ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年03月07日

メンフィス・ミニー フードゥー・レディ

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メンフィス・ミニー/フードゥー・レディ
(ソニー・ミュージック)

カワイイ系の女の子がギターを持って自作の曲を唄うというのは、今やもう当たり前です。

我が国でも中島みゆき、藤圭子、椎名林檎、YUI、Miwaとか、いわゆる”シンガーソングライター”と呼ばれるジャンルでカッコ良くギターを持って唄う人は多く、このジャンル(?)の支持は40年ぐらい厚いものがありますが、こういった流れが出来たのって、もしかしたら戦後のフォーク・ブーム以降のことなんじゃないかと思います。

そのちょっと昔といえば「女性は歌を唄うかピアノを弾くものだ」という、まぁこれは古い時代の考え方なんで、そう目くじらを立てんで欲しいんですが、とにかく世界的にそういうのがあった。

戦前なんか女性アーティストのほとんどは、ヴォーカルかダンサーぐらいのもんで、例えばブルースの録音の一番古い年代になる1920年代なんかは、綺麗にドレスアップしたブルースウーマンが、楽器を演奏する野郎共を従えた”クラシック・ブルース”なるブルースがまず流行り「あぁ、ブルースってそういうもんだね」という認識が一般的で、ましてや女がギター弾くなんて考えられなかった。

あ、保守的な「女はどうこう」という考え方が色濃く残っていた戦前の話ですからね。

ところがそんな時代に、女だてらにカッコ良くギターを持って、いわゆるレコード向けのお上品な”クラシック・ブルース”ではない、パンチの効いたブルースを唄う人がおりました。

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そのカコッコイイ姐さんが、本日ご紹介するメンフィス・ミニー。

これも今回ソニーから¥1080のスペシャル・プライスでリリースされた「ギター・レジェンド・シリーズ」からの再発なんですが、メンフィス・ミニーはまずはさておき、とにかくギターが上手いんです。

今回「戦前ブルースの単なるリイシューじゃなくて、ギター特集の一環としてメンフィス・ミニーの”フードゥー・レディが出るよ」という情報をキャッチしたときにアタシは

「ははぁ、流石ソニーさんはわかってらっしゃる。確かに戦前ブルースの”ギター名手”といえばたくさんいるけど、メンフィス・ミニーは文句ナシにその中の、しかもかなり上の方に入るもんね」

と、感心してムチウチになる60歩手前ぐらいまで激しく頷きました。

最初に聴いたのが19の時ですね。

小出斉さんの名著で「ブルースの世界」という本がありまして、コレ、初心者には丁度良いボリュームのガイドブックなんですけど、コレで「フードゥ・レディ」が紹介されてて

「む、コレはギターに関しての記述に何か力が入ってるぞ、小出斉さんもギタリストだから、コノ人がここまで絶賛するからには、単なるもの珍しさだけじゃなく、このメンフィス・ミニーって人は本格的に聴かせる実力派に違いない」

と、アタシもほれ、へたっぴぃですが一応ギターも弾きますので、その”楽器やる者の勘”みたいのが働いたんでしょう。すぐにCDを探して購入して聴きましたところ、その気風のいい唄いっぷりと、芯のあるギタープレイにすっかり魅了されました。




【収録曲】
1.DOWN IN THE ALLEY
2.HAS ANYONE SEEN MY MAN?
3.I HATE TO SEE THE SUN GO DOWN
4.ICE MAN (COME ON UP)
5.HOODOO LADY
6.I’M A BAD LUCK WOMAN
7.CAUGHT ME WRONG AGAIN
8.BLACK CAT BLUES
9.GOOD MORNING
10.MAN YOU WON’T GIVE ME NO MONEY
11.KEEP ON EATIN’
12.I’VE BEEN TREATED WRONG
13.GOOD BISCUITS
14.AIN’T NOUSE TRYIN’ TO TELL ON ME (I KNOW SOMETHING ON YOU)
15.MY BUTCHER MAN
16.MY STRANGE MAN
17.IF YOU SEE MY ROOSTER (PLEASE RUN HIM HOME)
18.MY BABY DON’T WANT ME NO MORE
19.PLEASE DON’T STOP HIM
20.I’M GOING DON’T YOU KNOW


これも偏見だったんですが「まぁ、ジャケットでギター持ってるけど、バックにはバンドがついてて、当然リードギター弾くような名手がいて、ミニーさんのギターは言っても唄に合わせてぶんちゃかやってる程度のもんだろう」と、アタシ完全にナメてたんです。

ところがどっこい、ミニーさんのブルースは、想像していた「何となくシティ・ブルース&和み系」のそれではなく、ブルースの泥臭さ、アクの強さも十分に感じられるけど、その演奏は実にしっかりしていて素人臭くない。

強いていえば”洗練されたカントリー・ブルース”或いは”泥臭さ絶妙なシティ・ブルース”とでも言える非常に個性的かつ媚びてない硬派なもの。

サウンドは、後半ちょっとだけバンド編成の録音があるものの、基本はサポートでギターやピアノ、ベース”だけ”を付けたものか弾き語り。ミニーさんのギターはどの曲でも”ザッザッザッ”としっかりとしたビートを親指で刻みながら、人差し指と中指でオブリガードを入れていくスタイルで、全編通してダテじゃないホンモノのギター・ピッカーぶりを披露してくれております。

特にタイトル曲「フードゥ・レディ」でのギターのザクザクぶりがいいですなぁ。固めの音で低音弦をガツガツ刻んでいるんですが、その規則正しいビートは途切れないしブレないし、楽曲はシティ・ブルース風ですが、そのノリにはやはり粘りのある南部のフィーリングが秘められております。

1900年前後(詳しい生年は不明)にルイジアナで生まれ、小さい頃からギターを持って唄っていたミニーさん。そのまま人口の多いメンフィスに流れて、そこで人気を博したかた”メンフィス・ミニー”。

人気も実力も確かだった彼女は、1930年代にはすぐに大都会シカゴに移住して、並み居る人気ブルースマン達と競い合って、その中で更に人気をかっさらっていたんだとか。

この”フードゥ・レディ”は、正にそんなミニーさんが、シカゴへやってきてすぐの頃から、最も勢いがあったとされる時期の音源をベストな選曲でまとめたものです。

洗練と泥臭さ、可憐さと逞しさが、どの曲どの演奏の中でも絶妙なバランスを取りながら渋い光沢を放っている彼女のブルースは、性別抜きにしても戦前ブルースという”人と違ってなんぼ”の世界の中でも一際個性的であります。




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2017年03月03日

ブッカ・ホワイト パーチマン・ファーム

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ブッカ・ホワイト/パーチマン・ファーム
(ソニー・ミュージック)

皆さんこんばんは、本日もソニー・ミュージックによります気の狂った¥1080で古今の素晴らしいギター・ミュージックを聴こう!という最高の再発企画「ギター・レジェンド・シリーズ」からのセレクトでお送りいたします。

昨日はサン・ハウスの戦後録音ながらこれはもう弾き語りブルースの作品としては恐らく歴史上5指に入るであろう名盤であります「ファーザー・オブ・ザ・フォーク・ブルース」を紹介しました。

本日もブルース、しかもサン・ハウスに負けず劣らずに濃厚でインパクトのある名盤をということで、これもLP時代から「コレは聴いとかんといかんでしょ」と、多くのブルースファンをして言わしめたブッカ・ホワイトの「パーチマン・ファーム」でございます。

これもまずジャケットに惹かれますよね。ドカーンと超アップで貼られたイカツいおっさんの顔、吸い込まれるような深い眼差しと、よく見ると折れ曲がってる鼻など、何も書かれてはおりませんが、この人の恐らくは相当にハードなものであっただろう人生が刻まれたジャケットです。

ちなみにアタシ"おっさん"などと言ってますが、このデカデカと写っている男こそがブッカ・ホワイト。

大好きなブルースマンであり、サン・ハウス、チャーリー・パットン、ロバート・ジョンソンらと共にわが国では「デルタ・ブルース四天王」と特別に称えられておりますが、実際にブルースの大源流であるミシシッピ・デルタ・ブルースを代表する一人であり、独自のパーカッシブなデルタ・スタイルを情感豊かなボトルネック・スライドで発展させた凄い人です。

その後のモダン・ブルースへの影響という意味でも、イトコのB.B.キングが

「幼い頃にブッカ・ホワイトのスライドをよく聴いてたね、本当に素晴らしいニュアンスのギターだったよ。でも私にはどうしてもボトルネックを上手く使いこなすことが出来なくて、チョーキングであのニュアンを再現しようと思ったんだ」

と、証言しているように、戦後主流になったチョーキング/スクィーズ・ギター奏法に与えた影響もかなりデカいということも特筆に価することでしょう。

さてこのブッカ・ホワイト、1911年にミシシッピに生まれ、十代の頃にチャーリー・パットンの演奏を生で観て「オレもこの人のようになりたい」と憧れ、そうこうしているうちに早いうちからパットンからブルース・ギターの手ほどきを受けるようになっていたといいます。。

ブッカがブルースに目覚めた1920年代後半のアメリカは大不況のまっただ中、食うために音楽を選んだブッカもその例外ではなく、より多くの場所で稼ごうと、貨物列車を乗り継いでの旅を続け、その行動範囲は北部シカゴにまで及ぶ広いものでした。

行く先々の街でブルースを歌いながら、ブッカはその強い腕っぷしを買われてボクサーとしても活躍。その日暮らしの典型的な放浪のブルースマンなライフスタイルを生きていたブッカですが、そういう生活に付き物の酒や女に関わるトラブルにやはり彼も巻き込まれてしまい、1937年ミシシッピのとある道で、恨みを持って待ち伏せし、襲ってきた男の膝をとっさに銃で撃ち抜いて逮捕され、刑務所に服役することになります。

この時彼が収監されていたのが、南部で悪名の高かったパーチマン農場刑務所であります。

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そう、本日ご紹介する「パーチマン・ファーム」は、実際にチェインギャングとして服役していた経験を基に作られた、刑務所暮らしと酒や女、旅にまつわるハードライフのブルースを渾身の魂を込めたブルースで綴った作品なのです。




【収録曲】
1.パインブラフ・アーカンソー
2.シェイク・エム・オン・ダウン
3.ブラック・トレイン・ブルース
4.ストレンジ・プレイス・ブルース
5.ホェン・キャン・アイ・チェンジ・マイ・クローズ?
6.スリーピー・マン・ブルース
7.パーチマン・ファーム・ブルース
8.グッド・ジン・ブルース
9.ハイ・フィーバー・ブルース
10.ディストリクト・アターニー・ブルース
11.フィクシン・トゥ・ダイ
12.アバディーン、ミシシッピー
13.ブッカズ・ジターバグ・スイング
14.スペシャル・ストリームライン


録音は収監前の1937年の2曲と釈放後の1940年の12曲。

言い伝えによると、ブッカはこの発砲障害事件で無期懲役の判決を言い渡されておりましたが、刑務所内で演奏を披露して恩赦を貰えて釈放されたとも、レコーディングのために脱獄したとも言われております。

また、戦後の”ブルースの生き字引”とも言われている放浪の9弦ギター弾き、ビッグ・ジョー・ウィリアムス

「ブッカが逮捕されたのは1937年だ。確かヴォカリオン・レコードがヤツの曲を2曲録音している時にミシシッピの保安官がスタジオに乗り込んで、ヤツぁそのまんま持って行かれたのよ」

と、インタビューで答えております。

その真偽はともかく、ここで聴かれるブッカのブルースは、言われなくても間違いなくハードライフの苦悩や葛藤が、身もすくむような緊張感で刻まれた、特別なリアリティの溢れるものです。

1曲目の「パインブラフ・アーカンソー」では「フゥゥエーゲラップザモーニン・・・」と、裏声から入ってくるんですが、激しく高音をかきむしるスライドと相俟って、コレが何度聴いても鳥肌が立ちます。

また、伝統的なミシシッピのダンス・ソング(ミシシッピ・フレッド・マクダッウェルやR.L.バーンサイドも唄ってる)「シェイク・エム・オン・ダウン」も、軽快なアフタービートながら、どこか重くやるせない情感があります。

ブッカの”ミシシッピ・デルタ・スタイル”は、彼が多大な影響を受けたチャーリー・パットンやサン・ハウスから、ラフで荒々しいボトルネック奏法と、強靭なビートのキレは受け継いでおりますが、よくよく聴くとそのギターはとても繊細で、感情変化の微妙な”揺れ”をも、ボトルネックのちょっとしたフレーズの小技や余韻が捉えて表現しているようであります。

60年代に再発見されて以降、音源も映像もたくさん残っておりますが、戦後は豪快な味わいが増した感がありますので、本作での荒々しさと繊細さが独特の緊張感の中で混ざり合った演奏というのは、他で味わえない独自のものだと思います。

いずれにせよミシシッピ云々はこの際関係なく、戦前に残されたブルースすべての音源の中でも特異なリアリティに溢れたブッカ・ホワイトの「パーチマン・ファーム」。これは全てのブルース好きにサラッとでも耳を傾けて頂きたい珠玉の傑作です。

うん、全然”サラッと”は聴けないとは思いますが。。。




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2017年03月02日

サン・ハウス ファーザー・オブ・ザ・フォーク・ブルース

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サン・ハウス/ファーザー・オブ・ザ・フォーク・ブルース
(ソニー・ミュージック)

とにかくもうジャケットが素晴らしくありませんか?

白いシャツに紐ネクタイをキッチリ占めた老ブルースマンが、ナショナル・スティール・ボディ・ギターを構え、歳月が深く刻まれた皺だらけの顔と尋常ならざる深い目付きで真っ直ぐに前を見据えている。あぁ、これがブルース。

いや、これがブルースのレコードのジャケットじゃなかったら、一体何をブルースだと言えばよろしいのかと・・・。

本音を言えばこのアルバム

「はい、このジャケにブルースを感じた人は買いなさい。あとはアタシがガチャガチャ言うまでもねーから」

とだけ殴り書きして終わりにしたい。

だって中身はジャケット通りの100%ピュアな、混じりっ気なしの見事なディープ・ブルース。

つうかこれがブルースじゃなかったら何をブルースと(以下略)なんでございますが、せっかく今からブルースの深い泥沼に沈み込んでやろうと思っているこのブログの読者さん(いるのか本当に)に対してあまりに不親切なので、はい、ちゃんと中身をご紹介します。

サン・ハウスは、俗に「ブルース発祥の地」とも言われるミシシッピ・デルタ地方にて"デルタ・ブルースの父"と呼ばれ、同じく"デルタ・ブルースの創始者"と崇められるチャーリー・パットンと共に、ブルース第一世代の傑出したシンガー/ギタリストとして、独特のパーカッシブで荒々しいスタイルのミシシッピ・デルタ・ブルースの基本型を作り上げました。

「バカバカ叩き過ぎて木製のギターだとすぐにボディが割れてしまうから」

という凄まじい理由で金属ボディのギターを持ち、弦を激しくバチバチ弾きながら背骨をえぐるかのような強烈なスライドを放ち、また、腹の底からブルースが溢れているかのようなパワフルなヴォーカルは、戦前南部では圧倒的な存在感を放ち、聴く者をことごとく引きずり込んでいたといいます。

ちなみに彼やチャーリー・パットンを直に見て引きずり込まれ、ブルースの道へと突き進んだのが、若き日のロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフらであります。

個人的には特にマディ・ウォーターズのとことん泥臭いタフなボトルネック奏法は、サン・ハウスの"直系"であると思っとります。

サン・ハウスは、1902年に生まれ(諸説あり)、熱心な教会信者だった両親の影響で、幼い頃から教会で唄い、やがて一人立ちしてからは、ギター片手にあちこちで神の教えを激烈なスピリチュアル(ゴスペルの原型)と共に解く説教師として活躍しておりました。

「えぇ!デビルズ・ミュージックの元締めみたいなブルースマンが説教師!?」

と、アタシも思いましたが、これには深い訳があって、実は彼は説教師時代にタチの悪い絡み方をしてきた男に殺されそうになり、反撃して相手を殺してしまいます。

正当防衛とはいえ、殺人は宗派的には大罪ですからサンは破門。同時に説教師としての職を失い、刑務所に服役します。

その時の態度がとても殊勝であると、なんとたった1年のお務めで釈放されたサンは、出所してしばらくは農場や鉄道工事などの肉体労働者として働いていますが、やはり音楽への想いは絶ち難く、ドッケリー農場で出会ったチャーリー・パットンやウィリー・ブラウンらと共に、さすらいのブルース人生を送ることを決意するのであります。

1930年代はミシシッピ近郊では「知らない人はいない」とすら言われ、パットンらとレコーディングも行います(「伝説のデルタ・ブルース・セッション」)。

更に1941年から42年にかけては国会図書館用のレコーディング・セッションもこなすなど、一見順調そうに見えた音楽人生でしたが、パットンとのレコードは結局リアルタイムで陽の目を見ることはなく、国会図書館用の音源も単なる資料であり、彼の存在を広く世に知らしめることはなく、ラジオから次々流れるレコード・ヒットの勢いに押し流される形で、ブルースマンとしてのサン・ハウスは、40年代後半にもなると、いつの間にか過去の人になっておりました。

いくらミシシッピの片田舎で唄っても唄っても、何ら報われない生活に嫌気がさしたサンは、故郷と音楽を捨て、ひっそりカタギとして生きていくことを選びます。これが1948年のことであります。

それからおよそ15年、サンはニューヨーク州のロチェスターという、およそブルースとは縁のない街で、日雇い労働者、調理人、動物病院の補助係などをしてひっそり暮らしておりました。

ここでやって来るのが、おなじみの60年代フォーク・ブルース・リバイバルです。

熱心な白人青年らが、アメリカ南部中を探し回って、活動休止中の伝説のブルースマン達を次々"再発見"してはライヴやレコーディングに引っ張り出していた、あのムーヴメントによってサンも1964年に再発見されるのですが、皆が「生きてるとしたらミシシッピ近辺に住んでいるだろう」と思い込んでいたために、彼だけがかなり発見が遅れたと言われております。

サンを発見した3人の青年達は、最初不審がって話も聴こうともしない彼に昔の演奏のテープを聴かせてこう言いました。

「ミスター・サン・ハウス、僕らはもう一度こういう素晴らしい衝動にうち震えたブルースが聴きたいんだ。そして僕らと同じようにこういうホンモノのブルースが聴きたいと願っている若者がたくさんいる」

サンの中で、必死に圧し殺し、無理矢理忘れ去ろうとしていたブルース衝動が沸き上がり

「オレに出来るかって?小僧共、目の前に誰がいると思ってるんだ」

と、鋭い目付きのブルースマンの顔になって言い放つのに、そんなに長い時間はかからなかったといいます。




【収録曲】
1.デス・レター
2.パーリーン
3.ルイーズ・マギー
4.ジョン・ザ・レヴェレーター
5.エンパイア・ステイト・エクスプレス
6.プリーチン・ブルーズ
7.グリニン・イン・ユア・フェイス
8.サンダウン
9.レヴィー・キャンプ・モーン


サン・ハウスがニューヨーク州ロチェスターから、3人の白人青年によって再びブルースの世界へ飛び出したその年の1964年、最大のコンサートである「ニューポート・フォーク&ブルース・フェスティバル」に出演。

"生きた伝説"の、伝説に違わない壮絶な演奏を目の当たりにした聴衆はもちろん大熱狂、サンは演奏の後のステージ裏で、満足に酒を煽り、煙草を吹かしておりました。

そんな彼を、一人の巨大な、多くのブルースマン達の中でも一際目付きが鋭く、凶暴なオーラをまとった男が立ち尽くして見ています。

サンは彼が、かつて南部で自分やチャーリー・パットンの周囲でちょこまかしていた若者だとすぐに気付き、緊張で固くなっている彼にスタスタ近付いて行って、ニヤリと笑って言いました。

「よぉクソガキ。俺達が夢中で追っかけていた南部の双子のべっぴんは今どうしてるだろうな?」

緊張していたその男、いや、今やシカゴブルースの一画を束ねるビッグボスとなっていたハウリン・ウルフは、最初緊張していましたが、サンのその言葉に満面の笑みを浮かべ、それからしばらく和やかに昔話で盛り上がったそうであります。

そしてそのステージ裏での話が

「あのハウリン・ウルフがそんな風になったサン・ハウスって一体何者だ!?」

と更に伝説となり、皆がアルバムを心待ちにしていた1965年、伝説のブルースマン、サン・ハウスの初めてのレコードである本作「ファーザー・オブ・ザ・フォーク・ブルース」が遂に世に出されました。

このジャケット、そして「フォークブルースの父」のタイトルの素晴らしさを凌駕するコレが素晴らしい内容なんです。

63歳という年齢に蓄積された深い深い、というよりも、どうあがいても体から剥がれずに、どれだけ逃げても逃げ切れない強烈なブルース・フィーリングがです。

全身から激しく振り絞った声、全力でブッ叩かれて弦とボディが「バカン!ビキン!」と硬い悲鳴を上げるギターによって弾き出されるモノホンのデルタ・ブルースは、もう息をするのもはばかられるような、重く濃密な空気を聴く人に突き付けます。

「お前のブルースはどうなんだ?」

と。

「朝起きたら"急げ急げ、お前の女が死んじまった"って書かれた手紙がきた」

と、ヘヴィな死を唄う「デスレター」や、恐らくは実体験に基づいているであろう日雇い労働と恋人との別れがえぐるようなスライドとともに切々と唄われる「レヴィー・キャンプ・モーン」等の看板曲はもちろん、伴走は手拍子だけの強烈なスピリチュアルソングの「ジョン・ザ・レヴェレーター」、キャンド・ヒートのアル・ウィルソンによるサイドギターとの絡みが重厚なデルタ・ビートを生み出す「エンパイヤ・ステート・エクスプレス」いやもう曲がどうとかではなく、この盤から叩き出されるサンの声、ギター、そして荒々しいブレスなどの全てが異様な程の緊迫感と生々しさに満ちています。

これ聴いた時、アタシは感動はもちろんしましたが、同時に聴いてはいけない類いのヤバいものを知ってしまったとも思いました。

奇しくもライナノーツにサン・ハウスの言葉があって、これがまたすごく一言でこのアルバムを言い表してる言葉にだったんで、シメに引用します。


『ブルースというのはひどく感情的な、ゾクゾクさせるスリルに過ぎない。君たち坊やがそれを一度も経験したことがないなら、絶対に知らないままでいた方がいい』

ーサン・ハウス










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2017年03月01日

V.A./スライドギター

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V.A./スライドギター
(ソニー・ミュージック)

皆様お久しぶりでございます。

ちょっと体調を崩しているうちに、まぁ世の中というのは凄まじいスピードで動いておりますようで、ボーっとした重たい頭を抱えつつ、ツイッターなぞ見ながら養生しておった訳ですが、その中で看過できないある情報を目撃して「うぉう!!」となりました。

えぇと、ソニーがですね「ギター・レジェンド・シリーズ」と題しまして、ロックからジャズ、ブルースの、特にギターがカッコイイ名盤を、税込みで¥1080という狂った価格で一挙に50枚リリースしますよと。

ほうほうと思ってカタログを見てたら、流石にロックやジャズでは、これはもう誰にでもオススメできるヨダレものの超名盤(サンタナとかスティーヴィー・レイ・ヴォーンとかジョニー・ウィンターとかチャーリー・クリスチャンとかフリードウッド・マックとか)から「うん分かる!」と、ツウを唸らせる渋いところまでを流石に一流レーベルらしく綺麗に網羅していて感動したんですが、問題・・・いや、これはもう事件と言っていいのが「ブルース」のとこです。

何と、タイトル全部の5分の1にあたる10タイトルが戦前ブルースの復刻。しかも!そのほとんどが90年代前半にリリースされたっきりひっそりとカタログから消えてしまっていた幻の名盤なんですよ。

ロバート・ジョンソンはもちろん、ロニー・ジョンソンの「ステッピン・オン・ザ・ブルース」とかサン・ハウスの「ファーザー・オブ・ザ・デルタ・ブルース」とかブッカ・ホワイトの「パーチマン・ファーム」とか・・・あぁ全部書くとキリがありませんが、とにかく厳選10枚のタイトルのことごとくが、当時ブルースのガイドブックにはスペースをデカデカと取って「とにかく必聴」とかそういう言葉と共に掲載されていたものばかりで、90年代戦前ブルースの泥沼に足を突っ込み始めたアタシは、そらもう片っ端から少しづつ買い集めていたアルバムばかり。

もちろんこれらのタイトルは「これからブルースを聴いてみたい」という方や「今ブルースにハマッてやべぇ」となっておられます若い音楽好きギター弾きの皆さんにも、内容&値段の素晴らしさと共に、ホントにオススメしておきたいブツですので、えぇ、アタシさっきからちっとも冷静じゃありませんが、勢いでこれから気力の続く限りこの素晴らしいシリーズから、戦前ブルースの名盤をできるだけ詳しくわかりやすく皆さんにご紹介していきたいと思います。

一発目の本日は「そんなこと言ってもじゃあ最初に何聴けばいいんだよ」と、お思いの方に、とりあえずでもいいから耳を通して欲しいオムニバスです。





【アーティスト/収録曲】
1.Weaver & Beasley/Bottleneck Blues (Album Version)
2.Barbecue Bob/Untitled (Album Version)
3.Blind Willie Johnson/God Don't Never Change (78rpm Version)
4.Blind Willie Johnson/Dark Was The Night, Cold Was The Ground (78rpm Version)
5.Weaver & Beasley/St. Louis Blues (Album Version)
6.Ruth Willis & Blind Willie McTell/Experience Blues (Album Version)
7.Sylvester Weaver/Guitar Rag (Album Version)
8.Tampa Red&Georgia TomYou Can't Get That Stuff No More
9.Charlie Patton/High Sheriff Blues (Album Version)
10.Blind Boy Fuller/Homesick & Lonesome Blues (Album Version)
11.Leadbelly/Packin' Trunk Blues
12.Casey Bill Weldon/I Believe I'll Make a Change
13.Buddy Woods/Don't Sell It (Don't Give It Away) (Album Version)
14.Buddy Woods/Muscat Hill Blues
15.Robert Johnson/Traveling Riverside Blues (Album Version)
16.Bukka White/Bukka's Jitterbug Swing (Album Version)
17.Bukka White/Special Stream Line (Album Version)


じゃじゃじゃん!

スライドギターですよ皆さん、ブルースと言えばのスライドギターですよ。

しかもこれ、ロバート・ジョンソン、チャーリー・パットン、ブッカ・ホワイトら、元祖ボトルネックのミシシッピ・デルタ勢からナイフ・スライドのテキサス・ブルース、ジャズとのオーバーラップ感も楽しい戦前シティ・ブルースの名手達から、アトランタの12弦使い、バーベキュー・ボブやブラインド・ウィリー・マクテル、更にはレッドベリー、盲目の説教師で戦前ゴスペル(ギター弾き語り部門)最強のスライドマスター、ブラインド・ウィリー・ジョンソンまで、本当に広く深く、戦前ブルースを地域やスタイル別に厳選して選曲/収録してあって、何度も言いますがスライドギターや、戦前ブルースの入門には最適。

名前を挙げた有名どころの演奏は、もう言うに及ばず聴きまくってください。重要なのは恐らくほとんどの人が「誰?」となるであろうシティ・ブルースのスライド名手達の隠れた名演。

冒頭の"Weaver & Beasley"は、戦前に南部と北部を結ぶ中継都市で、ブルースの都と言われたセントルイスで人気だったシルベスター・ウィーヴァーとウォルター・ビーズリーのゴキゲンなギター・デュオ。

軽快なリズムで唄うような小粋なウィーヴァーのギターに、絶妙にメロディーで絡むビーズリーによる「こんな風に弾けたらきっと楽しいだろうなぁ」と思うスライドギター×スライドギターの贅沢なインストであります。

Gのタンパ・レッドは戦前シカゴで"スライドの魔術師"と呼ばれたテクニシャン。敢えて太いビブラートを使わず、精密なフレットさばきとやや甘口の繊細な音色が実に都会的で、そのメロディアスな単弦フレーズとモダンな響きのコードを巧みに掛け合わせた技は、なるほど戦後のマディ・ウォーターズからエルモア・ジェイムスからB.B.キングにまで深い影響を与えただけのことはありますわいと納得です。

そして、スタイル云々はまず置いて素直な気持ちで聴いて頂きたいのが、スライドギターの音を世界で初めてレコードに刻んだだけでなく、弾き語り男性ブルース・シンガー&ギタリスト第一号として、後進に計り知れないデカい道を切り開いたシルヴェスター・ウィーヴァーのF。

奇をてらわない、むしろ素朴な味わいの軽妙な演奏の、噛めば噛むほど色々染みる味わいの豊かさはどうでしょう(!)

スライドギターだらけの贅沢な全17曲、コレ一枚あればあなたのブルースライフ、きっと深まりますよ♪



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2017年02月24日

B.B.キング ザ・ジャングル

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B.B.キング/ザ・ジャングル
(KENT/Pヴァイン)

誰もが認める”キング・オブ・ブルース”B.B.キングです。

ブルースが好きとか興味があるとか以前に「洋楽が好き」とか「ギター弾く」とかいうレベルの人なら、実際音は聴いたことなくても名前ぐらいは知っているほどの凄い巨人であります。

ほうほう、じゃあB.B.って何がどう凄いの?

と、お思いの方にはコレです。数あるスタジオ盤の中でも多くのファンが「これこそ最高傑作」と愛して止まない「ザ・ジャングル」です。



【収録曲】
1.THE JUNGLE
2.5 LONG YEARS
3.EYESIGHT TO THE BLIND
4.BLUE SHADOWS
5.THE WORST THING IN MY LIFE
6.BEAUTICIAN BLUES
7.AIN'T NOBODY'S BUSINESS
8.BLUES STAY AWAY
9.I STAY IN THE MOOD
10.I CAN HEAR MY NAME
11.GOT 'EM BAD
12.IT'S A MEAN WORLD


B.B.の人気が、黒人コミュニティのみならず、ロックを通じて全世界に「アレは凄い」と沸騰し始めた1967年のリリースで、当時30代半ばの脂の乗り切ったB.B.の、力強い声とギターにはち切れんばかりのブルース衝動が乗っかった、勢いと熱気の塊のようなアルバムです。

この頃にほぼ完成したB.B.のスタイルといえば、タメの効いたスロー・ブルースでの『泣きのイントロ→堰を切ったように出てくるフルヴォリュームのヴォーカル→そこに思いっきり被せてくる入魂のギターソロ』であります。

このパターン、今ではもうすっかりブルースの”お約束”みたいになっておりますし、実にシンプルなんですが、問題はそのシンプルな構造の中にどれだけの情感をブチ込むことが出来るかということなんですね。理屈抜きでイントロの「キュイーン」が鳴れば、聴いてる側の魂がもう全身総毛立つような感覚が、どの曲のどの演奏を聴いてもリアルに沸いてきてもう大変なことになってしまう。

もちろんB.B.のアルバムは年代毎にそれぞれ素晴らしい味わいがあるし、聴き込めばそれぞれのアルバムならではの「ここ、たまらんよ」が出てくるんですが、これほど理屈や知識的なもんをぶっ飛ばしてダイレクトに「ガガガ!」ってクるアルバムはないでしょう。アタシの場合はアルバムとして最初にちゃんと聴いたのが「ライヴ・アット・ザ・リーガル」で、「あぁ、いきなりこんな凄いライヴ聴いたらスタジオ盤なんか退屈だろうなぁ」とすら思ってましたがとんでもない、ライヴの熱気とはまた違う、中心にギュッと集まった音がスピーカーからダイレクトに飛んでくる凄いスタジオ盤、ここにありました。

はい、確かに多くの人が「最高!」と言う通り、このアルバムには特別な「何か」があります。

実はレーベル移籍のドタバタのさ中に作ったアルバムで、音源は1961年と62年の、主にカヴァー曲を集めたもので、詳しいレコーディングの日にちとかの詳細が不明だとか、オーバーダビングしたホーンのキメのタイミングが1曲目から大胆にズレてたり、スタジオ盤の理屈では色々と”完璧”とは言えないアルバムではあるんです。

しかし、そういった”ちゃんとした部分”でのマイナスを全部帳消しにして余りあるB.B.の凄まじいヴォーカルと、艶のある力強いトーンで響くギター(ルシール)の圧倒的パフォーマンスゆえ、多くの人に愛される名盤中の名盤として、今日まで聴き継がれてきているんだと激しく実感します。




ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 07:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする