメロディーを、時にゆったりと、時に軽快なリズムに乗せて唄う歌手のことを「サンビスタ」と呼びます。

この「ポップスとしてのサンバ」が、アメリカのジャズの影響を受けて生まれたのがボサ・ノヴァなんです。つまり、ボサ・ノヴァ黎明期のスターであったアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルト、ルイス・ボンファ、ナラ・レオンといった人たちは、そのキャリアの最初の頃から「サンバのアーティスト」を目指し、名声を得た人達なのであります。

そんな彼らの憧れの一人であった名サンビストが、本作の主役、パウリーニョ・ダ・ヴィオーラとエルトン・メディロス。

このアルバムは、サンバが洗練を極めた1960年代初頭に、若手サンビスタだったパウリーニョが、先輩であるベテラン、エルトンをレコーディングに迎える形で仕上げたアルバムで、聴いた感じは「ほとんどボサ・ノヴァ」といった感じで、全編心地良い静謐さと、こっそりと混ぜられた狂おしいほどの哀愁に満ちております。

専門書では「ショーロの哀愁をサンバに昇華させた名盤」「ボサ・ノヴァ時代に作られたホンモノのサンバ」と、多くの賞賛を得ております。実際ボサ・ノヴァ好きでブラジル音楽そのものに興味を持った人が、ホンモノのサンバに開眼するきっかけとなる登竜門的なアルバムでもあるようです。

優しくありながら、たっぷりの憂いを含んだパウリーニョの声も、作曲とギター、そしてフルートなどが心地良く響き合う見事なアレンジを手がけたエルトンの演奏も、どちらもこれからの季節にピッタリですね。

個人的にはサンバのリズムをマイナー調のメロディーで美しく練り上げたAやCなどが大好きで、よくリピートしております。








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2015年03月18日

アストル・ピアソラ新婚旅行

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ピアソラが同名映画のために書き下ろした楽曲を、ヴァイオリンのアントニオ・アグリと「ほぼデュエット」で演奏する「新婚旅行」。

しかしタイトルとは裏腹に、楽曲は切なくてヒリヒリするものばかり。

一曲目からタイトルが「亀裂」ですよ。

どんな新婚旅行かと、ツッコミたくなりますが…。

好きなんですよね、これ。


posted by サウンズパル at 23:35| Comment(0) | ラテン/ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月12日

アントニオ・カルロス・ジョビン WAVE

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アントニオ・カルロス・ジョビン WAVE(波)
(A&M)

【収録曲】
1.Wave
2.The Red Blouse
3.Look To The Sky
4.Batidinha
5.Triste
6.Mojave
7.Dailogo
8.Lamento
9.Antigua
10.Captain Bacardi

邦題は「波」でおなじみの、ご存知ボサ・ノヴァ・マエストロ、アントニオ・カルロス・ジョビンの一番人気のアルバム「Wave」です。

1967年にA&Mレコードの招きに応じたジョビンが、アメリカで録音したこのアルバムは、当時モダン・ジャズからクロスオーヴァー/フュージョン路線の作品を次々とプロデュースし、注目を集めていたプロデューサー、クリード・テイラーと、軽いタッチのモダンなストリングス・アレンジで、ジャズからポップスに至る幅広いジャンルをこなしていたクラウス・オガーマンのバックアップを得たジョビンの演奏と楽曲が、”その優美さと心地よさを最大限に発揮した一枚でありまして、よく「イージー・リスニングの金字塔」とも言われますね。

心に自然に入ってくる軽やかなサウンドはどこまでも穏やかで、まるでヒーリング・ミュージックのようであります。

しかし、随所に”泣かせどころ”を巧みに織り交ぜたジョビンの楽曲の奥深さは、じっくりと向かい合って聴く毎に、その存在感を増してきます。

そのサウンドが余りにも優しく、そして全体の流れが余りにも自然で「あぁ、いいなぁ・・・」と聴いているうちに、いつの間にかアルバムが終わってしまう。

音楽というのは「激しく感動した!」「凄い衝撃を受けた!」ものばかりが素晴らしいと、私も若い頃は思っていて、今でも濃いものばかりを好んで聴いていますが、そんな中に、ジョビンの「波」があってもいい。いや、ブルースとか、ジャズの濃いヤツとか、ロックの激しいヤツとかを聴いたあとに、ジョビンを聴いて「無になる」というサイクルがあって、そのサイクルが自分自身の中で「刺激」と「癒し」に対する感度を相乗効果で高めてくれるんですね。

「音楽を聴いて幸せになりたい」

という気持ちっていうのは、私の中にもどうやらあります。

だから私の中ではジョビンは欠かせません。

タイトル曲は、誰もが知る名曲名演ですが、2曲目「The Red Blouse」(赤いブラウス)で聴ける、ジャズ的なピアノ・ソロもなかなかに素敵ですよ♪







Antonio Carlos Jobim - The Red Blouse
(このピアノ好きぃ〜♪)



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2014年12月26日

レジーナ劇場のアストル・ピアソラ 1970

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レジーナ劇場のアストル・ピアソラ 1970
(RCA/BMG)

【収録曲】
1.ピアソラの挨拶
2.ブエノスアイレスの冬
3.ブエノスアイレスの夏
4.ブエノスアイレスの秋
5.ブエノスアイレスの春
6.ブエノスアイレス零時
7.アルフレド・ゴビの肖像
8.革命家
9.キチョ

ピアソラの作曲した数々の名曲の中でも、有名な「ブエノスアイレスの四季」というシリーズがあります。

それは

「ブエノスアイレスの春」

「ブエノスアイレスの夏」

「ブエノスアイレスの秋」

「ブエノスアイレスの冬」

の、4作品でが、何故かそれぞれ単品で演奏されることが多く、ピアソラ自身による演奏も、他の奏者のカヴァーも、「四季が揃って聴ける盤」というのは珍しく、大変貴重であり、私が「ピアソラ集め」を始めた当初にこのアルバムを購入した理由も「四季がまとめて聴けるから」という理由でした。

その時点で私は、このアルバムがアストル・ピアソラという人のキャリアの中で如何に重要な作品であるか、ということや、ピアソラにとって初の故国アルゼンチンでのライヴ・レコーディングであることも「アルゼンチン・タンゴの記念すべき初めてのライヴ盤」という歴史的な重要性なんかも全然知りませんでした。


ただ

「う〜ん、ブエノスアイレスの四季が全部入ってるのは嬉しいけど、1970年のライヴって、音質大丈夫かな…?」

ぐらいに思って買ったんですね。

それが、もう1曲目(正確にはアナウンスの次のトラックなので2曲目ですが)「ブエノスアイレスの冬」から、もう凄い!何が凄いって、演奏そのものの激しさと、ピアソラと彼の五重奏団が醸し出す「無限の香気(エスプリ)」みたいのが。

正直ピアソラは「キップ・ハンラハン・プロデュースの3部作」と、その近辺の80年代後期ぐらいのコンサート辺りが、無難そうだし、完成度も高いし、・・・と、思って、初期ピアソラを甘く見てたアタシが悪うございました。と、スピーカーに何べん土下座したことか・・・(汗)。

ハッキリ言って、「ブエノスアイレスの四季」以外の曲も、全部名演です。

代表曲のひとつ「ブエノスアイレス午前零時」は、ふくよかなコントラバスの音が刻む一定のビートの上で炸裂するピアソラのバンドネオンがもう凄まじいし、「アルフレド・コビの肖像」でのアントニオ・アグリの美しいヴァイオリン、カチョ・ティラオのギターが連打する単音オブリガード、チェ・ゲバラに捧げられた「革命家」の極限まで張り詰めた緊張感、「キチョ」でのエンリケ・ディアスのアルコ(弓弾き)に胸が締め付けられ、もう感動で呼吸すら苦しくなります。音質?言うまでもなくこの時代のものとしては最高にクリアで生々しいですよ、もう。

アストル・ピアソラ(バンドネオン)、アントニオ・アグリ(ヴァイオリン)、オスバルド・マンシ(ピアノ)カチョ・ティラオ(ギター)、エンリケ”キチョ”ディアス(コントラバス)の「ピアソラ五重奏団」は、ピアソラと最も長く活動を共にしたバンドで、革新的なピアソラの演奏と、その高度な理論で構築された楽曲をよく理解し、素晴らしい相乗効果を生み出しております。特に本作では”ピアソラと演奏するために生まれてきた男”とまで言われたアントニオ・アグリのヴァイオリンとのコンビネーションが本当に最高で、このコンビの演奏を聴いたことない方はぜひ聴いてみてください。

「ブエノスアイレスの冬」では、どう聴いてもチェロみたいな音色ですが、この曲だけヴィオラ弾いてるんですね。この選曲にしてこの楽器選びにまで細心の気配りを見せるアグリ、やはりタダモノではないです。

このころまだ「踊れない演奏家」「タンゴの破壊者」と、保守的な人たちから非難され、殺害予告までされていたというピアソラですが、母国アルゼンチンの伝統ある劇場で、真剣にその演奏に浸る観衆と、演奏後の万雷の拍手を聴いて、感慨無量だったことでしょう。

この録音盤のマスターを耳にしたピアソラは

「私はこれでもういつ死んでもいい」

と言ったそうです。







Astor Piazzolla Quinteto - Primavera Porteña - (En vivo Teatro Regina 1970)
(ブエノスアイレスの春)



Astor Piazzolla The Rough Dancer And The Cyclical Night(Tango Apasionado)

アストル・ピアソラ ラ・カモーラ〜情熱的挑発の孤独
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