2015年12月16日

ゴンザレス ソロ・ピアノ

4.jpg
ゴンザレス/ソロ・ピアノ
(BEAT RECORDS/SARL GENTLE THREAT)

寒くなってきました、アタシの「感傷アンテナ」も、北風と西風がごうごうと吹きすさび、体感気温は余裕で10℃を下回ってる感じのここ奄美でもビンビンでございます。

冷たい外気や重たい空の色、風に吹きさらしの葉を落とした樹々たち、荒れ狂う海・・・。

そんなものにぼんやりと意識をゆだねておりましたら、柄にもなく「耽美」とかいう言葉が心の中に浮かんできました。

耽美という言葉は、これは難しい言葉でありますので、日常生活ではあまり使いませんよね。

でも、音楽や文学などに意識を向けますと、どうしてもこの言葉でないと説明がつかないものというのがどうもあるような気が致します。

たとえばアタシの心を狂おしく捉えて離さないピアノ音楽。

ビル・エヴァンスとかショパンとか、グールドやアルゲリッチの弾くバッハとか、ブラッド・メルドー、キース・ジャレット、セロニアス・モンク、マル・ウォルドロン・・・挙げればキリがないんですけど、今日はゴンザレスの「ソロ・ピアノ」です。

このアルバムのオリジナルは確かリリースが2004年頃だったと思いますが、アタシが最初に耳にしたのは確か2008年の冬でした。

ある日ふと衛星放送の音楽番組を見ていたら、何とも切ないピアノ音楽が、たくさんの賑やかなヒットチャートやガンガンなロック・ミュージックの合間に、まるで夢のように流れてきまして、その違和感というのが、何とも不思議だったんですね。

「あれ?なーんでこんな番組に、いきなりエリック・サティの曲流すんだろう?」

と、最初は思いました。

アルバム1曲目の「Gogol」という曲ですね。



この曲が「ゴンザレス」という名前の現代のアーティストのオリジナル曲だということを知ったのは、それよりちょっと後の話です。

この2分1秒の短いピアノだけのインスト曲、その旋律に心を奪われたその瞬間に「耽美」という言葉が激しく心に突き刺さったんです。

で、みなさん「耽美」って何でしょうね?

てか「美しさ」って何でございましょ?

アタシは思うんです。

「美しさ」っていうのは、単純な「綺麗」の表面よりもっともっと深いところに、儚さやあやうさ、そして時に厳しさや怖ろしさといったものを孕んでいるものではなかろうか?と。

たとえばショパンの夜想曲なんかは、とてもとても優しくて綺麗なメロディーですよね。

でも、そんなショパンの夜想曲を「あぁ綺麗なメロディーだな・・・」と聴いているうちに、どこか胸が締め付けられるように切なくもなってくる。

音楽であれ詩であれ、絵画であれ「美を感じる」ということは、何事もそういうものなんじゃなかろうかと思うのです。

はい、そういうことを皆さんひとつ心の片隅にでもですね、ここはひとつどうか置いてやってくださって、ゴンザレスの話に戻りましょうね。

アタシが2008年に不意に出会った「耽美」を感じさせてやまないピアニスト、ゴンザレス。




【収録曲】
1.Gogol
2.Mainfesto
3.Overnight
4.Bermuda Triangle
5.Dot
6.Armellodie
7.Carnivalse
8.Meischeid
9.Paristocrats
10.Gentle Threat
11.Tourist
12.Salon Salloon
13.Oregano
14.Basmati
15.CM Blues
16.One Note At A Time

(Disc-2:ボーナスDVD)
1.Opening Speech
2.First Note
3.Major / Minor
4.Harmony
5.Rhythm
6.Wagner / Ravel
7.White Key / Black Key
8.Melody Lesson
9.Oregano / Dot
10.Carnivalse
11.Take Me to Broadway
12.Game for Fools w/ Mocky & Jamie Lidell
13.Multiply w/Feist, Mocky & Jamie Lidell
14.When I Was a Young Girl w/Feist, Mocky & Jamie Lidell
15.So Called Party Over There w/Feist, Mocky & Jamie Lidell
16.Red Leather official video
17.Piano Battle
18.Take Me to Broadway official video
19.Worst M.C. official video
20.Pisces
21.Organism
22.Armellodie (Solo Piano concert)
23.Bundes Press Conference
24.Gonzo on Israli TV
25.Koln Concert (Solo Piano Concert)


アーティストとして活動する時のフルネームはチリー・ゴンザレスといいまして、実は専業のピアニストではありません。

気になってちょいと経歴を調べてみたら、”チリー・ゴンザレス”というエレクトロ・ヒップ・ホップのクリエイターであり、シニカルな詩を独特のミステリアスなスタイルでラップに乗せて繰り出すラッパーでもあり、あらゆる楽器をこなすマルチ・インストゥル・メンタル・プレイヤーであり、ポップスから現代音楽までを幅広くこなすジャンルレスな作曲家/アレンジャーであり、かと思えばナイトクラブでド派手なピンクのタキシード姿でステージに立ち、ミステリアスな歌や一人芝居を演じるパフォーマーであり・・・と、本当に「謎に包まれた様々な顔」を持っています。

彼の音楽におけるマルチな才能と、独特の退廃(デカダン)漂うその強烈なキャラクターを見出したのが、フレンチ・ポップの大御所歌姫であるジェーン・バーキンであり、このソロ・ピアノ・アルバムも、ジェーン・バーキンのアルバムを録音している最中にスタジオで「あ、ちょっとこのピアノを弾いてみようかな?」というノリで作った作品だといいます。

けれどもこのアルバムの全編を覆ってる耽美、というか儚くも退廃的な音楽の”美”これは「軽い気持ちでやったノリ」じゃないんです。

アルバム買って聴いたらやっぱりどの曲も美しくて、もう切ない溜息が出るほどのものなんです。

これはアタシの勝手な妄想ですが、多分このアルバムを吹き込んだ時のゴンザレスは、プロデューサーとか作曲家とかパフォーマーとかいう仮面の全部を脱ぎ捨てて、もしかしたら「アーティスト」であることすら忘れてひとりの感情を持つ「人間」として一台のピアノに向かって、心の内から自然に沸き起こってくる、目一杯の言葉にならない哀歓を委ねたんじゃなかろうかと思うのです。

感じることはその他も色々とありますが、このアルバムは2000年代に出た良質な「美しいピアノ作品」として、多分100年後はクラシックになっているだろうと思います。

「音楽聴いて切なくなりたい」

という人の手に、一人でも多くの人にこのアルバムが届きますように。。。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:10| Comment(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月08日

北の詩情〜シベリウス:珠玉のピアノ小品集

1.jpg

北の詩情〜シベリウス:珠玉のピアノ小品集(ヴィータサロ)

(FINLANDIA/ワーナー)

11月も後半になって奄美もようやく北風が吹きはじめ、一気に冬らしくなってきました。

こっちは春と秋が極端に短くて「春(ちょこっと)→盛大に夏→秋(あれ?もう終わり)→一気に冬」という気候なんです。

「何でぇ、南の島だから冬つっても大したことなかろう」

違うんです。気温こそ10度を下回る日はあるかないかぐらいなんですが、とにかく風が強いんで、体感温度は結構低いんです。

まぁそれはそうと、アタシはこのごうごうと北風が吹く頃になると、音楽的だったり文学的だったりするものをキャッチするアンテナの精度が上がるんで、実は結構冬が好きなんです。

冬になると風景の中のちょっとした物事も、何となく感傷的に見えたり聞こえたり・・・その現象のことを私は「寒さ切ない効果」と呼んでおりますが、何となく音楽も、あったかいうちはそうでもないけれど、寒くなると一気に「ヒリリ」と心地良く聴こえてくるものがある。

例えばピアノ音楽です。

寒い日は特にピアノものを聴きたくなるんですが、こんな時に聴きたいのは、ジャズでもクラシックでも、やはりどこか切なくて、心の隙間に入り込んで後からジンジンと響くものがいい。

例えばビル・エヴァンスでもいいし、ブラッド・メルドーでも、セロニアス・モンクのソロでも、ショパンやエリック・サティ、最近ではゴンザレスもいいですね。

ああいう「成分の半分以上は切なさで出来ています」的なものを、部屋の中で遠い目をしながら聴いて、短歌の栄養にしたりしています。

さて、今日ご紹介するのはクラシック、シベリウスのピアノ作品集です。

クラシックにちょっとでも詳しい人ならば

「シベリウスといえば交響曲の大家」

としてご存知でありましょう。

そうなんです、シベリウスといえばまず交響曲、次にヴァイオリン協奏曲です。

北欧はフィンランド生まれのシベリウスは、北欧の寒冷な気候と雄大な大自然を旋律にしたような、繊細でそれでいてスケールの大きな長編を得意とする作曲家であります。

しかし、彼が生前に残したピアノ曲集もなかなかに良いんですよ。

実はシベリウス、今でこそ彼の名前はクラシックの偉人として讃えられ、その作品も多くのオーケストラが演奏するほどのものでありますが、生前は他の多くの作曲家同様「交響曲だけを作曲していてはとても生活が出来ない」ぐらいに貧乏でした。

そのため、依頼を受けたら「サロンで気軽に演奏できるピアノ曲」(今で言うポップスみたいな感覚でしょうな)を書いて出版し、そのお金を生活の足しにしておりました。

また、ピアノが好きだった彼の妹のために、ごくごく個人的に作った練習曲などもあり、それらのほとんどは2分ぐらいの「小品」でありました。

一説によると幼い頃からヴァイオリン演奏を得意としていたシベリウスは、ピアノを弾くのがあまり好きではなかったとも言われておりますが、それでも彼の残したピアノ小品集は、とても短い演奏時間の中にたっぷりの詩情(つまり切なさ)が凝縮されており、クラシックファンのみならず、最近はラウンジ・ミュージックやチェンバー・ミュージックを好む人にも「カッコイイピアノ音楽」としてジワリと人気なのであります。

さて、そんなシベリウスのピアノ小品集をまとめて聴ける定番としてオススメしたいのが、女流ピアニスト、ヴィータサロによる全34曲のこのアルバム




【演奏】
マリタ・ヴィータサロ(p)

【収録曲】
1.即興曲 作品5-5
2.即興曲 作品5-6
3.カプリス 作品24-3
4.ロマンス 作品24-4
5.ワルツ 作品24-5
6.田園詩 作品24-6
7.ロマンス 作品24-9
8.舟歌 作品24-10
9.ワルツ 作品34-1
10.踊りの歌 作品34-2
11.からかい 作品34-5
12.偵察 作品34-9
13.追憶 作品34-10
14.ユモレスク 作品40-3
15.子守歌 作品40-5
16ロンドレット 作品40-7
17.ポロネーズ 作品40-10
18.ピヒラヤの花咲く時 作品75-1
19.孤独な松の木 作品75-2
20.はこやなぎ 作品75-3
21.白樺 作品75-4
22.樅の木 作品75-5
23エチュード 作品76-2
24.子供のための小品 作品76-8
25.エレジアーコ 作品76-10
26.リンネ草 作品76-11
27.やぐるま草 作品85-1
28.カーネーション 作品85-2
29.あやめ 作品85-3
30.おだまき (金魚草) 作品85-4
31.つりがね草 作品85-5
32.リート (歌) 作品97-2
33.小さなワルツ 作品97-3
34.即興曲 作品97-5

短い楽曲を凛としたタッチで繊細に紡ぎ、そして切ない余韻を残す演奏は、聴く人の心を「クッ」と惹きつける無駄のないものであります。

日本では舘野泉さんによる情緒溢れる演奏があって、それはそれで素晴らしい演奏なのですが、ヴィータサロさんのピアノは、ヨーロッパ特有のキリッとした空気感を見事に音で表現しており、じっくり対峠して聴いてもBGM風に流して聴いても良い感じに哀愁を味わえます。

1992年にリリースされてから、今も「バカ売れではなくジワジワずっと売れ続けている」というのがいいですよね。

あくまで優しく、でもしっかりと聴く人の心に「あ、今の切なかったな・・・」というものを残してくれるアルバムです。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:14| Comment(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月10日

ベートーヴェン:ピアノソナタ「悲愴」「月光」「テンペスト」「熱情」(ピリス)

1.1.jpg

ベートーヴェン:ピアノソナタ「悲愴」「月光」「テンペスト」「熱情」(ピリス)
(ワーナー)


アタシは「戦前ブルースしか聴けない病」とは別に、ちっちゃい頃からの付き合いで「ピアノ病」という厄介な持病と戦っております。

これはもう何ていうんですかね、もう心の中の何かが「ぶわー!!」てなったら発作的にピアノで演奏された音楽しか聴けなくなっちゃうという、ピアノならばジャズでもクラシックでも、もう何でもいいんです、それをガーッと2時間ばかり聴いていると発作が徐々に収まってくるという、現代医学では解明できない厄介な奇病なのでありますが、アタシをその”病”に感染させたのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「テンペスト」の第3楽章でした。

高校時代に、ある生演奏を聴いて、その時何ともいえない感情が炸裂してしまって、とにかくその「テンペスト」が聴きたくて、色々とCDを聴き比べたんですが、その時の生演奏していた人の「テンペスト」は、何かが違ったんですよ。

ベートーヴェンといえば「情熱の作曲家」といわれるぐらいその音楽は起伏の激しい”揺れ幅の波”と”やるせないフレーズの波状攻撃”に満ち溢れたものだというのが常識です。

しかし、アタシが聴いたその「テンペスト」は、そういった情熱云々では片付けたらいかんだろうと思えるぐらいの詩情が「それプラス」でありました。

とても切なくて、儚くて、手に触れた瞬間からほろほろと消えていってしまいそうな感傷です。

「テンペスト」はベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でも屈指の名曲ですので、「バートーヴェン・ピアノ・ソナタ集」というものを買えばまず入ってます。

で「名盤」とか「傑作」とか色々と言われているものを聴いては「違う!俺が求めてるのはもっとこう儚いものなんだ!」と、その辺にあるゴミ箱とかに八つ当たりしてたんですが、そんな時出会ったのがピリスのコレ






【演奏】
マリア=ジョアオ・ピリス

【収録曲】
1.ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調op.27−2「月光 − 第1楽章
2.ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調op.27−2「月光」第2楽章
3.ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調op.27−2「月光」第3楽章
4.ピアノ・ソナタ第8番ハ短調op.13「悲愴」第1楽章
5.ピアノ・ソナタ第8番ハ短調op.13「悲愴」第2楽章
6.ピアノ・ソナタ第8番ハ短調op.13「悲愴」第3楽章 ロンド
7.ピアノ・ソナタ第17番ニ短調op.31−2「テンペスト」第1楽章
8.ピアノ・ソナタ第17番ニ短調op.31−2「テンペスト」第2楽章
9.ピアノ・ソナタ第17番ニ短調op.31−2「テンペスト」第3楽章
10.ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57「熱情」第1楽章
11.ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57「熱情」第2楽章|第3楽章

「月光」「悲愴」「テンペスト」「熱情」およそ「ベートーヴェンのピアノ曲」といえば、アタシのような素人が思い付けるような曲は全て入っております。

まず

・女性であること

・繊細なタッチを得意とする人で音の粒立ちがいいらしい

・左手が”やや強い”

という3点を、前評判で調べて「あ、この人だ」とピンときました。

正直「月光」「悲愴」ぶっ飛ばして、もう「テンペストだ!」と、いきなり6曲目から聴きました。


これ!

これこれこれ!!!!!

「テンペストの第三楽章」は、とても情熱的な曲で、大体の演奏家がペダルをガッツリ踏み込んで「バカーン!」と演るんですが、ピリスの演奏は、無駄な装飾がなくて(つまりペダルをあんまり踏んでいない)、それでいて音の粒のひとつひとつがガラスの粒子みたいで切なくて、ひたすら胸を撃つんですよ。そしてひとつひとつの音が連綿と詩情を紡ぎながら、儚さを余韻で残して消えてゆく・・・。

最初の1年は「テンペスト第三楽章」だけで恍惚とした気分になれました。

真面目にアルバム全体を聴くようになってから、情感をしっとりと鍵盤に浸しながら唄うような「月光」第一楽章や、その他の曲での、ピリスというピアニストの「繊細な詩情」と、「感情のコントロール能力の凄さ」にシビレました。

「激しいベートーヴェン」を期待している人には、最初そっけなく聞こえるかも知れませんが、これはじわじわとくるアルバムです。

それからピリス(今では「ピレシュ」と表記されることも多いらしい)のことを色々と知るようになって、名盤の誉れ高いモーツァルトや、最近の傑作である後期ショパン曲集とかを聴いて「すげぇ!」とぶったまげることになって、正直な話をすればピリスの本領は、そっちの方で発揮されてるとは思うんですが、”凛とした詩情”と”簡素で奥深い表現美”に満ちたこのベートーヴェンはアタシにとっては特別です。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 18:54| Comment(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月16日

アルゲリッチ 幻のショパン・レコーディング


1.1.jpg

アルゲリッチ 幻のショパン・レコーディング1965

(EMI)

1965年、この年のショパン・コンクールで鮮烈なデビューを果たしたピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。

この当時のアルゲリッチは若干24歳。アルゼンチン出身、色白で細身、そして豊かな黒髪の”美少女”という形容が正にピッタリでありましたが、その演奏はもう”情念”。

最近はYoutubeなる便利なものがあって、若き日のアルゲリッチの演奏を拝むことが出来るんですけれど、これがね、もう凄いんですね。ピアノ弾く前は、清楚で大人しそーな感じなのに、一旦鍵盤叩くともう鬼気迫る迫力で、内側に向かってグングン突き進んで行って、聴衆もそのエネルギーに圧倒されて彼女の情念の世界にグイグイ引き寄せられてるのが画面越しにもハッキリと伝わってくる。

その演奏の凄まじさは、一言でいえば「パンク」です。

クラシックなんて「誰の何がいいのかよくわからん」だったアタシが最初に惚れたピアニスト、アルゲリッチだったんですが、そのガツガツ鳴り響く低音の激しさ、でもそのパッションの中から香る切ないエスプリが何とも言えなくて「すげー、すげー、クラシック界のバド・パウエルだー!いや、ヘンリー・ロリンズだー!」と、興奮して聴きまくっていたのを、そのサウンドのリアルな質感と共に今も思い出します(うう、ちゃんとしたクラシックファンの皆さんごめんなさいぃ・・)。


最初に聴いたのはバッハでしたが、ピアニストだったらショパンもやっておるだろう。てか、この「激情の人」の弾くショパンってどんなものかすごく聴きたい、てかだめ、聴かなきゃ狂おしくて窒息死する。

とか何とか、まぁ完全に「恋」しておった訳なんですが、聴きましたよショパン、そして買いましたよコレ







1.ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58 第1楽章:アレグロ・マエストーソ
2.ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58 第2楽章:スケルツォ(モルト・ヴィヴァーチェ)
3.ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58 第3楽章:ラルゴ
4.ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58 第4楽章:フィナーレ(プレスト・マ・ノン・タント)
5.3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第36番 イ短調 作品59-1
6.3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第37番 変イ長調 作品59-2
7.3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第38番 嬰ヘ短調 作品59-3
8.夜想曲 第4番 ヘ長調 作品15-1
9.スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39
10.ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53≪英雄≫


はい、大体みなさん「ショパン」と聞くと、甘くロマンチックな、例えば「別れの曲」とか「夜想曲」のそれを想像してウットリするでしょう。間違ってないですよ、全然間違ってない。むしろそれで幸せであった方がいい。

でもね、ショパンの音楽に「詩的狂おしさ」を感じている人、何かよーわからんけど、ショパンを聴くと胸が締め付けられそうになっていけんのよ。とお思いの方、アルゲリッチのショパンをぜひ聴いてください。

このアルバムは、彼女がショパン・コンクールで優勝して、プロの演奏家としてデビューした直後にレコーディングされた、正に「若き日のアルゲリッチの鮮烈なショパン」であります。甘い夢なんか見せてくれません、感情移入タップリに、その衝動の赴くままに、全身全霊を込めて、鍵盤の上で美しい悪魔と戯れるアルゲリッチが聴けます。


グールドは宇宙だけど、アルゲリッチはパンク。


でも、やっぱりショパン独特の美旋律は全然壊されてなくて、むしろ過激にブーストされておりますんで、決してコレがただ若さと個性だけで突っ走っているだけの演奏ではないということは、実は最近になってようやく分かりました。おっさんにもなってみるもんですね、はいィ・・・。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:28| Comment(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月04日

中島ノブユキ 散りゆく花

1.jpg

中島ノブユキ 散りゆく花
(SOTTO)


「ジャズとクラシックの丁度中間の淡い部分を切なく漂うピアノ」

とでも言えば良いのでしょうか。

いやいや、この人が奏で、そして生み出す繊細で繊細で、そして儚い音楽を、一言で的確に「こう!」と言い表せる言葉を、私は10年近く聴いても、まだ見付けられないでおります。

中島ノブユキ、最初に聴いたのは、2006年にEwe Recordsからリリースされたアルバム「エテパルマ〜夏の印象」だったと思います。

ウチの奥さんが「中島ノブユキっていう人のピアノ、すっごいイイの」というから「へぇぇ、どんな風にイイんだい?」と訊いたら一言

「美しい!」

と、言うので、聴いてみたら

「うん、美しい!!」

と驚嘆して以来のファンであります。

「Ewe Records」は、私にとってはピアソラの「アメリカン・クラーヴェ3部作」やキップ・ハンラハンの作品を日本盤でリリースしてくれたレーベルであり、また、綾戸智恵、菊地成孔、南博、橋本一子、安ヵ川大樹、芳垣安洋などの国内の優れた実力を持つジャズ・ミュージシャン達を擁し、そしてクラシックでも「古典四重奏団」のベートーヴェンものなど、とくかく質の高い作品を次々と出すレーベルだったので、何となくではありますが「ハズレはなかろう」と思っておったんですね。

「いや、この人は凄い!俺ん中でブラッド・メルドー以来のちょっと衝撃!!」

と、しばらくずっとハマってました。

そうこうしているうちに映画「悼む人」のサントラを製作したり、大河ドラマ「八重の桜」で「いや、音楽凄くいいけど、・・・あ、中島ノブユキ!」と、びっくりするぐらいその実力が評価されるようになって、アタシは嬉しいです。

そんな中島ノブユキの、ソロ・アルバムとしては6枚目になります「散りゆく花」。

自身で立ち上げたレーベル「SOTTO」からリリースの第一作目であります。



【演奏】
中島ノブユキ(piano)
金子飛鳥(Violin)
北村聡(Bandoneon)
藤本一馬(Guitar)
相磯優子(Violin)
志賀 恵子(Viola)
中村潤(Violoncello)
関美矢子(Oboe)
田中伸司(Contrabass)

【収録曲】
1.エレメント・オブ・ディスタンツァ
2.追憶のワルツ
3.スプリング・ナーヴァス
4.散りゆく花
5.木洩れ日
6.スパルタカス 愛のテーマ
7.ディスタンツァ
エスペヒスモ 〜蜃気楼〜
8.レント
9.エレガンテ・コン・モート
10.カルマンド
11.フーガ ニ短調
12.その一歩を踏み出す
13.ラスト・トレイン・ホーム

大好きな「スパルタカス愛のテーマ」が収録されていることで「お!」となり、バンドネオンに北村聡が参加しているということで「おぉ!」となりました。

そしてタイトルの「散りゆく花」

そうなんです、この言葉こそがアタシは、中島ノブユキという人の儚くも美しい音楽性を象徴している言葉そのものだと思いますねぇ、これがクラシックであろうとなかろうと、内容がつまらないものではないだろうと。

一曲目からもう「静謐」。

ううぅ、語彙が本当に貧しくて申し訳ないんですが、例えばロックとかで、物凄い音の”圧”に吹っ飛ばされるような快感もアタシ大好きなんですが、それとは正反対の澄み切った静寂へ、彼のピアノと、そして他の演奏家達の意識が集中して向かって行くこの感じ、こういうのもたまんないんですよね。。。。

ピアノ、弦楽器、そしてオーボエやバンドネオンが織り成すどこまでも切ない、これは本当に上質な「音」です。

こういう音楽がもっと「クラシック」として、たくさんの人の心の深い”傷”の部分に刺さったらなぁ・・・と、そこはかとなく思っております。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 15:37| Comment(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする