ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年06月22日

アタウアルパ・ユパンキ 1936-1950

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アタウアルパ・ユパンキ/1936-1950 En Sus Primeros Anos
(Take off)

先週からタンゴについて考えたり感動したりしております。

その絡みで「アルゼンチンの音楽」を集中的に聴く時間を設けておりますが、アルェンチンといえばタンゴともうひとつ、忘れてはならない音楽としてフォルクローレでありますね。

フォルクローレというのは、読んで字の如く、英語の”フォーク(Folk)”と同じで、この言葉は「民謡」を意味しておりまして、ザックリといえばフォルクローレというのはアルゼンチンに限らず、ペルーとかチリとかメキシコとか、中南米の広い範囲で古くから歌われてきた先住民のインディオ達の民謡や、それらを元にした音楽のことでございます。

はい、南米という地域は、元々住んでいた先住民と、途中からスペインやポルトガルから入植してきた白人、そして彼らが奴隷として連れてきたアフリカ系住民。この3つの民族の系統の文化が複雑に入り乱れて、それぞれの民族の文化風習を色濃く残す音楽が次々と生まれてきたという歴史があります。

そういうことを少しでも頭に入れて中南米の音楽を聴けば、たとえばブラジルのボサ・ノヴァやサンバ、キューバ音楽とかも「なるほどそういうことか!」と理解が深まってなかなか楽しめたりしますが、今日はとりあえず南米を代表する民族音楽のフォルクローレですね、そちらをご紹介しましょう。

アルゼンチンには、タンゴの神様としてカルロス・ガルデル、その革命家としてアストル・ピアソラという世界的な巨人がおりますが、実はフォルクローレの神様と呼ばれる人も出ておりまして、その人がアタウアルパ・ユパンキという人です。

深みのある優しい声で、アンデスの大自然、人々の暮らし、それにまつわる悲喜こもごもを、何とも切なく時に軽妙な語り口のギターを爪弾きながら唄うその表現は、何と言うか”うたの根源”を、自然と心に印象付ける、詩的な叙情に溢れたものであります。

「フォルクローレ」といえば小学校の頃学校で習った「コンドルは飛んでゆく」あのどこか遠くへ連れ去られそうな切ないメロディーをアタシは覚えてて、で、大人になって上京してからは、インディオの民族衣装を着て木製の笛や太鼓などを4,5人で演奏するストリート・ミュージシャンの人らがよく駅前にいたりして「あぁ、こんな感じなんだろうな」と、何となくしか意識していなかったのではありますが、ある日アルゼンチン出身のジャズマン、ガトー・バルビエリが「トゥクマンの月」という、何とも切ない曲をエモーショナルにサックスで吹いてカヴァーしているのを聴いて、胸を打ち抜かれたんですね。

「この切ないメロディーは一体何だ!?」

と。

すっかりこの曲に心を鷲づかみにされて、これはてっきりガトーのオリジナル曲だろうと思っていたら、いや、これはユパンキという人の曲なんだと知って、あちこち探すまでもなくその曲が入ってるベスト・アルバムを買ったら、ガトーの激しく切ないジャズ・ヴァージョンと違って、歌とギターで優しく語りかけながら物語を紡いでゆくようなユパンキのヴァージョンに、全く別種の衝撃を受けたわけです。

元々先住民の家(母親はスペインのバスク系移民)で育ちながら、古い民謡を弾き語ることが好きだったユパンキは、アルゼンチン全土を放浪しながら唄い歩くことを若い頃に思い立ち、その放浪の旅の中でインディオのリアルな生活、その中に息付く古謡の数々をレパートリーとして体に染み込ませていった彼の歌とギターには、ブルースマン達のブルース・フィーリングに近い独特の奥深さが乗っていて、その優しく哀しげな声や音の精妙な”震え”が、インパクトをすり抜けて人の心の根っこの部分にそっと触れる度に、アタシは今でも切ないような懐かしいような、そんな特別な感情で穏やかに満たされた気持ちになります。



【収録曲】
1.インディオの道
2.マングルジャンド
3.夜が明けそめる
4.風よ、風よ
5.石と道
6.オニナベナの花
7.さすらい人
8.牛追い
9.広野
10.わたしは鉱夫
11.年経たサンバ
12.ポルテスエロの想いで
13.貧しいサンバ
14.パンピーノの歌
15.ビダーラ
16.インディオの牧歌
17.バグアーラ
18.マランボ
19.おやすみネグリート
20.熟れたトウモロコシの踊り(ウアフラ)


さて、フォルクローレの神様としては実は日本でも熱狂的な人気があったユパンキ、国内盤のベストも色々出てますが、今回のオススメは、素直にアタシが実際聴いて「これは本当に素晴らしい!!」と感動しまくった、初期音源集です。

1936年に28歳でデビューしたユパンキの、声とギターによる純粋な弾き語りを中心とした、フォルクローレの”うた”の部分の真髄がギュッと詰まった一枚です。

アンデスの人や風景、月の光、太陽の陽射し、冬の厳しさ、春の穏やかさ、果てしない山道をひたすら歩く馬車、牧場に木霊する牛追いの歌・・・そんな大自然と一体化した生活のあれこれが詩的に、もちろんスペイン語が分からなくても声と音を聴けば脳裏に広がる。美しい、本当に美しい。

ユパンキのフォルクローレは本当に、人間の根本にある大事な何かを思い出させてくれる音楽であります。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年06月18日

ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン

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ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン
(DREAM/ユニバーサル)


音楽を聴いて「いいなぁ」と思う理由は、もちろんそこで鳴っている音がカッコイイとか歌詞がいいとか、そういうのもありますが、もっと大事なのはその音楽を演奏している人達の音楽に対する深い愛を感じるから、というのがあります。

ロックという音楽は、1950年代のロックンロールに夢中になった白人青少年達が、更にそのルーツを掘り下げて、ブルースやR&B、カントリーにロカビリーなどから”ノレる要素”を取り出して作り出した新しい音楽。

そのロック誕生の背景には、イギリスの若きロッカー達の(本国アメリカの都会ではほとんど見向きもされなかった)ブルースに対する深い愛がありました。

2010年代の今でもローリング・ストーンズが最高にイカすブルース・アルバムをリリースしましたし、ジェフ・ベックもエリック・クラプトンも、これはもう”ブルース伝道師”といっていい活動を精力的にやっております。彼らを動かしているのはブルースへの限りない愛です。

何故、60年代のイギリスのロッカー達は、そこまでアメリカのブルースに惹かれたんでしょう。「いや、それは今まで彼らが聴いたこともないような刺激的な音楽だったからだよ」と言われればその通りそこまでの話なんですが、その他に実は、60年代にバンドやり始めた若者達にブルースのカッコ良さを広めた一人の重要人物がおります。

その人の名はジョン・メイオール、クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、それからストーンズの面々らの10歳ぐらい年上で、1950年代からブルースに傾倒してヴォーカリスト&ハーモニカ奏者として演奏を重ねながら、よき兄貴としてイギリスの若者にブルースという音楽の素晴らしさを広め続けてきた人です。

コノ人がホントすごいんですよ”ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ”といえば、ピーター・グリーン、ミック・テイラー、ジャック・ブルース、それからジョン・マクヴィーにミック・フリートウッド、エインズレー・ダンバー、そして言うまでもなくエリック・クラプトンなどなど、とにかくブリティッシュ・ロックの名立たるミュージシャンを次々と世に送り出したバンドのリーダーで、ロックの誕生には大きく関わっておるんですが、自分が育てたミュージシャン達が次々売れっ子になっても一切スタイルを変えることなく、謙虚にブルースを追究しつづけていて、何と83歳の現在も現役でブルースやっております。

ジョン・メイオールが、またはジョン・メイオールの影響を受けた教え子たちが、ブルースという素晴らしい音楽を世に広めるのにどれだけの愛情とリスペクトを注いだか、それはもうひとつの記事では語りきれません。

実際アタシがここでグダグダ言うよりも、60年代のロックが好き、もしくはロックが好きでブルースにも興味あるよという人は、ジョン・メイオールのブルース・ブレイカーズのアルバムをぜひ聴いてみてください。どの作品も素晴らしく愛ですよ、愛。





【収録曲】
1.オール・ユア・ラヴ
2.ハイダウェイ
3.リトル・ガール
4.アナザー・マン
5.ダブル・クロッシン・タイム
6.ホワッド・アイ・セイ
7.愛の鍵
8.パーチマン・ファーム
9.ハヴ・ユー・ハード
10.さすらいの心
11.ステッピン・アウト
12.イット・エイント・ライト


はい、そんな訳で今日は「じゃあそのジョン・メイオールの何を聴けばいいの?」という真摯な方へオススメの、彼の初期代表作にして、60年代ブリティッシュ・ブルースロックの金字塔的名盤『ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』これですね。

まず、エリック・クラプトンが参加して、しかも最高に活き活きとしたブルース・ギターを聴かせてくれることでクラプトンの名盤にも数えられます。

先にクラプトンのことをお話すると、最初にブルースやR&Bを軸にしながらもアイドル的な人気が出てしまい、ポップ路線へと転向したヤードバーズに参加していたクラプトン「えぇえ?ポップな曲なんかオレやらねぇよ、オレはブルースが弾きたいんだぜ」と、このバンドを脱退して「どこかブルース弾かせてくれるバンドねぇかな」とさまよっているうちにジョン・メイオールが「ブルース弾いてくれや、むしろ弾きまくっちゃれ」と声を掛けて二つ返事で加入。

その頃のやんちゃ盛りだったクラプトンンは、当時イギリスで開発されて発売されたばかりの”マーシャル”というメーカーのアンプをレコーディングに使いました。

はい、皆さんご存知の今やロックを代表するブランドのマーシャルです。

このマーシャルのアンプというのがとっても画期的だったんですね。この時代ギターアンプといえば「エレキギターの音を出すもの、音量を稼ぐもの」という基本理念しかなかったのですが、ドラム教室と楽器屋を開きながら細々とアンプを作っていたジム・マーシャルおじさんの店に通っていたピート・タウンゼントとかリッチー・ブラックモアとかいう悪ガキが

「おじちゃん、もっとこうガコーンと歪むギターアンプ作ってくれや」

と無茶を言って、音をデカくするついでに、それなりの音量でも「割れて歪んだ音」が出せるアンプを作らせたのが全ての始まりでありますが、コレに「いひひ、オレが真っ先にコイツでレコーディングしたら目立つぜぇ」と、更にワルい魂胆でレコーディングスタジオにマーシャルアンプを真っ先に持ち込んだのがクラプトン。

さあ、そんなこんなで早速大出力のマーシャルアンプとパワフルに鳴るギブソンのレスポールをスタジオに持ち込んで

「オレはブルース弾くんだぜ、弾いて弾いて弾きまくるんだぜちくしょう!誰にも文句ぁ言わせねぇぜちくしょう!」

と、ヤル気に燃えていたクラプトンは、血気にはやった素晴らしいギターを聴かせてくれます。

のっけからオーティス・ラッシュの「オール・ユア・ラヴ」立て続けにクラプトンが最も敬愛するギター・ヒーロー、フレディ・キングの代表曲「ハイダウェウイ」で、ナチュラル・ディストーションの効いた、艶のある痛快な音で、遠慮なしに弾きまくっております。

「クラプトンのベスト・プレイは?」と訊かれると、年代ごとに素晴らしいプレイがありますのでひとつには絞れませんが、このアルバムでのプレイはその中でも間違いなく候補に挙がるものでありましょう。

と、クラプトンのことばかり書いてしまいましたが、それはしょうがないですね(汗)ジョン・メイオールが「コイツのプレイは凄いから聴いてくれ」とばかりにいい兄貴ぶりを発揮してフロントに置いて、わざわざアルバムのタイトルにまで「ウィズ・エリック・クラプトン」と書いてありますから、まずはクラプトンのギター目当てで聴いてもいいし、そういう期待には十分過ぎるほどに応えてくれるアルバムです。

ジョン・メイオールのヴォーカルとハープに関しては、これはもう燻し銀の魅力ですよね。

プレイに関してはハープと手拍子だけをバックに聴かせる「アナザー・マン」が、非常に深いブルース・フィーリングを醸しながらも、黒人のそれとは違う、どこかサラッと洗練されているフィーリングで実に聴きやすいし、オーティス・ラッシュ、フレディ・キング以外にも、レイ・チャールズ、ブッカ・ホワイトにロバート・ジョンソンなど、ブルースやR&Bの巨人達の、それぞれ異なった幅広いスタイルの楽曲を見事斬新なブルース・ロックに仕上げたそのセンス、特にギターを全面に出しながらもリズム隊に積極的に変拍子を繰り出させるその実験精神は流石としか言いようがありません。

とにもかくにも自分が目立つことよりも、みんなに聴いて欲しいブルースの曲と、イチオシの若いギタリストのプレイにスポットを当てて、でもアレンジに手抜きせずオリジナルな”俺たちの味”をギッシリ詰め込んだジョン・メイオールの心意気、これを感じて頂きたいと思います。





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2017年06月16日

ソニー・クラーク クール・ストラッティン


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ソニー・クラーク/クール・ストラッティン
(BLUENOTE/EMIミュージック)

はい、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」であります!

いやもうこのアルバムをきっかけにジャズを知った人がどれぐらいいるだろう、このアルバムからはじまって、今広大なジャズの大海原のまっただ中にいる人はどれぐらいいるだろう、というほどの大人気のアルバム、いわゆる「名盤」というやつでございますね。

とにかく日本では、ジャズの名盤なんとかとかいう本が出されたらその本の表紙を飾ることがとても多く、ちょいとオシャレなカフェなんかでもレコードやポスターで飾ってあったりします。

とりあえず人気の理由のその中身に関しては、後で解説するとして、まず第一にこのジャケットですよ。ジャズ初心者、あるいはジャズとかよくわからないけど聴いてみたいという心をくすぐる、何というか「ジャズ」と聞いて何となくイメージが湧き上がるこのクールすぎるポートレイト、えぇ、最高じゃないですか。

大体アレだ、このかっこいいジャケットに、タイトルが「クール・ストラッティン」って、うん、英語の意味はよくわからんが、言葉が表紙に合ってるねぇ。ところでお前さん”ストラッティン”ってどういう意味だい?あぁそいつは「イイ女が気取って歩く」っつう意味のスラングだよ。と、調子に乗って小噺のひとつでもやり出したいぐらいのジャケットです。

あのね、アメリカにこういう言葉あるかわかんないけどね、こういうのを”粋”って言うんだね八っつぁん。何言ってんだい熊さん、お前さん字をちゃんと読みなよ”クール”ってのがアメリカで言うところの”粋”って意味なんだぜ。

・・・えぇ、はい。小噺がとめどなくなりそうなので(汗)

ジャケットの魅力に関しては、つまりそういうことでございます。あのね、ジャズのことなんかよくわかんないんだーって人が見ても「カッコイイ写真だな」「綺麗な脚だな」って思うでしょ?何となく雰囲気で。つまりその雰囲気が大事なんです。ジャズなんてもんは小難しくああだこうだ言わないでも、雰囲気で十分に楽しめるもんなんです。

先に結論が出てしまいましたが、ソニー・クラークという人と、このクール・ストラッティンっていうアルバムを、やれジャズの巨人だとか、歴史を変えた一枚だとかそういうんでなしに、純粋に耳で聴いてジャケットを目で楽しんで「あ、これはいい音楽だ」と素直に思ってそれを暖かく共有している日本のジャズ好きは素晴らしいです。

そうなんです、ソニー・クラークという人は歴史に大きく足跡を残したり影響を及ぼしたりした、いわゆる”巨人”ではなくて、むしろそんなに有名でもないまま若くしてあっけなく亡くなった人であり、また、彼の音楽も、歴史を大きく変えたとか、斬新で刺激的だとかそういうのとは対極にある、どっちかというと”フツーのジャズ”です。

でもその”フツー”が凄い、他の人にはちょっと真似できない味わいを、この人は確実に持っておるから凄いんですよ。聴いて一度でも「あ、いいね」と思ってしまったらついつい気になって二度三度聴いてしまうような、本当に麻薬のような味ですね。



【パーソネル】
ソニー・クラーク(p)
アート・ファーマー(tp)
ジャッキー・マクリーン(as)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.クール・ストラッティン
2.ブルー・マイナー
3.シッピン・アット・ベルズ
4.ディープ・ナイト


さぁ、もうジャケットに「イイネ!」と思ったら、迷わず中身を聴いてみましょう。

アナタはこのアルバムのジャケを見て、どんなサウンドを思い浮かべるでしょう。都会の夜の空気? ちょっとモノクロームな感じのくすんだピアノや管楽器の音?それとも酒とタバコの匂いが充満するバーかどこか?

はい、イメージ膨らませましょうね。アナタがイメージを膨らませてこのアルバムに収められている音楽を耳にしたならば、多分それはどれも正解です。そうです、これがジャズの音です。

ちょいと湿った丸みのあるトーンで、重く切ないムードを込めた音を鍵盤に落とし込むソニー・クラークのピアノの魅力と、タメの聴いた、いかにも黒人ジャズって感じのファンキーな楽曲、そしてその両方に潜む、麻薬のような魅力を引き出して止まない共演者達のややワルな個性。これがいいんですよ。

トランペットのアート・ファーマーは、けたたましく吹かない知性派と呼ばれている人で、そのひとつひとつの音を丁寧に紡いでゆく、やっぱりちょっとくぐもった音色で、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンも、この人は飛ばせば凄く飛ばすことも出来る人ですが、基本的に明るく鳴るアルト・サックスという楽器をよりジャズっぽい雰囲気に合わせるためにあえてチューニングを落とした、ハスキーな音が印象的。

この、実に渋いトランペットとサックスが表に立って絶妙な呼吸でタメの聴いたアンサンブルで粋なテーマを奏でてアドリブに入ってゆく、そのバックで後ノリの和音で良いアクセントを突きながら、ミドルテンポの快調なノリにどこか引きずるような影を付けてゆくクラークのピアノ、これがブルースとか、ちょっとラテンのリズムが絡んだマイナー調のナンバーとかと絡むと、もうそこはジャズというジャズの”薄暗い天国”なんですね。

あぁ、もうあえて皆まで言いますまい。アタシもモダンジャズ初心者の頃に買って、その時「よくわからんけど何かいいな」と好んで聴いてました。で、今久々に聴いてみてもやっぱり”何かいい”これですよこれ、つまり”雰囲気がいい”、つまり何十年聴きつづけても飽きない。

派手派手じゃないけど、こういう深い味わいが滲むアルバムが「初心者のために」と、結構分かりやすい位置にあるって、すごく幸せなことなんだな。

という訳でアタシはあと5回ぐらいコレを連続で今日は聴きます、あぁたまんないね。。。






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2017年06月14日

ライトニン・ホプキンス 雨の日のブルース

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連日の、梅雨とは思えないカラッカラの夏晴れが一転、昨日からしとしとと、ようやく雨が降りだしました。

で、昨日の朝はドタバタで、出かける時用のCDを持ってくるのを忘れたんです。

これはいかんとカバンをガサゴソしたら出てきたライトニン・ホプキンスのCD、しまもこんな雨の日に『Rainy Day in Houston』。

余りにもナイスな偶然にあははとなって、終日聴いておりました。

録音は1955年から60年、そしてちょびっとだけ68と見事にバラバラですが、内容はエレキでバンド付き(基本ドラム、曲によってピアノやハーモニカも加わる)でダーティに唸るライトニンで、不思議な統一感があり、何より作品としてイイのです。

しかしライトニンのギター、バカみたいに歪んでいます。

特に前半、ダーティの度合いでいけば、あのドロドロで有名なヘラルド盤をも凌駕しそうな勢いであります。

1960年代前半はもちろん歪み系エフェクターなんて売られてないでしょうから、この歪みおかしいだろうと思思いますが、これは音量稼ぐためにアンプをいじくりまくって、意図せずして音が割れた結果の歪み。

そういえば50年代の時点でワシャワシャのディストーションみたいなギターを弾きまくっていたエルモア・ジェイムズやギター・スリムも、アンプの電圧とかをバカみたいにいじくっていて、彼らが弾いてるアンプというのは、いつ漏電したりショートしたりしてもおかしくない程の危険なシロモノだったそうですが、そんなこと分かってても誰も気にしてなかったというのが何というかアメリカらしいというか恐ろしいというか・・・。

アルバムレビューはこちらをごらんください↓






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2017年06月13日

憂歌団 Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ

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憂歌団/Complete Best 1974-1997+LIVE アナログ
(フォーライフ)


ブルースが好きです。

いや、ブルースのない人生は考えられない。音楽だけでなくても、日常生活の中で何かしら切なくてホロ苦いブルースなものやブルースなことと不意に出会ったら、何故でしょう切なくてホロ苦いのにどこか心が不思議と安らいで、何だか今日も頑張って生きていこうとそんな風に思ってしまう。

こういうのおかしいですか?うん、おかしな話だとアタシも思います。でも、音楽を好きになる気持ちが深まって、音楽を愛してしまってたまんないという風になるというのは、もしかしたらこういうことなのかも知れません。

で、ブルースです。

ブルースという音楽は、アタシが言うまでもなく、アメリカの黒人さんが生み出した音楽なんですが、日常の中での世知辛かったりしょっぱかったりする出来事を感じて嘆いたり悲しんだり、でもソイツを何とか明るく陽気に笑い飛ばしたりしようぜって心はアタシら庶民の中には万国共通でございます。

ね、元はブルーでどうしようもない気分とか因果とか、そういったヤツでもゴキゲンな音楽に乗せりゃあハッピーになれる、聴いた人もハッピーになる。

そういった”心意気としてのブルース”を、日本で演奏してきたバンドがおりまして、このバンドは憂歌団というんですが、そうそう妖怪人間みたいな顔のぺちゃっとした関西弁のおっちゃんが、キュートなダミ声で唄ってね、グラサンかけたギターの人がソロ弾くんだけどピッキングもスライドもめちゃくちゃ上手くて味があって、ベースとドラムもずんちゃかずんちゃか、こらもう聴いてるだけでウキウキしてくるようなスカーンとしたリズム刻んで・・・というあのバンドでございます。

あ、はい、ここまで読んで「誰だそいつら?」と思った人もいいから憂歌団ってのはそういう人達なんだーって一旦思っといてくださいね。

大体アレですよ、ブルースバンドってのは、何だか渋い曲をエレキギターをキュイーンと泣かせてやってるもんみたいなイメージがあるでしょうが、憂歌団はちゃいま(←エセ関西弁)。アコースティックな、戦前スタイルのズンチャカで軽快なバンドなんです。

戦前スタイルとは何ぞや?というご質問には、細かく答えておりますとヒジョーに長くなりますので、そこらへんは当ブログの「ブルース」のカテゴリをヒマな時呼んでくださいますようお願いしますとして、そんなヒマねぇよという方に、あぁそうですかいと乱暴に説明すれば、エレキギターキュイーンでオーイェになる前のブルースは、明るく疾走したり、みんなでワイワイ歌えるような曲がいっぱいあったんです。

実はアタシが本格的に洋楽なるものを聴いて、ブルースも親父に聴かされて「ほほぅ、何かわからんけどいいね」と思ったアタマの悪い中学1年生の時、奄美で生まれて初めて行ったブルースのライヴ。これが憂歌団のライヴだったんですよ。

ある日いきなり親父が

「オゥ、今度の土曜日は名瀬公民館に憂歌団観に行くからお前空けとけぇ」

と言うので

「ゆうかだん?何それ?」

と思いながらも、まぁ何かコンサートだろうと思って、本当に何もわからんまま行ったんですが、その時のライヴがまー初めて体験した「ホンモノ」いやもうホントすごかった。

酒をガンガン飲みながら曲の合間合間にガラガラの関西弁で喋ってる、これ絶対ミュージシャンじゃなきゃその辺の盛り場で朝潰れてるよーなおっさんなんだけど「ほないこか」と言って唄いはじめた時の木村充揮のその凄まじい声の威力と引力ときたら・・・。

そいでもってギターはサングラスかけて正直見た目怖い人っぽいけど、もうギター小僧志望のクソガキのアタシが見ても「あぁ、このギターはやべぇ、並じゃねぇ。いや、プロなんだからんなもん当たり前なんだけど、その中でもかなりハンパねぇ部類の人だ」と分かるぐらいの凄腕の内田勘太郎。

そしてクールにビシャっとリズムを刻む、こっちは見た目も出す音も実に渋い花岡献治のベースと島田和夫のドラムスの完璧なコンビネーション!

いや、バンドのことなんか、ブルースのことなんか全然わからなかったですよ。でも分からない子供のアタシでも、気が付いたら席を立って、手を叩きながら足で一緒にリズム取ってたんですよ。

ライヴ終わった帰りに、車の中で親父に質問攻めでした。あのヴォーカルの人はすごい声だったけど、どうやったらあんな声になるのか、ギターの人は何か指にビンみたいなのはめて弾いてたけど(ボトルネックね)、アレはなんなんだ、そもそもあんなジャンルの音楽はテレビとかで聴いたことないけどアレは一体何ていう音楽だ。と。

そしたら親父、ライヴの興奮冷めやらぬような感じのデカい声で

「アレがブルースよ!」

と、もうザックリ答えてくれました。


まぁブルースですね。色々考えてアタシが誰かに同じ質問されてもそうとしか答えられません。


【収録曲】
(Disc-1)
1.嫌んなった
2.キィ・トゥ・ザ・ハイウェイ
3.おそうじオバチャン
4.はんか街のはんぱ女
5.サマータイム
6.イフ・アイ・ディドゥント・ラブ・ユー
7.10$の恋
8.パチンコ~ランラン・ブルース
9.当れ!宝くじ
10.ALL OF ME
11.スティーリン
12.渚のボード・ウォーク
13.嘘は罪
14.Boy,My Boy
15.ザ・エン歌
16.ア・イ・シ・テ・ル
17.Midnight Drinker
18.シカゴ バウンド

(Disc-2)
1.大阪ビッグ・リバー・ブルース (Album Mix)
2.胸が痛い
3.かぞえきれない雨
4.心はいつも上天気
5.Good time’s rollin’, bad time’s rollin’
6.キスに願いを
7.You are my Angel
8.夢
9.SLOW BOAT TO CHINA
10.オンリー・ロンリー・ジャマイカ
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)
12.家に帰ろう
13.ちっちゃなダイヤモンド
14.ファンキー・モンキー・ベイビー
15.WOO CHILD
16.あれからゾンビ
17.風のうわさに

(Disc-3/DVD)
1.Midnight Drinker
2.ドロボー
3.おそうじオバチャン
4.シカゴ バウンド
5.大阪ビッグ・リバー・ブルース
6.胸が痛い
7.嫌んなった
8.パチンコ
9.Stealin’
10.キスに願いを
11.君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)



もちろん憂歌団は音楽的にもちゃんとしたブルースです。

大体日本人でブルースっつったら妙に黒人っぽさを出そうとかそういう意識が働きがちですが、憂歌団はあくまで音楽的なブルースを演奏の基礎に置きながら、スピリッツの部分はどこまでも日本人、つうかとことん"大阪のおっちゃん"を極めようというベクトルがあって、それがサウンド、演奏スタイル、そして歌詞とでピタッと合致して他にはない味になってる。

彼らの有名な曲で「おそうじオバチャン」とか「パチンコ」とか、いうすこぶるゴキゲンなナンバーがあるんですが、歌詞凄いんですよ。

「私はおそうじオバチャン」と軽快なリズムに乗ってあぁおばちゃんが楽しく掃除してるんだなぁと思ったら

「1日働いてたったの¥2000!」

と、ズバッと悲哀を投げつけるし、「パチンコ」もあぁパチンコ楽しいんだなと思ったら、いや待てこれはアカンぞ、ギャンブル中毒者の歌だぞと「パチンコパチンコ!」とパンキッシュな絶叫の繰り返しの奥にじっとり潜む狂気をぶん投げてくる。

でも、憂歌団はそういう悲哀とか狂気とかを歌の表面に塗りたくったりはしません。明るく楽しく、そして難しくないシンプルな言葉で、大袈裟にいえば本質を歌い上げるんです。これがブルースでなくて一体何でしょう。

もちろんそういう歌以外にも、音楽的な幅は意外と広くて「胸が痛い」や「数えきれない雨」みたいな擦り切れるようなエモーショナルなバラードは、後になってRCサクセションやブルーハーツなんかに受け継がれるスタイルの原型のようでありますし、日本語でカヴァーされている古いブルースも、今そこの飲み屋で出来た曲みたいな親近感がありますな。

ご紹介したアルバムは、とりあえずで聴いてみたい方へ、間違いなく「とりあえず」以上の愛聴盤になること請け合いの2枚組フルボリュームのベストです。限定盤には初期の貴重な映像がたっぷり入ったDVDも付いててコレが凄いんだ。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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