2016年02月06日

NAS Illmatic

1.1.jpg

NAS/Illmatic
(Columbia)

90年代といえばロックもヘヴィメタル/ハードロックからオルタナティヴやパンク回帰へと大きな潮流が変わっていた節目の時代でありましたが、それとは全く別のベクトルからヒップホップがアンダーグラウンドからオーバーグラウンドへと噴出(と、いう言い方がよいでしょう。本当に凄い勢いでしたから)してきて、洋楽をチェックしていても、毎日が「次はどんなのが出てくるんだろう」と、ワクワクドキドキしておりました。

アタシはその頃は完全にロックが好きな人だったのですが、スヌープ・ドギー・ドッグとかドクター・ドレーとか、あの辺のギャングスタラップの大物達がMTVのショーとかに、ロックやポップスに対して闘争心剥き出しで「喰ってやるぞ!」とでも言わんばかりのパフォーマンスを繰り広げているのを見て

「うぉう、コイツらラップの連中かー。何かよーわからんけどカッコイイぞ!」

と、ハラハラドキドキしながら観ていたもんです。

そう、90年代はいわゆる”ギャングスタラップ”と呼ばれる、何といえばいいんでしょう「コイツらはたまたま音楽やってるだけで実際はマジモンのギャングだよ」というヒップホップがようやく世に出てきていた時期であります。

背景にはやはり社会情勢というものが関わってきていて、ブルースの昔から黒人音楽とは表裏一体となっている貧困や暴力、ドラッグなどの問題が、若者のライフスタイルそのものに影響を及ぼしており、ニューヨークやLAといった大都市の貧民街を根城にするギャング達が、彼らの主義主張とか、ストリートでのハードライフだとか、あるいはドラッグや女のことなんかを、歌うではなく、サンプリングをしたファンクやソウルのビートに乗せてスラングふんだんに入れて韻を踏む。これがいわゆるギャングスタラップの核の部分なんですが、ギャングの中にはメンバーにしか通じないスラングやハンドサインなんかがあったりして、ラップやラッパー達が指でサインを作りながら「Yo,Yo」とやるあの独特の動きも、そんなところから来てるんですね。

はい、どの世界でも暴力を背景にしている集団というものが存在すれば、そこには必然と抗争というものが付きまとうようになります。

90年代アメリカは、ストリートギャング達の抗争の時代でもありました。

特にニューヨークを中心とした東海岸勢力と、LAを中心とする西海岸勢力は、それぞれの縄張りに乗り込んで行っては幹部やメンバーを銃撃して殺害するといった、文字通り血で血を洗う抗争に明け暮れておりました。

それぞれのエリアから出てくるラッパーやDJ達も、必然的にそれぞれの勢力に直接、または間接的に属し、彼らがリリースするレコードは、そのものが所属する集団のテーマソング的な意味合いを持ったり、ヒジョーに際どいものでありました。

西海岸からはN.W.A.というグループがその中から突出して音楽シーンを席捲しはじめ、様々な人材はおりつつもやや押されている形だった東海岸のシーンに彗星のごとく現れたのが、Nazことナジール・ジョーンズという天才ラッパーでありました。

ジャズ/ブルースびミュージシャンであるオル・ダラの息子として、ニューヨークはブルックリンの団地で生まれたNasは、学校を8年で中退し、麻薬の売人としてギャング組織の末端に関わります。

しかし、学校は辞めたけれども彼は自宅で読書にいそしんだり、歴史や政治、宗教などの勉強を続け、ワル仲間からも「アイツはちょっと違う、タダのバカじゃねぇ」と、一目置かれておったそうです。多分お父ちゃんの教育がよかったんでしょうね。この頃のNasはギャングから抜けて漫画家か楽器職人になろうと思っていたそうですが、やっぱり音楽、特にメッセージを自分の体験などを通して世に訴えたいという衝動は早くから目覚めていたようで、1991年には10代でクラブに出演、ラッパーとして既に卓越したスキルと持ち前の枯れた味わいのある声、そして何よりそこらのワルを誇示するだけのギャングスタラップとは明らかに一線を画した詩的であり、高いメッセージ性、ハードなストリート・ライフの渦中に居ながらもどこか冷めた視点を持つリリックの世界はあっという間に多くの賞賛を浴び、20歳にしてピート・ロック、ラージ・プロフェッサー、Q-Tip、DJプレミア、L.E.S.といったNYシーンの蝶大物DJやプロデューサー達が全面協力した本作「イルマティック」がリリースされます。





【収録曲】
1.THE GENESIS
2.N.Y. STATE OF MIND
3.LIFE'S A BITCH
4.THE WORLD IS YOURS
5.HALFTIME
6.MEMORY LANE (SITTIN' IN DA PARK)
7.ONE LOVE
8.ONE TIME 4 YOUR MIND
9.REPRESENT
10.IT AIN'T HARD TO TELL

普通だったら超大物がこぞって参加した、最新の流行音楽のアルバムとくれば、派手でゴージャスなものと相場は決まっておるのですが、そこはNasという、この稀代の詩人にして”ビート”というものに並外れた鋭い感覚を持つラッパーの個性が100%尊重された作りになっております。つまりバックは出来るだけ華美な装飾を省いた、シンプルで太いビートを軸に、Nasのリリックがじっくりと、心地良いダークさと重圧を伴うバックトラックと共に堪能できる仕上がりです。

Nasの方向性とはまた別に、これは当時、派手で勢いのある楽曲を次々ドロップしていた西海岸勢に押され気味だった東海岸からの起死回生の一撃を狙った大きな賭けでもあったでしょう。つまりはそれまで西海岸が主流だったギャングスタラップに”なかったもの”を、そのコアなエキスだけをストイックに抽出して、一枚のアルバムにじっくりと刻み込んだ作品でもあります。

個人的にはラージ・プロフェッサー提供のD、そしてQ-tipのFが、もう何度聴いても「くーーー!」となる名曲です。この”間”このライムの切り込み方、本当にクセになります。

さて、全体的にダークで、派手はフィーチャリングなども押し出さずに「Nasのライムとメッセージ」「厳選されたバックビートのシンプルなノリ」で勝負に出たNasのデビュー・アルバム、世界的に大ブレイクを記録し、現在も「ヒップホップを聴くならばまずは持っていなければならない1枚」と、未だに多くの媒体で推されるほどの金字塔として音楽の歴史に大きな存在感を放っております。

90年代当時、アタシは「ヒップホップかー、どうせブームになって終わるんじゃね?」ぐらいのナメた気持ちをどこかに持っており、事実日本では空前のブームがあってそれがレゲエに取って変わって、今はブームそのものが多様化の波に呑まれているような音楽界の現状ではありますが、そういう表面的なものとは別に、こういういつまでもその魅力が色褪せない、永遠の指標となるような1枚がヒップホップにはあるというだけで、胸がアツくなってきます。



(これは「One Love」ヒース・ブラザーズの「Smiling Billy Suite」がサンプリングされたクールなトラックがたまんね・・・)





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 11:39| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月04日

ライムスター リスペクト

10045094807_s.jpg
ライムスター リスペクト
(NEXT LEVEL)

日本に「ヒップホップ」という文化が入ってきて、そして流行し、一般的な人気や知名度も獲得して一躍定着することとなり、「B系ファッション」なんて言葉がもてはやされてたりもしましたが、ロックが日本に入ってきて根付いたように、ヒップホップもその過程で大きなターニング・ポイントとなる名盤をいくつか世に出しております。

1999年にリリースされたライムスターのサード・アルバム「リスペクト」は、その最もデカい衝撃のひとつだったと間違いなく言えるでしょう。

スキンヘッドにグラサンという強烈なルックスに、社会ネタも下ネタもストレートにブチ込んでくる宇多丸、独特の柔軟な声質を活かしたオールレンジ対応型の韻巧者Mummy-Dという2MCに、ファンク〜ジャズの流れも手堅く抑えた硬派なビートが実はすこぶるカッコイイDJ JINの3人組のこのグループが、結成されたのは1989年。

まだまだ日本ではアンダーグラウンドな音楽であり、一部の人に「あぁ、ラップね」ぐらいにしか思われてなかったヒップホップを心から愛し「ぜってぇヒップホップの時代が来るから!」てアツく語り、大いに活動していたライムスターが、シーンの追い風に乗ってデビュー作「俺に言わせりゃ」で世に大々的にピックアップされたのが1993年。

当時私は18歳で、深夜の音楽番組がお友達だったので、彼らが出てきた時のことはよぉ覚えとります。

まず、バンドマンとしての立場からアタシはハッキリ言ってヒップホップを嫌ってました。

「何が”ヨー”だ、チャラチャラしてるくせにワルぶりやがってコラ」

というのが、正直な心境だったです、ハイ。。。

で、深夜の音楽番組にライムスター、ちょいと出てました。

まー、今でこそ宇多丸もDさんも丸くなってカッコいいトシの取り方してますが、その頃の番組での態度はデカかったし、ワルかった(笑)

番組の内容は、確か「レコード屋を巡る」的な感じのものだったと思います。

「コレがかぁ〜、○○でぇ〜、超ヤベぇとか思ってぇ〜」

みたいな喋り方に「この東京モンが!」とか思って、テレビに喧嘩腰になって番組ガン見してたんですが、

あのね、レコード屋さんに言ってエサ箱漁るでしょう、そしたら3人とも

「あ、このレコードは誰々の何年のアルバムでぇ〜」

「この曲のこの入り方がすげぇって思って」

とか、好きなレコード、アーティスト、楽曲の中身までひとつひとつ(口調はワルい感じでしたが)細かくかつアツく解説してたんですよね。

その時「あ、ラップってチャラチャラしたヤツばっかかも知れんけど、こういうホンモノなヤツもおるんだな」

と思いました。

まぁ「敵ながらあっぱれ」

というヤツです。

当時のアタシ、何様かと(笑


まぁそれはそうとそれから何年か経って、アタシも都内のレコ屋で稼業にゲソを付けて「やっぱりどのジャンルにも詳しくならなきゃいかん!」って思って、それこそ職場のバックルームにある「お店用」の音楽雑誌、あの頃はミュージック・マガジンにバーンにドール、レコード・コレクター、ブルース&ソウル・レコード、イーター、スイング・ジャーナル、ブラストとか、まぁあらゆるジャンルの雑誌があったんですが、HIPHOP誌の「ブラスト」コレが面白かったんです。

一番面白かったのが、宇多丸が連載してた「怪電波フロム神保町」でしたな。

いやもうその時事ネタから芸能、風俗、人生論まで、氏の地に足の付いた誠実かつ破壊力抜群な文章、素直にカッコイイな、リスペクトだな、と感服してました。

で、1999年にアタシは東京での修業を終えて島に帰って来たんですが、このライムスターの3枚目のアルバム「リスペクト」は、丁度その年のリリースです。

ヒップホップがもう完全に「日本の若者文化」として定着した、それはそれでずっとアンダーグラウンドでやってきた彼らのようなベテランにとっては快挙だった訳でありますが、どうしてもブームというものは表層的な部分が勝手に湧いて勝手に終わる。

彼らが愛して止まない「ヒップホップ」という文化がタダの流行りとして消費されることに、「いやちょっと待て、ヒップホップって、言葉とビートの音楽だっていう凄くシンプルでいつまでもカッコイイもんなんだぜ」と、いう想いがこのアルバムには込められていると、アタシは勝手に解釈してます。

高らかにHIPHOPを讃え上げる「R.E.S.P.E.C.T」「キング・オブ・ステージ」から「ではヒップホップとは何ぞや?」と、聴き手に突きつけてくる「B」の定義「B-BOY イズム」と、前半は「これでもか!」というぐらいに重厚なビートの重さと生身の「言葉(ライム)」のカッコ良さがそれこそ切れ味鋭い日本刀のごとく、痛快に空間を斬りまくります。

んで、「古くはハンムラビ法典、つまりメソポタミアとかの方ですでに愛されていた」とか深遠な哲学調のDさんのリリックに「んん?」ってなったと思ったら、何のことはない「ビールうめぇ」ということだったユーモア全開の「麦の海」、Dさんの実弟KOHEY JAPANフィーチャリングの「ブラザーズ」BOY-KEN(このヒトもレゲエが有名になるずっと前からアンダーグラウンドで頑張ってたんぞ)のラガマフィンもキてる下ネタチューンの「隣の芝生にホール・イン・ワン」で、彼らの代表曲のひとつである「耳ヲ貸スベキ」ときて、ラスト、ラッパ我リヤfeat.の「リスペクト」と、何をどっからどう聴いてもカッコイイ、今聴いてもぜんっぜんカッコイイ、日本のヒップホップの、コチラ絶対にハズせないマスターピースでございます。




1.R.E.S.P.E.C.T
2.キング オブ ステージ
3.「B」の定義
4.B-BOY イズム
5.麦の海
6.Hey,DJ JIN
7.マイクの刺客 -DJ JIN 劇画REMIX-
8.野生の証明
9.ブラザーズ
10.ビッグ・ウェンズデー
11.隣の芝生にホール・イン・ワン
12.敗者復活戦
13.耳ヲ貸スベキ
14.リスペクト


ある意味「日本語のラップ」というのは、この作品で極まり尽くしたような気も致しますね。


つうか今日、仕事が遠方への配達だったので、ずっとコレ聴いてたんですが、もう終始ノリッノリで仕事できました。いや、車でかけるにも最高ですわコレ、ふふっ♪


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:30| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月05日

OLIVE OIL α

1.jpg

OLIVE OIL α
(FILE RECORDS)

【収録曲】
1.Revolution Special Edit
2.Represent Base
3.O.Y Street feat. Freez, Inno, Nuffty
4.Vig Summer Comes Again 1978 feat. Freez, Taboo1, DJ Shoe
5.Smoke Scream
6.No One Does
7.Old Balance
8.Beat i ful
9.Vig B
10.Olive Controler
11.Pianity Part.2
12.Sudden Power feat. Cult
13.We Roll feat. Nuts
14.Unzen Flash
15.Always Flash
16.Nobushi No Sakebi feat. Yura Flash

デビュー以来クラブシーンで世界的な注目を集めているOLIVE OILが2008年に放った渾身のフル・アルバム「α」です。

彼はいわゆる”DJ”でありますが、単純にアゲアゲな曲で人を踊らせるプレイのみをするDJではありません(もちろん、イベントのスタイルに応じてアゲアゲも十分にこなせる人ではありますが)。

Hiphopからルーツであるジャズやソウル、それらとリンクする形でハウス・ミュージックやエレクトロニカといった、いわゆる”クラブ系”とよばれる音の要素ひとつひとつを巧みに操り、独特の上質なゆったりしたビートが衝動を満たし、想像力を優しく刺激する独特な音世界を構築する希有なクリエイターであります。

それまでのアルバムでは、「インスト・ジャジー・ヒップホップの極み」と言える、非常にオシャレでナイーヴな表現で、クラブ・ミュージックの全く新しい地平を切り開いてきたOlive oilでしたが、この「α」は、その超個性的な音楽性を更にストイックに突き詰めたようなサウンドの洗練具合と、これまで以上にラップの比重も増したバラエティ豊かな内容で、作品としての完成度は最高潮に達したかのような見事な仕上がりです。

あのジャイルス・ピーターソンが大絶賛し、今やジャンルを超えて、トータルな「クリエイター」として、mixやフィーチャリングを含め、凄まじい数の作品をリリースしている彼の、コレはその最初の到達点であり、今のスタイルのベーシックな部分が余すとこなく収録されている永遠のマスターピースです。

その昔お店で流していたら「今かかってるの、すごいオシャレですね」と言ってくる人の多いこと(!)それもジャズ好きだったり、Hiphop好きだったり、ハウス好きであったり本当に色んなジャンルの音楽好きを刺激しまくる音ですこれは。





OLIVE OIL "Vig Summer Comes Again 1978 feat. Freez, Taboo1, DJ Shoe"
(チルアウトにも最適なこの洗練されたバックトラックとRapの絶妙さ♪)



サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
http://5spot.info/
posted by サウンズパル at 16:34| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月17日

Mos Def and Talib Kweli Are Black Star

3.jpg

Mos Def and Talib Kweli Are Black Star
(Raekus)

【収録曲】
1.Intro
2.Astronomy (8th Light)
3.Definition
4.RE: DEFinition
5.Children's Story
6.Brown Skin Lady
7.B Boys Will B Boys
8.K. O. S. (Determination)
9.Hater Players
10.Yo Yeah
11.Respiration
12.Thieves in the Night
13.Twice Inna Lifetime

1990年代に隆盛を極めたHIPHOP。その中で真にアンダーグラウンドな姿勢を貫き「ショウビジネスの世界とは一線を画した、あくまでストリートの文化に根ざしたレコードを世に出す」というポリシーで、コクと深みのある上質なレコードを次々と世に出していたRawkus(ロウカス)レコード。

リアルタイムで「ココから出てくる新作は、どれも安心して聴ける」と思いつつ、ひそかにチェックしておったレーベルなんですが、そのロウカスが後世に残した最良の仕事が、モス・デフとタリブ・クウェリによるユニット「ブラックスター」のこのアルバムでしょう。

類まれな天才リリシストであるモス・デフとタリブ・クウェリの2人が織り成す、あくまでクールでどこかヒリヒリとした緊張感も孕む絶妙なライムの掛け合いが、DJハイ・テックのあくまでブレイク・ビーツを基軸にしながら、淡々と、しかしドラマティックな”しかけ”を随所で効かせながら展開してゆくトラックの、シンプルだけど奥深いセンスを感じさせるアレンジには、その頃流行ってた「派手でゴージャスでドーン!」な、メインストリームには絶対に感じることの出来ない「知性で武装した武闘派」のそれを感じたものです。

ロウカスの一派は、ヒップホップ・シーンの中でも「ニュースクール」と呼ばれるスタイルを確立し、コアなリスナーやDJのハートを、その粘りのあるビートでガッツリ掴む訳なんですが、その中心に金字塔として燦然と渋い光を放つこのアルバムの存在があったことは、うん、これはブラック・ミュージック好きなら永遠に忘れてはならないことでしょうね。

全編通して太いミドルと的確なキックが生み出す絶妙な”粘り”溢れるトラックと、言うまでもなくクールでフィーリングにも技巧にも富んだ天才リリシストの2人とのマッチングは、もう芸術の域であります。

下に動画で挙げた「Definition」は、いきなりレゲエ調でびっくりしましたが、当時のニューヨークでは、HIPHOPだけでなくジャマイカやプエルトリコ系の人々によってもたらされたレゲエ・カルチャーもストリートの重要な文化として生活に溶け込んだものであったことなどを考えるとなるほど納得。後の「空前のレゲエムーヴメント」も、HIPHOPアーティスト達からのアプローチがなければ、これほど盛り上がることではなかっただろうとか、音楽的な感動と同様に、NYストリート・カルチャーへの様々な考察も刺激してくれる一枚です。

Rawkusは「アンダーグラウンド」な姿勢を貫くあまり、経営的に苦しくなって一度倒産しますが、2005年に見事復活!今も良質なヒップホップを世に送り出しております。





Blackstar (Mos Def & Talib Kweli) - Definition
(まさかのレゲエ!と98年当初は思いましたが、後のレゲエ・ブームを見るに凄い先見性だなぁと。。)


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
http://5spot.info/
ラベル:HIPHOP Rawkus MOS DEF
posted by サウンズパル at 17:15| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月12日

パブリック・エナミーU

1.jpg

パブリック・エナミーU(It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back)
(ユニバーサル)

1.カウントダウン・トゥ・アーマゲドン
2.ブリング・ザ・ノイズ
3.ドント・ビリーヴ・ザ・ハイプ
4.コールド・ランピン・ウィズ・フレイヴァー
5.ターミネーターX・トゥ・ジ・エッジ・オブ・パニック
6.マインド・テロリスト
7.ラウダー・ザン・ア・ボム
8.キャン・ウィ・ゲット・ア・ウィットネス?
9.ショウ・エム・ホワッチャ・ガット
10.チャンネル・ゼロ
11.ナイト・オブ・ザ・リヴィング・ベースヘッズ
12.ブラック・スティール・ジ・アワー・オブ・カオス
13.セキュリティ・オブ・ザ・ファースト・ワールド
14.レベル・ウィズアウト・ア・ポーズ
15.プロフェッツ・オブ・レイジ
16.パーティ・フォー・ユア・ライト・トゥ・ファイト

「HIPHOPでまずは聴くべきアルバムは?」と訊かれたら、断然パブリック・エナミーのセカンド・アルバムである本作(正式なタイトルは「It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back」を挙げます。

リアルタイムでは1988年のリリースですが、その強烈なメッセージ性(何つってもユニット名が「公共の敵」ですからね)を持つリリックと、チャックDのフリー・スタイルのスキルを活かしまくった挑発的で攻撃的なラップと、ターミネーターXの、革新的なDJプレイ(スクラッチ、サンプリング技術など、ブレイクビーツから発展させた彼の手法は、その後のヒップホップのあらゆるDJスタイルの基礎を創ったのだ)、私がお店に来るB-Boyたちに薦めまくったのが2000年頃でしたから、その時点でリリースからもう10年以上経ってたんですが、全然古臭さを感じさせなかった。

むしろ無駄な装飾のない骨太なビートと破壊力抜群のライムは、無駄がない分、音と言葉が「ズドン!」と来て、「いやむしろ逆に新鮮っす!」「やっべぇ、コイツら戦う気マンマン!」と、若いB-Boyのみんなが共感してくれたのが良い思い出です。

更に振り返れば、私はアンスラックスと共演した1991年のシングル「Bring the Noise」(このアルバムに入ってるのはオリジナル・ヴァージョン)で、パブリック・エナミーを知りました。

その頃はまだ「ヒップホップ」という言葉はまだ世間に浸透してなくて「へ〜、ラップもカッコイイじゃん」とか思ってたんですが、ライヴ映像で、何か全員ブラックパンサー党みたいな制服を着て軍隊みたいな動きのヤツらがゾロゾロ出てきて、その中でアジテーターみたいに聴衆を煽りまくるチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴのパフォーマンスにヤラレましたね。

「公共の敵」というユニット名が示す通り、彼らのリリックもまた痛烈なメッセージに溢れております。

人種差別や「見せかけの民主主義」に対する厳しい批判はもちろん、麻薬や犯罪に走る若者に厳しく警告、多くの哲学的示唆に溢れた彼らの言葉は今も斬新で物事の本質を鋭く突いております。

ロックファンの中でも「ヒップホップは聴かないけど、パブリック・エナミーだけは別」と賞賛するファンは今でも後を絶ちません。「パンクは姿勢(アティチュード)だ」と言ったのはジョー・ストラマー先輩ですが、パブリック・エナミーのこの不朽のセカンドを聴いてもまた「HIPHOPは姿勢(亜ティチュード)だよな」と、思うのであります。


↓お買い上げはコチラから




Bring The Noise - Public Enemy ( Original Video )
(全員黒い制服みたいな衣装で固めて、軍隊みたいなパフォーマンスで、「あ、コイツらは”戦う連中だ”」と直感しました。1988年当時。そりゃあもうカッコ良かったです。)

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
http://5spot.info/
posted by サウンズパル at 18:03| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする