ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年11月19日

INU メシ食うな

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INU/メシ食うな
(徳間ジャパン)


みなさんこんばんは、気温も寒くなって機嫌が良いので、今日は”そもそも”についてお話しようと思います。

考えてみればそもそもアタシが音楽にハマッたきっかけは、小学校6年の頃に聴いたブルーハーツです。

音がどうとかスタイルがどうとか、アタマの悪い小学生にはそもそもそんなことは分かりません。

ただ、歌詞が良かったんですね。

そもそも思春期だったんです。

思春期といえば、友達関係とか異性のこととか、そういう事に思考がのめり込む時期で、アタシも一丁前にそういうことで悩み始めておりました。

そもそもアタシのいけないところは、手前のクダラナイ悩みにも、すーぐ世の中という、手前には手に負えないスケールのことを持ち出して、必要以上に深刻になってしまうことでありまして、ええ、最初にそういったことを具体的に思考に絡めて、よせばいいのに悩み苦しんでおったのが実に小学校から中学校に上がるか上がらないか、そのぐらいの時期だったんじゃないですかね。

その時に聴いたブルーハーツの歌詞というのが、アタシにとっては救いであり天啓であり、キリスト教徒にとっての聖書とか、中国共産党員にとっての毛沢東語録とか、アントニオ猪木ファンにとっての赤いバスタオルとか、猫にとってのマタタビとか、そういうものだったんですね。

で、親父に

「この音楽は一体何ていう音楽だ?」

と訊いたら、親父は

「パンクだ」

と言うのです。

そもそもパンクというのは、世の中の体制みたいなものにノーを唱えるメッセージみたいなもんが必要なんだ、と。

アタマの悪い小学生ながら、ほほぉと思いまして、アタシはパンクにのめりこんで行く訳です。

パンクロックというのは、1970年代のイギリスで誕生したんだと言われ、イギリスのパンクも聴きたかった訳なんですが、そもそもブルーハーツの歌詞に感動したお子様なので、英語の歌詞は分からないからとりあえず日本語のパンクを聴かせてくれやと、オススメされるままにアナーキーとかスタークラブとか、ラフィンノーズとかもよぉ聴いとりました。

その頃丁度バンドブームというのがあって、ラフィンノーズは2コ上とかの先輩達が「ゲット!ゲット!ゲットグローリー!」とか言って盛り上がってました。

アタシもその中に恐る恐る混ざってみたりしたこともありましたが、いやちょっと待て、そもそもこの”パンクロック”というのは、みんなで仲良く一緒にをーをー言う種類のパンクロックだ。そもそもアタシが好きなのは、何かこうもっと個人的なアレのヒリヒリしたところにチクッとくるようなものが欲しいんだ。と思いまして、田舎ということもあり「パンクロックは家で一人で聴く音楽」に、早々と認定してしまい、それについて学校とかではっちゃけることはあんまなかったです。

そもそもアタシは暗い人間です。

学校を適当に切り上げて、ウキウキで家に帰ってきたら自転車で街に出てCDとジュースとお菓子を買って、家で聴く。たまに友達と街で会えば、そりゃ遅くなるまで適当なことで盛り上がったりもしましたが、そもそも心はいつも我が家の自室のCDラジカセと共にあるよーなクソガキでした。

例えば夜の10時とかに帰ってきても、サッとメシ喰って、ジャッと風呂浴びて、部屋に籠って爆音で音楽を聴くと。

それを面白がって見ていたのが母親で「これを聴きなさい」とオススメしてくれたカセットテープには、スターリン、レピッシュ、PINK、BUCK-TICK、筋肉少女帯、そして町田町蔵のバンド”INU”なんかが入っておりました。

そもそも母親は、そういうカセットにしれっと遊佐未森なんかを入れるヒドい人なんでありますが、この人の「これ、パンクよ」と言うバンドやアーティストの曲は、大体どれも「仲間ををーをー言わない歌詞/音楽」だったりして、非常に好感が持てたのですが、特に「これがいいの!」と熱を上げていたのがスターリンと町田町蔵です。

今は作家の町田康として、素晴らしい小説や随筆をたくさん書いておられる人なんですが、そもそもこの人はパンクロッカーで、高校時代からもうバンド組んで関西では名の売れた人だったんですよ。



【収録曲】
1.フェイド アウト
2.つるつるの壷
3.おっさんとおばはん
4.ダムダム弾
5.夢の中へ
6.メシ喰うな!
7.ライト サイダーB(スカッと地獄)
8.インロウタキン
9.305
10.メリーゴーラウンド
11.気い狂て


INUですねぇ。

このアルバムは町蔵が”INU”としてリリースした唯一のアルバムです。はい『日本のパンクロックの黎明期の名盤』と呼ばれております。

名前がそもそも『町田町蔵』なんていうイカツい名前でパンクロッカーと言うんですから、アタシはてっきり何か物凄いゴツい声の、坊主頭で人相も凶悪で、上半身裸のプロレスラーみたいな人を想像していたんですが、ご本人のルックスは非常に端正なお兄さんで、ヴォーカル・スタイルも思ってたより全然ゴツくない、ついでに言えば音楽的にも拳振り上げて全力疾走する、いわゆるパンクロックというよりも、その後のニューウェーブの、物凄い硬派なヤツみたいな感じで、音楽的な完成度みたいなものが、あ、これは高いなと、そもそも音楽的な完成度とかそういう高度なことは分からなかったくせにそう思ったんです。

メンバーはとても流動的だったようですが、北田昌宏の緊張感溢れるギターが凄くて、町蔵の内へ内へと沈み込んで爆発する狂気のヴォーカルがギットギトに描く世界観と異常な親和性でリンクして、もう怖いぐらいなんですよ。

そう、このアルバムの「凄いなこれ」と思わせるところには、特有の”怖さ”というものがあります。

町蔵の歌詞は、この時代から(確かこれ書いた時はまだ十代だったと思う)実に文学的でやぶれかぶれで、内から湧き出るむき出しの言葉を、音程とか共感すらもどうでもいい、そんな潔さで聴き手の意識にぶつけてきます。

そもそも一人称が”俺達”になりがちな(言葉としてではなく態度として)ロックにあって、終始一貫して一人称”俺”なんですよ。


沢山の人間が居て 俺はその中の一人
定まらぬ視線の中で みんなお互い窒息寸前
ええ加減にせんと気い狂て死ぬ



大衆、世の中、世間・・・まぁ何でもいいんですが、そういった実に曖昧でやたら大きなものに、ガリガリの上半身を曝して包丁握って自爆しに行く。仲間なんぞいらん、勝手にやらかして勝手に死んだるわい!どの歌詞からも、そういったヒリヒリしたメッセージがガンガン飛んできて、あぁ、これはパンクだなと、納得なんか出来なくても、叫び、振り絞り、呻き、呟く町蔵のヴォーカルには、安直な”みんなでがんばろう”みたいなものを、吹き飛ばして切り裂いて、足で踏みつけてグチャグチャにする、凄まじい呪詛として、アタシの脳裏には写りました。

そもそも凄まじいネガティヴの力です。でもこのINUのサウンドと町蔵の怨念ヴォーカルには、クールでスタイリッシュなUKパンクから、そのまんま影響を受けた”パンク”にはない”パンク”を感じてしょうがないんですよ。

そもそも音楽に必要なものって、こういう正当な怒りなんじゃないかと、大人になってどうでもいい物分りの良さを身に付けたつもりのアタシは、今冷静に思っています。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年11月10日

渦 ジャズとペプシ

昨日はちょいとお昼に時間があったので、窓を開けて寝ておりましたら、日差しが強くて何か顔がジリジリ熱い!というので目が覚めてしまいました。

・・・ほんとにね、もうね、11月ですよ奄美。

そんなことはどうでもよろしい、アタシは今日もそんなバテバテにめげずにグッド・ミュージックを紹介います。

ここんとこアレですね、秋なので感傷モードに入ってしまってピアノばっか聴いておりましたら、心の中に「あぁぁ!ロック聴きてぇ!!」という衝動が湧き上ってまいりました。いいぞいいぞ、で、何聴くよ?

と自問してみたら、導き出された答え

「うん、ロックつっても60年代とか70年代のクラシックスからちょいと離れて、最近の日本の、活きのいいバンドが聴きたいな。何つうか、こう青い勢いがあるような、そういうイカシたやつ」

ほうほう、青い勢いですかぁ。普段ロクなこと言っていないアタシですが、たまにはいいことを言うもんですな。

そんな感じで自分に感心しながら、最近のインディーバンドの音源などを「あれもいいこれもいい」と鑑賞していた折、特に心にグッときたのがコレ



あの〜”エモい”って言葉あるじゃないですか。

その言葉、今どんな意味で使われてるか、おじちゃんはよくわからんのですが、多分アタシの解釈では

「エモーショナルで内省的な、そこはかと哀愁漂うことがら」

だと思っとるんですね。

それって、そのまんま日本のロック、特に2000年以降のロックバンド達が出す音そのものだと思うんです。

で、今日ご紹介するのは”渦”というバンドです。

2015年に都内で結成されて、翌年に5曲入りミニ・アルバム『ジャズとペプシ』をリリースして、さっきの動画は今年、つうかつい来週の11月12日に(注:2017年現在)にリリースされる予定の4曲入り『ゴーグル2』
より最新の曲(「トレイラー」)なんですが、これ、いいですよ。シングルコイルのキラキラした鳴りの2本のギターが幻想を淡く紡いでゆく、パステルなサウンドカラーに繊細なヴォーカル、粘りのある音でキッチリビートを提供しながら、でもしっかり小技を効かせているベース、そして演奏の中心にドッシリあって、素晴らしくパワフルな、芯の座った音のドラム。

ほとばしるのは、淡く甘酸っぱい空気と、音楽が好きでたまんなくなって演奏をやっているその勢い。あぁ、いいねぇ、音楽ってこうだよねぇと、ジャンルやスタイルとかそういうもの以前にクッと胸が熱く押されるあの感じ。



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【収録曲】
1.ソーリー
2.愛しのインディーガール
3.ドルフィン
4.ジャズとペプシ
5.オバケは走る


実はアタシ、去年この「ジャズとペプシ」を入手して以来、ジャズを聴いてブルースのCDをセットするまでの合間に、60年代から90年代の洋楽ロックを聴いてる合間に、そう、合間合間に挟んでよく流していました。

ピュアな衝動と、優しい歌詞の世界観が、どの音楽ともすごく合うことに、ちょいとビックリ♪

”渦”現在都内中心にライヴもガンガンやっております。

イベントの情報やCDのご案内はコチラ↓の公式ページからどうぞ!
https://banduzu.jimdo.com/














『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月13日

憂歌団 Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ

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憂歌団/Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ
(フォーライフ)


ブルースが好きです。

いや、ブルースのない人生は考えられない。音楽だけでなくても、日常生活の中で何かしら切なくてホロ苦いブルースなものやブルースなことと不意に出会ったら、何故でしょう切なくてホロ苦いのにどこか心が不思議と安らいで、何だか今日も頑張って生きていこうとそんな風に思ってしまう。

こういうのおかしいですか?うん、おかしな話だとアタシも思います。でも、音楽を好きになる気持ちが深まって、音楽を愛してしまってたまんないという風になるというのは、もしかしたらこういうことなのかも知れません。

で、ブルースです。

ブルースという音楽は、アタシが言うまでもなく、アメリカの黒人さんが生み出した音楽なんですが、日常の中での世知辛かったりしょっぱかったりする出来事を感じて嘆いたり悲しんだり、でもソイツを何とか明るく陽気に笑い飛ばしたりしようぜって心はアタシら庶民の中には万国共通でございます。

ね、元はブルーでどうしようもない気分とか因果とか、そういったヤツでもゴキゲンな音楽に乗せりゃあハッピーになれる、聴いた人もハッピーになる。

そういった”心意気としてのブルース”を、日本で演奏してきたバンドがおりまして、このバンドは憂歌団というんですが、そうそう妖怪人間みたいな顔のぺちゃっとした関西弁のおっちゃんが、キュートなダミ声で唄ってね、グラサンかけたギターの人がソロ弾くんだけどピッキングもスライドもめちゃくちゃ上手くて味があって、ベースとドラムもずんちゃかずんちゃか、こらもう聴いてるだけでウキウキしてくるようなスカーンとしたリズム刻んで・・・というあのバンドでございます。

あ、はい、ここまで読んで「誰だそいつら?」と思った人もいいから憂歌団ってのはそういう人達なんだーって一旦思っといてくださいね。

大体アレですよ、ブルースバンドってのは、何だか渋い曲をエレキギターをキュイーンと泣かせてやってるもんみたいなイメージがあるでしょうが、憂歌団はちゃいま(←エセ関西弁)。アコースティックな、戦前スタイルのズンチャカで軽快なバンドなんです。

戦前スタイルとは何ぞや?というご質問には、細かく答えておりますとヒジョーに長くなりますので、そこらへんは当ブログの「ブルース」のカテゴリをヒマな時呼んでくださいますようお願いしますとして、そんなヒマねぇよという方に、あぁそうですかいと乱暴に説明すれば、エレキギターキュイーンでオーイェになる前のブルースは、明るく疾走したり、みんなでワイワイ歌えるような曲がいっぱいあったんです。

実はアタシが本格的に洋楽なるものを聴いて、ブルースも親父に聴かされて「ほほぅ、何かわからんけどいいね」と思ったアタマの悪い中学1年生の時、奄美で生まれて初めて行ったブルースのライヴ。これが憂歌団のライヴだったんですよ。

ある日いきなり親父が

「オゥ、今度の土曜日は名瀬公民館に憂歌団観に行くからお前空けとけぇ」

と言うので

「ゆうかだん?何それ?」

と思いながらも、まぁ何かコンサートだろうと思って、本当に何もわからんまま行ったんですが、その時のライヴがまー初めて体験した「ホンモノ」いやもうホントすごかった。

酒をガンガン飲みながら曲の合間合間にガラガラの関西弁で喋ってる、これ絶対ミュージシャンじゃなきゃその辺の盛り場で朝潰れてるよーなおっさんなんだけど「ほないこか」と言って唄いはじめた時の木村充揮のその凄まじい声の威力と引力ときたら・・・。

そいでもってギターはサングラスかけて正直見た目怖い人っぽいけど、もうギター小僧志望のクソガキのアタシが見ても「あぁ、このギターはやべぇ、並じゃねぇ。いや、プロなんだからんなもん当たり前なんだけど、その中でもかなりハンパねぇ部類の人だ」と分かるぐらいの凄腕の内田勘太郎。

そしてクールにビシャっとリズムを刻む、こっちは見た目も出す音も実に渋い花岡献治のベースと島田和夫のドラムスの完璧なコンビネーション!

いや、バンドのことなんか、ブルースのことなんか全然わからなかったですよ。でも分からない子供のアタシでも、気が付いたら席を立って、手を叩きながら足で一緒にリズム取ってたんですよ。

ライヴ終わった帰りに、車の中で親父に質問攻めでした。あのヴォーカルの人はすごい声だったけど、どうやったらあんな声になるのか、ギターの人は何か指にビンみたいなのはめて弾いてたけど(ボトルネックね)、アレはなんなんだ、そもそもあんなジャンルの音楽はテレビとかで聴いたことないけどアレは一体何ていう音楽だ。と。

そしたら親父、ライヴの興奮冷めやらぬような感じのデカい声で

「アレがブルースよ!」

と、もうザックリ答えてくれました。


まぁブルースですね。色々考えてアタシが誰かに同じ質問されてもそうとしか答えられません。


【収録曲】
(Disc-1)
1.嫌んなった
2.キィ・トゥ・ザ・ハイウェイ
3.おそうじオバチャン
4.はんか街のはんぱ女
5.サマータイム
6.イフ・アイ・ディドゥント・ラブ・ユー
7.10$の恋
8.パチンコ~ランラン・ブルース
9.当れ!宝くじ
10.ALL OF ME
11.スティーリン
12.渚のボード・ウォーク
13.嘘は罪
14.Boy,My Boy
15.ザ・エン歌
16.ア・イ・シ・テ・ル
17.Midnight Drinker
18.シカゴ バウンド

(Disc-2)
1.大阪ビッグ・リバー・ブルース (Album Mix)
2.胸が痛い
3.かぞえきれない雨
4.心はいつも上天気
5.Good time’s rollin’, bad time’s rollin’
6.キスに願いを
7.You are my Angel
8.夢
9.SLOW BOAT TO CHINA
10.オンリー・ロンリー・ジャマイカ
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)
12.家に帰ろう
13.ちっちゃなダイヤモンド
14.ファンキー・モンキー・ベイビー
15.WOO CHILD
16.あれからゾンビ
17.風のうわさに

(Disc-3/DVD)
1.Midnight Drinker
2.ドロボー
3.おそうじオバチャン
4.シカゴ バウンド
5.大阪ビッグ・リバー・ブルース
6.胸が痛い
7.嫌んなった
8.パチンコ
9.Stealin’
10.キスに願いを
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)



もちろん憂歌団は音楽的にもちゃんとしたブルースです。

大体日本人でブルースっつったら妙に黒人っぽさを出そうとかそういう意識が働きがちですが、憂歌団はあくまで音楽的なブルースを演奏の基礎に置きながら、スピリッツの部分はどこまでも日本人、つうかとことん"大阪のおっちゃん"を極めようというベクトルがあって、それがサウンド、演奏スタイル、そして歌詞とでピタッと合致して他にはない味になってる。

彼らの有名な曲で「おそうじオバチャン」とか「パチンコ」とか、いうすこぶるゴキゲンなナンバーがあるんですが、歌詞凄いんですよ。

「私はおそうじオバチャン」と軽快なリズムに乗ってあぁおばちゃんが楽しく掃除してるんだなぁと思ったら

「1日働いてたったの¥2000!」

と、ズバッと悲哀を投げつけるし、「パチンコ」もあぁパチンコ楽しいんだなと思ったら、いや待てこれはアカンぞ、ギャンブル中毒者の歌だぞと「パチンコパチンコ!」とパンキッシュな絶叫の繰り返しの奥にじっとり潜む狂気をぶん投げてくる。

でも、憂歌団はそういう悲哀とか狂気とかを歌の表面に塗りたくったりはしません。明るく楽しく、そして難しくないシンプルな言葉で、大袈裟にいえば本質を歌い上げるんです。これがブルースでなくて一体何でしょう。

もちろんそういう歌以外にも、音楽的な幅は意外と広くて「胸が痛い」や「数えきれない雨」みたいな擦り切れるようなエモーショナルなバラードは、後になってRCサクセションやブルーハーツなんかに受け継がれるスタイルの原型のようでありますし、日本語でカヴァーされている古いブルースも、今そこの飲み屋で出来た曲みたいな親近感がありますな。

ご紹介したアルバムは、とりあえずで聴いてみたい方へ、間違いなく「とりあえず」以上の愛聴盤になること請け合いの2枚組フルボリュームのベストです。限定盤には初期の貴重な映像がたっぷり入ったDVDも付いててコレが凄いんだ。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年04月15日

松田聖子 SEIKO JAZZ

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松田聖子/SEIKO JAZZ
(Verve/ユニバーサル)

はい、色々とシャバダバしておりまして、身も心もパンク寸前ですので、今日はちょっと肩の力を抜いて聖子ちゃんについて語ってみましょう。

聖子ちゃんといえば、デビューからもう37年経ちますが、その間ずーーーーっと日本のアイドルの頂点に君臨してきた偉人です。

同期でデビューした人達、或いはそれこそキラ星のように彼女の後を追ってデビューしたアイドルの人達は、デビューして何年か経てつと女優さんになったり、もっと歌謡曲っぽい歌手になったり、アーティスティックな方向性を目指したり、とにかくある時期を境に「アイドル」から卒業していきました。

これはまぁ人間というのは黙っててもトシを取ってしまう生き物でありますから、当然の流れです。

しかし!聖子ちゃんは違います。

人間ならば20代、30代・・・と、トシを重ねて行く毎にそれ相応のカッコ良さみたいなものを目指すようになるものですが、聖子ちゃんは一貫してアイドル。

つまりいくつになっても「カワイイ」と言われる存在であるところに自身を置いて表現してゆくことが、アイドルを貫くこと。

アタシは1976年生まれで、物心付いた時は聖子ちゃんはアイドルでした。

もちろんその時は、別に凄いとも何とも思わず「あぁ、テレビ出てるなぁ」ぐらいに思ってましたし、そこから音楽を好きになった10代の頃、音楽にのめり込んだ20代の頃も、やっぱり自分の夢中になるものにまっしぐらで、そんなに松田聖子という人について考えたりしたことはありませんでした。

それがちょっと「おっ?もしかしてこの人は凄いんじゃ・・・?」と思ったのが、1996年の2度目のアメリカデビューとその後でした。

ファンの方には「何をいまさら」な話かも知れませんが、アメリカでアルバムをリリースして、そこから本格的な洋楽路線になるのかと思っていた矢先、帰国後に放った「あなたに逢いたくて〜Missing You〜」が大ヒット。

これが凄い曲だったんです。

歌詞なんかもごく当たり前のこと歌ってるだけなのに、何でこんなに耳に残るんだろう、と。

そこからアタシの中で「松田聖子」は「聖子ちゃん」になりました。

「あぁ、この人は40になっても50になっても、これは”アイドル”でしかない。他の存在ではない」

と・・・。つまり一言では言い表せない魅力なんですよ。





【収録曲】
1.スマイル
2.追憶
3.イパネマの娘
4.遥かなる影
5.マシュ・ケ・ナダ
6.アルフィー
7.静かな夜
8.ドント・ノー・ホワイ
9.恋の面影
10.星に願いを

で、今回はそんな聖子ちゃんが、満を持して「ジャズ」に挑んだアルバムです。

バックを努めるのは、ジャズの世界ではもう一流の、デヴィッド・マシューズ率いるマンハッタン・ジャズ・オーケストラ。

しっとりしたゴージャスな雰囲気の中、全て英語のチャーミングな発音で綺麗に歌われるジャズ・スタンダードやボサ・ノヴァ。

その、豪華と可憐で塗られた演奏の中から、フッと立ち上る、微かに切なくやるせない情感。

基本的に聖子ちゃんは、ジャズを歌おうが英語だろうが、もうこれ、聖子ちゃんでしかないんですが、それこそエンターティメントの真髄でありましょう。

そういや、まだポップスという音楽が出来る前は、ジャズが一番ポピュラーな大衆音楽で、楽団はヴォーカリストをやとったり、ゲストに招いたりして、一般大衆の人気を得ていたという話がありますが、このアルバムはある意味”それ”なんですよ。

「へ〜、松田聖子がジャズやってんだ〜」

で、聴いた人を、ジャズとかどうとかそういうのをすっとばして聖子ちゃんの魅力に「うはぁ、凄い!」と開眼させるような、そんな不思議で強烈な引力も持ってますし、もっとサラッと「耳に心地良い日本人歌手のジャズカバー」なBGMとしても聴ける(つうことはクオリティが高いということ)、今、まだちょっとしか聴いてませんが、聴く度に色んな凄さ、カッコ良さを教えてくれそうなアルバムです。



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2016年12月30日

リトル・クリーチャーズ 未知のアルバム

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リトル・クリーチャーズ/未知のアルバム
(Chordiary)

「知る人ぞ知る実力派」とかいう言葉が好きです。

そいでもって「その時代の流行と無縁」とか「正直どこからの影響でこんなサウンドになったのか分からない」という言葉も好きなアタシは、日本において、90年代初頭にデビューしたバンドで大好きなのがリトル・クリーチャーズ。

はい、この人達こそ「知る人ぞ知る」じゃないですか。ほいでもってその当時の流行と無縁というか、最先端のオシャレでカッコイイ音は作ってきたけれども、いわゆる渋谷系と近いようで本質的なものが何か全然違う。全曲英語の歌詞で、浮ついたところの一切ないクールな音楽性は、とても斬新で刺激的だったものです。

はい、かく言うアタシも90年代は激しい音楽ばかり求めて聴いていましたので、デビュー当時のリトル・クリーチャーズ、あんま知らんかったんです。ウチの奥さんが大大大ファンで、付き合った当初に教えてもらい。

「うそぉ!?あのバンドブーム最後の賑わいの時にこんなことやる日本人バンドいたんだー!!」

と、かなりびっくりして以来、特別に注目しています。

彼らが世に出てきたのは1990年、あの有名なオーディション番組「いかすバンド天国(イカ天)」で19代キングに輝いてからなんですね。

もうイカ天最後の方でしたが、この番組は、色んな意味でアクも個性も強くてカッコいいロックバンドをたくさん世に送った番組です。

ギラギラにトンガッたバンドや、サウンドもヴィジュアルも激しく自己主張していたバンドだらけだったイカ天で、ジャズや60年代ノーザンソウル、カントリーポップ(いずれもリアルタイムではそういう音楽だとは気付かなかった)などをサラッと消化して、しかも演奏がめちゃくちゃ上手い。その上手さも派手に弾きまくるとかそんなんじゃなくて、最小限の音で的確にグルーヴする、聴かせる上手さというか、まだ10代だったはずなのにその音楽性にも演奏にも不思議な熟練と、とても上質なアメリカン・ルーツ・ミュージックのエスプリが演奏全体に漂っておったんです。


(初期の彼らはこんな感じ)

それからリトル・クリーチャーズは大ブレイクすることもなく、コンスタントに良質な作品を作り続け、メンバー3人は、それぞれソロやセッションマン等で別個に活動をしながら音楽性をひたすら磨いてきました。

普通、バンドメンバーが、それぞれ外で色んなジャンルの音楽をやってきて、自分達のバンドの作品を作ると、幅が拡がったカラフルな作品が出来そうな気がするのですが、このバンドの凄いところは、それぞれ外で活動して、再び集まって作品を作る毎に、無駄な音がどんどん削ぎ落とされて、統一感のある作品が出来上がるんです。




【収録曲】
1.海原
2.未知の世界
3.夢ならば
4.絡めとられて
5.かんちがい
6.声なき者
7.月の顔
8.嘘の朝
9.赤いスカート
10.隼飛ぶ
11.わずかばかり


「未知のアルバム」は、5年という期間を置いて制作された7枚目のフル・アルバム。


「最小限の音数で、如何にグルーヴするか」ということに、ストイックにこだわったかのように、ギターはループする中毒性の高いリフを刻み、ベースはうねりながら微妙な緩急でサウンドを冷静にコントロールし、ドラムはひたすら乾いた音で、まるで打ち込みのように、厳選された打撃を重ねます。

リトル・クリーチャーズといえば、とにかく曲調とか展開とかよりも豊かに、楽曲に込められたストーリーを語る、青柳拓次、鈴木正人、栗原務の3人がそれぞれ持っている音色の豊かさに尽きるんですが、今回は本当にギター、ベース、ドラムという3つの楽器の音だけで、実に歌っています。

パッと聴くと、洗練を極めていてミニマルな要素で組み立てられた楽曲は無機質に聞こえなくもないはずですが、聴いてて心踊るしじんわりくるし、何よりも音楽そのものが暖かい。ジャンルで言えば何?って訊かれると非常に説明に困るのですが、これは間違いなくアナタの心を豊かにしてくるグッド・ミュージックです。

あと、これまでずっと英語で歌詞を付けてきたリトル・クリーチャーズが、今回全ての歌詞を日本語で唄ってます。これも意味と響きが不思議な次元で調和していてとってもとっても深いです。



(とてもスマートなシティ・ポップ。人力なのにどこかマシーンっぽいドラムもいいんです♪)



”リトル・クリーチャーズ”関連記事

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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