2020年10月12日

キンジョウマサ樹「気化した細胞」再入荷!

え〜、当店は只今休眠中でありますが、皆さんからのご要望でもって個人としてアタシがCDの注文をお受けしたり委託販売を請け負ったりと、えぇ、本当の意味での地下CD屋としてチョロチョロやっておりますが、ありがたいことに遠く本土から問い合わせや通販のお申込みをお受けすることがあります。

で、10月に入りまして、あるCDの問い合わせが遠方から立て続けに来まして、いやもうびっくりしてたんですよ。

そのCDってのがコチラ






はい、地元奄美のロッカー、キンジョウマサ樹の2015年リリースのアルバム『気化した細胞』。

詳細はリンク先の記事に書いておりますが、これとてもいいアルバムなんですよ。ロードムービーのような歌詞、鋭くも内省的なサウンド、擦り切れながら吐き出すようなヴォーカル、どこを聴いてもロックなんです。

5年前に本人から直接預かっていて、ちょくちょく売れてたもんで追加した在庫が少し残っておりましたが、何と何と、一気に注文が来て一気に在庫分売り切れましたが、この度本人に頼み込んで3枚追加で仕入れました(!!)


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聞けばギターパンダのライヴでこのアルバムに入ってる『中庭のヘビイチゴ』がカヴァーされて、それを聴いて感動した人が凄く多かったんだとか。

うんうん、良い歌というか「凄い歌」です。皆までは申しますまい。

はい、3枚限定です。ちょっと焦ってこの前問い合わせが来た何人かの方に大サービスな値段で売ってしまいましたが、価格は税込み¥1500です。

通販ご希望の方、受け付けておりますので、まずはメール soundspal1@gmail.com までお問い合わせください。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2020年06月30日

藤井風 HELP EVER HURT NEVE

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藤井風/HELP EVER HURT NEVE
(ユニバーサル)

アタシは好きな音楽をとことん掘り下げて聴くのも好きですが、それぐらい大事にしたいのは「何の前知識ナシでふと耳にした音楽
感動すること」も大事にしたいなと思っております。

しかしまぁ最近はテレビでもほとんど音楽番組やらなくなってしまったし、音楽雑誌も立ち読み出来るほど出回らなくなった。だから自分の感覚というのがどんどん風化していってるんじゃないかと心配です。特に新しい国内の音楽に関しては不安ですね。流行に乗りたいとか、もうそういう事を考える歳でもないのですが、やっぱり「知らない新しいものと出会いたい!」という気持ちは常にあるのですよ。

だからこそ「知らない新しい日本のミュージシャン」のグッとくる曲や作品を見付けると嬉しくなる。

という訳で2020年デビューの「おっ!これはカッコイイ!!」と思った日本のシンガーを今日は紹介します。藤井風です。

ウチの奥さんがですね、家事をしながら何か良い感じのソウル聴いてると思ってよくよく耳を澄ませたらどうも音質が凄く新しい感じで

「おや、これは最近の人かい?カッコイイじゃないか」

と言ったら

「藤井風っていう人だよ、この人凄いんだよ」

と言っていたので、ちょいと興味が出て自宅で一緒にずっとCDとかネットにアップしてある音源とかを聴いておりましたが、いやぁこの人は深い。プロフィールを読むと小学生の頃から色んな歌をカヴァーして、それを演奏しながら歌ったやつをYoutubeにアップしていたとか。

楽器は多分色んなのが出来ると思うんですが、特にピアノ(鍵盤)が凄く上手いんですね。上手な人にありがちなタッチのカキンコキンがなくて、かつ音がべちゃっと潰れないナチュラルな響き。上手く言えないんですがあの〜、アレですよ。スティーヴィー・ワンダーとかがとてもファンキーな曲やってるんだけど、ピアノの音を聴くとどの音も凄く粒が揃ってて、かつ特有のぬくもちを有した響きがあって「いや、スティーヴィー・ワンダーのピアノってよく聴くとすげぇな・・・」ってなる”あの感じ”を持っているトーンなんです。

う〜ん、何だか抽象的でわかりづらくてすいませんねぇ。。。とにかくこの人の歌や演奏を聴いて感じたのは、小さい頃から英才教育受けてきて凄いとか天才とかそんなんじゃなくて

「ソウル・ミュージックが本当に心から好きで、好きな音楽を自分のサウンドを使って自分の表現で伸び伸びとやってる」

という、心からの音楽好きが歌ったり演奏したりする時にだけ出る”わかるヤツにはわかる匂い”に裏付けられたカッコ良さや切なさや音の暖かみだったんです。

それからほどなくして、都会的なR&Bテイストの楽曲と、岡山弁の歌詞という意表を突いた組み合わせのアルバム1曲目「何なんw」が大いに注目されて、メディアでもこの人の音楽を頻繁に聴くようになりましたが、この人の地に足が付いた音楽性と、ナチュラルな声の魅力の前には、アイディアとかは些細な事で、やはりアルバム全編を聴いて、その上質なソウル・フィーリングにずっと浸っていたい。そんな風に思います。


HELP EVER HURT NEVER(初回盤)(2CD)

【収録曲】
(Disc-1)
1.何なんw
2.もうええわ
3.優しさ
4.キリがないから
5.罪の香り
6.調子のっちゃって
7.特にない
8.死ぬのがいいわ
9.風よ
10.さよならべいべ
11.帰ろう

(Disc-2)
1.Close To You
2.Shape Of You
3.Back Stabbers
4.Alfie
5.Be Alright
6.Beat It
7.Don’t Let Me Be Misunderstood
8.My Eyes Adored You
9.Shake It Off
10.Stronger Than Me
11.Time After Time

普通アルバムといえばシングル・ヒットした曲の存在感が際立っていて、他の曲はまぁいい感じみたいなのがいくつかあって・・・というものもあると思っていたんですが、このアルバムはやっぱり何度聴いてもどの曲も軒並みクオリティが素晴らしいです。しかも全曲インパクトが凄いとか、テンションが落ちないとか、そういうのとは少し違って、何というかどの曲もポップスとしての完成度の高さを下支えしているのが、変わらない自然なテンションと、盛り上げ過ぎないグルーヴの心地良さ。

自然と体が動いて、曲が終わると当たり前に「今のカッコ良かったね〜」と心の声を引き出してくれます。アレンジも様々な楽器の音やエフェクトをこれでもかと詰め込む最近の音作りとは真逆の、至る所に心地良い隙間があって聴く方の耳を疲れさせません。

あと、初回盤には2枚目にカヴァー曲が入っていて、これが彼の声とピアノの良さを、本編とはまた違った形で楽しませてくれる素晴らしい内容です。収録曲は上にも書きましたが、オリジナルを歌ったアーティスト名も表記しておきますので、藤井風カッコイイなと思った方はこれら洋楽のアーティスト達もチェックしてもらえたらと思います。


1.Close To You(カーペンターズ)
2.Shape Of You(エド・シーラン)
3.Back Stabbers(オージェイズ)
4.Alfie(ヴァネッサ・ウィリアムス)
5.Be Alright(アリアナ・グランテ)
6.Beat It(マイケル・ジャクソン)
7.Don’t Let Me Be Misunderstood(アニマルズ)
8.My Eyes Adored You(フランキー・ヴァリ)
9.Shake It Off(テイラー・スウィフト)
10.Stronger Than Me(エイミー・ワインハウス)
11.Time After Time(チェット・ベイカー)*ジャズ・スタンダード


アレンジのシンプルなカッコ良さもあってか、アタシはてっきり昔のソウルやR&Bのカヴァーばかりだと思ったのですが、2000年代以降の曲が多かった事にびっくりしました。こうやって自分が知らない音楽の素晴らしさを教えてくれるアルバムに新しく出会えてとても嬉しく思います。







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2019年10月20日

Fukai Nana can i love you?

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Fukai Nana/can i love you?
(Kerosene Records)

アタシが音楽というものを自発的に聴くようになった頃、メディアといえばテレビとラジオと雑誌ぐらいしかなくて、でも、ちょいとチャンネルを合わせると、ワクワクするような「知らない音楽」と沢山出会う事が出来ました。

特にテレビは夕方にも夜にも深夜にも音楽番組があって、昼と夜に流行を追っかけて、深夜に他人が知らない珍しいバンドの情報を仕入れては、そのバンドの記事が載ってる音楽雑誌に赤線引いたりして、まぁ楽しかったんです。

今はメディアの在り方もすっかり変わって、テレビや雑誌での情報収集は本当に難しくなりました。

反対に、ネットを通しての情報収集や発信のスピードは、もう昔とは全然違って、誰がどこに居ても最新のバンドの演奏から、古い時代のマイナーな音楽にまで、簡単に触れる事が出来るし、または自宅で作った音楽のようなものにでも、一人で本格的に凝ったアレンジを付けて世界中に発信することも可能になってきました。



そう「で」なんですよ。

Youtubeとか、その他配信で10代とか20代とかの若いバンドの人や個人の演奏なんかを見ていると、10年前とかより「おおお!!すげぇ!!」と思う演奏が、今凄く増えてる感じがするんです。

音楽やる人って、多分「とにかくたくさんの人に共感してもらえるようなものを作りたい」って人と「評価より何より、自分の表現意欲を満たしたい」って人とが居ると思うんですけど、この10年でCDが売れなくなったとかミリオンが出なくなったとか(えぇ、アタシも店舗のCD屋は閉じました)、何かとネガティヴに音楽事情が語られるようにはなったんですが、いやちょっと待て「音楽が思ったようにカネにならない」という事が、逆に「表現を極めたい」という人達のサウンドをジワジワと表に出してるような環境が出来てきてるんじゃね?と、何となくですがアタシゃ最近思うようになってきてるんです。


これはついこないだの話ですが、身内から「このバンドいいよ」と聴かせてもらったバンドで『Fukai Nana』というバンドがありました。

ディスクユニオン・インディーズのレーベルからリリースしたデビューEP『can i love you?』というアルバム。「ほぉぉ〜」と思ったのですが、ジャケットからは、果たしてどんな音を出すバンドなのか、良い意味で想像も尽きません。で、インディーズらしくスリムな紙ジャケにCDが入っていたので、何故だかアタシは「こりゃいいぞ」と思って早速音だけを聴いたのですが、いや、これは色んな意味で予想と違って期待通りの「今の時代のロック」もっと言えば、音楽が本当に好きで楽器初めてバンドやって、で、自分達が「これはいいぞ」と思った音楽のエッセンス、そのピュアな部分へのリスペクトが、演奏の内側にある個人としてのヒリヒリとした感情と美しく絡み合って、そして切なく煌めいている。

ここまで書いてて、ちょっと詩的な表現になり過ぎてる?このレビュー。と思ったのですが、や、このままいきましょう。Fukai Nanaのサウンドは、嘘偽りなく聴く人をそういう詩的な気分にさせてくれるし、これから聴いてみようかなという人にこそ、演奏の細かい部分より先に、詩的な狂おしさとか切なさとか、そっちに触れて欲しいとアタシはストレートに思ったんです。





can i love you?

【収録曲】
1.飛び込む
2.愛ができない
3.Intro
4.春物語
5.Stelle Cadenti


あらかじめ、メンバーがどういった人達で、何歳ぐらいで・・・というのは訊いて知ってはいたのですが、いや、音を聴いて本当に驚きました。

楽曲のスタイルは一言でいえばオルタナティヴとか、ポスト・ロックとか、そういう区分で語られるようなものでしょう。プラス00年代以降例えば日本やヨーロッパのインディーズ・シーンで一大勢力となっていた、音響系と言われていたバンド達のような、独特の”ゆらぎ”のある空間感覚を持つ、切ないリフと儚いギター・ノイズ。

個人的には、アタシが18,19の頃、バンド仲間達とパンクがどーのグランジがどーの言ってた時、オルタナよく分からなかった私に、友達がアパートの部屋で、やっすいラジカセで聴かせてくれたソニック・ユースやピクシーズ、ダイナソーJr.なんかを聴かせてもらいながらワクワクしてたあの感じが、Fukai Nana聴いてると胸の奥からリアルに蘇ってきます。

そう「え?この人達ほんとに20代前半の人達なの??」と、びっくりするぐらい、彼らのサウンドは90年代の、良質なインディーズバンドが次から次へと未知の素晴らしいサウンドをひっさげてアタシらクソガキの耳を刺激しつづけてくれていたあの時代のサウンドに限りなく近い。

インディーだろうが宅録だろうが、今の時代やたら鮮明で刺激が強くて綺麗に粒の揃った音は、いくらでも加工して作れるんです。

でも、彼らのサウンドは敢えてくぐもった音の塊が、中心に”ギュッ”と集まった音。粗いままに放たれるリフやアルペジオが、そのくぐもった音の塊の一部となって、時にそれを突き破り、時にそれをすり抜けて耳に届く時、言葉に出来ない部分のヒリヒリした感情もサウンドに乗っかっていて、心は気持ち良く掻き乱されます。

あぁ、何か最後まで抽象的な詩的レビューになっちゃいましたが、音楽ですもんね、たまにはいいでしょう。

ひとつだけ、これだけ「90年代インディーズ」を感じさせるサウンドなんですが、全然「懐かしいな」だけに収まらなくて、今の最先端な音楽の感じが凄くします。というよりも、今の時代の主流である、ハッキリクッキリした厚いバンド・サウンドから無駄なものをどんどん削っていった音が、多分たまたまこういうサウンドになったと思います。しかしその”たまたま”をここまでしっかりとした形に出来るのって、相当に音に対する真摯な探究心がないと出来ませんし、色んな音楽を知って「どう響かせれば気持ちいい」(サウンドだけじゃなくて、メジャーとマイナーが美しく混ざり合うメロディーとリズムの進行も)というヴィジョンがしっかりと定まってないと出来ません。

色々と感覚で書いてしまいましたが、とにかくアルバムを通して聴いて、ラストのギター・ノイズが「キキキ...」と切なく虚空に響くまでを心に刻んでみてください。















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2019年01月24日

The 5.6.7.8's Bomb The Twist

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The 5.6.7.8's Bomb The Twist
(Time Bomb)

さて皆さん、今日も皆さん大好きな日本のガールズ・ガレージ・バンドです。

そこで皆さん、前回ご紹介したルルーズ・マーブルは、これはもうアタシがまずもって度肝を抜かれるぐらいに衝撃を受けたバンドでありますが、今日は「ガレージ」としてもっと皆さんにとっても親しみやすいというか、安定したカッコ良さで世界的人気を誇るThe 5.6.7.8'sです。

バンド名がどう読むか分からず、アタシなんかはもう強引にずっと「ごーろくしちはちズ」ってまんまな読み方をしておりましたが(大体SMAM69も”しゃむろくじゅうきゅー”って呼んでたし、MC5も”えむしーご”って読んでた程度にはアタシは数字が苦手です)、正式な読み方は『ザ・ファイブ・シックス・セブン・エイツ』であります。

でも、日本では「ごろっぱち」と呼ばれているということを最近知ったので、アタシも簡単な方に便乗して「ごろっぱちズ」と呼ばせてもらっております。ええ。

The 5.6.7.8'sといえば、バンドブーム全盛の1986年デビューの大ベテランで、あのホワイト・ストライプスやジョン・スペンサーも熱烈なラヴ・コールを送る程の実力派。極め付けは型破りな映画監督として知られるクエンティン・タランティーノが日本に来た時入った店でかかってた彼女達の曲を聴いて「素晴らしい!オレの映画に出て欲しい!!」とすっかり興奮し、後に代表作となる『キル・ビル』に、ほとんどプロモばりの長い演奏シーンでの出演を頼み込み、実際に一番の見せ所となる大決闘シーンの導入部で、思いっきりステージで演奏してるシーンが5分ぐらいという、素晴らしい起用でありましたが、これがきっかけとなって海外で大ブレイク。今や「日本を代表するガールズバンド」としてライヴやフェスに引っ張りだこなぐらいの超人気バンドなのであります。

ガレージロックといえば、前回の記事でもご紹介したように、元々はアメリカの練習場所のない少年達が、自宅ガレージでエレキギターをただもうデカい音を轟かせていたのが始まりになっておりまして、そういう意味で粗削りなロックの代名詞となっている部分もあるんですが、The 5.6.7.8'sは演奏が非常に上手く、いかにも50年代や60年代といったヴィンテージな音作りを極め、かつ人工的な歪みに頼っておりません。

音の質感は実に気持ちの良い”テケテケ”のあの感じなんですが、演奏そのものの迫力や音そのもののバシィン!と迫る芯のある強さは大変なものです。これは機材や録音云々ではなく、長年のライヴの現場で実力として培われてきたものです。

さて、当初からその「女だてらにガレージロックをやる個性的なバンド」として知る人ぞ知る存在で、アメリカやイギリスやオーストラリアなど海外のイベントには積極的に参加して演奏していた彼女達の活動が日本でも脚光を浴びるようになったのが1990年代も半ばになって、日本でもガレージロックというものがようやくちゃんと聴かれるようになってからのことであります。

はい、実はアタシも彼女達の事を知ったのが、1996か7年頃、雑誌のレビューコーナーをチェックしてる時の事でした。


当時の流行といえばメロコアやスカコアなど、どちらかといえばカラッと能天気でメロディックな、それこそTシャツに短パンにスポーツシューズみたいなのが”パンク”として語られておりまして、その頃のアタシといえば「何だよぅ、爽やかなのなんてパンクじゃないもん」と、何故か意地になってまして、あえて、そう、あえてそういうスポーティーな感じのしないバンドの写真とかジャケットとかを見て聴きたいものをチョイスしていた時期にガレージという言葉も知ったんです。

で、The 5.6.7.8'sといえば、とにかく名前のインパクトと「女だてらにガレージか」という、一種の物珍しさから興味を持つに至ったと記憶してます。



Bomb the Twist

【収録曲】
1.Bomb the Twist
2.Jane in the Jungle
3.Three Coolchicks
4.Guitar Date
5.Woo Hoo
6.Dream Boy


その時リリースされていたのが『Bomb The Twist』。

見てくださいこのジャケット、本当にもう昭和の時代からタイムスリップしてきたようなイカした真っ赤なドレスのお姉さん達、カッコイイですよねぇ。

歌詞はほぼ英語、サウンドもギターヴォーカル、ベース、ドラムスですごくシンプルでかつ渋いトーンで実に60年代のあのアナログな感じがするんですが、音の強さや迫力という面では、その頃の似たようなヴィンテージ志向のバンドとは明らかに一線を画すリアルなものでした。

単純に「あの頃の音を再現してる」って感じじゃないんですよ、心の奥底から表現したいことをギターとベースとドラムを使って「ジャーン!」とやったことが聴く人の耳に真っ直ぐ飛んできて心を揺さぶる音。「誰々風」「何々風」とかいう言葉なんぞ、そのゴキゲンなロックンロール、彼女達のキュートで強靭なサウンドの前にはどーでもいいぐらいのカケラにまで砕けてしまう。

実際その頃はロックのギターサウンドもガンガンに進化して、単純に歪みひとつ取っても80年代とは比べ物にならないぐらいの音圧と効果が、アンプやエフェクターのツマミひとつの操作で簡単に出来た時代ですが、エフェクトをガンガンに使ったハードコアの音よりも、エフェクターとか音の厚みが出る最新の機材なんて恐らく使ってなかったであろう彼女達のサウンドの方が、真ん中に音がギュッと詰まったような迫力を感じました。

そう、すごく単純な話なんですが「いい音楽はそれこそ年代もスタイルも関係ない、演奏している人の気持ちと力量が音を鳴らす」ということです。実際このアルバムも6曲入りのミニアルバムなんですが、もう1曲目のノリノリを聴いた瞬間にそんなことどーでもよくなります。ほんと、何回繰り返し聴いたかわかりません。あんまり聴き過ぎて、人に貸したら結局返って来なくなっちゃったというオチが付きますが、まぁそれは借りた本人が「すっごい良かったよ!」と言うのを聞けたから良しとします。

ほいでもってThe 5.6.7.8.sは今も現役のバリバリであります。

去年アタシのバンド練習の時、つい最近のパンク/ガレージのイベントのDVDを観てたら、全っ然変わらないどころか何か底力がパワーアップしている感じのすげー演奏で盛り上げてました。いやほんとカッコイイ。




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2019年01月20日

ルルーズ・マーブル ラヴ・ロック

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ルルーズ・マーブル/ラヴ・ロック
(アルファ/VIVID SOUND)

パンクロックをさかのぼっていくと、その源流を60年代の”ガレージロック”と呼ばれる音楽に求める事が出来ます。

ガレージとは何かといえば、ビートルズの大ブレイクに感化された、主にアメリカの少年達が「ロックバンドかっけぇ!オレらもあんなんやるべ、女にモテるべ」と、ドラム買ってエレキギター持って始めたバンドがその頃いっぱいあって、でもいきなりスタジオとかは入れないから、とりあえず自分達の家で練習するんですが、そんなやかましいお前らは家ん中でやるなとご両親に怒られて、じゃあどこでやりゃいいんだと言えば「車のガレージでもやってろこのすっとこどっこい!」と言われ、そういえばそうだなとガレージで遠慮なくでっかい音でやったのがその語源と言われております。

大体ですね、エレキギターを弾く理由なんてのは8割がたストレス解消です。

これはアタシの経験から言いますが、まだロクに弾けもしないのに一生懸命覚えた2つとか3つとか覚えたコードをアンプに繋いでガコーンって鳴らせば、何かもう自分はスターになったような気分になってこれが大変に気持ちが良い。

いつの時代もそんな感じだったんでしょう。ほいでもって60年代から70年代初頭ぐらいまで、多くのガレージバンドがあちこちで生まれ、小さなレコード会社からシングルを出しては消えて行きました。

ガレージロックの素晴らしい所は、何と言ってもそのシンプルな3コードのロックンロールと、調性なんかとりあえず無視の、衝動の赴くままに歪まされた”行き過ぎ””やり過ぎ”の粗削りなサウンドにあります。

強烈なファズギターに何だかボワボワしたベース、バシャバシャとりあえずやかましいドラム。もちろんこれはひとつの典型ではありますが、割と大人しいトーンでポップな演奏をやっていても、どこか音質や音響的に不安定で、やぶれかぶれで突っ走ってるようなあやうさがガレージ

ロックにはあって、それがいわゆる”メジャーなロック”にはない、ならではの味わいだったりする訳です。

70年代は世界的なパンクロックムーヴメントの影響もあり、一時期は下火になったガレージも再評価されました。

んで、その後ちょっと勢いが衰えたとか、80年代は忘れ去られたとか言われておったりしましたが、実は70年代も80年代も90年代も「郊外に住んでるアマチュアバンドはガレージで練習する」という環境は変わらんかったし、ガレージロックというのはインディーズではずっと何かしら新しいバンドも出て来て、ライヴでもそこそこ盛り上がって、その火が完全に消えることはなかったんですね。

そりゃあそのはずです。だってガレージロックには、ロックに必要なシンプルな3コードとみんなが大好きな粗削りな衝動がありのままの形で詰まってる。もっと単純に、ギターを持ったらあんまり弾けなくても何かやりたくなる音楽だし、やれそうでもある、実際やってみたら何か出来てしまうんですから。

はい、そんな訳でアタシはガレージロックというのは、いつまでも廃れることのないロックの原点であり、良心であると思っております。


で、そんなガレージロック、日本でリバイバルの人気が盛り上がったのが1990年代であります。

ニルヴァーナのカート・コバーンがガールズ・バンドの少年ナイフを「最高にクールだぜ」と絶賛し、ギターウルフが地道なライヴ活動の結果海外でまず人気を獲得し、一方では日本でいわゆる”渋谷系”とはまた別の流れから「60年代っていいよね」と見直す動きがあって、国内のライヴハウスでもカッコいいバンドが多く活躍の場を拡げ、またメジャーインディーズ両方からCDをリリースするバンドが結構いて、MAD3とかデキシー・ド・ザエモンズとか、キングブラザーズとか、もうアタシなんかもワクワクでリリースを追っかけたバンド、結構いました。

その中でも異彩を放っていたのがガールズバンドです。

少年ナイフはもちろん、THE 5'6'7'8'Sとか、ママギタァとか、曲はポップだけど演奏はバリバリ気合い入ってて、とにかくこの頃の”ガールズ・ガレージ”といえば演奏もガレージならではのチープさとワイルドさが混在するあの独特の音作りが実に上手いバンドだらけで、驚いたり感動したりで、アタシは非常に忙しかったんですが、その中で特にぶっ飛んだバンドというのが、今日ご紹介するルルーズ・マーブルであります。

97年か98年頃、池袋のサンシャイン近くの、アニメショップとかアダルトショップとか一緒に入ってる古い雑居ビルの3階にあるレコード屋さんが、パンク/ガレージ系が充実したお店だったので、そこはちょくちょく行っては敢えて聴いたことのないようなインディーズの中古CDやレコードを漁っていたんですが、そこでたまたま見付けたのがこの人達のファースト・アルバムでした。

ジャケットはいかにも60年代っぽいポップなフォントと色調のやつで、そこに60年代っぽい恰好をしたお姉さん達が写ってる。

ほうほう、ガールズ・ガレージかね、なんか良さそうと思ってそのお姉さん達の顔を見たら

目付きが悪い、しかも尋常じゃなく悪いんですよ。

それでも「これは期待できるんじゃないか」ぐらいの、まぁ半分ぐらいナメた気持ちで気軽に購入したんですが、出て来たサウンドはファズ全開の割れまくりギター、物凄くラウドでゴリゴリのベースにバシャバシャドスドスのドラム、「ぎゅわ〜んぎゅわ〜ん」と無秩序に鳴り響く狂ってるオルガン。

そのサウンドだけで「はい、すいませんでした」と軽い気持ちで購入したことを謝りたいぐらいの迫力と衝撃だったんですが、本当に凄いのは「キュート?ポップ?バカ言ってんじゃねぇよ」と言わんばかりにがなる、がなる、がなりまくるヴォーカル!

やってる曲はGSとか昔のロックのカヴァーでした、曲調はほとんどいじってなくて結構ポップなはずなんですが、もう声と音だけで何もかも凌駕して有り余るほどの凄まじさで、その凄まじさはといえば、それまでパンクからメタルからオルタナからグランジから、そこそこロックというものを聴いてきて、何か生意気に知った気になっていたアタシの価値観というか「ガレージってこんなだろ?」という思いあがった知識を心地良く粉砕してくれるぐらいのものでありました。


ラヴ・ロック
【収録曲】
1.アイ・フィール・オールライト
2.ロードランナー
3.スターニン・ブレッド
4.ヘイ・ダーリン
5.リズム天国
6.キャンディ
7.マイ・ボーイ・フレンズ・ギター
8.月よお願い
9.ラヴ・ロック
10.ウイッチ
11.ジャック・ザ・リッパー
12.ハンキー・パンキー
13.リズム天国(オルタネート・ミックス)
14.月よお願い(オルタネート・ミックス)
15.アイ・フィール・オールライト(オルタネート・ミックス)
16.ハンキー・パンキー(コンプリート・ヴァージョン)


本当にその時の”ルルーズ・マーブル体験”って衝撃で、しばらく他の日本のロックは聴けないぐらいのもので、これはもう間違いなく日本のガールズ・ロックを代表するバンドになるし、海外でも凄く活躍するんじゃないかと思ってました。

しかし、99年にヴォーカルのAKKOがバイク事故で急死。バンドは解散。

その後”LULU”という名で復活はしましたが、やはりAKKOの向こう見ずでドスの効きまくったヴォーカルは、他に類を見ない天才的なものだったし、衝撃という意味でルルーズ・マーブルのインパクトが霞むぐらいのバンドの演奏には、未だに出会っておりません。

「ロックは衝動が全て」という言葉がありまして、でもこの言葉はあんまり簡単には使いたくない、そう思いながらもルルーズ・マーブルのような、たとえばガレージっていうカテゴリすらもガンガンにやっかましいサウンドとがなりまくったヴォーカルでぶっ壊してしまうバンドには、もう惜しみなく使いたいと思います。

ファースト・アルバムは現在入手困難ですので、オススメとして2019年現在まだ比較的入手しやすいサード・アルバムを。








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