ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年06月13日

憂歌団 Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ

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憂歌団/Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ
(フォーライフ)


ブルースが好きです。

いや、ブルースのない人生は考えられない。音楽だけでなくても、日常生活の中で何かしら切なくてホロ苦いブルースなものやブルースなことと不意に出会ったら、何故でしょう切なくてホロ苦いのにどこか心が不思議と安らいで、何だか今日も頑張って生きていこうとそんな風に思ってしまう。

こういうのおかしいですか?うん、おかしな話だとアタシも思います。でも、音楽を好きになる気持ちが深まって、音楽を愛してしまってたまんないという風になるというのは、もしかしたらこういうことなのかも知れません。

で、ブルースです。

ブルースという音楽は、アタシが言うまでもなく、アメリカの黒人さんが生み出した音楽なんですが、日常の中での世知辛かったりしょっぱかったりする出来事を感じて嘆いたり悲しんだり、でもソイツを何とか明るく陽気に笑い飛ばしたりしようぜって心はアタシら庶民の中には万国共通でございます。

ね、元はブルーでどうしようもない気分とか因果とか、そういったヤツでもゴキゲンな音楽に乗せりゃあハッピーになれる、聴いた人もハッピーになる。

そういった”心意気としてのブルース”を、日本で演奏してきたバンドがおりまして、このバンドは憂歌団というんですが、そうそう妖怪人間みたいな顔のぺちゃっとした関西弁のおっちゃんが、キュートなダミ声で唄ってね、グラサンかけたギターの人がソロ弾くんだけどピッキングもスライドもめちゃくちゃ上手くて味があって、ベースとドラムもずんちゃかずんちゃか、こらもう聴いてるだけでウキウキしてくるようなスカーンとしたリズム刻んで・・・というあのバンドでございます。

あ、はい、ここまで読んで「誰だそいつら?」と思った人もいいから憂歌団ってのはそういう人達なんだーって一旦思っといてくださいね。

大体アレですよ、ブルースバンドってのは、何だか渋い曲をエレキギターをキュイーンと泣かせてやってるもんみたいなイメージがあるでしょうが、憂歌団はちゃいま(←エセ関西弁)。アコースティックな、戦前スタイルのズンチャカで軽快なバンドなんです。

戦前スタイルとは何ぞや?というご質問には、細かく答えておりますとヒジョーに長くなりますので、そこらへんは当ブログの「ブルース」のカテゴリをヒマな時呼んでくださいますようお願いしますとして、そんなヒマねぇよという方に、あぁそうですかいと乱暴に説明すれば、エレキギターキュイーンでオーイェになる前のブルースは、明るく疾走したり、みんなでワイワイ歌えるような曲がいっぱいあったんです。

実はアタシが本格的に洋楽なるものを聴いて、ブルースも親父に聴かされて「ほほぅ、何かわからんけどいいね」と思ったアタマの悪い中学1年生の時、奄美で生まれて初めて行ったブルースのライヴ。これが憂歌団のライヴだったんですよ。

ある日いきなり親父が

「オゥ、今度の土曜日は名瀬公民館に憂歌団観に行くからお前空けとけぇ」

と言うので

「ゆうかだん?何それ?」

と思いながらも、まぁ何かコンサートだろうと思って、本当に何もわからんまま行ったんですが、その時のライヴがまー初めて体験した「ホンモノ」いやもうホントすごかった。

酒をガンガン飲みながら曲の合間合間にガラガラの関西弁で喋ってる、これ絶対ミュージシャンじゃなきゃその辺の盛り場で朝潰れてるよーなおっさんなんだけど「ほないこか」と言って唄いはじめた時の木村充揮のその凄まじい声の威力と引力ときたら・・・。

そいでもってギターはサングラスかけて正直見た目怖い人っぽいけど、もうギター小僧志望のクソガキのアタシが見ても「あぁ、このギターはやべぇ、並じゃねぇ。いや、プロなんだからんなもん当たり前なんだけど、その中でもかなりハンパねぇ部類の人だ」と分かるぐらいの凄腕の内田勘太郎。

そしてクールにビシャっとリズムを刻む、こっちは見た目も出す音も実に渋い花岡献治のベースと島田和夫のドラムスの完璧なコンビネーション!

いや、バンドのことなんか、ブルースのことなんか全然わからなかったですよ。でも分からない子供のアタシでも、気が付いたら席を立って、手を叩きながら足で一緒にリズム取ってたんですよ。

ライヴ終わった帰りに、車の中で親父に質問攻めでした。あのヴォーカルの人はすごい声だったけど、どうやったらあんな声になるのか、ギターの人は何か指にビンみたいなのはめて弾いてたけど(ボトルネックね)、アレはなんなんだ、そもそもあんなジャンルの音楽はテレビとかで聴いたことないけどアレは一体何ていう音楽だ。と。

そしたら親父、ライヴの興奮冷めやらぬような感じのデカい声で

「アレがブルースよ!」

と、もうザックリ答えてくれました。


まぁブルースですね。色々考えてアタシが誰かに同じ質問されてもそうとしか答えられません。


【収録曲】
(Disc-1)
1.嫌んなった
2.キィ・トゥ・ザ・ハイウェイ
3.おそうじオバチャン
4.はんか街のはんぱ女
5.サマータイム
6.イフ・アイ・ディドゥント・ラブ・ユー
7.10$の恋
8.パチンコ~ランラン・ブルース
9.当れ!宝くじ
10.ALL OF ME
11.スティーリン
12.渚のボード・ウォーク
13.嘘は罪
14.Boy,My Boy
15.ザ・エン歌
16.ア・イ・シ・テ・ル
17.Midnight Drinker
18.シカゴ バウンド

(Disc-2)
1.大阪ビッグ・リバー・ブルース (Album Mix)
2.胸が痛い
3.かぞえきれない雨
4.心はいつも上天気
5.Good time’s rollin’, bad time’s rollin’
6.キスに願いを
7.You are my Angel
8.夢
9.SLOW BOAT TO CHINA
10.オンリー・ロンリー・ジャマイカ
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)
12.家に帰ろう
13.ちっちゃなダイヤモンド
14.ファンキー・モンキー・ベイビー
15.WOO CHILD
16.あれからゾンビ
17.風のうわさに

(Disc-3/DVD)
1.Midnight Drinker
2.ドロボー
3.おそうじオバチャン
4.シカゴ バウンド
5.大阪ビッグ・リバー・ブルース
6.胸が痛い
7.嫌んなった
8.パチンコ
9.Stealin’
10.キスに願いを
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)



もちろん憂歌団は音楽的にもちゃんとしたブルースです。

大体日本人でブルースっつったら妙に黒人っぽさを出そうとかそういう意識が働きがちですが、憂歌団はあくまで音楽的なブルースを演奏の基礎に置きながら、スピリッツの部分はどこまでも日本人、つうかとことん"大阪のおっちゃん"を極めようというベクトルがあって、それがサウンド、演奏スタイル、そして歌詞とでピタッと合致して他にはない味になってる。

彼らの有名な曲で「おそうじオバチャン」とか「パチンコ」とか、いうすこぶるゴキゲンなナンバーがあるんですが、歌詞凄いんですよ。

「私はおそうじオバチャン」と軽快なリズムに乗ってあぁおばちゃんが楽しく掃除してるんだなぁと思ったら

「1日働いてたったの¥2000!」

と、ズバッと悲哀を投げつけるし、「パチンコ」もあぁパチンコ楽しいんだなと思ったら、いや待てこれはアカンぞ、ギャンブル中毒者の歌だぞと「パチンコパチンコ!」とパンキッシュな絶叫の繰り返しの奥にじっとり潜む狂気をぶん投げてくる。

でも、憂歌団はそういう悲哀とか狂気とかを歌の表面に塗りたくったりはしません。明るく楽しく、そして難しくないシンプルな言葉で、大袈裟にいえば本質を歌い上げるんです。これがブルースでなくて一体何でしょう。

もちろんそういう歌以外にも、音楽的な幅は意外と広くて「胸が痛い」や「数えきれない雨」みたいな擦り切れるようなエモーショナルなバラードは、後になってRCサクセションやブルーハーツなんかに受け継がれるスタイルの原型のようでありますし、日本語でカヴァーされている古いブルースも、今そこの飲み屋で出来た曲みたいな親近感がありますな。

ご紹介したアルバムは、とりあえずで聴いてみたい方へ、間違いなく「とりあえず」以上の愛聴盤になること請け合いの2枚組フルボリュームのベストです。限定盤には初期の貴重な映像がたっぷり入ったDVDも付いててコレが凄いんだ。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月12日

チャック・ベリー チャック〜ロックンロールよ永遠に〜


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チャック・ベリー Chuck〜ロックンロールよ永遠に〜

(ユニバーサル)


ロックンローーーーーーール!!!!

あいすいません、冒頭からぶっとい字で叫んで何事かとお思いでしょうが、いやだってアナタ、コレが叫ばずにおれますか。チャック・ベリーですよ、今年(2017年)3月に90歳の大往生を遂げたロックンロール・レジェンドが、この世の全てのロック小僧に残した置き土産、何と1979年リリースの「ロック・イット」以来実に38年ぶりにレコーディングしたニューアルバムが、6月9日の”ロックの日”に発売されたっつうんだから、いやアナタ、コレが叫ばずにおられますか。

はい、ちょっと冷静になりますね。

アタシはもちろんチャック・ベリー、まだロックとか何とかよくわからんうちに、何だか周りのトッポいお兄さん達が聴いてる影響で、長い間知ったかぶりして聴いて、それからロック、ブルース、カントリー、R&Bとか、一丁前に聴いてそのカッコ良さをこれまた一丁前にわかるようになってきてからようやく

「うわぁぁああ、コノ人は本当に本当に凄い人だったんだ」

と驚愕して、ミーハーじゃなくて真剣にブルースとかその後のロックとの深いつながりを意識しながら聴いてみて、何とまぁ斬新でカッコイイことをやった人なんだと、頭悪いなりにようやくわかって以来、彼の50年代から60年代のアルバム、具体的にはファーストの「Afterschool Sessions」から6枚目の「St.Louis to Liverpoor」まではそれこそ夢中で聴きました。

えぇ、偉そうに理屈をこねておりますが、チャック・ベリー聴いてる時の気持ちは今も変わらんですね。何だかんだやっぱりミーハーな気持ちで聴いておるのかもです。だってどんだけ色んな音楽を聴いても、やたら知識ばかりが無駄に自分の中で積み重なっても、チャックの十八番ともいえるあの「ジョニー・B・グッド」とかの

チャララチャララララララララ♪

のイントロを聴けば、心の中で言葉じゃない「うわぁ!」が湧くんです。えぇ、湧くったら湧くんです。

で、自らロックンロールを1950年代におっぱじめ、以来60年近くそのロックンロールをやってきたチャック、ロックンロールからロールが取れてロックになっても、テクノロジーがどんだけ発達しても、ずーーーーっとロックンロールをやってきました。

その姿勢は頑固一徹とかそんなんじゃなくて、ブルースを核に、カントリー、ラテン、ジャンプ、ジャイヴ・・・と、アメリカのあらゆるポピュラー・ミュージックを自分のセンスと才能で全部ごちゃまぜにして”オイシイとこ”を上手い事抽出して、オレにしか作れない音楽を作ってきたんだぜ。というオリジナル・ロックンローラーとしての誇りであるとアタシ思います。

で、そんなチャック・ベリー。偉大なる大御所ミュージシャンらしくゆったり構えていたのかといえばそうではなくて、相変わらずギター1本だけ持ってあちこちでドサ回り。

バックバンドも相変わらず有名ミュージシャンは付けずに(多分)「お前らのギャラはコレでいいよな?な?」という半ば脅迫じみた提案に「いいっすよ」と言うヤツだけを雇って

「いいかお前ら、チャック・ベリー・ミュージックだ。リハーサル?セットリスト?馬鹿野郎オレが今からやるっつう曲をてめーらやればいいんだ」

と、恐らくはずっとやっていたんでしょう。

でもこれ、チャックが最初からやってたことなんで誰も気にしない。大体チャックの曲はみんなガキの頃からレコードで聴き込んでいるので気にしない。

特にアタシはYouTubeで2015年以降のチャックのライヴ映像を観るのが好きでした。

この頃から体調を崩したとかで、チャックはちゃんと歌えてないしギターもマトモに弾けてないんですよね。でもバックバンドが懸命に盛り上げて、チャックが歌えてない場所は、お客さんが大合唱でキチンと補ってる。だからライヴは全然悪くないし、むしろロックンロールとして最高にあるべきライヴの凄さがみなぎってる。

これ、衰えたチャックをフォローしてる訳じゃないんです。例え彼が弾けてなくても歌えてなくても、彼の音楽がバックバンドに火を付けてお客さんを盛り上げてる。世界中のロックファンから無条件に愛される曲を作り、それをずっと演りつづけてきたチャックだからこそ出来ることなんです。


ロックンロール







【収録曲】
1.ワンダフル・ウーマン
2.ビッグ・ボーイズ
3.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
4.3/4タイム
5.ダーリン
6.レディー・B.グッド
7.シー・スティル・ラヴズ・ユー
8.ジャマイカ・ムーン
9.ダッチマン
10.アイズ・オブ・マン


そんなチャック・ベリーのライヴの凄さにグッときて待ちに待っていたニューアルバム。

チャックは体調を崩してから「絶対にリリースしたい!」という執念で、長い製作期間をかけて作り込んできたんです。

残念ながらこの音盤がお店に並ぶのを見ることなくチャックは旅立った訳で、それに関しては色々と思うところもありますが、とにかくアタシが物心ついたて時から「新作が出る」と聞いたことのないチャック・ベリーが新作を出すんです。そして出したんです。結論からもう先に言っちゃえば、コレが最高にカッコ良かったんです。


アレンジはあれこれ余計な音を被せない、実にストレートなもので、チャックの声もギターも凄くメリハリ効いてパンチも効いてます。

曲も安定の"いつものチャック・ベリー・ミュージック"で、コチラも変に奇をてらったりしないで最初から最後まで小細工ナシで突き進んでて、何より音の質感が、今風に媚びてないのにエッジが効いて全然古くさくないし退屈しない。

まだまだ聴いたばかりなので上手く言葉が出てきませんが、これは間違いなくチャック・ベリーの集大成なアルバムです。

トム・モレロが参加していることが話題になってますが、彼のプレイは言われなきゃわからんぐらいの謙虚さで、メインで鳴り響いているノン・エフェクトのチャックのセミアコのあの音を、目一杯のリスペクトで引き立ててます。

チャックは絶対そんなことやらんだろうと思ってましたが、このアルバムはよくあるベテランのご祝儀的な、和やかで懐メロなだけのアルバムにはやはりなってません。

シンプルにギラついた、無駄がなくストレートな刺激がバンバン飛んできて、アタシらクソガキをアツくしてくれる最高のロックンロール・アルバムなのです。





ロックンロール!

チャック・ベリーよ永遠に!


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2017年06月10日

ソニー・クラーク・トリオ(BLUENOTE)

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ソニー・クラーク・トリオ
(BLUENOTE/EMIミュージック)

さて、昨日の引き続き”そこはかとなく哀愁のピアニスト”ソニー・クラークであります。

でもって「ソニー・クラーク・トリオ」という全く同じタイトルでありながら、中身はまるで別物のブルーノート盤。

はい、実はこのアルバム、クラークの数少ない作品の中でも人気、というか「ジャズのピアノトリオ作」という意味においては我が国では屈指の人気盤で、今でもブルーノートのタイトルが再発されると決まって売り上げの上位が定位置という、ものすごく有名なアルバムなんですよ。

その昔お客さんと

「ジャズ入門用にどんなものをオススメすればいいか?」

というテーマで長々と話し込んだことがありまして、アタシはどっちかというと

「ん〜、聴いてもらって”あ、コレが好き!”ってのを選んでもらえばそれでいいんじゃないですかねぇ」

と、割とテキトーな感じだったのですが、お客さんの方が真剣に、色々と提案をしてくれました。

その結果

【初心者にオススメできるジャズ】あるいは【初めての人も安心して聴けるジャズ】の定義というものが出揃って、ザッとまとめればこんな感じになります。

・ジャケットがオシャレ 

「これは名盤」とか言われても中身知らなかったら、だからまずは持っていて嬉しくなるようなセンスのあるジャケットだと聴いてみようかな?って気持ちになる。

・やっぱりピアノもの

もちろんサックスとかトランペットとかビッグバンドとか、それぞれの魅力は奥深いものがあるけれど、まずは、じっくりも聴けるしサラッと流してもいいもの。とくればやっぱりジャズの基本のピアノ・トリオじゃなかろうかと。

・選曲は親しみのあるスタンダード系で

スタンダードというのは、色んな人が演奏している馴染みの曲ですな。たとえばテレビのCMなどでよく使われるような「あ、これは知ってる。どこかで聴いたことある」という曲がアルバムに入っていれば、それだけ親しみも湧くでしょう。

・それでいて軽くない、ある程度”重み”のある演奏

とはいうものの”オシャレ””聴きやすい””親しみやすい”だけでは飽きてしまいます。そこはジャズならではのディープさ、飽きのこない尽きせぬ味わいが、聴けば聴くほどジワッと滲んでくるものが長く愛されます。


そんなことを柄にもなくクソ真面目に論じておりましたら当然

「じゃあその条件を満たすアルバムってあるの?」

という話になりまして、はい、ここでびっくりしたのが、ほんの数秒で同時に

「ソニー・クラークのトリオ!」

と、いう結論が出ました。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(P)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.ビ・バップ
2.時さえ忘れて
3.トゥー・ベース・ヒット
4.タッズ・デライト
5.朝日のようにさわやかに
6.四月の思い出


嘘のような話ではありますがホントです。

実際にアタシもそのお客さんも、モダン・ジャズとかピアノ・トリオとかよーわからん聴き始めの時に


「このジャケ、よく見るしカッコイイんだけど有名なアルバムなのかな?じゃあ買ってみようか」

と購入して、すっかりその魅力にヤラレて夢中で聴いていたという共通の経験があります。

はい、クラークのピアノは、先日のTime盤にも書いたように「軽快にスイングしててもどこか哀しげに漂うムード」の魅力ですね。

こちらブルーノート盤でのメンバーは、ベースにポール・チェンバース、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ。

どちらもクラークとは同年代の若手ですが、2人は既にあのマイルス・デイヴィスのバンドのメンバーとして大いに名を上げていた時期で、人気実力共に一流のバックを付けて、いかにブルーノートがクラークを売り出したかったかも分かります。

で、このアルバムでのクラークは、粘りのある音色でとてもよく歌うチェンバースのベースと、シンバルが派手にガシガシ言うフィリー・ジョーのラウドなドラムに乗ってじんわり。

そう、普通ならよく動くベースと躍動感溢れる激しいドラムに乗せられるままに、ガンガンに弾きまくってしまいそうなものですが、クラークはスピードに乗りながらも、湿り気のある音色で、一音一音をじっくり的確なフレーズを選びに選んで弾いており、その”間”と”タメ”によってやっぱりこの人ならではの哀感が余韻となってジワジワ流れておるのです。

選曲は全部有名スタンダードです。

どの曲も素晴らしいのですが特に名演として名高いし、実際聴いて最高にカッコイイとアタシも思った「朝日のようにさわやかに」この”引きずるような”とよく言われるピアノ演奏に、モダン・ジャズのカッコイイところは良い感じに凝縮されとると思います。ハイ。

同じタイトルでも雰囲気とコンセプトの戦前違うBLUENOTEとTIMEのソニー・クラーク・トリオ。もちろんどちらが好きかは聴く人の好み次第ですが、やっぱり両方聴き比べてそれぞれの良さを皆さんには噛み締めて欲しいです。この人こそ噛めば噛むほど味の出る人ですよ。







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2017年06月08日

ソニー・クラーク・トリオ(Time)

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ソニー・クラーク・トリオ
(Time/Solid)


ジャズのピアニストの中で、不思議と日本でだけ異常に人気という人がおります。

それが今日ご紹介するソニー・クラーク。

1950年代のモダン・ジャズの典型的な”ファンキーで味わいのあるピアノ”であり、どちらかというと派手にダーッ!と弾きまくるタイプではなく、じんわりと情感を込めた一音で聴かせるタイプの職人的なタイプのピアニストなんです。

で、50年代とか60年代の、ジャズ全盛期の頃は「味があるよね〜」というタイプのピアニストってすごく多かったんですね。

ザッと名前を挙げますと、ジュニア・マンスだとかタッド・ダメロン、エルモ・ホープ、それからマイルス・デイヴィスは実はこのタイプのピアニスト大好きで、有名どころだけれどもマイルスのバンドにいたレッド・ガーランドやウィントン・ケリーなんかも実はこのタイプであります。

で、そのマイルスや初期のバンドのピアニスト達に多大な影響を与えたアーマッド・ジャマルなんかもいいですね。ジャマルの繋がりで言えば同じシカゴのARGOレーベルに一枚だけアルバムを残して儚く消えていったドド・マーマロサなんかも・・・あ、いや、キリがないのでこの辺にしておきますが、とにかく

「ジャズを聴いてみよう」

から

「自分だけの好きなジャズを見付けたい」

というステップを経るにあたって、こういった、まぁ簡単に言ってしまえば、渋く通好みな人達の演奏に

「うわぁ、何かわからんけどすごくいいわぁ〜」

となるのは凄く素敵なことなんですね。

おっとっと、話が大分横道を経てしまいそうなので、ソニー・クラークに戻します。

ソニー・クラークという人は、そんな”何かいいね”と言われてそこはかとなく愛されるタイプのピアニスト達の中でも、特に日本人に愛されるサムシング・エルスを持っております。

そのサムシング・エルスとは何か?ということになりますが、コレが

”そこはかとない哀愁”

なんです。

演奏の中で出てくるマイナー・コードを、ちょっとした間とタイミングでもって引きずるように切ない余韻を匂わせる独特の演奏と音色、それは一言でいえば”哀しさ”なんでが、といって哀愁タップリとかそんなのじゃなく、ファンキーな曲の中にジワッ、ジワッと染み込んでいる、本当の意味での”そこはかとない哀愁”であります。

その”そこはかとなさ”というのは、実はアメリカ人にはよーわからんらしく、日本人でソニー・クラークのファンが多いことを知ったアチラのジャズファンが

「ソニー・クラーク?うん、まぁ確かに味のあるいいピアニストだよ、でも何で日本でそこまで人気ダントツなのかがよくわからん」

と、首をかしげたという話もあちこちで読んだり聞いたりして、すっかりおなじみだったりするんです。

このクラークの”そこはなとない哀愁”をすっかり気に入ってかわいがっていたのが、ジャズではこれはもう支持率No.1の人気レーベル「ブルーノート」であります。

モダン・ジャズ・ピアノといえばこの人に影響を受けていない人はいない巨人、バド・パウエル直系の、よく跳ねるバップ・ピアニストでありながら、彼が繰り出すフレーズには、どこか後を引く切ない味わいがあった。

これを聴き逃さなかったブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンは、クラークとすぐさま契約を交わし、その年(1957年)と翌年のうちに何と4枚のアルバムを作りました。

麻薬中毒で若くして亡くなったクラークが生涯に残したアルバムはたったの6枚なんですが、そのうち5枚がブルーノートでの作品であり、もう何か説明するのもまどろっこしいぐらいの、以下のアルバムなんかは、今でも大人気の名盤として多くの人に聴かれ、そしてこよなく愛されております。


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クラークはそんなこんなで「ブルーノートを代表するジャズマン」と、我が国では認識されていて、その認識はおおむね間違いではないんですけど、実は、彼が整然にたった一枚だけ別のレーベルに残したアルバムがあって、そしてその一枚というのが、これがどう聴いても彼の本質を無駄なく浮き彫りにしたピアノトリオの名盤なのでご紹介します。

あ、散々ブルーノートの話で煽ってすいませんね(汗)「ブルーノートでのソニー・クラークに関しては明日以降気合い入れて書きますんで許してちょう。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(p)
ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
マックス・ローチ(ds)

【収録曲】
1.マイナー・ミーティング (take8)
2.ニカ (take5)
3.ソニーズ・クリップ
4.ブルース・マンボ
5.ブルース・ブルー (take3)
6.ジァンカ (take3)
7.マイ・コンセプション
8.ソニア (take1)
9.マイナー・ミーティング (take10)*
10.ニカ (take2)*
11.ニカ (take4)*
12.ブルース・ブルー (take1)*
13.ジァンカ (take1)*
14.ソニア (take3)*

* ボーナストラック



はい、1961年録音の「ソニー・クラーク・トリオ」であります。

実は同じタイトルでブルーノートからもピアノトリオのアルバムが出ていてややこしいので、アタシは「TIME盤」と呼んでおります。えぇ、そうなんです。クラークが、亡くなる2年前に突如フイッと違うレーベルで吹き込んだアルバムで、時期も時期だけにあぁそうか、ブルーノートとの契約が切れたから他のレーベルで仕事してたんだ。と思ったら、この後に再び古巣のブルーノートで「リーピン・アンド・ルーピン」というラスト・アルバムを吹き込んでいるので経緯はよくわかりません。

アタシも最初は

「ふーん、クラークのブルーノート以外でのアルバムねぇ。よくわからんけどカネがなくなったからテキトーに吹き込んだ”日雇い”の仕事なんじゃね?」

とか、結構ナメてかかってたんですが、ナメてました、すいません。コレ、クラークの本気が他のどのアルバムよりも凄まじく感じられる名盤です。

まず、クラークがトリオで一緒にレコーディングしているのが、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)とマックス・ローチ(ドラムス)という二人の御仁。

実はこの2人、ビ・バップ時代からのベテランで、クラークにとっては最高に影響を受けて尊敬するバド・パウエルとしょっちゅうチームを組んで演奏していた、まさに理想のリズム隊なんです。

ズッシリと安定感抜群のフレーズを繰り出しながら、アドリブに即応して絶妙な”ハズし””スカし”が天才的なベースと、シャープなドライヴ感で気持ちよく突っ走るドラム。

この2人が繰り出す独特のエッジの効いたリズムに乗って、クラークはいつになくハードに、無駄のない音色で”ビシッ””バシッ”と、ジャズ・ピアノのアドリブとしては実に的確でクールなフレーズを次々に決めてくれるんです。

尊敬する先輩達のすこぶるカッコいいビートに、本能剥き出しで迫る気合いの入ったピアノは、それまでのクラークとは全く違う、いや、どっちがいいとかじゃない「これでしか聴けない」味わいです。

で、全曲オリジナル(おぉ!)で固めたクラークの楽曲もいいんですよ。例によって彼の楽曲は、カッコ良くスイングする中にやっぱり哀愁がじわっと滲み出てくる「あぁ、せつねぇ!」があります。はい、このアルバムでは、哀愁ありまくってます。

「TIME盤ソニー・クラーク・トリオ」は、まろやかな哀愁ピアニストのキャラクターをかなぐり捨てたクラークの、孤高で厳しい面が見られる、モダン・ジャズ・ピアノの美しいワン・アンド・オンリーなのです。


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月06日

ジャニス・ジョプリン イン・コンサート

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ジャニス・ジョプリン/イン・コンサート
(ソニー・ミュージック)

ロックやブルースといった音楽が、何故魅力的なのか?もとい音楽に目覚めて、夢中になって聴きまくるようになってから、何故アタシはロックやブルースという音楽に、抗し難い魅力を感じてしまうようになったのか?

ということを、柄にもなく真剣に考えております。

まず、ロックやブルースという音楽には、独自の粗さがあります。

綺麗で整っているものとは対極にある粗さは、それは歌い手とか演奏するミュージシャン達の内側のエモーションを力強く放出し、綺麗で整っているものを聴いては味わえない、独自の味わいとか感動とか興奮とか、そういったものとイコールなのかなと思います。

アタシがそんなことを強く考えるのが、ジャニス・ジョプリンを聴いている時です。

ガラガラでザラザラのジャニスの歌声は、決して透き通った綺麗なものではありません。

でも、ジャニスの声は他のどのシンガーにもない力強さと情感の深さに裏付けられた美しさがあるとアタシは思います。

ジャニスはロック・シンガーです。

そしてブルースが大好きでした。

自分の曲を作る前から、古いブルースを"ハスキー"というには余りにも激しい声を張り上げて、唄っており、やがて"ビッグブラザー&ザ・ホールディングカンパニー"というバンドをバックに従えるようになり、ガンガンに歪んだ、ラウドなロック・サウンドに乗せて、それに負けないぐらいのエモーショナルな声を響かせ、大好きなブルースやR&Bのスピリッツが炸裂するパワフルなロックに生命を吹き込みます。

本格的なデビューからたった2年ほどで、文字通り命を壮絶に削り尽くしてあの世に旅立ったことを、後の時代のアタシ達は知っています。

彼女の残された作品にはどれも、ロックとしてのはちきれんばかりの衝動の凄まじさと、彼女自身の人生の波乱万丈のすべてが込められたそのヴォーカルに”ブルース”という言葉の意味を、理屈ではない深いところで教えてくれるような底なしの説得力が迫ってくるのです。

さて、その昔、ある日突然アタシはジャニスのとりこになりました。

高校時代に買った2枚組のアルバム「ジャニス」これが全ての始まりだったんですが、本格的に彼女の歌声にガツンとヤラレたのは20代になってからのこと。

それから熱病にうかされるように彼女のオリジナル・アルバムを買い集め、レコード2枚組の素晴らしいライヴ・アルバムに出会ったのは、ある暑い夏の日。





(Disc-1)
1.ダウン・オン・ミー
2.バイ・バイ・ベイビー
3.オール・イズ・ロンリネス
4.心のカケラ
5.通行止め
6.フラワー・イン・ザ・サン
7.サマータイム
8.エゴ・ロック

(Disc-2)
1.ハーフ・ムーン
2.コズミック・ブルース
3.ジャニスの祈り
4.トライ
5.愛は生きているうちに
6.ボールとチェーン


もちろんジャニスはどれも最高で、優劣なんかとても付けられないのですが、彼女の激しくも優しく暖かい音楽表現の核心は究極的に言えばライヴにあります。

そのヴォーカルのスタイルそのまんまに、リアルな”瞬間”に全てを炸裂させる彼女のライヴ音源に、よろしくないものなどありません。

この「イン・コンサート」は、ジャニスの突然過ぎる死の直後に出された、前半が初期のビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーをバックに付けた演奏。後半が最後のバンド、フル・ティルト・ブギー・バンドをバックに付けた演奏で、曲目を見ればお分かりのように、彼女の代表曲、有名曲ばかりをセレクトした好選曲で、とにかくジャニスを聴いたことのない人にぜひとも聴いて欲しい内容です。

演奏内容について、これはもうアタシがどれだけ言葉を尽くしても、きっと皆さんが聴いた瞬間の感動の方が何億倍も説得力があると思いますので、細かくは書きません。前半が荒削りでジャニスが活き活きと唄っていて、後半はしっかり整ったバンド・サウンドに安心して身を任せて、シャウトする時とグッと感情を抑える時のコントロールが素晴らしかったりするのですが、それは些細なこと。とにかく全曲通して最高のロックでありブルース、これだけはハッキリと断言できます。

前半の最後に「エゴ・ロック」というブルース・ナンバーが入っていて、アタシこれが大好きなんですね。何てことないスローテンポの典型的なブルースなんですが、ジャニスのドバーーー!と吐き出すような声と、優しく包容力のあるビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのギター、サム・アンドリューの声との掛け合いが本当に素晴らしいので、特にブルース好きの方はこの曲にも注目(注耳?)してくださるとアタシは嬉しい。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 19:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする