ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年05月17日

タジ・マハール Taji Mahal

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タジ・マハール/Taji Mahal
(ソニー・ミュージック)


さて「ブルース」といえば、今やポピュラー・ミュージックの中のひとつでありますが、一方でアフリカン・アメリカンが小さな頃から周囲の演奏を見聞きして覚え、それが自然と身に付いてゆく、或いはそれが自然と身に付く環境で生まれるものであります。

のっけからちょっと専門的な物言いですいません。えぇと、何が言いたいのかと言うと、ブルースって音楽は、ポピュラー音楽でありながら、人種のるつぼである比較的若い国アメリカに住む、アフリカ系の人々の民俗音楽みたいな側面もあるんじゃないか。ということであります。

例えばマディ・ウォーターズやB.B.キングら大御所のインタビューとかではよく

「ちっちゃい頃から綿花畑で働いてたんだ、作業をしながらみんなで唄ってたアレがブルースだったんだなァ」

とかそういう話をします。

つまりアメリカ南部で生まれ育ち、物心付いた頃には周囲の生活の中でブルースが溢れ、それを聴いてくうちに覚えてブルースが歌えたり演奏したり出来るようになったんだ。と。

1950年代ぐらいまでシーンで名を馳せたブルースマン達のほとんどは、そういったコミュニティで生まれ育ち、大人になるとシカゴやデトロイト、或いは西海岸などに移住してその地でブルースの新しいスタイルを切り拓いていきました。

で、今度はブルースが上ってきた都市部で生まれ育った世代のブルースマンになると、上の世代から教わったブルースのダイレクトな影響に、リアルタイムで流れていたヒットチャートのR&Bが加わったり、60年代になるとソウルやロックなど、コミュニティの外にあるメディアからの音楽が、黒人青少年達にどんどん影響を与えるようになるのです。

本日ご紹介するのはタジ・マハールであります。

タジは、ブルースを演りながらもその出自はいわゆるブルース・コミュニィの外にありました。

お父さんがジャズ・ピアニストでお母さんは学校で先生をしながら教会でゴスペルを唄っていた音楽一家に生まれますが、家庭は比較的裕福で、タジも学校成績がよく、何と地元マサチューセッツの大学に進学して1964年に卒業するまで獣医師の勉強をしておりました。

いわゆる「ガキの頃からブルースまみれで」といったタイプではなく、ここまではいわゆるフツーの「都会の大学生」だったんですね。

大学を卒業したタジが「とりあえずプラプラするため」に目指したのは、西海岸の大都市ロサンゼルスであります。

ここは各地からインテリ達が集まって、政治や文化芸術に関する熱いディスカッションで熱気を帯びていた街。或いは単純に”面白いこと”を求めて集まってくる、一風変わった若者達もたくさんおりました。

インテリであり一風変わった若者であったタジは、ここで似たような仲間と出会うのですが、その中の一人にライ・クーダーがおり、意気投合した二人はバンドを組みます。

元々両親の影響で、ジャズやブルースやゴスペル”も”聴いてたタジと、当時の典型的な音楽好きの白人、つまりブルースやR&Bに異様な関心を持っていたライの二人は、互いにセッションや音楽についての会話をしながら、互いの腕を磨き才能をグイグイ引き出し合っていきます。

二人が目指したのは「ブルースを思いっきり土台にした、全く新しい感覚のロック」であり、その目指すところは一定の支持を集めて二人のバンドはメジャー・レーベルと契約しましたが、せっかくレコーディングしたアルバムが何故か日の目を見ることなくバンドは解散。それぞれがソロとしての活動へと足を踏み出すことになります。

それからの二人は言うまでもなく、ライ・クーダーの方はアメリカを代表するスライド・ギターの名手として、今やロックファンでは知らぬ者はいないぐらいのビッグネームになります。

一方タジの方は、ソロ・デビューしばらく後はブルースロックをやっておりましたが、徐々に自らのルーツの探求へとのめり込み、アコースティック・ギターによるカントリー・ブルースの素晴らしさを世に広めるとともに、カリプソ(タジの父親はジャマイカ出身でありました)ハワイアンなども幅広く手掛け、今は「すげぇ渋いアコースティック・ブルースとワールドおじさん」として知られ、更に90年代以降デビューした若手ブルースマンのバックアップにも精力的であります。

アタシがタジのことを知ったのも、弾き語りカントリー・ブルースのビデオでの解説者としてです。

そのビデオの中で

「ブルースというのはこういう歴史があるんだ」

「次は誰々なんだけど、彼のスタイルはこういった感じで・・・(と、おもむろに持っているアコギを爪弾く)」

といった彼の優しく丁寧な解説は、アタシにとってもブルースの素晴らしい玄関口でありました。




(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.リーヴィング・トランク
2.ステイツボロ・ブルース
3.チェッキン・アップ・オン・マイ・ベイビー
4.エヴリバディズ・ゴット・トゥ・チェンジ・サムタイム
5.E.Z.ライダー
6.ダスト・マイ・ブルーム
7.ダイヴィング・ダック・ブルース
8.セレブレイテッド・ウォーキン・ブルース

さて、アルバムの解説に移りましょう。

タジのソロ・デビュー作は1968年のリリースであり、ラッキーなことにデビューの年にローリング・ストーンズが主催するイベント「ロックンロール・サーカス」に招かれ、好評を博してタジの名と、彼がその頃やっていた”アメリカ産の新しいブルースロック”は、イギリスのブルースファン(めちゃくちゃ気合い入ってた)やミュージシャン達に喝采と共に迎え入れられ、タジの方がストーンズやエリック・クラプトン、それからサザン・ロックの雄、オールマン・ブラザーズに与えた影響が実はものすごくデカいんじゃないかと言われております。

はい、このファースト・アルバムを聴けば、彼が如何にその後のアメリカ、イギリス双方のロックに刺激を与えていたかがとてもリアルに体感できるのでありますよ。

スリーピー・ジョン・エスティスやブラインド・ウィリー・マクテル、ロバート・ジョンソンなど、戦前に大きな足跡を残したブルースマン達の楽曲を大胆にロック・アレンジのバンド・サウンドでガツーンと演奏しているんですが、コレが実にけれん味がなくて、すごく真摯な感じに演奏されております。

タジはギタリストとしても優れた腕の持ち主ですが、ここではリードギターのほとんどを、ジェシ・エド・デイヴィスに任せ、サイドギターを実はしれっと「RYLAND P.COODER」という名前(多分本名?)で参加しているライ・クーダーとビル・ボートマンに任せ、自分は実に渋いヴォーカルとブルースハープに洗練しています。

1曲目からいい味出しているタジのハープ、すごく味わい深くてコレだけでグッとディープなブルース感が出ているんですけど、演奏の中心になっているのはジェシ・エド・デイヴィスのリードギター。

チョーキング炸裂のスクィーズ・ギターもスライドも、厚みのある豊かなトーンでグイグイ攻めるように弾いております。ここでの彼のプレイは「ブルース弾くロックの人のベスト」と言っていいでしょうね。うん、言っちゃう♪

アルバム全体が活力のあるへヴィ・ボトムなブルースロックの教科書みたいな、素晴らしい作りであり、コレ聴いて夢中でコピーした同年代のロッカーはいっぱいいただろうなと思います。

例えば「スティツボロ・ブルース」は後のオールマン・ブラザーズの人気曲ですが、そのアレンジの原型をここに見ますし(ジェシのスライドもギュインギュイン唸ってますよー)、「E.Z.ライダー」「ダイヴィング・ダック・ブルース」は、ジョニー・ウィンターがそれぞれこのアルバムのアレンジをモロお手本にした演奏を残してます。



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2017年05月15日

ジョニー・ウィンター 狂乱のライヴ


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ジョニー・ウィンター/狂乱のライヴ


「暑い夏に冷たい飲み物をガブガブ飲むのは、逆に内臓に負担をかけて夏バテを起こしやすい、飲むならば暖かいほうじ茶がいい」

って、皆さん知ってました?

アタシはもちろん知ってました。えぇと美味しんぼという漫画に書いてありました。この前読んだのですよ、フォッフォッフォ・・・。

という訳で、暑い夏の107倍ぐらい熱いジョニー・ウィンターです。

今回ソニー・ミュージックの渾身の企画「ギター・レジェンド・シリーズ」では、ファーストと1971年の「ライヴ」と、もうひとつジョニー・ウィンターを聴くんなら絶対に避けて通れないアルバムがありまして、それが本日ご紹介する「狂乱のライヴ」です。

「狂乱」って凄いですね、タダのライヴじゃなくて狂って乱れておるんですよ、え?「ライヴ」だってそんぐらいヤバかっただろう、今更アタマに狂乱って付けんでも、それがジョニー・ウィンターのライヴだろ、という声も聞こえますが、えぇ、はい、その通りです。黙っててもステージの上では狂って乱れて弾きまくる男、いや”漢”それがジョニー・ウィンター。

分かってはおります、アタシもジョニー・ウィンター・ファンのはしくれですので、その一気にギアが入って狂い弾くオッソロシさは分かっておるつもりです。でも、いくら頭で理解して、聴いて理解しても、聴く度にそんな理屈を吹っ飛ばしてしまうのがこの「狂乱のライヴ」。

えぇ、狂っておるんです、乱れておるんです。前作の「ライヴ」が、ブルースもロックンロールもあって、それこそノリにノッたり、スロー・ブルースに「うぐぉ〜、たまらんっ!」となりながら、興奮しながらも楽しく聴けるライヴ・アルバムだとしたら、コレは一体何て言えばいいんでしょう、とにかく最初から最後まで一貫して”高い”を通り越してやぶれかぶれなテンションで、しかもほとんどの曲がノリノリのロックンロールで、聴く人を感慨に浸ったり、冷静に論じさせてさえくれない、えぇ本気でさいっしょかから最後まで「狂乱」であり「凶暴」なアルバムです。

ジョニーは本質的に「ロックンロールの人」であります。

ロックンロールの人だからこそブルースが骨まで染み込み、彼の表現上のコアになったというのはひとまず置いといて、ズバリ

「やかましくて騒がしい音楽」を、なーんも考えないでひたすら弾き倒してがなりたてる演奏こそが、本当の意味で彼の本質でしょう。





(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.マカロニ・ボニー
2.ロール・ウィズ・ミー
3.ロックンロール・ピープル
4.イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
5.追憶のハイウェイ61
6.スウィート・パパ・ジョン



録音は1976年。

メジャー・レーベルのCBSと破格の契約を果たして、それまで麻薬中毒による一時休養もありながらも、順調に
作品をリリースしていたこの時期、例の”オレがオレが”の性格が炸裂して

「何か前のアルバムはよォ、アレ、メジャーデビューしてすぐの頃だったし、正直好きに作らせてくれなかったんだよね。だから今度のは悪いけど最初から最後まで好きにやらせてもらうわ」

と言い出してリリースされたものであると、まことしやかにささやかれておりまして、内容を聴く限り多分そうでしょう。

編成は「ライヴ」と同じ、ギター×2、ベース、ドラムスでありますが、ここではギタリストがリック・デリンジャーからハードロック畑出身のフロイド・ラドフォードに代わっております。

おお、じゃあ今度はバッキングに徹したサイドギターを従えて、ジョニーが縦横無尽にソロを弾きまくるんだな!?

・・・いいえ、そうではありません。

ジョニーが縦横無尽に弾きまくるまでは合ってるのですが、リック・デリンジャーに引き続きコイツもジョニーのギターに合わせるでもなく引き立てるでもなく、何かもう勝手に弾いております。しかも、トータルなセンスがあり、挑みかかる時もある程度の駆け引きが出来ていたリック・デリンジャーに比べ、フロイド・ラドフォードは何もかも荒削りで「おぉぉ、来た来た!おぉぉ、やったれ!」感が強く、このライヴ全体のやぶれかぶれなテンションに勝手に貢献しておるのです。

いや、こんな「リーダーが好きに弾いてるのにバックも好きに弾く」を、他のバンドがやったらそれこそブーイングものなんでしょうが、そこはジョニー・ウィンターなんですよ、このギター2本の乱暴狼藉に近いどつき合いが、まったくタフでラフでワイルドなアメリカンロックのサイコーなとこなんだよなぁ・・・と、何故か納得させてしまうから不思議なんです。いや、聴く方も強引にねじ伏せる力技の究極が多分コレ。

はい「狂乱のライヴ」最初からハイ・テンションで、スローブルースなんて最後の「スウィート・パパ・ジョン」しか入っとらんのですが、コレがまたそれまでのノリノリギンギンなロックンロールナンバー以上にキレてブッ飛んでるので、しっとりとかじっくりとか、とても聴いちゃおれんです。

間違いなく70年代のリアル・ロックンロール最狂のライヴ・アルバムということで。

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2017年05月14日

ケブ・モ ジャスト・ライク・ユー

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ケブ・モ/ジャスト・ライク・ユー
(ソニー・ミュージック)

ギターにすっかり夢中になっていた高校時代、友達の家で観てすっかりハマッた映画がありました。

皆さん「クロスロード」という映画、ご存知ですかね?



ギター少年が、ふとしたことがきっかけで、かつてロバート・ジョンソンと一緒に演奏したこともあるブルースマン”ウィリー・ブラウン”と出会い「ロバート・ジョンソンの幻の曲を探しに行く」ほいでもってクライマックスではロバート・ジョンソンが魂を売ったという”悪魔(フツーに金持ちそうな黒人の男性)”と、その手下である超絶技巧のギタリストと勝負とかもしたり、もう夢や希望に満ち溢れている面白い映画です。

”ウィリー・ブラウン”の役が、ホンモノのブルースマンであるところのフランク・フロストだったり、悪魔の手下の超絶ギタリストが、当時ギター小僧の憧れのスティーヴ・ヴァイだったりと、そういう見所なんかもいっぱいあって、これは今でも楽しめるし、安くで売ってますんでぜひDVDを買ってください。

で「クロスロード」もう夢中で観てたんですが、アタシが一番心惹かれたシーンはクライマックスのギターバトルじゃなくて、オープニングのコレ↓



「すげーなこの役者さん、ロバート・ジョンソンそっくりだ。つうかアテレコだとは思うんだけどね、この演奏は誰がやってんだろう」

と、そこから数年、アタシにとってはそれこそ幻のロバート・ジョンソンを探すような気持ちで、このオープニング映像の”主”を探していたもんですが、長年に渡るリサーチの末に(してない)この人がケブ・モという、最近(当時1994年)デビューしたブルースマンで、何とあの映像は本人自身の唄とギターによるものなのだという衝撃の事実にブチ当たりました。

90年代初頭までは「ブルースの若手」といえば、シカゴ・ブルースとかB.B.キング系のモダン・ブルースに影響を受けた、要するに「チョーキングぎゅいーん系」の人たちがほとんどだったんですが、90年代半ばぐらいからロバート・ジョンソン・ブーム、そしてMTVアンプラグド・ブームが後押しして、戦前のカントリー・ブルースや、南部のダウンホーム・ブルースをスタイルとして取り込んだ、アコースティックなブルースマン達が”新人”として次々デビューしてきたんですね。

で、ケブ・モは、その先陣を切ってシーンに躍り出た、アコースティックな表現を基本にしているブルースマンでした。

1994年にリリースされたファースト・アルバム「ケブ・モ」は、彼が恐らく最も影響を受けたであろうロバート・ジョンソンや、その他の戦前ブルースのエッセンスを、単なる懐古趣味で終わらせない現代的なシャープさや、アコギを中心にクールなアレンジが施されたハイ・センスな演奏で見事現代に蘇らせた名盤です。

”若手”といっても1951年生まれのケブ・モは、94年の段階で既に分別盛りの40代であり、最初スティール・ギター奏者として細々と活動を続けながら、30歳を過ぎて本格的に音楽で食っていくことを考えて、ブルースの世界へ飛び込んだ人です。

その才能を見出したのは、西海岸を拠点にするアメリカを代表するサイケ・バンド”ジェファーソン・エアプレイン”のヴァイオリン奏者、パパ・ジョン・クリーチであったと言われており、そのジェファーソン・エアプレインというバンドの人達は、バンド名を戦前テキサスブルースの巨人ブラインド・レモン・ジェファソンから取っている事から分かるように、全員が気合いの入ったブルースマニアであります。

「だから何?」と言われるとちと困りますが、つまりケブ・モはそういう気合いの入ったブルースフマニアの耳をして

「おみゃーはホンモノだで、人のバックでやるより自分でギター弾いて唄った方がええがや」

と、言わしめるぐらいの実力とフィーリングの持ち主であったんですね。

果たして43歳で遅咲きのデビューを果たしたケブ・モには、単なる戦前ブルースのコピー野郎で終わらない、幅広くそして深い音楽の蓄積があり、デビュー・アルバム「ケブ・モ」は、アコースティックなサウンドを基調に、カントリー・ブルース、モダン・ブルース、ブルース・ロック、ソウル、R&Bなどのあらゆるルーツ・ミュージックを無理なく無駄なく取り込み、成熟された味わいで多くのファンを魅了しました。ブルースのアルバムとしては異例のスマッシュ・ヒットにもなりまして、

「このケブ・モって人は素晴らしい、ブルースの枠に留めずに、現代の打ち込みやサンプリングに頼らないピュアなR&Bのアーティストとして評価されるべきだ」

という声があちこちで沸き上がり、その2年後にリリースされたセカンド・アルバム「ジャスト・ライク・ユー」は、果たしてそういった内外の声に応えるかのような、ナチュラルなブラック・ミュージックの集大成的な仕上がりとなっております。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.ザッツ・ノット・ラヴ
2.パーペチュアル・ブルース・マシーン
3.モア・ザン・ワン・ウェイ・ホーム
4.アイム・オン・ユア・サイド
5.ジャスト・ライク・ユー
6.ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ
7.デンジャラス・ムード
8.ジ・アクション
9.ハンド・イット・オーヴァー
10.スタンディン・アット・ザ・ステーション
11.ママ, ホエアーズ・マイ・ダディ
12.最後の勝負も勝ち目なし
13.ララバイ・ベイビー・ブルース
14.テイク・イット・アウェイ


実は、アタシが個人的に最初に手にしたケブ・モのアルバムがコレでして、本当に思い入れのある一枚なんです。

最初はやっぱり「クロスロード」のイメージで、こらもうロバート・ジョンソンばりの、渋い渋いアコースティック弾き語りだとしか思ってなくて、もちろんアコースティック・ギターは弾きますし2曲目「パーペチュアル・ブルース・マシーン」とか6曲目の「ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ」のように、モロ戦前の空気を纏ったカントリー・ブルースもありましたが、実際にメインになっているのは、彼自身の野太く震動力(っていうのかしらん)に溢れた声を全面にして、ギターは乾いたバンド・サウンドの中で、あくまでそっと声に寄り添うように弾かれているナンバーでした。

そのフィーリングは表面的な戦前ブルース、カントリー・ブルースをなぞってなくて、もっともっと深い、奥底に染み付いている部分から、例えばサザン・ソウルやカントリーなんかを通して、まだ見ぬアメリカ南部の、どこまでも”生”な空気をスピーカーから放っているようで、色々と細かいことをごちゃごちゃ頭で考えていたアタシの期待を、良い意味でスカーンと飛ばしてくれたのです。

で、ロバート・ジョンソン好きな方は「最後の勝負も勝ち目なし」がしれっとアルバム後半に収録されているのお気付きだと思いますが、コレもアレンジは全く違っています。でもこの”違い”が、嬉しくなるアレンジなんです。ロバート・ジョンソンと同じくアコギでスライドやってますが、何というか胸にジーンとくるんですよ、ミシシッピ川の河口が見えてきよるんです。




”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”

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2017年05月12日

シュギー・オーティス フリーダム・フライト

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シュギー・オーティス/フリーダム・フライト
(ソニー・ミュージック)

世の中には「早すぎた人」というのがおります。

才能やセンスに溢れまくっていて、独創性も影響力も十分すぎるほどにあったけれども、何故か主流になれず「その筋の者」への絶大な人気はあれど、広く一般には知れらていない。いや、知られるきっかけは色々あったけれども、本人の意思と時代のいたずらの両方の原因でもって、そこには乗らなかった或いは乗ることができなかった、眠れる偉人のことでございす。

例えば60年代にキャリアをスタートさせ、現在も”伝説のギタリスト”として活動しているシュギー・オーティスという人がいて、コノ人はそれこそ

「ローリング・ストーンズのツアーメンバーとして誘われてたけどそれを蹴った」

とか

「あのアメリカを代表するヒットメイカー、クインシー・ジョーンズがぜひプロデュースをと言ったが”いや、自分でやりますんで”と、これもあっさり蹴った」

とか

そういう伝説にはいとまがありません。

1953年に”R&Bのゴッド・ファーザー”と言われていたジョニー・オーティスの息子として生まれ、早くからギターの天才ぶりを発揮。

その後父の楽団で演奏しながらも、ブルースを出発点に、R&B、ファンク、ロック、ジャズなど、ありとあらゆる音楽を呑み込んだ、自由なプレイスタイルで多くのファンやアーティストを魅了。

また、全ての楽器を自ら演奏し、自宅にあるレコーダーで多重録音でもって作品を作ったりと、今で言う宅録の先駆けみたいなこともやっておりまして、基本的にそういった手法で作られたアルバムは、独特のポップさとブラック・ミュージックの濃さとロウファイなアナログ感がないまぜになった味があるんです。

昭和の時代にB級少年誌に載っていたSFとか近未来モノのような味わい、といえばちょっとは伝わるべか。とにかく、大スターの息子に生まれながら、天才ギタリストとして華やかなキャリアをスタートさせながら、本人はそんなこと知らんよとばかりに、セッションで裏方を喜んでやったり、自宅に篭って黙々と「自分の音楽」を一人で作っていた。そんな人です。

ですが、彼のプレイや、その宅録やセルフプロデュースという新しい手法にインスピレーションを受けたアーティストはいっぱいおります。

プリンス、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのスライ・ストーン、トッド・ラングレン、レニー・クラヴィッツ、ジム・オルークなど、これも枚数にいとまがありません。

で、そんな人でありますから、自然と音楽性は幅広いものとなって、彼の付き合いはブルースやR&Bを越えたものになっていきます。

最初にシュギーに「一緒になんかやろうぜ」と声をかけたのが、1960年代末当時、気鋭のロック・ミュージシャンとして名を売っていたアル・クーパーとフランク・ザッパ(!)

1969年にはアル・クーパーの双頭セッション・アルバム「クパー・セッション」(何とあのマイク・ブルームフィールドとの「フィルモアの奇跡」の翌年の作品!)、そしてフランク・ザッパのサイケな名盤「ホット・ラッツ」に参加して話題になり・・・というより既に「ジョニー・オーティスの息子」ということで話題になってたんでしょうが、コレに目を付けた大手エピック・レコードがソロ契約を結んで、同年「ヒア・カムズ・シュギー・オーティス」でソロ・デビュー。

1作目では洗練されたR&B感覚で得意のブルースを、凄まじいテクニック(もちろん指が動くだけでなく”聴かせるテクニック”のことデス)で披露しました。

そして翌1970年の、ソロとしてはセカンドのアルバムが、本日ご紹介する「フリーダム・フライト」



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.Ice Cold Daydream
2.Strawberry Letter 23
3.Sweet Thang
4.Me and My Woman
5.Someone's Always Singing
6.Purple
7.Freedom Flight


コレがソウル/ファンク、ジャズ、ブルースが、独自のやや内向的なシュギー独特の感覚で、トロンと溶け合った名盤なんです♪

参加メンツの中心に、当時ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ、そしてヤードバーズ脱退直後のジェフ・ベック・グループのドラマーを経験し、世界的な評価を高めつつあったエインズレー・ダンバーと、70年代後半からのディスコブーム時大活躍したスーパー・キーボーディスト、ジョージ・デューク(この時はまだ全然無名のジャズ志望の若きピアノ/オルガン奏者)がおるんです。そしてバラード名曲「ストロベリー・レター23」では、御大ジョニー・オーティスも参加して、大いに盛り上げております。

まずはのっけからアレンジのセンスと、乾いたビートにのっかってのゴキゲンなファンク・ナンバー「アイス・コールド・デイドリーム」から、何ともポップでたまらないノリです♪

「ストロベリー・レター23」も、熱唱系ソウル・バラードではなくて、ビートルズ辺りからの影響を強く感じさせるソフトな雰囲気で、続く「スウィート・サング」は、また空気をガラッと変えて、粘るビートにアコースティックなスライドギターがすこぶる渋く、4曲目「ミー・アンド・マイ・ウーマン」は、スモーキーなムードの中、情感豊かなギターがすすり泣く、洗練を極めたアーバン・ブルース。

後半はまったりしたオルガンと、暖かな歌声、そして爽やかなギター・カッティングからのハートウォームなソロが心地良いソウル・バラードの「サムワンズ・オールウェイズ・シンギング」そして7分以上に及ぶ渾身のスロー・ブルース(インスト)の「パープル」から、流れは一気にラスト・ナンバーのタイトル曲「フリーダム・フライト」へ。

アルバムとしては「ブラック・ミュージックと同年代のロックの要素を取り込んだ色んな音楽やってるよ、聴き易いよ♪」という、人懐っこい空気が漂ってきております。そう、シュギーの音楽性のすばらしいところは、とにかく音楽が好きで、流行とかスタイルとか関係なく、単純に「好き」というだけで色々やってるんだけど、何というかこの人ならではのマイルドな一貫性があるところなんです。

で、ギターを中心に聴いてみると、そんなマイルドなキャラクターの影に隠れた演奏者としてのストイックな姿勢がかいま見られる、相対する実に硬派でトンガッた姿勢すらも感じさせる。

とにかく一筋縄ではいかない、そして一言では語れない深みを持ったアーティスト、それがシュギー・オーティスト。この4年後にエピックからのラスト・アルバム「インスピレーション・インフォメーション」をリリースして、プイッと表舞台からいなくなり、何と再びソロ・アルバムをリリースしたのが2013年というから、いやはや本当に一筋縄ではいかない人であります。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年05月10日

サンタナ 天の守護神

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サンタナ/天の守護神

うっかりしているうちに夏ですよ。

あのね、奄美26℃うへぇ・・・。とか言ってたら、暑いのはこっちばかりでなく、本土の方でも夏日だよねとかいう声が聞こえたんですが、コレもアレですかね、温暖化というヤツでしょうか?

とにかく最近の気候やらを見ておりますと、本土が亜熱帯化しているという感じではございます。

あの、魚や海洋生物の分布が、この数年で明らかに北上しているようなんですね。

それはさておきサンタナです。

ソニー・ミュージックからの、財布のやさしいココロに嬉しい税込み¥1080のギター・レジェンド・シリーズから、本日はサンタナであります。

サンタナに関しては、これまでこのシリーズの特集の中でファーストサードについてはガッツリ書きました。

これは単純に、アタシが好きでよく聴くアルバムからレビューしようと思ってたというだけで、特に深い意味はございません。

シリーズには、これからご紹介しますセカンド・アルバムの「天の守護神」と、カルロス・サンタナが完全に主導権を握り、音楽性をグッとジャズ/フュージョン寄りのものにした名作4枚目「キャラバン・サライ」がありまして、ハッキリ言いまして初期のこの4枚はいずれ劣らぬ名作でございます。

ここだけの話ベスト盤で安く済まそうと思うよりも、¥4000ちょい出してこの4枚を揃えた方がサンタナの音楽を、飽きることなく濃厚に楽しめますので、これをお読みになっておられる皆様は、ぜひそうなさってください。

はい、じゃあ今日は前置き短めで早速アルバムの紹介に入らせて頂きますね。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.風は歌い、野獣は叫ぶ
2.ブラック・マジック・ウーマン〜ジプシー・クイーン
3.僕のリズムを聞いとくれ
4.ネシャブールのできごと
5.全ては終りぬ
6.マザーズ・ドーター
7.君に捧げるサンバ
8.ホープ・ユー・アー・フィーリング・ベター
9.エル・ニコヤ
10.全ては終りぬ (ライヴ)
11.祭典 (ライヴ)
12.ブラック・マジック・ウーマン〜ジプシー・クイーン (ライヴ)

セカンド・アルバムの「天の守護神」は、1970年、サンタナがデビューしたその翌年にリリースされました。

69年のウッドストック・フェスティバルで好評を得た余波に乗って、そのウッドストックで演奏して話題になった「ブラック・マジック・ウーマン」(フリートウッド・マックのカヴァー)のシングルが大いに売れましたが、ファーストには入っておらず、ファンが心待ちにしていたところに「ブラック・マジック・ウーマン」収録のフル・アルバム。これを喜ばないファンはおりませんということで、セカンドにして早くもこのアルバムはヒット・チャート1位に輝きます。

そこでサンタナがやった粋なことがあって、実はこのアルバムに収録されているヴァージョンは、シングルとは違うヴァージョンで、2曲のメドレーになっております。

実はその”メドレーのもう一曲”の「ジプシー・クイーン」が、カルロス・サンタナが心から敬愛する天才孤高の無国籍ジャズギタリスト、ガボール・ザボの楽曲で、カルロスはこの素晴らしいギタリストの曲を、ミーハー気分で自分達の事を知った人にも聴いて欲しかったんじゃないかと思えば、何かこう胸にグッとアツいものが込み上げてきます。

実際「ジプシー・クイーン」は、ややまったりした「ブラック・マジック・ウーマン」から一気に加速するラテン・ビートで、繋ぎや展開も、もちろんギターのインプロの出来も最高だし、この後4曲目以降のアルバムの流れをビシッと決めていて、全体の雰囲気も見事に引き締めてそして盛り上げておるんですね。

で、多くの人が「このセカンドこそ初期サンタナの最高傑作」と語っております。

確かにファーストでの、ややジャムセッション風なサイケ風味と、サードで聴かれる完成度を上げた楽曲とカルロスのギターの自由奔放なインプロヴィゼーションが織り成すめくるめくカラフルな展開の丁度中間を縫うような、楽曲の美しさとアドリブのスリルとが、まだまだアナーキーで不穏な空気を残す演奏の中で繰り広げられるその熱気は、本作独特のものであります。

「ブラック・マジック・ウーマン」の話題で語られがちではありますが、ラテンの大物ティト・プエンテのカヴァーであります「僕のリズムを聞いとくれ」での、パカポコ命のラテン魂グルーヴが滾るのや、その後のムーディー路線の嚆矢となった”泣き”のギターが優しく唄う「君に捧げるサンバ」等の、その他のシングル曲もすごくいいです。

何より本作から、サンタナのトレードマークともいえる、あの「ぐいいいーーん」と伸びてゆくギターの長いサスティンが、まだ未完成とはいえ、ハッキリと分かる形で聴けるというのが、彼のギターが好きな人(はぁいアタシです)にとっては嬉しいところ。

そしてアルバムの構成も「どこまでもアツく盛り上がるラテン・パーカッションvsギター、オルガンのハードバトル大会」と「美しく余韻を残す哀愁ナンバー」が、ほぼ交互に絶妙なバランスで収録されていて、大ヒット級シングル曲が目白押しといえども、やっぱりアルバムとして聴きたい、そんな豊かなストーリー性にも溢れております。

2枚目までの「ガッツリバンドサウンド」の質感は、ツボにハマると結構やみつきになりますもんね♪


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする