2017年10月23日

アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地


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アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地
(EMIミュージック)

あれは1994年とか95年とか、その辺りの頃だったので、今からもう20年以上前のことになります。

”ラップ”と呼ばれていたヒップホップは、当時オルタナやメロコアと呼ばれていた人気のロックを凌駕する勢いで、急速にメディアに進出しておりました。

その露出の仕方というのは「新しく刺激的な音楽」という側面もありましたが、どちらかというと「流行の不良音楽」というような売り出し方が多かったように思えます。

ワルな黒人が、大音量で重低音を響かせながら、独特のファッションと身の動きで、歌ではない”しゃべり”を次々とリズミカルに吐いてゆく。そしてそのライフスタイルも、ゴージャスなクラブ、そこにまつわる銃や麻薬やその他もろもろの犯罪とリンクして、何だかヤバそうな未知の世界として、彼らの存在はブラウン管に映りました。

実際にヒップホップは、1970年代のニューヨークの下町ブロンクス地区で、その最もヤバいエリアに住む(主に)ジャマイカ系移民の間で”ファンクのレコードに合わせて自由に言葉を繋いでゆくリズムの遊び”として産声を上げてから、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市の、常に犯罪や暴力の危険に曝されるエリアの生活の音楽として、アメリカ黒人音楽の裏の先端をずーっと担ってきた音楽でした。

更に80年代後半から90年代になる頃には、レーガン大統領による”強いアメリカ”政策の失敗により、都市部における貧困の格差は深刻なものとなり、その煽りは元々貧しく不安定だった黒人社会を直撃し、結果貧困から抜け出せない環境にいる若者達は次々とギャングになっていき、彼らが愛好していたヒップホップの中から”ギャングスタ・ラップ”というひとつのジャンルが確立されます。

この頃”ヒップホップ”といえばそのままギャング達のライフスタイルであり、また、加熱していた東海岸と西海岸のギャング・グループの過激な抗争の勢いに乗って、瞬く間にその勢いは全米から全世界へと伝播していき、世界中のいわゆる不良文化みたいなものに大きな影響を与えるようになります。

日本においても、1990年代ぐらいからダボダボの服を着て”ラップ”(当時の呼び方)を聴いてるヤツというのが、ぼちぼち幅を効かせるようになってくるんです。はい、アタシが十代の頃ですね〜。

正直その頃アタシは”俺はロックだぞ”という変な自負もあって、ヒップホップには好意的にはなれませんでした。

「何だよ、チャラチャラしやがって」

というのが正直な感想。



「そんな連中が聴くラップなんか聴くか!」

と。

でもね、本音ではファンクがベースになっているヒップホップのグルーヴィーなサウンドはとっても魅力的だったし、それ以前にレッチリやビースティ・ボーイズとか、限りなくヒップホップなロックバンドは、好きで聴いてた訳なんですよ。もちろんその前の、エアロスミスとランDMCの「お説教」なんてもう最高だと興奮しておりましたから、ヒップホップという音楽が嫌いだった訳ではないんです。要はつまらん意地です。

で、そんなある日

「最近出てきた奴らなんだけど、アレステッド・ディベロップメントってのはお前の思ってるラップと違うから聴いてみなよ、全然チャラチャラしてないよ」

と、友達から教えられたんですね。

話によると、アメリカの南部の田舎から出てきた連中で、オシャレで心地良い音だし、歌詞も平和を訴えてるし、何より深いんだ、と。

最初は「へー、そうかい」ぐらいに思ってましたがね、ソイツの部屋で、淡い夕日が何となくいいムード作ってる時間帯に(注・部屋には野郎2人)、ぼへーっとタバコ吸いながら聴いたアレステッド・ディベロップメントの音は、何だか思ってたヒップホップと全然違う、優しく包み込むような暖かなサウンドで、不思議とじんわりきてしまったんです。



【収録曲】
1.WMFW
2.ユナイテッド・マインズ
3.エイキン・フォー・エーカーズ
4.ユナイテッド・フロント
5.アフリカズ・インサイド・ミー
6.プライド
7.シェル
8.ミスター・ランドロード
9.ウォーム・センチメンツ
10.ドラム
11.イン・ザ・サンシャイン
12.祭壇にひざまずいて
13.回春の泉
14.イーズ・マイ・マインド
15.プレイジン・ユー
16.エッグビーターズ

その時の忘れもしないアルバムが「ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地」1994年リリースの、彼らのセカンド・アルバムです。

フロントマンのスピーチを中心に、若者もいて、女性もいて、それから一番衝撃だったのが、ラッパーでもDJでもシンガーでもない”スピリチュアル・アドバイザー”というパートの、白髪白ひげのオッサンがいて、何をやってるかといえば、何だかアフリカっぽい旋律を「アァアァ〜」と歌ったり、詩みたいな言葉のフレーズを朗読してたりするんですけどね、それが怪しくなくて、ゆるやかにアフリカを感じさせるジャズっぽい洗練されたサウンドと優しく知的なラップと絶妙に絡んでてバランスが取れていて、素晴らしくカッコ良かった。

そしてアルバム全体を聴いても、刺々しいところは一切なく、聴いてから何ともおだやかな気分がずっと残りました。友達に「貸してくれ」と言ったのは、言うまでもありません。そして数か月後に、やっぱり自分でも欲しくなってコッソリ買ってしまいました。

激しいロックやディープな戦前ブルースばかりを聴いていたアタシにとっては、どこまでも心身を癒してくれる稀有な音楽であり、また、好きで聴いている音楽の本質みたいなものを、何故か彼らの穏やかなヒップホップ・サウンドが上手く解説してくれるようでいて、不思議な話ですがこの一枚があるが故に他の色んなジャンルの音楽も、より深く好きになれる。そんなアルバムでした。

音楽に与えた影響としては、それまでヒットチャートに上るヒップホップといえば、ギラギラしたギャングスタ系一辺倒だったシーンに緩やかな風穴を開け、90年代後半にエリカ・バドゥやアンジー・ストーンなど、ナチュラルでブラック・ミュージックの深いルーツを感じさせる、いわゆるオーガニックなR&Bを世に出すことに一役買った重要なグループがアレステッド・ディベロップメントだと思います。

でも、そんなことよりもこの優しくて暖かくて、行ったこともないアメリカ南部やアフリカに、奇妙な懐かしさすら覚えさせてくれる、静かな知性に溢れるこのアルバムが、今も自分の心の中で「音楽っていいよな」と変わらず思わせてくれる大事なところにあることの方が、きっと大事なんです。



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2017年01月08日

ジュラシック5 クオリティ・コントロール

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ジュラシック5/クオリティ・コントロール
(Interscope Records)

90年代はヒップホップ文化が世界的に華やかだった時代でした、その原動力となったのがギャングスタ文化です。

西海岸と東海岸のギャング達が派手に抗争を繰り広げ、それぞれの勢力を背景にしたレーベルやラッパー、DJ達が競うように派手な作品を次々と世に出してきて、世界中のファン、または純粋にワルい子達は、また競うようにそれらのレコードを追い、ファッションを血眼になって追っておりました。

まぁそれはそれでシーンに活気があるということで好ましい、でもちょっと待て?肝心の音楽的なことや、元々社会性の強かったリリックなどの、ヒップホップが元々持っていたメッセージ的なことは?仲間達と純粋に楽しめたあのアンセムな雰囲気はどこへ行った?

と、少なからず疑問を呈する昔からのファンはおりました。

その時代新たにヒップホップに目覚めた若い人でも、DJ達の元ネタを掘るうちに、そういう聴き方に目覚めた人達も結構おりました。

そんな中でジワリ盛り上がっていたのが、1980年代の、娯楽性の強いいわゆるオールドスクールや、ゴールデン・エイジと呼ばれる汎アフリカ主義に基づく社会性の強いヒップホップ(つまりは「ブラック・ミュージックとしてのヒップホップを盛り上げようぜ」という思想)への回帰です。

ジュラシック5がLAから登場してきたのは、ヒップホップが全盛を迎え、売れ線のエンターティメントとしても成熟を見せていた2000年。

このヒップホップ・ユニットが、2DJ(カット・ケミスト、ヌ・マーク)に4MC(ザキール、チャリ・ツナ、アキル、マーク・セヴン)という豪華な編成であると聞いた時、最初アタシは「物凄いコワモテのギャング集団なのかな?」と、勝手に想像しておりました。そうでなくともコレはサウンドも相当に派手でイケイケなんだろうと。


【収録曲】
1.ハウ・ウィ・ゲット・アロング
2.ジ・インフルエンス
3.グレート・エクスペクテーションズ
4.クオリティ・イントロ
5.クオリティ・コントロール
6.コンタクト
7.ローズド
8.ワールド・オブ・エンターテインメント(WOE・イズ・ミー)
9.モンキー・バーズ
10.ジュラス・フィニッシュ・ファースト
11.コントリビューション
12.トゥエルヴ
13.ザ・ゲーム
14.インプロヴァイズ
15.スウィング・セット


彼らのデビュー・フル・アルバム「クオリティ・コントロール」の試供品が送られてきて、最初は「ヒップホップだし店で流しとくか」ぐらいの気持ちだったんですね。

何かがぶっ飛んで、素直な感動が一気に押し寄せたのは、1曲目のイントロのベースラインを聴いた時すぐに、もう本当に「すぐに」でした。

「これ、凄い!凄いファンク!!」

2DJと言いながら、派手な効果音に類に頼らず、サンプリングソースから丁寧に抽出した骨太なビートをあくまで軸にした硬派なトラック、そして4人の、それぞれ個性的な声と韻の踏み方を持つMC達によるリズミカルで絶妙なグルーヴを生み出すマイクリレー。

その見事な”素の実力”というか、DJとしてあるいはMCとしての底力だけでパフォーマンスを繰り広げている姿勢を、まずはカッコイイ!と思いました。つまりアタシなんかは「ブラック・ミュージック」というものをブルースから入ってジャズで深く理解して、それからソウルやR&Bを好きになってより広く楽しめるようになったクチなんですけど、ジュラシック5のヒップホップからは、正にそんなブラック・ミュージックの歴史とダイレクトに繋がっているリアリティをとても強く感じました。

歌詞をじっくり読み返しても、社会的なメッセージをふんだんに織り込みつつ、基本となるのはヒップホップが”みんなで楽しく一緒に歌いながら盛り上がれる音楽”だった頃の楽しさやワクワクした気持ちの壮大なアンセム(賛歌)でありますね。”Fun”ってのはこういう雰囲気なんだなぁとしみじみ・・・。





(タイトル曲「クオリティ・コントロール」この雰囲気ですよ♪)


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2016年10月11日

ドクター・ドレー クロニック

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ドクター・ドレー/クロニック
(Death Low/ビクター)


さて、前回スヌープ・ドッグの1993年のデビュー・アルバム「ドギー・スタイル」をご紹介し、皆さんには90年代から2000年代にかけて怒涛の快進撃を繰り広げた”ウェッサイ”と呼ばれるアメリカ西海岸ヒップホップの魅力をほんの少しお伝えしたような形になっておりますが、今回は

「うわぁー、しまったぁー、西海岸といえばスヌープより先にコイツだろってことを言うの忘れたー!!」

な、決定的名盤、とにかくコレがなければウェッサイも西海岸発のギャングスタ・ラップも恐らく何も始まらなかっただろう。いや、始まったとしても10年ぐらい送れて「何か、西の方ではこんなスタイルのヒップホップが流行ってるらしいよ」ぐらいで終わってたかも知れないとは本気で思います。

はい、1992年リリースの、稀代のトラック・メイカー、ドクター・ドレーのファースト・ソロ・アルバムにして、西海岸発の最高にディープでキャッチーでハイセンスなヒップホップの雛形となるすべての要素が詰まったエポック・メイキングな決定盤であります「ザ・クロニック」を、本日はご紹介いたしましょうねー。




【収録曲】
1.ザ・クロニック (イントロ)
2.ファック・ウィズ・ドレー・デイ(アンド・エヴリバディズ・セレブレイティン)
3.レット・ミー・ライド
4.デイ・ザ・ニガズ・トゥック・オーヴァー
5.ナッシン・バット・ア・G・サング
6.ディーズ・ヌーツ
7.リル・ゲットー・ボーイ
8.ア・ニガ・ウイッタ・ガン
9.ラッタッタッタッ
10.ザ・$20・サック・ピラミッド
11.リリカル・ギャングバング
12.ハイ・パワード
13.ザ・ドクターズ・オフィス
14.ストランディッド・オン・デス・ロウ
15.ザ・ローチ (ザ・クロニック・アウトロ)
16.ビッチズ・エイント・シット [BONUS TRACK}

スヌープの記事で「言うほどギャングスタ要素ない」と書きましたが、ドレーはそもそもN.W.A.というゴリゴリのギャングスタ・ラップのグループの中心メンバーで、このグループは徹底して反権力・喧嘩上等なスタンスであり、その過激で暴力的なリリックは社会問題にまでなって、警察やFBIからも徹底してマークされていたほどでした。

N.W.A.は1986年に結成され、91年にメンバー内のいざこざが原因で解散しますが、ドレーはいち早くソロとして活躍することを具体的に考え、自己のレーベル「デス・ロウ」を立ち上げて、そのボスマンとして君臨します(経営者はシュグ・ナイトというゴリゴリのギャング、マジでワル)。

デス・ロウには設立当初からN.W.A.時代からの関係者や、N.W.A.を聴いて育ったギャングなラッパー達が続々と集う訳なんですが、ここでドレーは「ギャングスタなポリシーは保ちつつも、音楽的にはより洗練された奥深いものを作りたい!」と、方向性を定める訳なんです。

元々がファンクやソウル、ジャズの熱狂的な愛好家であったドレーは、これまで黒人音楽がどのような推移で若者文化の流行の先端でブレイクし、そしてまた新しい時代になるとどのような形で新たな流行が生まれていったかを、ストイックなまでに徹底して研究します。

ここでドレーが気付いたのは

「とにかくラップを進化させなければならない、そのためにはラップを引き立たせるシンプルでストーリー性に溢れたトラックを量産せねばならない。」

ということでした。

なので、ドレーのトラックはいずれもシンプルでぶっといビート、どんな局面でもそのフレーズがジワジワ効果的に響く中毒性の高いシンセや上モノのフレーズ、サビのラップをとことん盛り上げるキャッチーで盛大なコーラスという3点セットがもれなく付いております。

トラックにおける構想は完璧、でも待てよ?と思ったドレーは、自分の最大の欠点に気付きました。

それは、彼がラッパーとしては「普通」だったことです。

いや、ソロ作でもところどころ聴かれる彼のラップは、悪くはないんですが押しが弱く、雰囲気は上等でもインパクトに欠けるんです。

そこで彼は、デス・ロウに集まってくる多くの若いトンガッた連中から、ズバ抜けたセンスと持つ天才ラッパー、スヌープ・ドッグを見出します。

はい、ドクター・ドレーの記念すべき初のソロ・アルバムの本作なんですが、実はラップの主役はドレーが連れてきた、当時まだ無名の若者だったスヌープです。

彼のラップはタフでメロウで、どんなトラックの上でも自由に華麗に泳ぎ回り、語りギリギリの巧みな緩急で、ドレー渾身の華のある楽曲に見事魂を入れております。

特に代表作であるADなんかは、Gファンクの色褪せぬ名曲であり、ヒップホップ全体で考えても「これ以上、これ以外」がちょっと思い付かないほどのエバーグリーンな歴史的な「ラップ+練りに練られたトラック」のお手本のような曲だと思います。

ちなみにこのアルバムとスヌープの「ドギー・スタイル」でアメリカのヒップホップシーンは、一時的に「西海岸一色」になりました。

本来敵対してるはずの東海岸の若者達も「アレは最高にクール」と言って、ドレーやスヌープのレコードを買いまくってたんですね。そこに危機感を覚えた東海岸のヒップホップ関係者が総力を挙げて作り上げたのが、Nasの「イルマティック」だったりします。

ちなみにGファンクの”G”は、アタシずっと「ウォーレン・Gの"G"」だと思ってたんですが、ゲットーの"G"らしいです。



(このサビのコーラスは、ヒップホップ好きなら一度は口ずさんだことがあるでしょう)


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2016年10月09日

スヌープ・ドッグ ドギースタイル

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スヌープ・ドギー・ドッグ/ドギー・スタイル
(Death Low/ビクター)

ふふふ、今日は朝から友達がフリーマッケトで出店するというので、ちょいと見てきましたら、90年代のヒップホップ、R&Bとか掘り出しものがたくさんありました。

特にヒップホップは、流石に基本中の基本がガッツリ揃っていて「あ、コレは持ってなかった!これも・・・!!」と、もう目移りしてたまらんかったですね〜♪

そん中で一番最初にググッときたのが、スヌープ・ドッグ、当時”スヌープ・ドギー・ドッグ”のファースト・アルバム「ドギー・スタイル」です。

リリースされたのは確か1993年でしたよね。

その頃アタシは高校生で、毎日毎日バカみたいに激しいロックを聴き狂ってたんですが、そのロックとは全く別のアンダーグラウンドなところから出てきて、徐々にMTVにイカツいラッパーがオラついて出てきたり、ロック系の連中とは、ちょいちょい危険な火花散らしてたり、何つうかもうこの時代のヒップホップの連中というのは、見るからにヤバくて、音楽的なこと云々よりも、とにかくメディアに出ると独特のヤバ〜い緊張感が走るから、そういう”空気”をハラハラ感じて楽しんでおりました。

実際にこの頃のラッパーのほとんどは、西海岸・東海岸で覇を競っていたリアルなギャングの構成員だったり関係者だったり、それだけでも穏やかじゃないんですが、この時期西海岸のギャングと東海岸のギャングは、リアルにドンパチの抗争をやっていて、シャレじゃなくホントにヤバい空気が、楽曲からもワンワン漂ってきてたんですね。

そんな中で、西海岸の代表ともいえるドクター・ドレーの”デス・ロウ・レコード”が台頭してきました。

MTVに長身でかなりヤバめの目つきをしたスヌープ・ドギー・ドッグが異様な存在感でもって現れるようになったのも、ちょうどこの頃です。




【収録曲】
1.バスタブ
2.Gファンク・イントロ
3.ジン・アンド・ジュース
4.ザ・シズニット
5.ロディ・ドディ
6.マーダー・ワズ・ザ・ケース
7.シリアル・キラー
8.フー・アム・アイ(ホワッツ・マイ・ネーム)?
9.フォー・オール・マイ・ニガズ・アンド・ビッチズ
10.エイント・ノー・ファン
11.ドギー・ドッグ・ワールド
12.Gズ・アンド・ハスラス
13.ポンプ・ポンプ


当時、ヒップホップの知識のなかったアタシは「アメリカのラップ=チンピラっぽくて銃声ガンガン入ってるやつ」ぐらいにしか思ってませんでした。

実際、サンプリングで作られているトラックには、西と東のそれぞれの陣営が、まるでレコードの盤上で抗争をやっているかのように、銃声の効果音をサンプリングとしてガンガン入れておりました。

実際雑誌なんかにも「相手が銃声5発曲の中に入れたらウチは10発だ!」と、両陣営競うように銃声入れてたというのが載ってて読んだ覚えがありますので、これは本気でやっておったんでしょう。

さて、そんな中で西海岸ヒップホップシーンで頭角を現したドレーとその一派。当然「生粋のギャングスタ」であり、それはそれは生え抜きのヤバイ人達であったんですが、その音楽性はシンプルなぶっといビートに、ルーツであるファンク、ソウルなどへの熱いリスペクトに溢れて楽曲は限りなくポップ。つまりとことんキャッチーでそして真摯なものだったんです。

ドレーやウォーレンGといったトラックメイカー達が作り上げた「Pファンクのゆったりと粘るノリに倣ったシンプルなビートに、シンセを効果的に使ったトラック、そしてサビで使われるキャッチーなコーラス。幅広い音楽性」は、一言で”Gファンク”と呼ばれ、特に92年からコンビを組んだドレー(トラック)とスヌープ(ラップ)が作り出す作品は、それまでのギャングスタ・ラップと呼ばれたヒップホップのカラーを次々と塗り替え、踊れる音楽としても鑑賞に耐え得る音楽としても、ヒップホップというものを一気に洗練させました。

こっからヒップホップ黄金期の90年代、そして現在のダンス・ミュージックの基本となった”ビート+シンセ”の流れがジャンルを超えて何となく形作られたといっても過言ではありません。

や、もちろんこのアルバムにも”銃声”は入ってるんですが、それすらも楽曲の中で効果的に配置されたアレンジの一部に思えるんです。

ドレーの無駄のない、でも盛り上がる時はしっかりと盛り上がる楽曲とアレンジはもちろん極上なんですが、見た目に反して(失礼)意外に柔らかく甘めのスヌープの声もまたいいんですよ。特に女性コーラスとメロウなラップとの組み合わせ、これはたまりません。



(これですよ、このグルーヴ!)




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2016年02月06日

NAS Illmatic

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NAS/Illmatic
(Columbia)

90年代といえばロックもヘヴィメタル/ハードロックからオルタナティヴやパンク回帰へと大きな潮流が変わっていた節目の時代でありましたが、それとは全く別のベクトルからヒップホップがアンダーグラウンドからオーバーグラウンドへと噴出(と、いう言い方がよいでしょう。本当に凄い勢いでしたから)してきて、洋楽をチェックしていても、毎日が「次はどんなのが出てくるんだろう」と、ワクワクドキドキしておりました。

アタシはその頃は完全にロックが好きな人だったのですが、スヌープ・ドギー・ドッグとかドクター・ドレーとか、あの辺のギャングスタラップの大物達がMTVのショーとかに、ロックやポップスに対して闘争心剥き出しで「喰ってやるぞ!」とでも言わんばかりのパフォーマンスを繰り広げているのを見て

「うぉう、コイツらラップの連中かー。何かよーわからんけどカッコイイぞ!」

と、ハラハラドキドキしながら観ていたもんです。

そう、90年代はいわゆる”ギャングスタラップ”と呼ばれる、何といえばいいんでしょう「コイツらはたまたま音楽やってるだけで実際はマジモンのギャングだよ」というヒップホップがようやく世に出てきていた時期であります。

背景にはやはり社会情勢というものが関わってきていて、ブルースの昔から黒人音楽とは表裏一体となっている貧困や暴力、ドラッグなどの問題が、若者のライフスタイルそのものに影響を及ぼしており、ニューヨークやLAといった大都市の貧民街を根城にするギャング達が、彼らの主義主張とか、ストリートでのハードライフだとか、あるいはドラッグや女のことなんかを、歌うではなく、サンプリングをしたファンクやソウルのビートに乗せてスラングふんだんに入れて韻を踏む。これがいわゆるギャングスタラップの核の部分なんですが、ギャングの中にはメンバーにしか通じないスラングやハンドサインなんかがあったりして、ラップやラッパー達が指でサインを作りながら「Yo,Yo」とやるあの独特の動きも、そんなところから来てるんですね。

はい、どの世界でも暴力を背景にしている集団というものが存在すれば、そこには必然と抗争というものが付きまとうようになります。

90年代アメリカは、ストリートギャング達の抗争の時代でもありました。

特にニューヨークを中心とした東海岸勢力と、LAを中心とする西海岸勢力は、それぞれの縄張りに乗り込んで行っては幹部やメンバーを銃撃して殺害するといった、文字通り血で血を洗う抗争に明け暮れておりました。

それぞれのエリアから出てくるラッパーやDJ達も、必然的にそれぞれの勢力に直接、または間接的に属し、彼らがリリースするレコードは、そのものが所属する集団のテーマソング的な意味合いを持ったり、ヒジョーに際どいものでありました。

西海岸からはN.W.A.というグループがその中から突出して音楽シーンを席捲しはじめ、様々な人材はおりつつもやや押されている形だった東海岸のシーンに彗星のごとく現れたのが、Nazことナジール・ジョーンズという天才ラッパーでありました。

ジャズ/ブルースびミュージシャンであるオル・ダラの息子として、ニューヨークはブルックリンの団地で生まれたNasは、学校を8年で中退し、麻薬の売人としてギャング組織の末端に関わります。

しかし、学校は辞めたけれども彼は自宅で読書にいそしんだり、歴史や政治、宗教などの勉強を続け、ワル仲間からも「アイツはちょっと違う、タダのバカじゃねぇ」と、一目置かれておったそうです。多分お父ちゃんの教育がよかったんでしょうね。この頃のNasはギャングから抜けて漫画家か楽器職人になろうと思っていたそうですが、やっぱり音楽、特にメッセージを自分の体験などを通して世に訴えたいという衝動は早くから目覚めていたようで、1991年には10代でクラブに出演、ラッパーとして既に卓越したスキルと持ち前の枯れた味わいのある声、そして何よりそこらのワルを誇示するだけのギャングスタラップとは明らかに一線を画した詩的であり、高いメッセージ性、ハードなストリート・ライフの渦中に居ながらもどこか冷めた視点を持つリリックの世界はあっという間に多くの賞賛を浴び、20歳にしてピート・ロック、ラージ・プロフェッサー、Q-Tip、DJプレミア、L.E.S.といったNYシーンの蝶大物DJやプロデューサー達が全面協力した本作「イルマティック」がリリースされます。





【収録曲】
1.THE GENESIS
2.N.Y. STATE OF MIND
3.LIFE'S A BITCH
4.THE WORLD IS YOURS
5.HALFTIME
6.MEMORY LANE (SITTIN' IN DA PARK)
7.ONE LOVE
8.ONE TIME 4 YOUR MIND
9.REPRESENT
10.IT AIN'T HARD TO TELL

普通だったら超大物がこぞって参加した、最新の流行音楽のアルバムとくれば、派手でゴージャスなものと相場は決まっておるのですが、そこはNasという、この稀代の詩人にして”ビート”というものに並外れた鋭い感覚を持つラッパーの個性が100%尊重された作りになっております。つまりバックは出来るだけ華美な装飾を省いた、シンプルで太いビートを軸に、Nasのリリックがじっくりと、心地良いダークさと重圧を伴うバックトラックと共に堪能できる仕上がりです。

Nasの方向性とはまた別に、これは当時、派手で勢いのある楽曲を次々ドロップしていた西海岸勢に押され気味だった東海岸からの起死回生の一撃を狙った大きな賭けでもあったでしょう。つまりはそれまで西海岸が主流だったギャングスタラップに”なかったもの”を、そのコアなエキスだけをストイックに抽出して、一枚のアルバムにじっくりと刻み込んだ作品でもあります。

個人的にはラージ・プロフェッサー提供のD、そしてQ-tipのFが、もう何度聴いても「くーーー!」となる名曲です。この”間”このライムの切り込み方、本当にクセになります。

さて、全体的にダークで、派手はフィーチャリングなども押し出さずに「Nasのライムとメッセージ」「厳選されたバックビートのシンプルなノリ」で勝負に出たNasのデビュー・アルバム、世界的に大ブレイクを記録し、現在も「ヒップホップを聴くならばまずは持っていなければならない1枚」と、未だに多くの媒体で推されるほどの金字塔として音楽の歴史に大きな存在感を放っております。

90年代当時、アタシは「ヒップホップかー、どうせブームになって終わるんじゃね?」ぐらいのナメた気持ちをどこかに持っており、事実日本では空前のブームがあってそれがレゲエに取って変わって、今はブームそのものが多様化の波に呑まれているような音楽界の現状ではありますが、そういう表面的なものとは別に、こういういつまでもその魅力が色褪せない、永遠の指標となるような1枚がヒップホップにはあるというだけで、胸がアツくなってきます。



(これは「One Love」ヒース・ブラザーズの「Smiling Billy Suite」がサンプリングされたクールなトラックがたまんね・・・)





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2015年06月04日

ライムスター リスペクト

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ライムスター リスペクト
(NEXT LEVEL)

日本に「ヒップホップ」という文化が入ってきて、そして流行し、一般的な人気や知名度も獲得して一躍定着することとなり、「B系ファッション」なんて言葉がもてはやされてたりもしましたが、ロックが日本に入ってきて根付いたように、ヒップホップもその過程で大きなターニング・ポイントとなる名盤をいくつか世に出しております。

1999年にリリースされたライムスターのサード・アルバム「リスペクト」は、その最もデカい衝撃のひとつだったと間違いなく言えるでしょう。

スキンヘッドにグラサンという強烈なルックスに、社会ネタも下ネタもストレートにブチ込んでくる宇多丸、独特の柔軟な声質を活かしたオールレンジ対応型の韻巧者Mummy-Dという2MCに、ファンク〜ジャズの流れも手堅く抑えた硬派なビートが実はすこぶるカッコイイDJ JINの3人組のこのグループが、結成されたのは1989年。

まだまだ日本ではアンダーグラウンドな音楽であり、一部の人に「あぁ、ラップね」ぐらいにしか思われてなかったヒップホップを心から愛し「ぜってぇヒップホップの時代が来るから!」てアツく語り、大いに活動していたライムスターが、シーンの追い風に乗ってデビュー作「俺に言わせりゃ」で世に大々的にピックアップされたのが1993年。

当時私は18歳で、深夜の音楽番組がお友達だったので、彼らが出てきた時のことはよぉ覚えとります。

まず、バンドマンとしての立場からアタシはハッキリ言ってヒップホップを嫌ってました。

「何が”ヨー”だ、チャラチャラしてるくせにワルぶりやがってコラ」

というのが、正直な心境だったです、ハイ。。。

で、深夜の音楽番組にライムスター、ちょいと出てました。

まー、今でこそ宇多丸もDさんも丸くなってカッコいいトシの取り方してますが、その頃の番組での態度はデカかったし、ワルかった(笑)

番組の内容は、確か「レコード屋を巡る」的な感じのものだったと思います。

「コレがかぁ〜、○○でぇ〜、超ヤベぇとか思ってぇ〜」

みたいな喋り方に「この東京モンが!」とか思って、テレビに喧嘩腰になって番組ガン見してたんですが、

あのね、レコード屋さんに言ってエサ箱漁るでしょう、そしたら3人とも

「あ、このレコードは誰々の何年のアルバムでぇ〜」

「この曲のこの入り方がすげぇって思って」

とか、好きなレコード、アーティスト、楽曲の中身までひとつひとつ(口調はワルい感じでしたが)細かくかつアツく解説してたんですよね。

その時「あ、ラップってチャラチャラしたヤツばっかかも知れんけど、こういうホンモノなヤツもおるんだな」

と思いました。

まぁ「敵ながらあっぱれ」

というヤツです。

当時のアタシ、何様かと(笑


まぁそれはそうとそれから何年か経って、アタシも都内のレコ屋で稼業にゲソを付けて「やっぱりどのジャンルにも詳しくならなきゃいかん!」って思って、それこそ職場のバックルームにある「お店用」の音楽雑誌、あの頃はミュージック・マガジンにバーンにドール、レコード・コレクター、ブルース&ソウル・レコード、イーター、スイング・ジャーナル、ブラストとか、まぁあらゆるジャンルの雑誌があったんですが、HIPHOP誌の「ブラスト」コレが面白かったんです。

一番面白かったのが、宇多丸が連載してた「怪電波フロム神保町」でしたな。

いやもうその時事ネタから芸能、風俗、人生論まで、氏の地に足の付いた誠実かつ破壊力抜群な文章、素直にカッコイイな、リスペクトだな、と感服してました。

で、1999年にアタシは東京での修業を終えて島に帰って来たんですが、このライムスターの3枚目のアルバム「リスペクト」は、丁度その年のリリースです。

ヒップホップがもう完全に「日本の若者文化」として定着した、それはそれでずっとアンダーグラウンドでやってきた彼らのようなベテランにとっては快挙だった訳でありますが、どうしてもブームというものは表層的な部分が勝手に湧いて勝手に終わる。

彼らが愛して止まない「ヒップホップ」という文化がタダの流行りとして消費されることに、「いやちょっと待て、ヒップホップって、言葉とビートの音楽だっていう凄くシンプルでいつまでもカッコイイもんなんだぜ」と、いう想いがこのアルバムには込められていると、アタシは勝手に解釈してます。

高らかにHIPHOPを讃え上げる「R.E.S.P.E.C.T」「キング・オブ・ステージ」から「ではヒップホップとは何ぞや?」と、聴き手に突きつけてくる「B」の定義「B-BOY イズム」と、前半は「これでもか!」というぐらいに重厚なビートの重さと生身の「言葉(ライム)」のカッコ良さがそれこそ切れ味鋭い日本刀のごとく、痛快に空間を斬りまくります。

んで、「古くはハンムラビ法典、つまりメソポタミアとかの方ですでに愛されていた」とか深遠な哲学調のDさんのリリックに「んん?」ってなったと思ったら、何のことはない「ビールうめぇ」ということだったユーモア全開の「麦の海」、Dさんの実弟KOHEY JAPANフィーチャリングの「ブラザーズ」BOY-KEN(このヒトもレゲエが有名になるずっと前からアンダーグラウンドで頑張ってたんぞ)のラガマフィンもキてる下ネタチューンの「隣の芝生にホール・イン・ワン」で、彼らの代表曲のひとつである「耳ヲ貸スベキ」ときて、ラスト、ラッパ我リヤfeat.の「リスペクト」と、何をどっからどう聴いてもカッコイイ、今聴いてもぜんっぜんカッコイイ、日本のヒップホップの、コチラ絶対にハズせないマスターピースでございます。




1.R.E.S.P.E.C.T
2.キング オブ ステージ
3.「B」の定義
4.B-BOY イズム
5.麦の海
6.Hey,DJ JIN
7.マイクの刺客 -DJ JIN 劇画REMIX-
8.野生の証明
9.ブラザーズ
10.ビッグ・ウェンズデー
11.隣の芝生にホール・イン・ワン
12.敗者復活戦
13.耳ヲ貸スベキ
14.リスペクト


ある意味「日本語のラップ」というのは、この作品で極まり尽くしたような気も致しますね。


つうか今日、仕事が遠方への配達だったので、ずっとコレ聴いてたんですが、もう終始ノリッノリで仕事できました。いや、車でかけるにも最高ですわコレ、ふふっ♪


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2015年01月05日

OLIVE OIL α

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OLIVE OIL α
(FILE RECORDS)

【収録曲】
1.Revolution Special Edit
2.Represent Base
3.O.Y Street feat. Freez, Inno, Nuffty
4.Vig Summer Comes Again 1978 feat. Freez, Taboo1, DJ Shoe
5.Smoke Scream
6.No One Does
7.Old Balance
8.Beat i ful
9.Vig B
10.Olive Controler
11.Pianity Part.2
12.Sudden Power feat. Cult
13.We Roll feat. Nuts
14.Unzen Flash
15.Always Flash
16.Nobushi No Sakebi feat. Yura Flash

デビュー以来クラブシーンで世界的な注目を集めているOLIVE OILが2008年に放った渾身のフル・アルバム「α」です。

彼はいわゆる”DJ”でありますが、単純にアゲアゲな曲で人を踊らせるプレイのみをするDJではありません(もちろん、イベントのスタイルに応じてアゲアゲも十分にこなせる人ではありますが)。

Hiphopからルーツであるジャズやソウル、それらとリンクする形でハウス・ミュージックやエレクトロニカといった、いわゆる”クラブ系”とよばれる音の要素ひとつひとつを巧みに操り、独特の上質なゆったりしたビートが衝動を満たし、想像力を優しく刺激する独特な音世界を構築する希有なクリエイターであります。

それまでのアルバムでは、「インスト・ジャジー・ヒップホップの極み」と言える、非常にオシャレでナイーヴな表現で、クラブ・ミュージックの全く新しい地平を切り開いてきたOlive oilでしたが、この「α」は、その超個性的な音楽性を更にストイックに突き詰めたようなサウンドの洗練具合と、これまで以上にラップの比重も増したバラエティ豊かな内容で、作品としての完成度は最高潮に達したかのような見事な仕上がりです。

あのジャイルス・ピーターソンが大絶賛し、今やジャンルを超えて、トータルな「クリエイター」として、mixやフィーチャリングを含め、凄まじい数の作品をリリースしている彼の、コレはその最初の到達点であり、今のスタイルのベーシックな部分が余すとこなく収録されている永遠のマスターピースです。

その昔お店で流していたら「今かかってるの、すごいオシャレですね」と言ってくる人の多いこと(!)それもジャズ好きだったり、Hiphop好きだったり、ハウス好きであったり本当に色んなジャンルの音楽好きを刺激しまくる音ですこれは。





OLIVE OIL "Vig Summer Comes Again 1978 feat. Freez, Taboo1, DJ Shoe"
(チルアウトにも最適なこの洗練されたバックトラックとRapの絶妙さ♪)



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2014年12月17日

Mos Def and Talib Kweli Are Black Star

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Mos Def and Talib Kweli Are Black Star
(Raekus)

【収録曲】
1.Intro
2.Astronomy (8th Light)
3.Definition
4.RE: DEFinition
5.Children's Story
6.Brown Skin Lady
7.B Boys Will B Boys
8.K. O. S. (Determination)
9.Hater Players
10.Yo Yeah
11.Respiration
12.Thieves in the Night
13.Twice Inna Lifetime

1990年代に隆盛を極めたHIPHOP。その中で真にアンダーグラウンドな姿勢を貫き「ショウビジネスの世界とは一線を画した、あくまでストリートの文化に根ざしたレコードを世に出す」というポリシーで、コクと深みのある上質なレコードを次々と世に出していたRawkus(ロウカス)レコード。

リアルタイムで「ココから出てくる新作は、どれも安心して聴ける」と思いつつ、ひそかにチェックしておったレーベルなんですが、そのロウカスが後世に残した最良の仕事が、モス・デフとタリブ・クウェリによるユニット「ブラックスター」のこのアルバムでしょう。

類まれな天才リリシストであるモス・デフとタリブ・クウェリの2人が織り成す、あくまでクールでどこかヒリヒリとした緊張感も孕む絶妙なライムの掛け合いが、DJハイ・テックのあくまでブレイク・ビーツを基軸にしながら、淡々と、しかしドラマティックな”しかけ”を随所で効かせながら展開してゆくトラックの、シンプルだけど奥深いセンスを感じさせるアレンジには、その頃流行ってた「派手でゴージャスでドーン!」な、メインストリームには絶対に感じることの出来ない「知性で武装した武闘派」のそれを感じたものです。

ロウカスの一派は、ヒップホップ・シーンの中でも「ニュースクール」と呼ばれるスタイルを確立し、コアなリスナーやDJのハートを、その粘りのあるビートでガッツリ掴む訳なんですが、その中心に金字塔として燦然と渋い光を放つこのアルバムの存在があったことは、うん、これはブラック・ミュージック好きなら永遠に忘れてはならないことでしょうね。

全編通して太いミドルと的確なキックが生み出す絶妙な”粘り”溢れるトラックと、言うまでもなくクールでフィーリングにも技巧にも富んだ天才リリシストの2人とのマッチングは、もう芸術の域であります。

下に動画で挙げた「Definition」は、いきなりレゲエ調でびっくりしましたが、当時のニューヨークでは、HIPHOPだけでなくジャマイカやプエルトリコ系の人々によってもたらされたレゲエ・カルチャーもストリートの重要な文化として生活に溶け込んだものであったことなどを考えるとなるほど納得。後の「空前のレゲエムーヴメント」も、HIPHOPアーティスト達からのアプローチがなければ、これほど盛り上がることではなかっただろうとか、音楽的な感動と同様に、NYストリート・カルチャーへの様々な考察も刺激してくれる一枚です。

Rawkusは「アンダーグラウンド」な姿勢を貫くあまり、経営的に苦しくなって一度倒産しますが、2005年に見事復活!今も良質なヒップホップを世に送り出しております。





Blackstar (Mos Def & Talib Kweli) - Definition
(まさかのレゲエ!と98年当初は思いましたが、後のレゲエ・ブームを見るに凄い先見性だなぁと。。)


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ラベル:HIPHOP Rawkus MOS DEF
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2014年12月12日

パブリック・エナミーU

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パブリック・エナミーU(It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back)
(ユニバーサル)

1.カウントダウン・トゥ・アーマゲドン
2.ブリング・ザ・ノイズ
3.ドント・ビリーヴ・ザ・ハイプ
4.コールド・ランピン・ウィズ・フレイヴァー
5.ターミネーターX・トゥ・ジ・エッジ・オブ・パニック
6.マインド・テロリスト
7.ラウダー・ザン・ア・ボム
8.キャン・ウィ・ゲット・ア・ウィットネス?
9.ショウ・エム・ホワッチャ・ガット
10.チャンネル・ゼロ
11.ナイト・オブ・ザ・リヴィング・ベースヘッズ
12.ブラック・スティール・ジ・アワー・オブ・カオス
13.セキュリティ・オブ・ザ・ファースト・ワールド
14.レベル・ウィズアウト・ア・ポーズ
15.プロフェッツ・オブ・レイジ
16.パーティ・フォー・ユア・ライト・トゥ・ファイト

「HIPHOPでまずは聴くべきアルバムは?」と訊かれたら、断然パブリック・エナミーのセカンド・アルバムである本作(正式なタイトルは「It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back」を挙げます。

リアルタイムでは1988年のリリースですが、その強烈なメッセージ性(何つってもユニット名が「公共の敵」ですからね)を持つリリックと、チャックDのフリー・スタイルのスキルを活かしまくった挑発的で攻撃的なラップと、ターミネーターXの、革新的なDJプレイ(スクラッチ、サンプリング技術など、ブレイクビーツから発展させた彼の手法は、その後のヒップホップのあらゆるDJスタイルの基礎を創ったのだ)、私がお店に来るB-Boyたちに薦めまくったのが2000年頃でしたから、その時点でリリースからもう10年以上経ってたんですが、全然古臭さを感じさせなかった。

むしろ無駄な装飾のない骨太なビートと破壊力抜群のライムは、無駄がない分、音と言葉が「ズドン!」と来て、「いやむしろ逆に新鮮っす!」「やっべぇ、コイツら戦う気マンマン!」と、若いB-Boyのみんなが共感してくれたのが良い思い出です。

更に振り返れば、私はアンスラックスと共演した1991年のシングル「Bring the Noise」(このアルバムに入ってるのはオリジナル・ヴァージョン)で、パブリック・エナミーを知りました。

その頃はまだ「ヒップホップ」という言葉はまだ世間に浸透してなくて「へ〜、ラップもカッコイイじゃん」とか思ってたんですが、ライヴ映像で、何か全員ブラックパンサー党みたいな制服を着て軍隊みたいな動きのヤツらがゾロゾロ出てきて、その中でアジテーターみたいに聴衆を煽りまくるチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴのパフォーマンスにヤラレましたね。

「公共の敵」というユニット名が示す通り、彼らのリリックもまた痛烈なメッセージに溢れております。

人種差別や「見せかけの民主主義」に対する厳しい批判はもちろん、麻薬や犯罪に走る若者に厳しく警告、多くの哲学的示唆に溢れた彼らの言葉は今も斬新で物事の本質を鋭く突いております。

ロックファンの中でも「ヒップホップは聴かないけど、パブリック・エナミーだけは別」と賞賛するファンは今でも後を絶ちません。「パンクは姿勢(アティチュード)だ」と言ったのはジョー・ストラマー先輩ですが、パブリック・エナミーのこの不朽のセカンドを聴いてもまた「HIPHOPは姿勢(亜ティチュード)だよな」と、思うのであります。


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Bring The Noise - Public Enemy ( Original Video )
(全員黒い制服みたいな衣装で固めて、軍隊みたいなパフォーマンスで、「あ、コイツらは”戦う連中だ”」と直感しました。1988年当時。そりゃあもうカッコ良かったです。)

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2014年11月27日

2PAC グレイテスト・ヒッツ

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2PAC Grateste Hits
(Interscope Records)

(Disc-1)
1.Keep Ya Head Up (from "Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z.")
2.2 of Amerikaz Most Wanted (from "All Eyez On Me")
3.Temptations (from "Me Against The World")
4.God Bless the Dead (previously unreleased)
5.Hail Mary (as Makaveli, from "The Don Killuminati: The 7 Day Theory")
6.Me Against the World (from "Me Against The World")
7.How Do U Want It (from "All Eyez On Me")
8.So Many Tears (from "Me Against The World")
9.Unconditional Love (previously unreleased)
10.Trapped (from "2Pacalypse Now")
11.Life Goes On (from "All Eyez On Me")
12.Hit 'Em Up (single, from "How Do U Want It")

(Disc-2)
1.Troublesome 96 (previously unreleased)
2.Brenda's Got a Baby (from "2Pacalypse Now")
3.I Ain't Mad at Cha (from "All Eyez On Me")
4.I Get Around (from "Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z.")
5.Changes - (previously unreleased)
6.California Love (original version, from "How Do U Want It")
7.Picture Me Rollin' (from "All Eyez On Me")
8.How Long Will They Mourn Me (from "Volume 1")
9.Toss It Up - (as Makaveli, from "The Don Killuminati: The 7 Day Theory")
10.Dear Mama - (from "Me Against The World")
11.All About U - (from "All Eyez On Me")
12.To Live & Die in L.A. - (as Makaveli, from "The Don Killuminati: The 7 Day Theory")
13.Heartz of Men - (from "All Eyez On Me")

音楽を語る時にHIPHOPというのは絶対にハズせないわけであることとイコールで、アメリカという国の社会問題についてもやはりHIPHOPを知らないと絶対に語れない訳で・・・。

というわけで、ミズーリ州で黒人少年が警官に射殺された事件がありましたね。

どっちが正しいとか、そういうことを論じる前に、やはりアメリカという資本主義が極まり果てた超大国には、やっぱりどうしても「こういう問題」ってあるんだな、と気持ちが重たくなってしまう時、2pacのことを私はいつも思います。

1996年、25歳の若さで凶弾に倒れた2pac。

当時は東海岸と西海岸のギャング抗争が最も激しい時期であり、ラッパーなんてほとんどギャングが「(麻薬の)売人を辞めて一発当てるため」の商売だったというのを聞いて「へ〜・・」と思ったんですが、逆に考えれば大都市のスラムで育った黒人は、たとえどんなに心優しい人間でも、音楽や芸術に対する優れた感性を持っていても、ギャングにならざるを得ないという、アメリカ社会の深い闇のようなものを、2pacという1人の天才ラッパーであり、詩人であり、哲学者だった若者の死でもって、認識するに至りました。

「California Love」 等の王道ウェッサイ(ビートの太い西海岸サウンド)で、「魔都カリフォルニア」の享楽的なヤバさを高らかに歌い上げた一方で、彼の詩(リリック)には、常に仲間、家族、神、歴史上の尊敬する人物といった、彼にとっての「至高の存在」に対する愛をリスペクトがあり、ギャングであることへの根源的な、とてつもなく深い問いの中から「生と死」をえぐり出す知性も、2pacと彼の音楽からは感じられます。

今にして思えば・・・ですけど、彼のサウンドの根幹には、ブルースの時代からずっと流れ続けているブラック・ミュージックのすごく深いところにあるルーツの部分を核に、70年代ソウルの甘く哀しい響きもエッセンスとして感じられます(「Life Goes On 」や「Dear Mama」等を聴きましょう)。

このアルバムは、彼が生前に残した音源の中から選りすぐりのマスターピースを集めたベスト・アルバム2枚組です。

死後、それこそ様々な音源が出てきて、アルバム数がエライことになっておりますが、まずはコレを聴いて、90年代の「ヤバかった頃のHIPHOP」を体現しつつ、ぜひリリックにも耳を傾けてください。





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【和訳】2PAC - Life goes on (HD)
(何も言うことはありません、R.I.P・・・。)

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ラベル:2pac HIPHOP 名盤
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