ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年10月30日

ジミ・ヘンドリックス エレクトリック・レディランド

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ジミ・ヘンドリックス/エレクトリック・レディランド

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しておりますし、アタシもここへきて”エクスペリエンス時代のジミヘン”のことを書きながら痛感しております。

このブログのポリシーは

「採り上げたアーティストのことを知らない人に、どれだけ興味を持ってもらえるようなレビューを書くか」

でございます。

だからいくら有名で、洋楽ロックにそこまで興味のない人でも名前ぐらいは聞いたことあるというジミ・ヘンドリックスという人のことも、なるだけ分かり易く興味を持ってもらえるようにその音楽の素晴らしさを書いて行きたいと思うのですが、いざじっくりとジミヘンを集中して聴いてみると、頭で考えていたことが綺麗にすっ飛んで「すげぇ!」「やっぱ天才!」という、そのものズバリではあるんですが、どうも主観的な言葉しか出て来ないので困っております。

そうなんです、端的に言ってしまえば、ジミヘンという人のカッコ良さっていうのは

「他の誰とも似ていない、どれかひとつのジャンルに納めようとしても、必ずどこかからはみ出してしまうその音楽性の広さ」

というのに尽きるんです。

だからよく「ロックギターの神様」と言われ、なるほどそうだと思っても、そのギター演奏の中にはブルースもあり、ジャズっぽいところもあり、ロックともブルースともジャズとも言えないような突拍子もないアイディアがどこかで必ず出てくるので、その最高のほめ言葉ですら、彼を形容するには何とまぁ陳腐なんだろうと、後で必ず思ってしまいます。

だもんで、ジミ・ヘンドリックスという人は、「このようにカッコイイのだ」と、簡単な一言で断言してしまえるアーティストではなく、聴いた端々で「あ、これカッコイイ!」という瞬間がいくつもいくつも出てくるアーティストだと思います。

あぁ、こういう話をするとキリがありませんね〜。

最初にジミヘンを知って25年の間、ずーっと「この凄さの正体は何なんだ?」と思って聴いておりますが、未だに正体が掴めない。でもその”掴めないこと”がアタシの想像力をいつまでも刺激してくれる。素敵ですね。

さて、今日もそんなカッコいいジミヘンのアルバムをご紹介しましょうね。


【収録曲】
1.恋の神々
2.エレクトリック・レディランド
3.クロスタウン・トラフィック
4.ヴードゥー・チャイル
5.リトル・ミス・ストレンジ
6.長く暑い夏の夜
7.カム・オン(レット・ザ・グッド・タイムス・ロール)
8.ジプシー・アイズ
9.真夜中のランプ
10.雨の日に夢去りぬ
11.1983
12.月夜の潮路
13.静かな雨、静かな夢
14.焼け落ちた家
15.ウォッチタワー
16.ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)


ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚目のスタジオ・アルバムにして、ジミヘンが生前にリリースしたスタジオ・アルバムとしては最後の作品になってしまった「エレクトリック・レディランド」です。

人によってはこのアルバムこそジミヘンの最高傑作、ロックでブルースでサイケデリックな世界観と、宇宙レベルの超絶なギター・プレイが奇跡の調和を見せながら最大限の威力で炸裂したジミ・ヘンドリックス芸術の集大成と言う人もおります。

オープニングのワウを聴くだけでほとんどの人が「あ、これジミヘン!」と反応する「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」やボブ・ディランのカヴァー「ウォッチ・タワー」、サイケデリックなジミヘンといえばコレの「ジプシー・アイズ」など、ベスト盤やライヴ盤に入っていてもハイライトとなるような、名刺代わりの強烈な曲ばかり収録されておりますし、確かにセルフ・プロデュースでやりたかったことを自由に表現出来ているような解放感に満ちたギター・プレイ、曲によって必要なサウンドを提供し、演奏の厚みをグッと増す豪華ゲスト陣の参加などなど、このアルバムならではの魅力みたいなものが、彼の作品中では最高潮でありましょう。

アルバムがレコーディングされたのは、例によって前作「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」のレコーディングが終わった直後です。

この頃既にデビューしたイギリスを凌ぐ人気をアメリカで獲得していたエクスペリエンスは、大都市から中小都市まで、アメリカ全土をくまなく回る、かなりハードなコンサート・ツアーを行っておりましたが、そのツアーの合間を縫って、レコーディングは行われました。

で、この頃のジミヘンは、元々の「スタジオに引き籠るのが好き」という性格に更に拍車がかかり、ツアーの合間を見てはスタジオに色んなジャンルのミュージシャンを呼んでジャムセッションを行い、それを新曲のアイディアとして、片っ端からテープに録音しており、それはそのままエクスペリエンスという3ピースバンドの限界も徐々に形にするようになってしまいます。

ジャンルやセッション相手のスタイルに囚われることなく、斬新なサウンド・アプローチで音楽のあらゆる壁を軽々と乗り越えてゆくジミのプレイは、メンバー2人に「ちょっと待て、オレらもうついていけないかも・・・」という不安を抱かせました。

もちろんノエル・レディングもミッチ・ミッチェルも、ジャンルというものに左右されない、素晴らしい適応力を持ったミュージシャンです。

しかし、1968年の時点で、そんな彼らをもってしても、ジミの自由なプレイスタイル、それを具現化するためにスタジオにやってくるあらゆる出自のミュージシャン達とのセッションは大変なものでした。

それはデビューからずっとプロデューサーとして彼らを見てきたチャド・チャンドラーにしても同じことで、急激に注目を集めるジミと彼を取り巻く状況や目まぐるしく移ろう人間関係に嫌気をさしてしまい「エレクトリック・レディランド」制作中にチャドはプロデューサーの座を降りてしまいました。

現に「エレクトリック・レディランド」にゲスト参加しているミュージシャンの顔ぶれだけを見ても、スティーヴ・ウィンウッド、アル・クーパー、ジャック・キャサディ、デイヴ・メイスン、バディ・マイルス、フレディ・スミス、クリス・ウッド、スウィート・インスピレーションズ、ブライアン・ジョーンズ(ギターではなくパーカッションで参加)と、英国ロックからソウル/ファンク近辺までの多彩な顔ぶれです。

「エレクトリック・レディランド」は、ジミの斬新なアイディアに満ちたギターと、ゲスト陣を交えた自由なジャム・セッション風の曲展開、そして崩壊寸前のエクスペリエンスとの、テンションのギリギリの緊張感が「これ以上どこかにバランスが偏ると音楽的に崩壊してしまう一歩手前」のスリルが全編にみなぎっており、それがまたジミの最大の魅力

「何だかわかんないけど凄くカッコイイ!」

というあの感じを無限増殖させるんですね。

さて、ジミヘン初期の”エクスペリエンス時代”の3枚のオリジナル・アルバムを長々と紹介してきました。で、この際だからとこの数日、手持ちのジミヘン関連の全アルバムを聴きまくっておりますが、アタシの場合は「どれが好き?」と言われたら、やっぱり粘り気のあるファンクロックなカラーが強い「バンド・オブ・ジプシーズ」ではありますが「どれが凄い?」と聴かれたら、エクスペリエンス時代の3枚をオススメすると思います。

エクスペリエンス時代のアルバムはどう凄い?と言われたら

「何が凄いのかわからんけど凄いって思えるところが凄いんですよ」

と、やっぱり答えるでしょう。いやもうそう答えるしかないもの。



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2017年10月28日

ジミ・ヘンドリックス アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

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ジミ・ヘンドリックス/アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

(MCA/SMJミュージック)


はい、台風が近付いておりますが、今日もジミ・ヘンドリックスを皆さんにご紹介しながら、知ってるよーで実はよく分からないこの巨人の魅力について、一緒に考えて行きましょう。

彼のバイオグラフィ的なことに関しては、前回の「アー・ユー・エクスペリエンスト?」のところで書きましたので、そちらをまずはじっくりご覧頂くとして、本日はファーストとくれば順番的にセカンドだろうということで、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス2枚目のスタジオ・アルバム「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」です。

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスがデビューしたのは1967年で、2枚目となる本作がリリースされたのも1967年。

これはどういうことかと言いますと、このバンドはまずイギリスで前評判も上々の中、アメリカ・デビューも果たした。そいでもって「すげぇよ、誰もこんな音楽聴いたことがない!ウホッ!!」と、アメリカの聴衆もあっという間に沸かせてしまったんですね。

だからアルバムがリリースした後に、すぐさま次のアルバムの制作に取り掛かった。とにかくもうジミ・ヘンドリックス・エクルペリエンスの登場というのは、デビュー・アルバムがリリースされてすぐに「次が聴きたいぞ!」という声が起きるほどのセンセーションだったんです。

そして何よりも、その頃のジミはもう”次”へのアイディアが、アルバム1枚には収まりきれないほどに次々と出てきておりました。

そう、ジミヘンという人がつくづく凄いなぁと、アタシが関心するのは、ロック・ミュージシャンというのはある意味ライヴに比重を置いていて、その日々の集大成みたいな感じでアルバムを作るもんだったりするんですけど、ジミの場合はウルトラハードなツアーの合間を縫って、空いた時間は常にスタジオに入ってセッションを重ねつつ、新しい音の実験に余念がなかったことなんです。

で、スタジオとライヴでテンションのムラがまったくない。

つまりスタジオではまるでライヴのようなリアリティを演奏でダイレクトに感じさせてくれるし、ライヴでもスタジオで綿密に作り上げたサウンドを何事もなかったように当たり前に繰り出す。

今日もやっぱり”天才”という言葉はあまり使わないようにして説明しようと思いますので、この言葉使いませんが、やっぱりその思考回路というのはアタシら常人とは違う次元にあるような気がします。だって、どんだけテクニックがあっても、作曲やアレンジに力(リキ)入れても、いざ生で演奏するとなると、そういうのとりあえず置いといて、ノリと勢いに意識を委ねてしまうのが人間でしょう。

ジミヘンの場合は、ライヴでもスタジオでも明らかに飛んではいるけれども、音楽的にグシャってる領域には絶対はみ出さないんだ。イカレてるけど冷静で、冷静だけどしっかりイカレてるというか・・・。

うむむ、この辺のことを考えてしまうと、もう”ジミの泥沼”とアタシが呼んでいる思考領域に意識持っていかれてマズいことになってしまうので、こういうことはこれから先もジミヘンを聴く毎に取り出して、一生かけてじっくり考えましょうか。答えは出らんと思うけど・・・。

さて、そんなこんなでジミヘンがデビューからソッコーでニュー・アルバムをレコーディングして世に放った1967年、この年ロックの世界ではひとつのキーワードが世間を侵食しておりました。

それはつまり「サイケデリック」という言葉です。

サイケデリックというのは、色々な説がありますが、とりあえずは薬物、特に幻覚作用のあるドラッグでハイになり、その時の視聴覚で捉えたものを表現するアートのことと、ぼんやり理解しておけばいいでしょう。

派手な原色がぐにょーんと混ざりあがったマーブル模様とか、ともかく派手な色彩感とか、音楽ではエコーとかファズとかトレモロアームを使ったギターの「ぐぎょーん」だとか、そういう奇妙に歪んだものです。

カルチャーとしてのサイケデリックは、60年代のアメリカやイギリスのアンダーグラウンドシーンで大いににぎわっておりましたが、それが当時の若者文化そのものの代名詞となったのが、1966年にビートルズがリリースしたアルバム「リボルバー」です。

ドラッグによる幻覚体験を極めて忠実に再現しようと、様々な音響効果を駆使した結果、奇妙な”違和感の快楽”を聴き手に覚えさせる、ビートルズのアルバムの中でも最も実験色の濃いものですが、ロックを代表するスーパー・バンドのサイケデリック宣言(?)によって、時代の潮流は一気に変わり、それまでオーバーグラウンドで健全な音楽をやっていたアーティスト達ですら、程度の差はあれ、何がしらサイケデリックを感じられる作品を世に出すようになりました。

で、そこにタイミング良く登場したのが、過剰とも言える音響効果をバリバリに生み出してフツーに演奏していたジミヘンです。

彼はサイケデリックの申し子であるかのように世間でもてはやされ、また、今もそのように信奉されていることも多いのですが、ジミの場合は、元よりサウンドであり得ない効果を得ることに異様な情熱を燃やしていたし、その幻覚的なサウンドは、サイケが流行っていようがなかろうが、多分関係なかったんじゃないかと思います。

たまたま時代がそうで、そういったトレンドの方が彼の音楽に接近して、彼の求めているもののどこかにピッタリと符合したと。





【収録曲】
1.EXP
2.アップ・フロス・ザ・スカイズ
3.スパニッシュ・キャッスル・マジック
4.ウェイト・アンティル・トゥモロウ
5.エイント・ノー・テリング
6.リトル・ウィング
7.イフ・シックス・ワズ・ナイン
8.ユー・ガット・ミー・フローティン
9.キャッスルズ・メイド・オブ・サンド
10.シーズ・ソー・ファイン
11.ワン・レイニー・ウィッシュ
12.リトル・ミス・ラヴァー
13.ボールド・アズ・ラヴ


いかにもサイケデリックなイラストが施されたジャケットからも分かるように、このアルバムでジミがファーストから行っていた実験的な音作りは更なら深みに到達しております。

1曲目から凄まじいフィードバック・ノイズが炸裂し、楽曲の中では歪みの他に今で言うコーラスやフランジャーなどの先祖となる揺れ系エフェクター”ユニヴァイブ”の使用、2台のテープマシーンを使ったサウンド・コラージュなど、あらゆる最新技術を使ってのやりたい放題なんですが、それでもギター・プレイそのものは決して音楽的な破綻をきたさず、彼の根っこにあるR&Bのフィーリングをたっぷり含んだロックギターであります。

ジミのプレイはよく”宇宙的”と言われますね。

それは収録時間の制限がなければどこまでも無限に即興演奏が出来そうな、スケールの大きなソロ・プレイに依るところはもちろん大きいと思いますが、リフや歌ってる時のバッキングの、丁寧かつメロディアスなフレーズから感じさせるイメージの豊かな拡がりみたいなものにも言えるなぁと、最近アタシは思っております。

そして、音作りにおいてはサイケで型破りな”実験”が行われているにも関わらず、楽曲そのものはポップな親しみやすさ、2分から3分の収録にキッチリ収まる完成度の高さが実はこのアルバム最大の魅力です。

バラード名曲として多くのカヴァーを生んだ「リトル・ウィング」「キャッスルズ・メイド・オブ・サンド」「ボールド・アズ・ラヴ」がやはり楽曲として出色でありますね。そしてノエル・レディングがヴォーカルを取っただけで、いい感じのブリティッシュ・ロックになる「シーズ・ソー・ファイン」など、ギター・プレイだけじゃない作品としての懐の深さがあって、実に飽きさせません。

そんなわけでアタシは相変わらず「ジミヘンってやっぱり何か意味不明の凄さがあるー」と思ってます。それはつまり言葉では言い表せない音楽的な密度の濃さなんじゃないかと思います。







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2017年10月25日

ジミ・ヘンドリックス アー・ユー・エクスペリエンスト?

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ジミ・ヘンドリックス/アー・ユー・エクスペリエンスト?

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しております。

うん、ジミヘンはそりゃ凄い、カッコイイ、アタシだってジミヘン聴いて何度「うっひゃー、ありえん!」と叫んだことか、そんな体験をストックするほどのスペースが、心の中にはもうほとんどないぐらい衝撃を受けました。

でもね皆さん、ここでアタシからお願いです。

「ジミ・ヘンドリックスは天才だ!」「エレキギターの偉大な革命家だ」とかいう世間の声は、まだジミヘンを良く知らない、聴いたけどそんなに?って方は、この際思い切って無視して頂きたいのです。

はい、やっぱりジミヘンだろうがジョン・レノンだろうが、やっぱり音楽なんですよ。

何よりも最初に「この音楽いいな〜」ってのが先に来て、次にアーティストにスポットが当たって、天才とか偉大とかグレイトとかそういうのが来て欲しいんですね。単純に音楽が好きな人間としては。

アタシの場合は、ジミ・ヘンドリックスと出会ったのは16の時で、そんとき今も親友してますが、同じ学校でギター弾く男と意気投合して、ヴァン・ヘイレンがどうのスティーヴ・ヴァイがどうの、イジー・ストラドリンがどうのマーシーがどうのと、ギター話に毎日のように明け暮れてたんです。

で、当然ギター話をしてるから、ジミヘンの話にもなります。

でも聴いたことないから

「ジミヘンってヤバいよなぁ、ギター燃やす人だろ?」

ぐらいの知識で盛り上がるしかなかったんですね。

その時、ソイツの家でジャケットに惚れて買ったのが「ジ・アルティメイト・エクスペリエンス」っていうベスト・アルバムで(その時の話はコチラ)、それを聴いた最初の感想は

「正直よくわからん、よくわからんけど何か凄い!」

でした。

何が凄かったのか?乏しい音楽知識と、まだ初心者も初心者なギターの腕前ではそれすらも分からなかったけど、あえて言うなら

「何をどうやって弾いてるのかも、どうやったらこういう音が出るのかもさっぱりわからん!」

だったんです。

よくジミヘンを聴いていきなり雷に打たれたような衝撃を受けたとかいう話を聞きますが、それはもしかしたらアタシなんかよりずっとずっと年上で、ジミヘンの時代とほとんど変わらないギター環境(アンプとかエフェクターとか、そういう技術面での話)の音楽と、キチンと聴き比べることが出来たからなんじゃないかと思うんですね。

少なくとも1990年代以降の音楽機材は、ハイゲインのアンプや物凄いぶっ飛んだ効果音とか出せるエフェクターとかは普通にあったし、録音技術も向上してて、オーバーダビングも、音を派手にするためのイコライジングもほぼ自在でした。

だからむしろその頃高校生のアタシにとっては、ファズのゴワゴワした音とか、アナログディレイのモコモコした音とか、ハイ・トーンでもデス声でもない歌声とか、超高速でもないリズムとか、むしろ「あぁ、昔の音楽だな」としか思えなかったんです。

ちょっと読んでいる皆さんを混乱させてしまうかも知れないけど、ちょっと後からジワジワきたのが

「そんな昔の音だから何か凄い!」

という、何だか不思議な衝撃です。

さて、

さてさてさて・・・。


ここまで読んでいい具合に頭が混乱したそこのアナタ、ジミ・ヘンドリックスを聴いてみませんか?


えぇと、最初で言えば良かったのですが、何でかっつうとジミヘンの魅力って、やっぱり何と言っても「そのわけのわかんなさ」であると、ズバリ思うんですよ。この人のギターを使っての表現の突拍子のなさ、やりたくてしょうがなかったのは分かるけど、何でそうなった感というものは、何十年付き合ってもやはり強烈で、その強烈さというのは紋切型の「天才」とか「革命児」とかそういう言葉の何倍も生々しい説得力があるんです、はい。






【収録曲】
1.フォクシー・レディ
2.マニック・デプレッション
3.レッド・ハウス
4.キャン・ユー・シー・ミー
5.ラヴ・オア・コンフュージョン
6.アイ・ドント・リヴ・トゥディ
7.メイ・ディス・ビー・ラヴ
8.ファイア
9.サード・ストーン・フロム・ザ・サン
10.リメンバー
11.アー・ユー・エクスペリエンスト?
12.ヘイ・ジョー
13.ストーン・フリー
14.パープル・ヘイズ
15.フィフティ・ファースト・アニヴァーサリ
16.ジ・ウィンド・クライズ・メアリー
17.ハイウェイ・チャイル

で、1967年発表の、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・アルバム「アー・ユー・エクスペリエンスト?」です。

ジミヘンはアメリカ北部の都市、シアトルで生まれた黒人でありますが、実はお母さんはチェロキー族の血を濃く引くネイティヴ・アメリカンで、その絡みから母方の祖母の住むインディアン居留地で過ごすことが多かったようです。

それゆえに、幼少の頃からブルースやゴスペルにドップリだったというような、同世代かちょい上のブルースマンやソウル・シンガーにあるような、ブラック・ミュージックの強烈なバックボーンは持っておりません。

その代り、彼は少年時代からブルースやR&B、ロックンロールのレコードを熱心に聴き込んでおりました。

後に

「ブルースの基礎をすごく持っているのに、何をやってもはみ出してしまう奇妙なスケール感」

と評される彼のスタイルは、自室でブラック・ミュージックを中心にあらゆるジャンルの音楽を聴きまくり、それを覚えたてのギターでことごとく耳コピしていたからなんだろうなと思います。

10代でアマチュア・バンドを組み、徴兵で行った空軍でもバンド活動をして(この空軍バンドには、後に最後のバンド”バンド・オブ・ジプシーズ”のメンバーとなるベーシストのビリー・コックスがおりました)から除隊。

本格的に音楽の道に進みたかった彼はオーディションを受けまくって、アイク&ティナ・ターナー、リトル・リチャード、アイズレー・ブラザーズなど、当時の人気R&Bミュージシャン達のバックで経験を積みます。

ギターは上手かったのですが、それ以上に派手なアクションでギターを弾くパフォーマンスは聴衆からそれなりに注目を浴び、バンド・リーダーからは「あんまり目立つな」と注意されるといった「何かわからんが面白いヤツ」という彼のスタンスは、既にこの頃には出来上がっておりました。

もちろんジミは自分のバンドもバックミュージシャンの仕事と並行してやってましたが、こっちはどうもパッとしなかったようです。

そんな時に当時人気ロックバンドだったアニマルズのベーシスト、チャス・チャンドラーが「ユーいいね、イギリス行ってロックやらない?」と、声をかけたことが、一大転機になりました。

それまでR&Bの世界の住人だったジミにしてみれば

「ロック?・・・て何ですか、ロックンロールじゃないの?」

「イギリスって・・・行ったことないし、自分黒人っすよ?イギリスで演奏しても受け入れられるんスか?」

ぐらいの不思議な話でしたが、チャドに「まぁまぁ」と一方的に説得されて渡英して、そこで「まあまあ」と行われた「ジミ・ヘンドリックスのバンドのオーディション」を通ってメンバーになったのが、ベースのノエル・レディングとドラムのミッチ・ミッチェルという白人青年2人。

ミッチ・ミッチェルに関しては、そのパワフルでキレの良いドラミングは早くから注目され、セッション・ミュージシャンとして活躍している時にザ・フーの結成時にドラマー候補として名前が挙がったほど。

で、ベースのノエル・レディングですが、彼は元々ギタリストとして、何と17歳の頃からプロとして活躍しちた凄腕で、実はジミヘンのオーディションをアニマルズのギタリスト・オーディションだと思って参加したところ、いきなりベースを持たされて、しかしそれでも完璧なプレイでジミとチャドのド肝を抜いたと云われております。

R&Bで鍛え上げたジミと、直前まで凄腕ギタリストだったベーシスト、そしてロックの正統実力派ドラマーという、全くバックグラウンドの違う3人が(ジミにって)異国であるイギリスで結成した、このバンドが”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”なんですが、この異色の3ピースが放つサウンドは、最初から同時代のどのバンドとも全く違っておりました。

何がどう違うのか?これはぜひ皆さんに聴いて頂いて、できれば同時代の他のバンドと聴き比べてください。

ジミのギターのサウンドや奏法など、専門的に聴けばそれこそ一冊の本に出来るぐらい色々と出てきますが、これだけは強調しておきたいのが、歌、ギター、ベース、ドラムの4つの音が、セオリー通りの

「歌が真ん中、ギターが横、ベースとドラムが後ろでリズム」

という形ではないんです。

全部の音が同じ場所で、同じ質量で溶け合って譜面のない楽曲を同時に即興演奏しているような自由度の高い演奏でいて、楽曲が

・タテノリの疾走する曲

・ブラック・ミュージックの影響色濃いファンキーな曲

・美しいバラード

と、それぞれ綺麗に際立っておるんです。

しかもそれが、デビュー作の時点でもうほぼ完成された形でアルバムに収まっているという所が、この”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”というバンドの、恐ろしいほどのカッコ良さなんです。

タテノリの分かり易い曲”だけ”は入っておりませんので、もしかしたらいきなり聴いて分かる人は少数派かもしれませんが、ジミヘンの音楽って、少し置いて最初に「凄い!ヤバい!」がいきなり来て、それから何年か置きに別の角度からの「凄い!ヤバい!」が、何度も何度も飛んでくる音楽ですので、聴く人は一生刺激をもらえることは間違いないです。

アタシももう25年の付き合いになりますが「まぁジミヘンってこんなだよね」とかいうナメた気持ちになったことは一回もないです。てか、そうさせてくれません。なので一生かけてとことんまで付き合うつもりです。








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2017年10月23日

アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地


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アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地
(EMIミュージック)

あれは1994年とか95年とか、その辺りの頃だったので、今からもう20年以上前のことになります。

”ラップ”と呼ばれていたヒップホップは、当時オルタナやメロコアと呼ばれていた人気のロックを凌駕する勢いで、急速にメディアに進出しておりました。

その露出の仕方というのは「新しく刺激的な音楽」という側面もありましたが、どちらかというと「流行の不良音楽」というような売り出し方が多かったように思えます。

ワルな黒人が、大音量で重低音を響かせながら、独特のファッションと身の動きで、歌ではない”しゃべり”を次々とリズミカルに吐いてゆく。そしてそのライフスタイルも、ゴージャスなクラブ、そこにまつわる銃や麻薬やその他もろもろの犯罪とリンクして、何だかヤバそうな未知の世界として、彼らの存在はブラウン管に映りました。

実際にヒップホップは、1970年代のニューヨークの下町ブロンクス地区で、その最もヤバいエリアに住む(主に)ジャマイカ系移民の間で”ファンクのレコードに合わせて自由に言葉を繋いでゆくリズムの遊び”として産声を上げてから、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市の、常に犯罪や暴力の危険に曝されるエリアの生活の音楽として、アメリカ黒人音楽の裏の先端をずーっと担ってきた音楽でした。

更に80年代後半から90年代になる頃には、レーガン大統領による”強いアメリカ”政策の失敗により、都市部における貧困の格差は深刻なものとなり、その煽りは元々貧しく不安定だった黒人社会を直撃し、結果貧困から抜け出せない環境にいる若者達は次々とギャングになっていき、彼らが愛好していたヒップホップの中から”ギャングスタ・ラップ”というひとつのジャンルが確立されます。

この頃”ヒップホップ”といえばそのままギャング達のライフスタイルであり、また、加熱していた東海岸と西海岸のギャング・グループの過激な抗争の勢いに乗って、瞬く間にその勢いは全米から全世界へと伝播していき、世界中のいわゆる不良文化みたいなものに大きな影響を与えるようになります。

日本においても、1990年代ぐらいからダボダボの服を着て”ラップ”(当時の呼び方)を聴いてるヤツというのが、ぼちぼち幅を効かせるようになってくるんです。はい、アタシが十代の頃ですね〜。

正直その頃アタシは”俺はロックだぞ”という変な自負もあって、ヒップホップには好意的にはなれませんでした。

「何だよ、チャラチャラしやがって」

というのが正直な感想。



「そんな連中が聴くラップなんか聴くか!」

と。

でもね、本音ではファンクがベースになっているヒップホップのグルーヴィーなサウンドはとっても魅力的だったし、それ以前にレッチリやビースティ・ボーイズとか、限りなくヒップホップなロックバンドは、好きで聴いてた訳なんですよ。もちろんその前の、エアロスミスとランDMCの「お説教」なんてもう最高だと興奮しておりましたから、ヒップホップという音楽が嫌いだった訳ではないんです。要はつまらん意地です。

で、そんなある日

「最近出てきた奴らなんだけど、アレステッド・ディベロップメントってのはお前の思ってるラップと違うから聴いてみなよ、全然チャラチャラしてないよ」

と、友達から教えられたんですね。

話によると、アメリカの南部の田舎から出てきた連中で、オシャレで心地良い音だし、歌詞も平和を訴えてるし、何より深いんだ、と。

最初は「へー、そうかい」ぐらいに思ってましたがね、ソイツの部屋で、淡い夕日が何となくいいムード作ってる時間帯に(注・部屋には野郎2人)、ぼへーっとタバコ吸いながら聴いたアレステッド・ディベロップメントの音は、何だか思ってたヒップホップと全然違う、優しく包み込むような暖かなサウンドで、不思議とじんわりきてしまったんです。



【収録曲】
1.WMFW
2.ユナイテッド・マインズ
3.エイキン・フォー・エーカーズ
4.ユナイテッド・フロント
5.アフリカズ・インサイド・ミー
6.プライド
7.シェル
8.ミスター・ランドロード
9.ウォーム・センチメンツ
10.ドラム
11.イン・ザ・サンシャイン
12.祭壇にひざまずいて
13.回春の泉
14.イーズ・マイ・マインド
15.プレイジン・ユー
16.エッグビーターズ

その時の忘れもしないアルバムが「ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地」1994年リリースの、彼らのセカンド・アルバムです。

フロントマンのスピーチを中心に、若者もいて、女性もいて、それから一番衝撃だったのが、ラッパーでもDJでもシンガーでもない”スピリチュアル・アドバイザー”というパートの、白髪白ひげのオッサンがいて、何をやってるかといえば、何だかアフリカっぽい旋律を「アァアァ〜」と歌ったり、詩みたいな言葉のフレーズを朗読してたりするんですけどね、それが怪しくなくて、ゆるやかにアフリカを感じさせるジャズっぽい洗練されたサウンドと優しく知的なラップと絶妙に絡んでてバランスが取れていて、素晴らしくカッコ良かった。

そしてアルバム全体を聴いても、刺々しいところは一切なく、聴いてから何ともおだやかな気分がずっと残りました。友達に「貸してくれ」と言ったのは、言うまでもありません。そして数か月後に、やっぱり自分でも欲しくなってコッソリ買ってしまいました。

激しいロックやディープな戦前ブルースばかりを聴いていたアタシにとっては、どこまでも心身を癒してくれる稀有な音楽であり、また、好きで聴いている音楽の本質みたいなものを、何故か彼らの穏やかなヒップホップ・サウンドが上手く解説してくれるようでいて、不思議な話ですがこの一枚があるが故に他の色んなジャンルの音楽も、より深く好きになれる。そんなアルバムでした。

音楽に与えた影響としては、それまでヒットチャートに上るヒップホップといえば、ギラギラしたギャングスタ系一辺倒だったシーンに緩やかな風穴を開け、90年代後半にエリカ・バドゥやアンジー・ストーンなど、ナチュラルでブラック・ミュージックの深いルーツを感じさせる、いわゆるオーガニックなR&Bを世に出すことに一役買った重要なグループがアレステッド・ディベロップメントだと思います。

でも、そんなことよりもこの優しくて暖かくて、行ったこともないアメリカ南部やアフリカに、奇妙な懐かしさすら覚えさせてくれる、静かな知性に溢れるこのアルバムが、今も自分の心の中で「音楽っていいよな」と変わらず思わせてくれる大事なところにあることの方が、きっと大事なんです。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年10月22日

オリジナル・ナゲッツ

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V.A/オリジナル・ナゲッツ
(ワーナー)


生きていると色々あって、大好きな音楽もちょっとキツい時があります。

でも、そんなクソッタレな気分の時もアタシは

「かっこいい音楽はパンク!」

という信念を持ちつづけ、音楽を愛してきました。

「パンク」という言葉を、アタシは1970年代に出てきたパンクロックだけを指すのではなく、ひとつの思想や姿勢の現れを示す言葉として使っております。

「カッコイイ!!」と思ったらブルースもパンクだし、ジャズもパンクだし、ソウル、レゲエ、ハウス、民俗音楽、ポップスだってクラシックだってみーんなパンクです。

じゃあ”パンク”って何なの?

はい、パンクというのは

「今あるものをぶっこわす」

「概念とか方法とか、そういう既存のものからはみ出す力」

のよーなもんだと、アタシ思っています。

「こうかな?」「これはこうだろう」

と、思っているユルい気持ちをスカーンとぶっこわしてくれる音楽、知らないものに触れた時のピュアな興奮や感動、いいですね。そういうものをこのブログで皆さんに今後もじゃんじゃん紹介していきたいと思っております。

というわけで、今日はガレージ・ロックであります。

ガレージ・ロックは、パンクロック誕生のおよそ10年前にアメリカで誕生した、まぁいってみればパンクのご先祖さんみたいな音楽なんですが、この時代たまたま”パンク”という言葉がなかっただけで、これはもう立派なパンクロックと言っていいでしょうね。

ロックンロールが衰退した1960年代、イギリスで50年代のロックンロールやブルース、R&Bに影響を受けた若者達がロックというものを色々と試行錯誤しながら生み出していったことは、皆さんご存知の通り。

その中からビートルズやローリング・ストーンズ、クリームなんかが人気バンドとして頭角を現しました。

これを聴いたアメリカの若者達が

「やべぇ、クールだ!オレらもこんなことやろうぜ!!」

と、あちこちで触発されることによって、アメリカにも独自のロック・シーンが誕生することになるんですが、このシーンが最初に産声を上げたのが、青少年達の自宅ガレージの中だったんです。

何でかっつうと、そこはほれ、エレキギターとかドラムとかをジャンジャカドンドコやると騒音が出るでしょう。

アメリカって国の住宅は、ほとんどが都市部から離れた郊外にありまして、で、やたら土地は広い訳ですから、自宅ガレージで大音量をやかましく鳴らしても、さほど問題にはならなかったんですね。

で、ヤツらはやっちゃうんです。

ガレージなのをいいことに、ギターアンプのツマミをじゃーっと最大にして、アホみたいな音量にするわけです。

大体ロックなんてのは、若者にとっては「やかましい音で、どんだけ騒げるか」という音楽であり、そこはビートルズもストーンズもアメリカの若者達の心理と全く変わらなかった訳です。

でも、やっぱりちゃんとした会場で演奏したり、レコードをキッチリ作るとなると、それなりにバランスってものが必要になってくるでしょう。だからメジャーなイギリスのバンド達は、やかましくやるけれども、曲や歌がちゃんと聞こえるように、そこは調整していた。

でもアメリカ人はそうじゃなかった。

アイツらアタマおかしいから若さとエネルギーに満ち溢れた彼らは、外で演奏する時も自宅ガレージで作ったサウンドをちゃーんとフルに出して、で、客もアタマおかしいからオーディエンスもその熱意に応えてキッチリ盛り上がっていた。もちろん演奏する店の主は頭を抱え、時につまみ出し、大人達は困惑し、学校は「ロック禁止」の通達を何度も出した。でも、そんなことぐらいで一度火が点いたスピリッツが消える訳がない。

演奏がそれなりに評判を呼び、そこそこの小遣い銭を手にしてもしなくても、ガレージバンドの連中は「もっとイカレた音」に手を出します。

すなわち開発されたばかりの歪み系エフェクター”ファズ”や、アナログエコー等の機器であります。

この頃のエフェクターには正しい使い方なんてない。ひたすらひとつかふたつぐらいしか付いてないツマミでもって「元音とかけ離れた音」を出すのみ、という実にアナクロな使い方をそれぞれ勝手に極め、ゴワゴワに歪んでボヨボヨにエコーかかって、キンキンにフィードバックするという、ギターの”更にやかましい音”というのが生まれました。

で、ガレージバンドってのは面白いなぁと思うのは、曲はビートルズやストーンズなどのUKサウンドに影響を受けたポップなやつなのに、サウンドがところどころおかしい、いや、モノによっては明らかにぶっ飛んでいて、50年前の音楽のくせに、いちいち聴く側の常識とかそういうもんに、助走付きで揺さぶりをかけてくる。

古いとか新しいとかじゃあないんですね、このはみ出し感、破れかぶれ感に「あぁパンクだなぁ、どうしようもねぇなぁ」という”粋”を感じてしまうんです。

ガレージバンドというのは、そんな感じの、価値観が根本から何かおかしい、アメリカンロックの偉大なるアマチュアリズムの集大成なんです。

というのも、このすぐ後にアメリカでも”ロック”というものがちゃんと形になってきて、クオリティの高いものがどんどん出てきてそれらがシーンの潮流を決定付けてゆく訳で、ガレージはあくまで「ロックの連中の下積みの頃やってた音楽」みたいになって徐々に消えてゆくんですね。或いはアンダーグラウンドなサイケシーンの底流に潜伏して、パンクロックの登場まで息を潜めていた。

だもんで”ガレージロックのバンド”と言っても、ロックの表舞台で派手に活躍したバンドはほとんどおりません。超絶無名な、ほとんど一発屋みたいなバンドの、まー気持ちいいぐらいのオンパレードです。

後にイギリスや日本のコレクターが「アメリカのガレージは面白い」と注目して、7インチレコードの値段がすごいプレミアになったりとか、そういう売れ方をしたんですがちょっと待って、そんなマニアックなところだけにこの素晴らしくパンクで実に分かり易くノれる音楽を仕舞い込んでいていいのだろうか?と、アタシはいつも思うんですね。





【収録曲/アーティスト】
1.I Had Too Much To Dream (Last Night)/The Electric Prunes
2.Dirty Water/The Standells
3.Night Time/The Strangeloves
4.Lies/The Knickerbockers
5.Respect/The Vagrants
6.A Public Execution/Mouse
7.No Time Like The Right Time/The Blues Project
8.Oh Yeah/The Shadows Of Knight
9.Pushin'Too Hard/The Seeds
10.Moulty/The Barbarians
11.Don't Look Back/The Remains
12.An Invitation To Cry/The Magicians
13.Liar,Liar/The Castaways
14.You've Gonna Miss Me/The Thirteenth Floor Elevators
15.Psychotic Reaction/Count Five
16.Hey Joe/The Leaves
17.Romeo&Juliet/Michael&The Messengers
18.Sugar And Spice/The Cryan Shames
19.Baby Please Don't Go/The Amboy Dukes
20.Tobacco Road/Blues Magoos
21.Let's Talk About Girls/Chocolate Watch Band
22.Sit Down,I Think I Love You/The Mojo Men
23.Run,Run,Run/The Third Rail
24.My World Fell Down/Sagittarius
25.Open My Eyes/Nazz
26.Farmer John/The Premiers
27.It's-A-Happening/The Magic Mushrooms


だもんで皆さん、ロックが好き、エレキギターのジャーン!が理屈抜きで好きなら、その源流にしていっちばん濃いのがいっぱい詰まっているガレージを聴きましょう。

1972年に編集され、世に出された「ガレージコンピのパラダイス」ともいえる”ナゲッツ”!

これはもう、これ聴けばガレージのオイシイところは大体聴けるっつう最高なコンピなんですよ。

パティ・スミスのバックでギターを弾いていたレニー・ケイという、ロックを心から愛しているいい男が、好きなバンドを集めたオリジナル・カセットを元にして、エレクトラ・レコードというメジャーな会社から、気合いの入ったLP2枚組で出したけど、実はあんまり売れなくて、1976年にふたたびジャケットやら何やらリニューアルして出したけど、これもあんま売れなくて、めげずに96年だったかな?CD4枚組のボックスにしたら、当時日本ではギターウルフとかミッシェルガン・エレファントとかのおかげでサイケやガレージなんかのルーツ・ロックに興味を持つ若い人(はぁいアタシです♪)が結構飛びついて、やっとこさ「これはヤバイ!」と正当な評価を得るに至り、その後のロック系コンピや、インディーパンクのプロモーションなんかにも、実は多大な影響を与えたという、素敵すぎるアルバムの、オリジナル仕様での復刻盤です。

ここに収録されてるのは、どのバンドも見事に60年代の一瞬を若さと勢いだけで突っ走り、消えていったバンド達。でも、そういったバンドならではの、全然作為とかのないピュアな音楽が聴けます。



(お試しでThe leavesの”Hey joe”。ザ・バーズ、ジミ・ヘンドリックスでおなじみのロック・クラシックスですが、もうね、この何も考えてない感が最高なんです)


The Shadows Of Knightの「Oh Yeah」とか、The Amboy Dukesの「Baby Please Don't Go」この辺はブルース・クラシックなんですが、全然深く渋くやろうとしていないドッカーンな感じがたまらんです。The Amboy Dukesはアメリカン・ハードロックの大物、テッド・ニュージェントが地元デトロイトで結成した最初のバンドなんですが、のっけからハウリングがコーーーーン!と言ってる捨て鉢な音で、もうアレですね、野人ですね。テッドは今も変わらんですね。

大体が「曲はポップで音はイカレて」という、実に気持ち良いぐらいのネジの飛び具合なんですが、演奏力の高い実力派として、Blues Magoosの「Tobacco Road」こっちは歪んだギターとサイケなオルガンに不思議な安定感があって、途中から変拍子でガンガン攻める、実に渋いアレンジとかあったりします。

色んな意味ではみ出して破れた、そんな青春の古傷みたいなガレージ・バンドの音楽。テクノロジーが進化した今現在の音と見事に対極なんですが、単なるアンティークじゃあないですね。いつまでもアツくてイカレてる、本当にパンクな音楽です。







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