
オーティス・レディング/ドッグ・オブ・ザ・ベイ
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)
アタシはカタギの仕事をしながら、こうやってブログを書いたり、近所の常連さんからCDの注文を貰ってそれを配達したり、遠方の常連さんから受けた注文を発送したり、また、このブログを通してアマゾンでお買い物をしてくれた人がいればアマゾンから紹介手数料というものが振り込まれます(アフィリエイトというやつですね)。
そんなこんなで、お店を持たずにCD屋をやっておるんですが、これは結構大変ですが、大変でも「これは止めたらいかん!」と思いながら、地味にやっております。
「止めたらいかん!」の理由は色々ありますが、やっぱり音楽を通じて、CDやレコードを通じて人様と接していると、何というか大袈裟かも知れないですけれど「あぁ、人の心って美しいなぁ」と激しく感動することがいっぱいあるからなんですよ。
これはついこの間の話です。
先輩の某お店に行ったら、CDの注文をもらいました。
その中にあったのがオーティス・レディングの「ドッグ・オブ・ベイ」。
「おぉ、オーティスいいですね〜♪」
と、話題に花が咲きました。
ここからの先輩の話がいい。
「”ドッグ・オブ・ベイ”はね〜、俺が東京に居た頃の思い出の曲なんだよ。一緒にツルんでた先輩が、ジュークボックスあるところ行くと必ずオーティスの”ドッグ・オブ・ベイ”かけてたんだよな〜。何かそういうの、急に懐かしくなってねぇ。。。」
これですよ、もうホントこれですよね。
作った人や唄う人、演奏する人が魂を込めた音楽って、人の耳に届いて心に残るんです。
そして、心の中に残ったものは、その人の心の中で、かけがえのない”人生の物語”と溶け合って、いつまでも美しく存在する。
そして人様の会話の中で
「人生のこんな場面にあんな音楽があった」
というのを聞くと、こっちまで何というか幸せな気持ちになります。
こんな拙いブログではありますが、アタシは紹介する音盤が、読んでくれている人の「思い出に残るもの」になったら嬉しい。そんな気持ちで祈るように毎回書いております。
さて、オーティス・レディング「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」です。
【収録曲】
1.ドック・オブ・ザ・ベイ
2.最愛のおまえ
3.レット・ミー・カム・オン・ホーム
4.オープン・ザ・ドア
5.ドント・メス・ウィズ・キューピッド
6.グローリー・オブ・ラヴ
7.アイム・カミング・ホーム
8.トランプ
9.ハックル・バック
10.誰も知らない
11.オール・マン・トラブル
1960年代のソウル・ミュージックを代表するシンガーの一人として、人気の絶頂にあったオーティス・レディング。
彼はしかしその絶頂のただ中の1967年、飛行機事故によって、僅か26年の生涯を儚く終えてしまいました。
本作はそのオーティスの死を受けて、アルバム未収録だった過去の楽曲などを急遽集めてリリースされた追悼アルバムです。
オーティスといえば「ガッタガッタ!」という独特の掛け声と共に、ハイ・テンションで聴き手を圧倒するパワフルなヴォーカルが真骨頂でありましたが、60年代の半ばからは、グッと感情を抑制して、盛り上がりの時に一気にそれを炸裂させる、より深い歌唱に転換しようと試みておりました。
アルバムでいえばこの作品の前に録音された4枚目「ザ・ソウル・アルバム」のオープニングを飾る名バラード「Just One More Day」で、熟成した”新しい感じ”の歌声を披露したオーティスですが、もしかしたらこの時に「次回はミディアム〜スローのバラードを中心とした作品を作ろう」と思っていたのかも知れません。
飛行機事故の3日前にレコーディングされた「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」は、正にそんなオーティスの新境地。深く、一語一語の歌詞を噛み締めて唄うそのバラード表現は、聴いているこちらも思わず引き込まれてしまいますが、オーティス本人もいたく気に入り
「これは最高の楽曲だ、そうだね、今度のアルバムには絶対にコイツを入れてもらいたいよ」
と、言い残し、スタジオを後にして、そのまま帰らぬ人となりました。
この曲はオーティスの死後、シングルとしてリリースされて大ヒットした訳なのですが、アルバム全体を聴いてみても、前半の巧みな”バラードたたみ掛け”で、もう胸の内からアツいものがこみ上げてきます。
オーティスをあれこれ聴いて、アルバムも全て味わい尽くした人にとっては、確かに既存曲寄せ集めの編集は、不満があるかも知れませんが、それでもオーティスが魂込めて放った唄の素晴らしさが劣るものでは決してありません。
音楽って、本当に素晴らしいもんですよ♪
『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/