2015年10月27日

ベリー・ベスト・オブ・ルーファス・トーマス

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Very Best of Lufus Thomas
(Stax)

何かで「一番○○なもの」を定義するというのは実に難しいものです。

が、もしも誰かに

「世界一ファンキーな親父を挙げよ」

と言われたら私は躊躇なく

「それはルーファス・トーマスだ」

と答えるでしょう。

ファンクの帝王が俺達のジェイムス・ブラウンであることは揺ぎ無い事実であり、で、ルーファス・トーマスが狭義で言うところの「ファンク」というジャンルに収まるか?つったらそうれどころではないんだけれども、「ルーファス・トーマスが世界一ファンキーな親父」であることは、これはもうそれ以上に動かし難い事実なんです。

何と言っても「50を過ぎてからブレイク」ってのがいいですよね。

1910年代生まれのルーファスは、旅芸人の家庭で生まれ育ち、その後メンフィスのラジオ局でB.B.キングの後任としてブルースやR&Bを紹介する番組の人気DJとして、いわゆる”ローカル・シーンの立役者”となりました。

その時既に彼は40代過ぎのオッサンだったんですけど

「イェ〜イみんな聞いてるかい?オレはいつまで経っても十代の、気持ちまでつゆだくの若者さ。さぁ、オレのガチョウをどうしてくれよう。オレたちゃいつだって明るく愉快、でもカネがない。ハッハッハ、オレがルーファス!さぁ、わいわいはしゃごうぜ♪」

というゴッキゲンなMCと、幼い頃からステージのコントと歌で鍛え上げた、伸びのある声と軽妙なマシンガントークが若者の間で大人気。

やがて誰もが知る「ゴッキゲンなガチョウ親父・ルーファス」として、南部一帯の若者の間で大人気になります。

ルーファスがDJをしていた頃(1950年代後半)の流行は、洗練された都会的なソウル・ミュージックでしたが、ルーファスはいつだって、どんな曲を紹介する時だって南部魂を忘れない「土臭い笑い」で、古いスタイルのR&Bやブルースも

「ちょっと待ってくれ、コイツは古いがいい音楽なんだ。なぁブラザー、女を口説く時にコイツをかけてフラレてもこの曲のせいじゃない、愛が足りなかったのさ。苦情は受け付けないぜぇ”ルーファス、次どういった曲で口説けばいいんだ?”って相談にならいつでも乗るぜぇ」

と、良質かつ泥臭い”都会の流行とはまた違ったソウル・ミュージック”を、どんどんプレイして浸透させています。

その最大の成果が”サザン・ソウル”の代名詞ともなった「スタックス・レコード」のブレイクでしょう。

実はこのレーベル、当初はテネシーやケンタッキーの白人層向けにカントリーやロカビリーのレコードを作っていたのですが、南部でジワジワ盛り上がる「サザン・ソウル・ミュージックを!」という大衆の熱気に押されるような形で、R&B、ソウルをレコーディングしてリリースすることになるんです。

この時「ちょいと親子でデュエットやらないか?」という誘いがルーファスのところにきて

「あぁいいよ」

と、引き受けたらしいんですが、何と”ルーファス親子”の”子”の方の、そう、ルーファスの娘、カーラ・トーマスの「Cause I Love You」が大ヒット、こん時からルーファスは「人気DJ」から「カーラのおやっさん」として脚光を浴びることになります。

人前に出る時のルーファスは「ずんぐりむっくりの体格に見事に禿げ上がった頭頂部とお茶目な顔」という、「おっさんとしては完璧」と言えるルックスをよりワイルドに演出するために「ド派手なジャケットに短パン、ハイソックス」という姿でキメます。

この時既に50を過ぎていたんですが、このルックスと、幼少時代から培ってきた”客の心を盛り上げる巧みな話術とパフォーマンス”に「いや、実はおっさん物凄い歌うまいがな!」という評判が評判を呼び、ルーファスは何と、1970年のファンク〜ディスコ・ブーム到来その幕開けを告げた名曲「Do the Funky Chicken」で、一躍全世界の人気者になります。

その後も一発屋で終わることなく、2001年に亡くなるまで次々とヒットを放ち、ルーファスは国民的な人気者であり続けました。


ブラック・ミュージックのファンの間では「ワッツタックス」での「観客柵超えの大ファンク祭」はもう伝説でありましょう





アタシも最初観た時「うわぁ、バーケイズ従えて出てきたこのオッサン、何者なんだろう?」と思ってましたが、その圧倒的なステージ展開にもう神業を感じました。

「うぉぉ!おっさんめちゃくちゃファンキー!!」

の、一言に尽きますね♪





1.The Dog - Single Version
2.Walking The Dog (Live @ Pj's)
3.Can Your Monkey Do The Dog
4.Somebody Stole My Dog-Single Version
5.Jump Back
6.Little Sally Walker-Single Version
7.Sister's Got A Boyfriend-Single Version
8.Sophisticated Sissy
9.Memphis Train - Single Version
10.Funky Mississippi
11.Do The Funky Chicken
12.Sixty Minute Man (Pt.2)
13.The Preacher And The Bear
14.(Do The) Push And Pull (Part.1)
15.The World Is Round
16.The Breakdown (Part.1)
17.Do The Funky Penguin (Part.1)
18.2006/3/8
19.Boogie Ain't Nuttin' (But Gettin' Down) (Part.1)
20.Do The Double Bump



さて「50を過ぎて大ブレイクした”スーパーおっさん”」でありますルーファスですが、家庭でも実にいいお父さんでありまして、十代でサザン・ソウルの歌姫として大人気だった愛娘カーラに「ちゃんと学校は出るんだぞ、この業界は一寸先は闇だからな」と、アドバイスしつつ、しっかりと大学まで出しているんです。

ステージの上でも愛の深さもファンキーなルーファス・トーマスは、おっさん達の希望の星です、あぁ、アタシもこういうおっさんになりたいなぁ。。。



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2015年10月10日

ベスト・オブ・ルイ・ジョーダン

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THE BEST OF LOIUS JORDAN(MCA)


およそブラック・ミュージックを起源とするアメリカの大衆音楽の源流を探ると必ず出てくる名前がルイ・ジョーダンであります。

B.B.キングはホーン・セクションを従えたモダンなバンド・スタイルを確立するためにルイ・ジョーダンをお手本にしたと言うし、チャック・ベリーは「ジョニーBグッド」他、後にロックンロール・クラシックスと言われる代表曲のリフをルイ・ジョーダンのバンドのホーン・リフからアイディアを得たらしいし、かと思えばエラ・フィッツジェラルドとはデビュー時に同じ楽団(チック・ウェブ・オーケストラ)に所属していて、互いに影響を与え合ってたとか、ロカビリーの大スター、ビル・ヘイリーが代表曲の「Caldonia」をいち早くカヴァーして広く白人大衆にもそのカッコ良さを知らしめたり、かと思えばまだティーンだった頃のジェイムス・ブラウンがルイ・ジョーダンの曲に合わせてダンスしまくったとか・・・。

とにかくもう、ジャズ、ブルース、R&B、ロックンロールと、とにかくもうおよそ戦後アメリカの、ブラック・ミュージックを起源とするポピュラー音楽の根底には必ず大きな影響を与えているグレイト中のグレイト、がルイ・ジョーダン。

ざっくりと言えば1940年代「R&Bの始祖」と言われ、そのキャッチーなメロディのノリの良さの中にふんだんに取り入れたユーモアのエッセンスで、ヒットチャートを賑わせた、天性のお祭り男

音楽性はガッツリ「ゴキゲン」です。

うん、専門的に言えば「ジャンプ・ブルースのどうのこうの」とか「ビッグ・バンドをコンパクトなスモール・コンボにしたことでより軽快なステージ・パフォーマンスのスタイルを作り上げた」とか、まぁ色々あるんですが、それは置いといて、ルイ・ジョーダン聴いたことない人はまずユーチューブに飛ぶ前に「ルイ・ジョーダン」で画像検索すればよろしい。

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大体この顔が出てきます。

想像力のたくましい人は、この”キメ顔”だけでどんな音楽をやっているか、想像できますよね(^^)


はい、この”顔”の通りの音楽やってます。

生意気にも十代でブルースに何となく目覚めたアタシ、好きなブルースマンとか、ロックンロールのアーティストのライナノーツとか読んでたら、大体7割ぐらいの確立で「ルイ・ジョーダン」という名前に当たってたんですが、当時は今みたいにインターネットもないから「さて、このルイ・ジョーダンという人は相当大物っぽいんだが、何をやってる人なんだろう」と、ずっと想像していたんですよねー。

ルイの音楽は、しつこいようですが、ジャズとブルースと、ラテンとか色んな音楽を、コミカルな要素でミクスチャーしたものです。

今、彼の音楽を聴いても

「いや、コレはフツーにカッコいいジャンピン・ジャイヴじゃん!」

「すげぇゴキゲンなバンド・ブルース」

と思えるかも知れませんよね。

でもね、それは、ルイがやった「画期的なミクスチャー」が、その後彼の影響を受けた人たちによって当たり前に継承されたスタイルが、ロックやジャズやソウル・ミュージックの基本的なものになっていったからで、ルイが口火を切らなければ、音楽の進化はもしかして20年ぐらい遅れておったかも、です。











【収録曲】
1.Choo Choo Ch'boogie
2.Let The Good Times Roll
3.Ain't Nobody Here But Us Chickens
4.Saturday Night Fish Fry
5.Beware
6.Caldonia
7.Knock Me A Kiss
8.Run Joe
9.School Days (When We Were Kids)
10.Blue Light Boogie
11.Five Guys Named Moe
12.What's The Use Of Getting Sober
13.Buzz Me Blues
14.Beans And Corn Bread
15.Don't Let The Sun Catch You Cryin'
16.Somebody Done Changed The Lock On My Door
17.Barnyard Boogie
18.Early in The Mornin'
19.I Want You To Be My Baby
20.Nobody Knows You When You Are Down And Out


まぁその、「ルイ・ジョーダンは偉大でグレイトだぜ」ということしか今日は書きませんでしたが、ウザいぐらいひつこくそんなこと書いても「百聞は一見にしかず」ですので、ぜひとも「R&Bの始祖」「ロックンロールの元祖」ルイさんの素晴らしさを直に耳にして思い知らなくていいので「うぉう、いぇい♪」と言いながら楽しんでくださいな。

アタシが持っているこのベスト・アルバムは「ブルース・レコード・ガイドブック」にも載ってたし、CD化された1990年代前半から、一回も消えることなくカタログに残り続けている(てことはずーっと売れ続けてるんだろうか、恐るべし)という凄まじいブツです。

楽曲も、彼のキャリアの初期(1938年)から全盛期40年代を挟んで1955年の楽曲から、ヒット曲、そして選曲者の素晴らしいセンスで選んだ、本当に珠玉の名曲ばかりが入った全20曲入り。

家で皿洗いながら腰をフリフリして聴くのもいいんですが、どの曲もしみったれたこと一切ナシなので、ドライブにも最適です。

G「Run Joe」のコーラスは「レン・ジョー♪」て言ってるんですが、コレが「恋情」に聞こえたらアナタも上級者です。みんなで聴こう♪




代表曲のひとつ「Caldona」です。うん、ゴッキゲン♪


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2015年10月05日

エタ・ジェイムス アット・ラスト

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エタ・ジェイムス/アット・ラスト
(Cadet/ユニバーサル)


やっぱり何といっても元祖”ディーヴァ”といえばエタ・ジェイムスだと思います。

あぁ、いきなりですいません。

アタシはブルース経由でソウルを知りました。

「戦前ブルースしか聴けない病」を、耳に「ブルースなら何でも」の絨毯爆撃で克服し、ライトニン・ホプキンスとかエルモア・ジェイムスとかもちくしょーカッコイイなー!と思ってたある日

「そういえば女のブルース・シンガーでカッコイイ人っているのかしら。今んとこオレが知ってるのはベッシー・スミスとマ・レイニーとメンフィス・ミニーぐらいだが、そういえば戦後ブルースの女性シンガーって知らんよなー」

と、思ってた矢先、ブルース本を買ったんです。

この本は、ブラインド・レモン・ジェファソンからはじまって、ロバート・ジョンソン、B.B.キング、Tボーン・ウォーカーなどなど、ブルースの錚々たるメンツのドキュメンタリーを渾身の筆力でまとめた素晴らしい本だったんですが、コレにベッシー・スミスと共に”女性ブルース・シンガー”として掲載されていたのがエタ・ジェイムス。

正確にいえばエタは「ブルース・シンガー」というよりも、ソウル・シンガーの草分けで、ブルース・フィーリングたっぷりに、R&Bやジャズ、ポップスも唄うんですが、その本を「ふむふむ」と読んでそのまんま近所の中古レコード屋さんに直行して購入したのが、エタ・ジェイムスの2枚組ベストでした。

何でエタを聴こうという気になったのかといえば、彼女がシカゴ・ブルースの名門「チェス・レコード」からデビューして、代表作がチェス(傘下の「アーゴ」というレーベルでしたが)に集中しているということからです。

そのベスト盤の中に収録されていた楽曲の中で「うはぁ、すげぇ!」とノックアウトされたのが、ジミー・リードのコテコテブルース「ベイビー・ホワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ」のライヴと、ストリングス入りの美しいバラード曲「アット・ラスト」だったんです。

方や観客のテンションが異常で、バックもゴリゴリのブルースで「パンチ」というより他ないエタさんのキョーレツなヴォーカルが炸裂してて、方やシルクのような洗練されたバックの上を、情感豊かに繊細に物語を紡いで行くようなヴォーカルが圧巻で、でも「すげぇ、コノ人バックとか曲調が全然違っても、ちゃんと唄い分け出来てるのに芯が一切ブレてない・・・」と驚愕しました。

2枚組ベストはレコードで、毎日のように聴きまくりましたが、やっぱりそうなってくるとオリジナル・アルバムがどうしても欲しくなりますよね。

で、最初に買ったのは、火傷する程アツいブルース・スピリッツが炸裂している「ロック・ザ・ハウス」これはもうどんな風に言われようとブルース・アルバムであり、アタシの大好きな「アブナい香り」もプンプンします。

で、「次はエタのバラードが聴きたい。すこぶるつきの、洗練されたストリングスバンドをバックにしたやつ・・・」と思って購入したのが「アット・ラスト」




【収録曲】
1.エニシング・トゥ・セイ・ユーアー・マイ
2.マイ・ディアレスト・ダーリング
3.トラスト・イン・ミー
4.サンデイ・カインド・オブ・ラヴ
5.タフ・メアリー
6.アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー 
7.アット・ラスト
8.オール・アイ・クッド・ドゥ・ワズ・クライ
9.ストーミー・ウェザー
10.ガールズ・オブ・マイ・ドリームス(レンダード・アズ・ボーイ・オブ・マイドリーム)


コレはもう本当に凄いんですよね。

バックはガッツリストリングス(小編成の管弦楽団)がガッツリ最初から最後までバックアップしていて、収録曲のほとんどがバラード。

タイトル曲でもあり、彼女の代表曲のひとつでもあるFはもちろん言うまでもなく名唱ですが、それ以前にもうね@ABCと、エタの、いや、初期ソウルを代表するぐらいのクオリティと言ってもいいバラード名曲が、聴く人の心をガッシリ捉えて離しません。

エタさんの歌声は、何て言えばいいんでしょうかねぇ・・・。パワフルといえば確かにズバ抜けてパワフルではあるんですが、その凄まじい出力を生み出している感情の部分が、もうとてもとても繊細で美しいもので出来てるんだと思います。

英語の歌詞だから、聴いてるだけじゃどんなこと唄ってるか分からなかったけれど、エタさんの声で唄われると、悲しい女の恋の物語が、映像として流れてるような、そんな気持ちになっちゃうんですよね。女心、分からない男子のかなり上位に入るはずのアタシにも「これが女心よ、分かる?坊や」と、エタさんは唄で実感させてくれるんですよねぇ・・・。

洗練された雰囲気、「アット・ラスト」というタイトルから、購入当初は「エタさんがチェスに残した最後のアルバムか・・・感慨深いな・・・」とか妙にしんみり聴いてましたが、後に「いや、これはデビュー・アルバムだよ。エタの歌声にとことん惚れ込んだレナード・チェスが”このコは絶対売れるから、デビュー作からストリングス付きの豪華なバンドで演らせよう”って意気込んで作ったアルバムだよ」ということを知って、改めて「デビュー作でコレかよ・・・」と絶句しました。だって凄いクオリティなんですもん、唄もバックも・・・。

ほとんどがバラード〜ミディアム・テンポの曲の中で、ちょいと泥臭いDEがまたいいアクセントです。

特にチェスの先輩マディ・ウォーターズの「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」なEは、御大も「おぉ、やるじゃねぇかあのコ」と恐らくは言ったであろうコブシとパンチ(あ、また言っちゃった)の効いたお見事なブルース・チューン。

多分エタさんがこのアルバムでデビューしなかったら、その後のアレサ・フランクリンもジャニス・ジョプリンもなかったんだろうなぁ・・・と、今ひしひしと考えます。そう、後のソウルとロック、両方にエタ・ジェイムスが与えた影響というのは、多分アタシが思ってるよりずっとデカいんじゃないかと思います。

オマケ↓


映画「キャデラック・レコード」でのビヨンセの迫真の名演技。




「At Last」コチラはご本人によるライヴ。持病がかなり悪化した晩年の映像ですが、声は全然衰えておりません。






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2015年06月22日

アレサ・フランクリン 貴方だけを愛して+3

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アレサ・フランクリン 貴方だけを愛して+3

(Atlantic/ワーナー)

大体アタシは根が暗〜いネガティヴな人間ですから「ポジティヴ」という言葉が苦手です。

「前を向いて」

「自分を信じて」

「ありのままで」

と言われると、妙な鳥肌がぞぞぞぞわーと立ったりします。

あ、いえ、これは生理的な問題であって「好き/嫌い」の問題じゃあありません。あくまでアタシの体質とか性格のアレですんで・・・。


しかし、そんなアタシでも「このポジティヴなら信じてもいい」

と思うものがあります。

はい、それがソウル・ミュージックの持つポジティヴ・パワーです。

なかんづく”クイーン・オブ・ソウル”アレサ・フランクリンの力強くも、どこまでも深い慈愛に満ちた歌声からビンビン伝わってくるそれは、無条件で「気持ちを委ねてもいい・・・」と、なってしまうものであります。

最初にアレサの歌声を聴いたのが、映画「ブルース・ブラザーズ」でした。

この映画は、ブルースやR&B、ソウルの超の付くほどの大物がしれっと脇役として出演していて(レイ・チャールズが楽器屋の親父、俺達のジェイムス・ブラウンが牧師、ジョン・リー・フッカーがストリートで唄うブルースマン役・・・てな感じ)、これはもうブラック・ミュージック好きにはたまらん映画なんですけどね。

えぇと、確か主役2人がムショから出所して、バンドを再結成するために、今はバンドを辞めてファースト・フード店を営んでいたかつての仲間のギタリスト(それもマット・ギター・マーフィー、わぉ!)に「またバンドやろうぜ」て誘うんですけど、それに腹を立てた嫁さんがいきなり「Think!(アンタよく考えなさいよ!)」と、物凄いパワフルな声で唄うんですが、まずコレにヤラレた

「あのブルース・ブラザーズに出てたマット・ギター・マーフィーの奥さん役のおばちゃんがメチャクチャカッコイイ!!誰よ!?」と、親父に訊いたら

「そりゃあカッコイイだろう、アレサ・フランクリンだから当たり前じゃー」

と、カウンターを喰らったんですが、それから色々調べて「あのおばちゃんは女性ソウルシンガーの中でも最高レベルに凄い人」と知り、納得しました。

どのアルバムが有名か?とか、ロクに知りもせんで最初に買ったのは、実はソウルの作品じゃなくてレコード2枚組のゴスペル・アルバムだったんですけどね。それに「うはぁ!これこそポジティヴだ!!」と、衝撃を受けて「ちゃんとアレサを聴こう」と思って買ったのがこのアルバム。

アレサって当たり前だけど唄すっげぇ上手い。

まず声量がハンパなくて、パンチも効いてる。

もちろんブルース・フィーリングも天性のものを持っているんだけど、その上にやはり一味洗練を加えたグルーヴも持っている。

プラス繊細な女心みたいなものも表現できる、もうシンガーとしては何も言うことないぐらい完璧なんですよね。

10歳前後の頃から、教会のリード・シンガーとして鳴らし、その才能に惚れ込んで「君、ゴスペルもいいけど、ちょっと本格的にR&Bのシンガーとしてデビューしてみないか?」と、何と19歳にして大手コロムビア・レコードから声がかかります。

が、コロムビア時代はアレサの才気の塊のような凄いヴォーカリズムを上手に活かせるプロデューサーともバックミュージシャン達とも出会えず、アレサはヒットに恵まれないまま契約を打ち切られます。

ところが「いや、アレサは凄ぇよ、本気出したらあんなもんじゃねぇよ」

とは、彼女の歌声に直に接した人間なら誰もが知るところでありまして、それから10年近く後、アレサは当時オーティス・レディングやレイ・チャールズといった、錚々たるR&Bのスター達がヒットを連発しまくっていたアトランティック・レコードと運命の出会いを果たします。





【収録曲】
1.リスペクト
2.涙に濡れて
3.貴方だけを愛して
4.ソウル・セレナーデ
5.夢をさまさないで
6.ベイビー、ベイビー、ベイビー
7.ドクター・フィールグッド
8.グッド・タイムズ
9.恋のおしえ
10.セイヴ・ミー
11.ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム
12.リスペクト (モノ・ヴァージョン)
13.貴方だけを愛して (モノ・ヴァージョン)
14.恋のおしえ (モノ・ヴァージョン)


はい、1967年作の、この「あなただけを愛して(I Never Loved A Man The Way I Love You)」は、「ソウル・クイーン・アレサ」の記念すべき第一歩が、ノリノリのグルーヴィーな曲アリ、グッときまくるバラードありで見事刻まれたアトランティックでのデビュー作であります。

冒頭の「リスペクト」は、先輩であるオーティス・レディングの代表曲のひとつでもある、グイングインに盛り上がるムディアム・ファンキーの曲調に、アレサの力強い歌声が伸び伸びと聴く人の心を打ち、シングルカットされるやたちまち元祖オーティスの記録を塗り替え、オーティスをして「あの娘は凄いね、完全に持ってかれちゃったヨ」と言わしめたほどの曲です。

アレサのアルバムは、これ以降「100%ソウル」で、駄作は一枚もないし、このアルバムも見事なぐらい捨て曲というものがない。バラードの「恋の教え」なんか、彼女のゴスペルで鍛えた声の”伸び”に載せる感情の切なさがもう感涙だったりするんですが、アルバムを延々リピートで聴いてもひとつも飽きないし、聴き込む毎に心がグングン元気になります。

あれ?俺にもこんなポジティヴな感情あったんだ(笑)

と、アレサ聴くといつも思います。

パンチではエタ・ジェイムス、しなやかさの中にある女性的な繊細さではバーバラ・リン推しのアタアシですが、やっぱり女性ソウルときたら「アレサ基準」で聴いてしまいます。



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2015年05月29日

ヒア・イズ・バーバラ・リン

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バーバラ・リン ヒア・イズ・バーバラ・リン
(Atlantic/ワーナー)

バーバラ・リンというソウル・シンガーのことを知ったのは、実はつい数年前です。

「テキサス出身のソウル・シンガーで、女だてらにストラトを弾き、しかもサウスポー」

という情報をジャケット写真で得て

「これはすこぶる濃いディープ・ソウルを唄うシンガーで、ギターもバリバリに弾きまくってるに違いない!」

と、勝手に脳内変換して勢いで買って聴いたのがこの、1968年リリースのアトランティック名盤「ヒア・イズ・バーバラ・リン」。


聴いてみて、その音楽性のな(失礼!)なスマートさ、とにかくもう「気高い歌姫」という形容がぴったりの彼女の唄いっぷり、そしてあくまでさり気ない、ストラトキャスターの堅実なバッキングの腕の良さに、良い意味で印象がひっくり返りました。

1960年代といえば、とにかくソウル・ミュージックの全盛期で、男性シンガーも女性シンガーも「一人一ジャンル」ぐらいに強烈な個性があって、知れば知るほど、そして、聴けば聴く程味わい深いフィーリングを持った人が多い中、テキサスという、ブルースの本場で生まれ、もちろんブルースやゴスペルに影響を受けつつも、エルヴィス・プレスリーに憧れて「アタシもギター弾きたいわ!」と思って、ステージではあえてパンツルック(女性のステージ衣装はドレスと決まっていた時代)でバンドの花形シンガーとしてそのキャリアをスタートさせた彼女、とにかく繊細さと芯の強さの両方を併せ持った稀有なシンガーです。

私はこの時代のソウルに関しては「カッコイイナチュラル音楽」だと思っております。

そう考えてバーバラ・リンを聴くと「あ、この人はすっごいカッコイイナチュラル・ウーマンだな」て思います。

根っこにあるのはディープ・サウスのブルース・フィーリングで、歌唱が盛り上がってくるとその根っこをチラッと見せてくれるんですが、基本的に常温の理知があり、フレーズの隅々までが実にエレガントで、バラードも、この時代のサザン・ソウル特有の「もちっとしたグルーヴィー・ナンバー」も、バーバラは実に自然に聴かせてくれます。



【収録曲】
1.ユール・ルーズ・ア・グッド・シング
2.テイク・ユア・ラヴ・アンド・ラン
3.メイビー・ウィ・キャン・スリップ・アウェイ
4.シュア・イズ・ワース・イット
5.オンリー・ユー・ノウ・ハウ・トゥ・ラヴ・ミー
6.アイル・サファー
7.ユアー・ルージング・ミー
8.サファリン・シティ
9.マルチプライング・ペイン
10.ホワイ・キャント・ユー・ラヴ・ミー
11.ミックス・イット・アップ・ベイビー
12.ディス・イズ・ザ・サンクス・アイ・ゲット

冒頭の「ユール・ルーズ・ア・グッド・シング」なんか、実にまったりして、良質なメロウ・ナンバー(あぁ、カーラジオなんかからいきなり流れてきたらすごくイイでしょうネ♪)も、ちょいとハネた感じのハッピーな「メイビー・ウィ・キャン・スリップ・アウェイ」での、コーラス隊との掛け合いなんかも、アルバムの中ではブルース・フィーリングが一番濃い「サファリン・シティ」など、表情は実に豊かですが、それが散漫な感じが全然しない。これはさり気ないように見えて実は凄いセンスだと思うんです。

それとやっぱりギターのカッティングは本当に素晴らしいです。派手なこと、一切していないのにこれだけ曲を際立たせるギターは、専業ギタリストにもなかなかおりますまい。「唄う人のギター」としては、これはもう上等の部類に間違いなく入りますね。







『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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