2016年04月24日

プリンス ザ・ヴォルト〜オールド・フレンズ・フォー・セール

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プリンス/ザ・ヴォルト〜オールド・フレンズ・フォー・セール

(ワーナー)

またしても気が重いのですが訃報です・・・。

芸術の分野においては「天才は夭折する」というジンクスがありますが、プリンス57歳は若すぎると思うのです。

この人こそ70になっても80になってもアッと驚くような新作を、その他もろもろの話題と共に作り続けてくれるだろうと思っておりました。或いは90を過ぎてもキワドい衣装でステージに立ち続けてくれるものと思っておりました・・・。

プリンスに関して言えば、彼は自らの音楽性の根幹にネオソウルという核をしっかりと持っていて、それを常に熱く妖しくたぎらせていた。

でも「黒人音楽じゃない、ポップスだ!」とカッコ良く主張しつづけてそれをクオリティ面でもセールス面でも叶えた。

常に鮮烈な人だったと思います。

こんな知ったようなことをつらつらと書いておりますが、実はアタシはプリンスを「うぉおすげぇ!」と思ったのは、ハタチも過ぎてからのことです。

最初に知ったのは、確か中学か高校の時に、母親が「今日はプリンスのライヴをテレビでやるから観なきゃ!!」と、キャッキャはしゃいでいた時、そのライヴを一緒にせんべいを食べながら観た時でした。

「この人は凄いのよ、ソウルをここまで進化させた・・・天才よね」

とか

「ビデオに録っとかんと、今度はいつ来日するかわからんから・・・」

とか

もう女学生丸出しでアゲアゲなテンションになっている母親を横目に、ボヘーっとしながらせんべいをかじっていたのでありますが、思春期真っ盛りに観たプリンスのライヴは、これは親子で観るもんじゃないだろうというキワドい、有り体に申し上げれば実にエロい、そしてエグいステージで、それが最初に感じたプリンスの「鮮烈」です。

しかし、そのライヴの中で、おもむろに独自のデザインの、あの白いギターを持ち出して、やおや凄まじいソロを弾き出したプリンスの、それまでのステージでの中性的な振る舞いとは打って変わって男らしい、豪快で痛快に弾きっぷりに、二度目の「鮮烈」を浴びました。

そん時はソウルとかR&BとかファンクとかディスコとかAORとか、あらゆるもんが渾然一体となって、しかしどこか妖しさとか憂いと共に綴られているプリンスの音楽の情報量を、弱い頭が処理できなかったんですね。なのでアタシのその時のプリンス認識は

「おぉ、コイツなんかオカマみたいだけど、ギターは鬼だぞ!」

でした。

んで、ハタチを過ぎて音楽の先輩達とソウルやR&Bの話になった時

「いや、プリンスは正直今までちゃんと聴いたことはなかったんですけど、自分はあのギターはとにかく凄いなぁ・・と」

たどたどしく素直にそのギターの凄さについて口にして、思わず怒られるかと思ったのですが、心優しい先輩達は「それでいいんだ、プリンスは世界で一番過小評価されているギタリストなんだよ」と。

その時はブルース、ジャズときて、そろそろソウルも聴こうかなー?という時期で、色々とかじり聴きした中ではマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」カーティス・メイフィールドのファーストが、ベタだけど凄くしっくり来た。

で、プリンスの初期から80年代のアルバムを聴いてみたら、これが思ってた以上にサックリと、その”カッコ良さ”が理解できて、ようやくですよね。ようやく「うぉお、プリンスってこんなすげー人だったんだ」と気付くに至りました。


訃報に接してから3日、アタシは「プリンスらしいアルバムを一枚、タラーっと聴こう」と決めまして、この3日ほどずっとこれです。


【収録曲】
1.ザ・レスト・オブ・マイ・ライフ
2.イッツ・アバウト・ザット・ウォーク
3.シー・スポーク・トゥ・ミー
4.5 ウィメン
5.ホウェン・ザ・ライツ・ゴー・ダウン
6.マイ・リトル・ピル
7.ゼア・イズ・ロンリー
8.オールド・フレンズ・フォー・セール
9.サラ
10.エクストラオーディナリー

このアルバムは、1999年にリリースされた(丁度アタシが「プリンスすげー」とようやくなった年)アルバムで、色々あって(つうかこの人に関しては”色々”ないほうが珍しい)所属していたワーナーとの契約を解消するためにリリースした未発表/レア・トラックス集なんですが、これがポップあり、セクシャルなR&Bあり、ジャズありで、ヘタをすればそんじょのベスト・アルバムよりも彼の魅力が濃厚に凝縮されとるんです。

朝から晩まで、コレを聴きながらユル〜く追悼してるわけなんですが、いや「どんなに出来がよくてもアルバムのコンセプトからちょっとでも外れる曲はアルバムには入れない」というプリンスの美学も、この”作品ではないレア・トラック集”を聴けば逆説的に染みますね。

「プリンスの名盤」と呼ばれるアルバムの条件は、いくつかあると思いますが、アタシなりにまとめると

・楽曲のバリエーションが豊富で、しかもそれらがキチンと流れに沿って散漫になってない

・繊細な裏声からソウルフルな地声まで、変幻自在な声の魔術師ぶりがたっぷりと味わえる

・鬼のギター・ソロが存分にフィーチャーされている

・自らこなす他の楽器も、あちこちでイイ味を出している

となります。

以上の条件を、このレア・トラックスで全て軽々と満たしておるところが、コノ人のおっそろしいところなんです。

作品の数も凄く多い人なので、まずはこれを聴いて、そこからベストなり名盤「パープル・レイン」とかに行ってもいいし、いや、でも最初期の”一人変態ファンク多重録音”モノもいいなぁ・・・と、とりとめがなくなりそうなので今日はこのへんで。。。





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2016年04月10日

リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ for Collectors Only

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Lee Andrews&The Hearts/For Collectors Only
(Collectables) *3CD

少し前に第四玉手箱さんのブログの記事「長く孤独な夜の彼方に」を読んで、ドゥー・ワップを代表するトップシンガー、リー・アンドルーズの訃報を知り消沈しておりました。その矢先にガトーの訃報があり、何というか、続く時は続くもんですね・・・。

リー・アンドルーズは、その甘く洗練されたテナー・ヴォイスで、一時代を作った人でありました。

「ドゥー・ワップ」といえば、その起源をゴスペルに持つ黒人コーラス音楽ですが、このドゥー・ワップが全盛を極めたのが1950年代。

「全楽器パートを声で奏でる」

という、それまでのどの音楽にもなかった斬新なスタイルと、グループの全員が粋なフォーマルスーツでキメて、立ち居振る舞いも洗練されたパフォーマンスで「ブラック・ミュージック=下品で泥臭いもの」という世間の間違った偏見を払拭し、ドゥー・ワップは「どんどん豊かになってゆくアメリカ」の、ひとつの象徴ともいえる音楽でもありました。

その中でひときわ”洗練”という意味で他を圧倒していたのが、リー・アンドルーズと彼のグループ”ザ・ハーツ”の存在でありました。

彼らのスタイルはバラード。

もちろん、親しみやすいポップでノリの良い曲もやってはおりますが、リー・アンドルーズの甘く深く、そして一切雑味のないシルキー・ヴォイスが、バックの美しいコーラス・ハーモニーを動かして、まるで上質なオーケストラを聴いたみたいな至福の感覚に浸らせてくれる「Long Lonely Nights」「Teardrops」などの幸せな味わいは、他で得られるものではありません。



リー・アンドルーズは、アタシにとっても「これがドゥー・ワップだ」と教えてくれた人でもあります。

何度かこのブログには書きましたが、奄美ではオールディーズを聴くことが、十代の少年少女達にとってはちょっとしたトレンドだった時代があります。

ドゥー・ワップがどういう音楽なのか?よくもわからんクソガキの時に、親父がチェス・レコードのオムニバス盤を家に持ってきて「コレが最高よ」と聴かせてくれたことがあったんですが、その時は、普段アタシが聴いているロックとかとは間逆の上質な「大人ベクトル」な音楽だなぁ・・・としか思わなかったんですが、BGMの枠を超えて耳に染みた声が、リー・アンドルーズのシルキー・ヴァイスでした。

といってもその頃は、別に名前とか覚えるようなアレではなくて、ただ何となく「あぁ、よくわからんけど、この声は綺麗だ・・・」とは思いました。

それから自分でも50'sミュージックを何となく聴くようになって、ちょこちょこ物色したオムニバスに「リー・アンドルーズ・アンド・ザ・ハーツ」という名前が入っているのを見て、曲を聴いて「あの時のアレだ!」と、ちょっと嬉しく思ってたりもしました。

残念ながらその頃は、まだ音楽に優しさよりも刺激が欲しい頃だったので、ドゥー・ワップはとりあえず脇に置いて、ひたすら激しいものに突き進んでいたのですが、戦前ブルースからブラック・ミュージックにハマッて、色々と寄り道をした挙句、ふとナット・キング・コールとかシナトラみたいな「完全に大人のためのジャズ」を聴いていいなと思えるようになって、その時ふと「こ、これってもしかして、あのドゥー・ワップのリー・アンドルーズにめちゃくちゃ影響与えてる!?」と、ビビーンときて、そっからでした。そこからドゥー・ワップのバラードとか、もう凄くグッとくるようになった。





(Disc-1)
1.Maybe You'll Be There
2.Baby Come Back
3.White Cliffs of Dover
4.Much Too Much
5.Bells of St. Mary's
6.Fairest
7.Long Lonely Nights [Demo-Original Lyrics]
8.It's Me
9.Sipping a Cup of Coffee [Unreleased]
10.Show Me the Merengue [Demo Version]
11.Lonely Room
12.Boom [Demo Version]
13.Bluebird of Happiness
14.Show Me the Merengue
15.Just Suppose [Demo Version]
16.Dearest [Unreleased]
17.Girl Around the Corner [Demop]
18.Long Lonely Nights [Demo #2]
19.Aunt Jenny [Unreleased]
20.Lonely Room

(Disc-2)
1.I Miss My Baby [Unreleased]
2.Leona
3.Window Eyes [Unreleased]
4.Try the Impossible [Demo Version]
5.It's Me
6.Just Suppose [Gotham Version]
7.Why Do I? [Demo Version]
8.Strollin' Women [Unreleased
9.Abide by the Golden Rule [Unreleased]
10.Long Lonely Nights
11.Clock
12.Teardrops
13.Girl Around the Corner
14.Try the Impossible
15.Nobody's Home
16.Why Do I?
17.Glad to Be Here
18.Maybe You'll Be There [UA Version]
19.All I Ask Is Love
20.Just Suppose [UA Version]
21.Boom

(Disc-3)
1.I Wonder
2.Baby Come Back [Casino Version]
3.Together Again
4.My Lonely Room
5.I Miss You So
6.I've Got a Right to Cry
7.Night Like Tonight
8.You Gave to Me
9.P.S. I Love You
10.I Cried
11.Cold Gray Dawn
12.All You Can Do
13.Island of Love
14.Quiet as It's Kept
15.Oh My Love
16.Can't Do Without You
17.Never the Less
18.Your Love Gives Me Such a Thrill
19.I've Had It
20.Little Bird


国内盤ではなかなか単独のアルバムは出てなかったのですが、輸入盤ではリー・アンドルーズ&ザ・ハーツ、今も色々と出ております。

中でもこのコレクタブル盤の3枚組は、50年代のヒット曲からレア・トラックまで、よくもここまで集めたなという、質量ともに極上の逸品。

タイロトルは「フォー・コレクターズ・オンリー」とありますがとんでもない、こんな素晴らしい音楽を、一部のマニアだけのもんにしておくのは、そりゃアナタ、音楽に失礼ってもんでしょう。

しかしこの時代の音楽ならではの”粋”って素晴らしいですよね、ポップスって究極的に言えば”ツカミ”の音楽で、聴く毎にそれがどんどん磨り減って飽きるのが多いのに、この時代のドゥー・ワップはその逆で、聴けば聴くほど深い味わいがどんどん染みてきて、もっと聴きたくなります。



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2016年02月17日

サム&デイヴ ホールド・オン

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サム&デイヴ/ホールド・オン
(STAX/ワーナー)


おーいぇー、サム&デイヴだぜーーー!!


”ファンキー・ダイナマイト”はソウル界にたくさーんおるけど、”ダブル・ダイナマイト”はこの人らしかおらんもんね〜♪

てなわけで、本日のオススメはソウルを・・・いや、アメリカを代表する”男性ヴォーカル・デュオ”の超大物、もとい”男性ヴォーカル・デュオっていえばコレでしょ♪”のサム&デイヴでございます。サム&デイヴでございますよみなさん。まず、名前がファンキー、そして高音のキレのあるシャウトを得意とするサムと低音の豊かなハモリを得意とするデイヴが、ノリノリの曲でもバラードでも見事なコール&レスポンスが醸す厚切りのグルーヴで実に聴かせる、60年代アメリカが生んだ、これのデュオは奇跡のひとつだと思います。

サム&デイヴを聴いてひしひしと感じるのは、ブラック・ミュージックが持つ独特の唄心というものの豊かさ。”コール&レンスポンス”という、ブラック・ミュージックの中核を成す”魂の形”を崇高に進化させた
、いわばヴォーカル・スタイルのひとつの到達型でありながら、いつも普段着の飾らないパフォーマンスとサウンド・キャラクターでもって「おぅ、コイツぁゴキゲンだねぇ、唄ってんのは誰だい?」「へへ、コイツぁサム&デイヴさぁ〜。いつだってゴキゲンよ〜♪」と、聴いている若い人らに何か言わせちゃうところ。

とりあえずそのズバ抜けたコール&レスポンスの技量と親しみ易さという、一見すると相対するものを、実に当たり前に併せ持っているサム&デイヴは、アメリカを代表するファンキーな2人組なんです。日本でも鬼のよーにベスト・アルバムが出まくっておるのですが

しかーーーーし!皆さん、サム&デイヴをベスト盤だけで済ませちゃうのはもったいないですぜ、オリジナル・アルバムを聴けば聴くほど、この人たちの底知れぬソウルのダシが、もうたまんなくグッツグッツゲッタゲッタと耳にも心にも、そして腰にも染み込みます。


おーいぇ!あーはー!







【収録曲】
1.ホールド・オン
2.愛が欲しいなら
3.アイ・テイク・ホワット・アイ・ウォント (MONO)
4.イーズ・ミー
5.アイ・ガット・エヴリシング・アイ・ニード
6.つらい想いをさせるな
7.イッツ・ア・ワンダー
8.ドント・ヘルプ・ミー・アウト
9.ジャスト・ミー
10.ユー・ガット・イット・メイド
11.ユー・ドント・ノウ・ライク・アイ・ノウ
12.ブレイム・ミー


ハイぃ・・・というわけでアタシのオススメは、もうね、サム&デイヴとか名前も知らん時にカワイイ亀さんに惚れて買いましたこの、ホールド・オン・アイム・カメ、違った「ホールド・オン・アイム・カミン」。サム&デイヴの2枚目のアルバムでありながら、サザン・ソウルの総本山STAXと契約してリリースした初のアルバムですので、実質デビュー作と思っても良いでしょう。

のっけから重心の低いうねりながら跳ねるサザン・フィーリングなサウンドの上で炸裂する息ピッタリのヴォーカルがたまんないタイトル曲から、やや辛口の歯切れのいいバラードA、そして60年代ソウルといえばこういうサクサクとした8ビートのタテノリがたまらんBと、立て続けに「ミディアム、バラード、アップ」で終盤まで一気にダレることなく聴かせます。

特にバラードではサムのシャウトがカコーンと伸びて行くのに、デイヴがすごくやるせない合いの手を入れるんですけど、やり取りしているうちに2人とも段々アツくなっていって、いつの間にかハーモニーそのものが強烈なリードみたいになっているのがもうたまらんのですよ。



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2016年01月26日

グウェン・マックレイ・ファースト

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グウェン・マックレイ・ファースト
(Parlophone/ワーナー)


何にせよこのジャケ、この顔です。

ギラギラした鋭い眼光に情念そのままに爆発したヘアー・スタイル、男による媚なんぞ微塵も感じさせない「男?食べ物?」ぐらいのムンムンに肉食系の香り(汗と化粧とヘアスプレーが濃厚に入り混じったアレ)を放つこの顔、このジャケ写。ラメ入りドレス、金ピカマイク。

そうそう、やっぱり「ソウル・シンガー」と名乗るならば、見た目でこれぐらいのインパクトを放って欲しいものです。どうですか?ソウルとか全然知らない人にこのジャケを見せても、100中99は「濃い!」「ワイルド!」という声が返ってくるでしょう?

はい、はい、アタシもソウルとか全然知らなかった時に「この顔」にヤラレたクチです。

ブルースが好きでジャズにハマッて「そうだ、ここまで来たらソウルやR&Bにも手ェ出してみよう。えぇと、ソウルつったら・・・まぁあんま知らんからとりあえずジャケ買いをしてみよう。ジャケ買いをするんならば、せっかくだから中途半端にカッコイイやつとかオシャレなのではなくて、もう見た感じからキョーレツに”匂う”ブツを買ってみよう」と。

えぇ、完全に衝動だったんですが、そん時「この顔」の主、グウェン・マックレイ嬢のレコードと出会って即買いでした。




グウェン・マックレー [ソウル名盤980円]

【収録曲】
1.ムーヴ・ミー・ベイビー
2.ユア・ラヴ・イズ・ワース・ザン・ア・コールド・ラヴ
3.ヒー・キープス・サムシング・グルーヴィー・ゴーイン・オン
4.レット・ゼム・トーク
5.フォー・ユア・ラヴ (MONO)
6.イッツ・ワース・ザ・ハート
7.90パーセント・オブ・ミー・イズ・ユー
8.イット・キープス・オン・レイニング
9.ヒー・ドント・エヴァー・ルーズ・ヒズ・グルーヴ

さぁ、どんな音が出てくるか?きっとジャケットの通りのゴリゴリでネバネバなズ太いファンク・サウンドに乗って、ティナ・ターナーばりのシャウトが全編に渡って猛烈に展開されて、オレの耳なんざ2分でノックアウトしてしまうのでは・・・。

と、思ったら、このアルバム、ファンクなダシとグウェン嬢のヴォーカルもパンチは確かに効いているものの、時に激しくダンスを煽るかと思ったら、味わい深いしっとりとした色気も感じさせるバラードで聴かせるアルバムでありました。

ワン・コードのミディアム・アッパーなファンクの@、ライナノーツには幼い頃からゴスペルで鍛えたとあるそのハスキーな声がガツーンと来て、続いてよりメロッディアスなAと、ノリノリなファンクは前半ここまで。

この人のハスキー・ヴォイスの真骨頂が聴けるのはB以降、BCDのバラード3連発です。

そこはかとなくブルージーな、オルガンやストリングスも切ないバックを従えての、堂々&切々たる女心の唄いっぷりには、正直エタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンのバラードを最初に聴いた時と同じ感動を覚えました。この人、パンチの効いた野太い唄い方と、持ち前のハスキーな声をしっとりと”語らせる”ことも出来る。しかも声に雑味の成分が程よく少ない、見た目のインパクトだけじゃなく、ホンモノの実力で聴かせるシンガーであります。

すっかりこのアルバムが気に入って、ライナノーツを読んだり、ソウルやR%Bの本などで「Gwen McCre」という名前を調べて「マイアミ・ソウル」なる素晴らしいジャンルのことも知るに至りました。

1960年代、早いうちから活躍し、このアルバムでLPデビューした頃にはすっかり「マイアミ・ソウルを代表する歌姫」として知られていたグウェン嬢、この後のアルバムでは「綺麗に写った(失礼!)」写真も使っておりますが、このアルバムはまず「ジャケ買い」「顔買い」で売れるべきでしょう。




ちなみに裏ジャケもなかなか♪

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2015年11月11日

アラン・トゥーサン サザン・ナイツ

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アラン・トゥーサン/サザン・ナイツ
(ワーナー)

11月10日、ニューオリンズ・ソウル/R&B界の重鎮にして、70年代以降のアメリカン・ミュージックの”モダン化”に大きく貢献した、ジャンルの枠を超えた本当の大物、アラン・トゥーサンが亡くなりました。享年77歳。

ブラック・ミュージックの歴史を語れる生き証人がまた一人この世を去ってゆく・・・淋しいですね。

今週は「エリック・ドルフィー祭り」にしようと思ったのですが、追悼の意を込めて、アラン・トゥーサンを皆様にご紹介したいと思います。

アラン・トゥーサンは、1938年ニューオーリンズ生まれのピアニスト/シンガー・ソングライター/プロデューサーです。

7歳からピアノを弾き、1950年代には地元ニューオリンズで活躍していた盲目の凄腕ギタリスト、スヌークス・イーグリーンのバックでピアノを弾き、その時にファッツ・ドミノ、デイヴ・バーソロミューといった、地元ニューオーリンズから全国的な人気を博していたミュージシャン達に才能を見出され、セッションマンとして引っ張りだこに。

元々ピアニストではありますが、若い頃から作/編曲に非凡な才能を発揮しまくったアランは、1958年、リー・アレンのヒット曲「The Wild Sound of New Orleans」のアレンジを皮切りに「裏方デビュー」を果たします(同時にRCAからソロ・アルバムをリリースしておりますが、コレが何と全曲インストのピアノ・ブブルース・アルバム。これについてはまたいずれかの日に・・・)。

デビューした1950年代後半から60年代は、ソロ・アーティストとしてのヒットは生まずに、ひたすら作曲やアレンジ、そしてレーベル経営などで手堅くガッツリと音楽していたというところが「とにかく一発デカいの当てよう!」という考えだった同世代の他のミュージシャン達とは違うし、このことが後に70年代以降の彼の大成功に繋がるんですね。

ちなみにアランは、その間にミーターズを中心とする「ニューオーリンズ・ファンク」の精鋭達を、自らのレーベルで育成しております。

彼がようやくアーティストとして、大々的に表舞台に立つようになったのは1970年代。

既に40代の脂の乗りきった時、相変わらず彼はプロデューサーとして大忙しでした。

ドクター・ジョンやザ・バンド、アルバート・キング、ジェイムス・コットンといった、ブルースからロックまで幅広い人たちのアルバムをプロデュースしたり、ポール・マッカートニーやエルヴィス・コステロがファンを公言したりして「ニューオーリンズには凄い大物がいるらしい」という噂が音楽界全体を席捲したそのタイミングで、アランはようやく本腰を入れた自分のアルバムを世に出しました。

彼の70年代の作品は、その「ブルース・ピアニスト」としてデビューして、華やかなジューク・ボックス・ヒットを量産したニュー・オーリンズR&Bの世界に長年居た経歴からは想像も出来ないほど洗練された「時代の先を行くサウンド」だったのです。

これには世界が驚愕しました。

まずは代表作ともいえる1975年の「サザン・ナイツ」を聴きましょう。

これ、普通に「ポップスだよ」と言っても、知らない人は全然普通に「いや、カッコイイね♪」と、すんなり受け入れることが出来ると思います。

とにかく後の「AOR」の原型と言ってもいい、何とも都会的で洗練に洗練を幾重にも重ねたような、早春の心地良さの中に人生の深みが滲む、深くたおやかな名盤です。



【収録曲】
1.ラスト・トレイン
2.ワールドワイド
3.バック・イン・ベイビーズ・アームズ
4.カントリー・ジョン
5.ベイシック・レイディ
6.サザン・ナイツ
7.ユー・ウィル・ノット・ルーズ
8.あの子に何をして欲しいの
9.ホェン・ザ・パーティーズ・オーヴァー
10.クルエル・ウェイ・トゥー・ゴー・ダウン

オープニングから、彼独特のポップ感覚が爽やかにスパークしてて、とっても心地良いんですよね。

Aの軽快な、あくまでメロウに跳ねるファンク・ビートのカッコ良さ、タイトル曲Eの清涼感タップリのエコーがかかった声とピアノ、ちょっとオリエンタル風な曲調共に、この人が持つ独特の浮遊感と哀感を効果的に増幅させて、うん、とてもいいです。

「哀愁」という意味では、続くFGもクるナンバーで、個人的にはこの中盤の「切なさたたみかける流れ」このアルバムのクライマックスだと思います、はい。

バックは彼が手塩にかけて育てたミーターズのメンバーを中心にした、ニューオーリンズ・ファンク人脈が顔を揃えておりますが、ブラックなフィーリングは根っこ中心にあくまでさりげなく置いてます、コレがいいんです。

「基本的にこの音楽はポップスなんだ。誰が聴いてもどんなシチュエーションで聴いても”あぁ、この音楽は心地良いね”と言ってもらえるような、そしていつまで経っても色あせない本当の意味でのエバーグリーンな音楽さ」

と、アランの冷静にプロデューサーとして音楽シーンを20年以上見てきた自信と確信の声が、ほわほわと聞こえてくるようであります。



個人的には「あぁ〜、ポップで気持ちえぇなぁ〜♪」と思いつつも、Bのイントロで聴ける見事にグルーヴィーなピアノなどから、彼の中に流れるプロフェッサー・ロングヘア直系の、生粋のニューオリンズ・ブルースマンとしての”血”をしみじみと感じながら、ウットリと聴き入るのがアタシの「アラン・トゥーサンを聴くたのしみ」です。

2000年代に入ってからは、ニューオーリンズに甚大な被害をもたらしたハリケーン「カトリーヌ」で被災しつつも、エルヴィス・コステロと共演した上質な”大人のポップ・アルバム”で健在ぶりを発揮したり、全曲ピアノ弾き語りライヴをリリースしたり「まだまだ色気のかたまりだな〜」と思っていただけに、コンサート・ツアー中の突然の死去は残念です。

謹んで冥福を祈りながら、今宵は彼が残した上質な「ブラック・ポップ・ミュージック」に酔いしれたいと思います。



近年の”弾き語りライヴ”から「Southan Night」郷愁タップリでいいですね。。。




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